Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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457話です!どうぞ!


Mission457 崖~知りたかった真実~

呉提督が残した手懸かりを辿ると、捨てられた衛星電話を見付けた。

衛星電話を調べると、24時間で十数回も掛けられている連絡先があった。その相手はウクライナの元特殊工作部隊で、15年前に独立した大物、セルヒー・ヤロスラヴだと判明する。

ステフがヤロスラヴの元に諜報員を送り、尋問で判ったのは、呉提督が行動を共にするローマン・マクレスは、ヤロスラヴから3千人の傭兵軍隊を買おうとしてる事だった。

昔、呉提督がCIAに協力してマクレスを倒す任務では達成条件があり、そのサブミッションが、マクレスの館からダイヤの原石を盗み隠す事だった。

マクレスは そのダイヤの原石を資金としてヤロスラヴから傭兵を雇い、そのために呉提督を利用していた。

しかし任務を行った3ヶ月後、CIAの別部隊が回収しており、その事を呉提督は知らなかった。

ダイヤの原石が無いと知れば、マクレスは呉提督を殺すだろう。彼を救うため、夕張とアーロン、(たける)刹那(せつな)は、隠し場所であるベラルーシへ向かった。

独裁国家であるベラルーシへの入国は難しい。そこでアーロンは、飛行機から夕張と共にパラシュートで降下し、国内に侵入する作戦を決行する。

対空砲火の中で どうにかベラルーシへと入り、アーロンは脱出地点の確保に向かい、夕張は呉提督と合流を果たす。

しかし、アーロンがベラルーシの軍に捕まってしまう。

アーロンが捕まった事を知った夕張は、ベラルーシの現独裁者オレグ・ヴァティムに取引を持ち掛け、地位を脅かそうとしてるマクレスを引き渡す代わりに、アーロンを解放するよう交換条件を提案した。

そして夕張と呉提督は、マクレスを捕まえるために行動を開始するのだった。

 

 

*ベラルーシ 森 ベラルーシ時間8月21日 17:45*

 

マクレスを捕まえるため森を移動する夕張と呉提督は、対空砲火の射程圏外を飛ぶ飛行機に残ってる健と刹那に無線を繋げた。

 

夕張「アーロンがベラルーシの軍に捕まった」

 

健『おいマジかよ、最悪じゃん』

 

刹那『いま脱出地点に向かってる』

 

夕張「いや、脱出地点には まだ来ないで。ベラルーシの軍が居て近付けない」

 

刹那『大佐は?』

 

呉「一緒に居るわよ」

 

健『良かった。合流できたんだね』

 

呉「来てくれるって信じてた」

 

健『それで、監査は どうするの?』

 

夕張「オレグ・ヴァティムと取引して、マクレスを捕まえて交換条件で引き渡す事になった」

 

健『オレグ・ヴァティムって・・・ベラルーシの今の独裁者じゃん!?』

 

刹那『よく取引に応じてくれたね』

 

夕張「マクレスが今どこに居るか判る?」

 

健『ちょっと待って・・・』

 

健が衛星を使い、マクレスの現在地を特定すると、奴は車に乗りベラルーシの検問所に向かってる途中だった。

 

夕張「ダイヤが見付からなかったから逃げる気ね」

 

呉「ざまぁ見ろよ」

 

健『ベラルーシから出たら追えなくなる。検問所に着く前に先回りして、奴を止めないと』

 

夕張「私と大佐で どうにかするから、2人は そのまま待機してて」

 

刹那『検問所には軍が居るから気を付けて』

 

無線を切り、夕張と呉提督は検問所がある場所へと急ぐ。

そんな中、呉提督は再び夕張と組める事にウキウキしていた。

 

呉「また あんたと任務ができるなんて、こんな嬉しい事ってないわよ!ナイジェリアは どう?あんたが元気にしてるって知って心配はしてなかったけど・・・」

 

夕張「うん、いい所だよ・・・」

 

だが呉提督とは違い、夕張は喜ぶ事ができなかった。今の呉提督に対しても、不満や疑問があった。

 

夕張「どうしてマクレスなんかと手を組んだの?」

 

それを問われた瞬間、呉提督から笑顔が消え、一気に気まずそうな顔になる。

 

呉「実は・・・あんたが居なくなった後、1人で ある任務をする事にしたの」

 

その任務とは、『ウォルシュ』という人物の追跡だった。

アーロンは1人でオリーブ財団を立ち上げたのではなく、そのウォルシュと共に立ち上げていた。

当時アーロンとウォルシュは、今の夕張と呉提督のように相棒のような関係だった。技術者と、その背中を守る兵士の関係だ。

だがウォルシュはオリーブ財団を裏切り、敵となって姿を消した。しかし、アーロンは裏切り者のウォルシュを放置していた。

呉提督も、アーロンが夕張の教官について知ってる事に気付いており、ウォルシュを捕まえ放置していた不手際を追求し、アーロンとステフに夕張の知りたい事に答えさせようと考えていたのだった。

 

夕張「全部、私のため・・・?でも どうしてマクレスなんかと?」

 

呉「マクレスに脅されたのよ。あんたの写真 見せられて」

 

ウォルシュを追跡する途中で呉提督は、殺したと思っていたマクレスと遭遇した。

マクレスは写真を見せながら、協力しなければ夕張を襲うと脅し、呉提督は仕方なく手を貸すしかなかった。

 

呉「マクレスが現れて最初はビックリしたわ。確かに殺したはずなのに。ところが どっこい、あいつ生きてやがんの」

 

夕張「そりゃビックリしただろうね。でも ありがとう」

 

呉「当然。あんたと私は相棒なんだから、私から簡単に離れられると思ったら大間違いよ」

 

 

・・・・・・

 

*検問所 18:21*

 

健が言っていた検問所は、石造りの橋の上にあった。

橋の下にはトンネルと道があり、夕張と呉提督は そこに来ていた。

 

夕張「検問所は丁度この真上」

 

呉「んで、どうするの?相手は兵士。普通に行ったら撃たれるし、不意を突いて後ろから襲おうにも、この壁は登れない」

 

夕張「いや、登れるよ。スパイ◯ーマン好き?」

 

呉「スパイ◯ーマンになれるの!?」

 

夕張「いやスパイ◯ーマンにはなれないよ。だって あれは放射能を浴びた蜘蛛に━━」

 

呉「あーあーあー!話 長くなるから そういう御託はいい!」

 

スパイ◯ーマンみたいに糸を出して宙を舞ったり、垂直の壁に張り付いて登ったりは無理だが、橋の上まで上がる方法はある。それ相応の物があれば。

2人が居るトンネルには、違法投棄でもされてるのか様々なガラクタがあり、夕張が橋の上まで登る道具を造るには困らなかった。

先ず長くて太い木材を使う。

その木材の先端にロープが掛けられ、ロープが引っ張られる動きが阻害されない物を しっかりと取り付ける。

先端にロープを掛けると、ロープが掛けられた木材を立てて、倒れないように固定する。

次に木材に掛けられたロープの片側を、車のバッテリーや他にも重量のある物を積めるだけ積んだ買い物カートに結ぶ。完成である。

 

呉「・・・・・・これ安全?」

 

夕張「ううん、安全じゃない。上がる時に橋に直撃したら、首の骨 折れるかもしれないから気を付けて」

 

呉「どうやって気を付けろってのよ?あんたと再会した直後に すぐ死ぬの嫌なんだけど」

 

夕張「仕方ないよ、間に合わせなんだから」

 

呉「あんた そういう娘だったわね・・・」

 

夕張「しばらく会わなくて忘れてた?」

 

呉「忘れてた。もういい、やって」

 

2人でロープを掴むと、夕張が車のバッテリーなどを積んだ買い物カートを押した。

2人が通ってきた橋の下のトンネルを出た先は、急な下り坂になっていた。車のバッテリーなどで重量が増えた買い物カートは、重さも加わり勢い良く下り坂を下っていく。

物凄いスピードで引っ張られる長いロープがピンと張った瞬間、夕張と呉提督の足が地面から浮いた。

そのまま立てられた木材の頂点まで引っ張られ、ロープから手を離した2人は橋に掴まる。

橋の上に上がった2人は、検問所の兵士を背後から襲い即座に無力化した。

 

呉「この後は?」

 

夕張「マクレスが来るのを待つ」

 

兵士を道の端に隠し、夕張達も隠れると、少ししてマクレスと その部下が乗る車列が接近してきた。

トラックの荷台に隠れるマクレスは、部下から検問所に兵士が居ないと聞かされ不審に思い、スピードを上げて そのまま突破するよう指示する。

車列が橋に入る瞬間、夕張が検問所にあったスパイクを展開し、パンクした車列が止まる。

車からマクレスの部下が降りてくるが、先手を取った夕張と呉提督が襲い掛かる。

マクレスの部下と戦闘を繰り広げる中、呉提督はマクレスが1人で逃げようとしてるのを視界で捉えて追う。追い付くと、マクレスと格闘戦になった。

 

マクレス「この俺を裏切りやがって!」

 

呉「ぐおっ・・・!」

 

だが一瞬の隙を突かれ、銃で殴られ気絶した呉提督は後ろ手に腕を拘束され、検問所の兵士が乗ってきていた車の後部座席に放り込まれる。

マクレスも車に乗ると、そのまま橋を渡って逃走した。

 

夕張「大佐!」

 

夕張は相手にしていたマクレスの部下を殴り倒すと、検問所にあった軍用バイクに乗り追い掛ける。

マクレスは森を抜けて平原を走り、無線機で誰かに迎えを寄越すよう指示する。

そのタイミングで、呉提督が意識を取り戻した。

マクレスが気付いてない隙に どうにかしようとしたが、腕が縛られてる事に気付き身動きができない。

するとマクレスは、バックミラーを見て呉提督が目覚めた事に気付いた。

 

マクレス「俺に逆らった事を後悔させてやる。俺は自分の望みを叶え、お前は死ぬ。その後、あの夕張って奴も後を追わせてやる」

 

マクレスが走らせてる平原の先は、崖になっていた。そこから車と一緒に、呉提督を落とすつもりだ。

そこに、軍用バイクで追い掛けてきた夕張が追い付き並走する。

 

夕張「大佐!!大佐!!」

 

マクレス「邪魔するな!!」

 

夕張「その先は崖よ!!逃げ場はない!!諦めて止まれぇ!!」

 

マクレスは邪魔されてなるものかと、車を寄せて夕張に ぶつかろうとしてくる。

夕張は離れて避けるが、その分マクレスの乗る車と距離が離れてしまう。

スピードを上げ追い続けるが、微かにプロペラ音が聴こえてきた。それはマクレスが呼んだ迎えだった。

 

夕張「(ヘリで逃げるつもり!?)」

 

この先は崖で、逃げ道もない中で どうするつもりかと思っていたが、ヘリを使うつもりならマズい。ヘリに乗って飛び立たれたら、すぐに追える手段はない。

追い続け、もう少しで追い付くというタイミングで、なんとマクレスが車から飛び降り地面を転がる。

通り過ぎた夕張が後ろに振り返ると、マクレスは走ってヘリに向かっている。

マクレスを止めるべきだが、車に乗ったままの呉提督を放っておく訳にはいかないため、夕張は車を追い続ける。

 

マクレス「すぐに飛べ!」

 

ヘリに乗り込んだマクレスがパイロットに指示すると、ヘリは すぐに飛び立った。

 

夕張「大佐!!大佐!!」

 

夕張の声が聞こえ、呉提督は腕を拘束された状態で どうにか上体を起こし、空いてる窓から顔を出す。

 

呉「マクレス(あいつ)車から飛び降りたわよ!!何で こっちを追い掛けてるのよ?!」

 

夕張「追い掛けるに決まってるでしょ!!前 見て!!」

 

呉「え?!何て?!」

 

夕張「前!!この先 崖になってる!!崖があるの!!」

 

呉「崖?崖って そんな・・・崖だぁああああ!?」

 

何を言ってるのかと思いながら前を見ると、地面が途切れており呉提督は仰天した。

 

夕張「前に行ってブレーキ踏んで!!このままじゃ崖から落ちる!!」

 

呉提督も そうしたくて身動ぎするのだが、腕を拘束されてるせいで儘ならなかった。

 

呉「腕 縛られて前に行けない!!」

 

夕張「行けないじゃなくて行かなきゃ死ぬわよ!!」

 

呉「私の事は もういい!!マクレスを追え!!」

 

夕張「なに馬鹿なこと言ってるのよ!!」

 

呉「最後に あんたに会えて良かった!!来てくれて ありがとう!!」

 

夕張「やめて!!映画の観すぎ!!悲劇の登場人物みたいなセリフ、似合ってないから!!」

 

呉「最後くらい感動のシーンで終わりたいでしょうが!!その方が自分の人生にも少しは意味があったのかなって思いながら死ねる!!」

 

夕張「私に来させたくせに、諦めて死んだら一生 恨むから!!」

 

呉「それは嫌だ!!」

 

夕張「じゃあ頑張れ!!」

 

とは言うが、呉提督が自分で どうにかするのを待ってられる程の時間はなかった。崖との距離が もうない。

 

夕張「大佐!!ドア開けて!!」

 

呉「はい!?」

 

夕張「ドア開けて!!私が そっちに移る!!」

 

呉「あんた自分の言ってること理解してる?!失敗したら死ぬのよ!!」

 

夕張「私はブレーキ掛けない!!落ちる時は一緒に落ちる!!このままでも どうせ落ちるんだから、それが嫌ならドア開けて!!」

 

呉「まだ死なせねぇぞ!!」

 

呉提督はドアに背を向け、後ろ手に縛られた手を使って手探りで、どうにかドアを開けようとする。

四苦八苦しながら僅かにドアが開くと、今度はドアの方に向き直り、足で蹴るようにして完全にドアを開く。

 

呉「開いた~!!」

 

夕張はバイクで並走しながら、崖との距離と車を交互に何度も見て、車に飛び移るタイミングを見計らう。

そしてバイクから跳び、ドアが開く後部座席に飛び込むと、呉提督を押し倒して のし掛かった。

 

呉「ぐおぉっ・・・!」

 

夕張は車を止めるため、運転席に移動しようとして呉提督を踏みまくる。

 

呉「私を踏むなっての・・・!」

 

夕張「ごめん、前に行く」

 

運転席に移った夕張は、すぐにブレーキとクラッチのペダルを同時に踏み、急ブレーキを掛ける。しかし、かなりのスピードが出ていたのと、草原の草でタイヤが滑ってグリップが効かない事で、車は止まらずズルズルと崖に向かっていく。

崖が目前にまで迫り、夕張と呉提督は落ちると思い顔面蒼白になる。

だが運のいい事に、車の前輪が崖の縁で丁度 止まった。

 

呉「・・・・・・これ、動いても落ちない?」

 

夕張「大丈夫。ちゃんと・・・地面の上で止まってるから」

 

2人は車から降り、夕張は呉提督の腕を縛る結束バンドをアーミーナイフで切り、2人で空を見上げる。その視線の先には、マクレスが乗るヘリが、米粒サイズに見えるくらい遠くまで行ってしまっていた。

 

呉「チッ、逃げられた」

 

夕張「別にいいよ、あんな奴。大佐を助けられただけで充分」

 

呉「いや、捕まってる監査と交換するのに、あいつが必要でしょ!?」

 

夕張「あっ・・・・・・忘れてた!」

 

夕張は健と刹那に無線を繋げ、マクレスに逃げられた事を伝えた。しかし、2人からは大丈夫だから心配ないとだけ返事が返ってきたため、夕張と呉提督は どういう事かと不思議に思った。

ヘリに乗っていたマクレスは、このままベラルーシから逃げられると思って安心していた。

しかし、すぐに異変に気付き怪訝な顔をする。ヘリが降下し始めたのだ。

 

マクレス「おい、場所を間違えてるぞ。降りるのはベラルーシの外に出てからだ、ここじゃない」

 

パイロット「いいや、ここで合ってる」

 

ヘリが着陸すると、そこは夕張達が脱出地点に決めていた場所だった。

ヘリは待ち構えていたベラルーシの軍に包囲され、銃口を向けられる。

パイロットはヘルメットとサングラスを外しマクレスに振り返ると、そのパイロットはDevil May Cry鎮守府に攻め込み、ステフがオリーブ財団に引き入れたマサチューセッツだった。

 

マサチューセッツ「貴様の引き渡し場所が ここだからな」

 

ステフがヤロスラヴの元に送った諜報員は、マサチューセッツだった。

マサチューセッツはヤロスラヴを尋問した時に、ヘリを送ってダイヤの原石を持つマクレスを回収する段取りである事を聞き出していた。

健と刹那からアーロンの交換条件を聞いていたステフの判断により、夕張が失敗した場合に備えて その段取りを利用し、マサチューセッツがパイロットに扮して仲間と勘違いしたマクレスを引き渡し場所に連れていく事にしていた。

マクレスは全てが終わったと諦め、脱力した。

その後 無事にマクレスの引き渡しも終わり、捕まっていたアーロンも解放され、夕張達はオリーブ財団へと戻るのだった。

 

 

・・・・・・

 

*オリーブ財団 ブリーフィングルーム アメリカ時間8月23日 10:23*

 

ブリーフィングルームで、ステフが1人で仕事をしてると、夕張が入室した。

 

夕張「ステフ、ちょっといいかな?」

 

ステフ「・・・えぇ、いいわ」

 

夕張の様子から、ちゃんと向き合わなければならないと思ったステフは、椅子に座るよう促し自身も座る。

 

夕張「ごめんなさい。ステフには話したくても話せない事情があったのに、私も それは分かってたはずなのに、自分の事ばかり考えてステフを責めてた。あんな態度を取って許してもらえるとは思ってないけど、ごめんなさい・・・」

 

ステフ「・・・・・・いいのよ。あなたが怒る気持ちも、よく分かってるつもりだから。本当は話してあげたかった。あなたには知る権利がある。でも私は立場上、機密を話す訳にはいかなかった。だから あなたが自分で気付けるよう、ヒントを残したの」

 

去年のクリスマス、夕張宛にクリスマスプレゼントが届いた。

差出人の名はなかったが、使われていた包装紙が、夕張に爆弾処理の技術を教え込んだ教官が使っていた物と同じで、死んだ教官が送った物だと思っていた。

 

夕張「もしかして あのクリスマスプレゼント、ステフが私に送ったの?」

 

ステフ「私の口からは直接 話せなかったから、あなたが自力で真実に辿り着けると信じて送ったの」

 

夕張「でも、どうしてステフは教官を監視してたの?あ、ごめん、話せないんだよね・・・」

 

ステフ「話さなかった事で、1度は あなたを失った。私は同じ過ちを繰り返さない。だから話してあげる」

 

ステフがCIAに居た頃、任務中に ある男と鉢合わせした。それが夕張の教官だった。

ステフは任務で行く先々で何度も夕張の教官と遭遇し、任務の妨害を受け、出し抜かれてきた事で、ステフは彼を、敵国のスパイだと考えた。

表向きの経歴では日本軍に所属し、教官を務めていたが、軍の任務外での国外への渡航が多かった事から彼には裏の経歴があると睨み、正体を暴くために監視していた。

 

ステフ「結局、CIAに居た時には正体を突き止められなかった。でもCIAを辞めて、本部長としてオリーブ財団に引き抜かれた後に、私は彼の正体を知る事になった」

 

夕張「・・・まさか・・・」

 

ステフ「そう、彼はオリーブ財団の諜報員だったの」

 

オリーブ財団が諜報機関である事は、アメリカ政府機関の中でも限られた者しか知らない事実であるため、当時なにも知らなかったステフが敵国のスパイと思ってしまったのも仕方のない事であった。

 

夕張「ちょっと待ってよ。教官は・・・財団のメンバーだったの?」

 

ステフ「私が知ったのは、彼が亡くなった後だった。あなたも知ってる通り、爆弾魔リーパーの爆弾で犠牲になった後に・・・」

 

夕張の教官は退役する前に、国外への任務に行き、命を落とした。

夕張は軍からの公式の任務だと思い、調べる事もなかったので知る由もなかったが、実は軍からは そんな任務は下っていなかった。彼を国外への任務に派遣したのは、オリーブ財団だった。

 

ステフ「どうやら彼は、中東で活動していたリーパーを調べていたようなの」

 

そして夕張の教官は、爆弾魔リーパーの爆弾によって犠牲となり命を落とした。

夕張はステフの話を聞いてはいるが、理解が追い付かず呆然としていた。まさか自分の教官も、ここに居たとは思わず驚きしかない。

 

ステフ「あなたを財団に引き入れたのは偶然じゃない。Devil May Cry鎮守府の艦娘だからでもない。あなたが彼の教え子だからよ」

 

夕張の教官とは任務中に何度も ぶつかり、敵だと思い牽制し合ってきたが、それでもステフは、彼の腕は認めていた。その教え子である夕張だからこそ、彼女をオリーブ財団の所属にした理由でもあった。

 

ステフ「こんな事になるなら、もっと早く話しておくべきだった。席は空けてあるから、できれば財団に戻ってきてほしい。でも、無理強いはしない」

 

夕張「・・・教官のこと、教えてくれて ありがとう。でも、少し考えさせてもらっていいかな?」

 

ステフ「いいわよ。自分の中で整理して、しっかり答えを出してちょうだい」

 

 

・・・・・・

 

夕張との話が終わり、彼女が退室してから数時間後、ステフに呼ばれていたアーロンがブリーフィングルームに来た。

 

ステフ「時間通りね」

 

アーロン「話とは何だ?」

 

ステフ「夕張の事よ」

 

アーロン「あぁ、彼女なら問題ない。今回の任務も やり遂げてくれたしな」

 

ステフ「そういう事を話したいんじゃないの。先ずは私の話を聞いて」

 

アーロン「・・・よし聞こう」

 

ステフ「今まで私は本部長として、あなたの判断に従って財団を動かし、メンバーを任務に向かわせてきた」

 

アーロン「君は よくやってくれている」

 

ステフ「でも その結果、夕張の反感を買い、彼女を失いそうになった。もう身を引くべきよ」

 

アーロン「・・・・・・私に、財団を辞めろと言うのか!?」

 

ステフ「あなたは この財団を立ち上げ、監査として世界が正しい方向へ向かうよう尽力してきた。それは とても素晴らしい事よ。でも、時代は変わる。いつまでも昔の やり方は通じない。組織も変わっていかないといけない。もう潮時よ」

 

アーロン「しかし・・・!」

 

ステフ「でないと、いつか きっと、夕張じゃなくても、誰かを失う事になる」

 

アーロン「しかし、私には まだやらねばならない事が・・・」

 

ステフ「引退して、あとは若い人達に任せたら?楽しい老後が待ってるかも」

 

ステフの言ってる事も理解でき、アーロン自身も思う部分があり沈黙した。

アーロンは監査であるため、夕張の教官がオリーブ財団の所属だったのは当然 知ってる。

全てを知りながら、夕張に何も話さない上でオリーブ財団の所属にもした。

その結果、夕張がステフに疑念を持つ事になり、オリーブ財団を去る騒動にまで発展した。元を正せば、アーロンの判断ミスと責任問題である。

意気消沈して落ち込んだ様子のアーロンは、黙ったままブリーフィングルームから退室した。

 

 

・・・・・・

 

*ロサンゼルス国際空港 8月24日 11:23*

 

翌日、夕張は書き置きだけを残し、空港に来ていた。オリーブ財団には残らず、Devil May Cry鎮守府にも戻らず、ナイジェリアに戻る事にしたのだ。

皆には申し訳ないと思うが、教官の話を聞かされ、1日 経っても自分の中で整理が付かず、任務に戻る気にはなれなかった。

これから飛行機で、ワシントン・ダレス国際空港まで行き、そこから海を経由してナイジェリアに戻るつもりだ。

そして夕張は、空港内を歩きながらビデオ通話をしていた。相手はナイジェリアで世話になっていた村の人々だ。

 

夕張「うん、今から戻るから」

 

村人達の楽しそうな笑顔と話す様子に、夕張も自然と笑みが零れ楽しそうに話すが、突然 見知らぬ男性に呼び止められた。

 

男「あなたが夕張?」

 

夕張「はい・・・?」

 

男「これを渡すように頼まれてたんです」

 

そう言って男性は、ホールケーキを入れるような大きさの、真っ白な紙箱を渡してきた。

 

夕張「誰からですか?」

 

男「名前までは知りません。ただ夕張という女性に渡すようにだけ言われて。それじゃ」

 

男性は渡すだけ渡すと、さっさと どこかへと立ち去っていった。

夕張は紙箱を見ながら首を傾げていたが、すぐに嫌な予感がして空港警備員の元まで走った。

 

夕張「さっき不審な箱を渡されたんですけど、危険物じゃないか調べてもらえませんか?」

 

そういう事ならと、空港警備員は紙箱を預り、すぐに箱の中身の検査に向かってくれた。

しばらくすると、預けた紙箱を持って空港警備員が戻ってきた。中に危険物は無く、問題ないとの事だった。

中身が何だったのか訊くと、携帯が1台 入ってるだけだったらしい。

夕張は お礼だけ言って その場から離れ、箱を開けると確かにスマホが入っていた。それと、電話番号が書かれた小さいメモ。

明らかに怪しいが、このスマホを渡すよう指示した者の目的を知るには、この番号に掛けるしかない。

そう判断した夕張は、箱にあったスマホでメモにある番号に掛けてみた。すると、電話には女性の声が出た。

夕張には、その女性の声に聞き覚えがあった。それは、オリーブ財団に所属する分析官の1人、『キャシー』だった。

彼女は おっちょこちょいだが、誰とでも仲良くなれる明るい性格をしており、夕張も任務の関係で何度か話した事はあった。

 

夕張「・・・キャシー?」

 

キャシー『あれー?夕張?どうしたの?』

 

夕張「どうして あなたが・・・!?」

 

 

*街*

 

キャシーは今日、勤務が終わり車で帰宅中だった。

 

キャシー「私の番号 教えてたっけ?あっ、財団に居たら教えてなくても判るわよね」

 

夕張『今どこに居るの!?』

 

キャシーの反応から、夕張にスマホが渡るようにしたのは彼女ではないだろう。

箱に入っていた不審なスマホに、一緒にあった番号がオリーブ財団の分析官のものであるなど、何かが おかしい。

 

キャシー「今ぁ?今日は早く仕事が終わったから、家に帰ってる途中よ」

 

キャシーは笑いながら話し、しかも運転しながらであるため気付いていなかったが、彼女が乗る後部座席に、何者かが潜んでいた。

 

 

*ロサンゼルス国際空港*

 

夕張は空港で、不審なスマホと電話番号を渡され、掛けたらキャシーに繋がった事を説明すると、安全のために すぐオリーブ財団に戻るように言った。

キャシーは どういう事かと戸惑っていたが、直後、スピーカー越しに彼女の悲鳴が聞こえ、重量のある物が ぶつかる音がした。

 

夕張「キャシー・・・?キャシー!?」

 

?『残念だが、キャシーは死んでしまったよ。不幸な交通事故だ』

 

次にスマホから聞こえたのはキャシーの声ではなく、男の声だった。その声の主は、夕張やDevil May Cry鎮守府、オリーブ財団の面々を殺そうとした殺し屋、ウォードッグのものだった。

 

夕張「ウォードッグ、どうして あんたが・・・!?刑務所に入ってるはずでしょ?!」

 

ウォードッグ『それなら とっくに脱獄した。俺を閉じ込めておけると思ったのが そもそもの間違いだ』

 

夕張「どうしてキャシーを殺したの?!あんたが恨んでるのは私でしょうが!」

 

ウォードッグ『おいおい、彼女は自分から木に突っ込んで死んだんだ。まぁ、その原因を作ったのは俺だがな』

 

夕張「ふざけんな・・・!」

 

ウォードッグ『これは ほんの始まりに過ぎない。刑務所に入れられた借りもあるしな。ネロには前に言ったが、最後には、俺が お前達を破滅させてやる。それまで お仲間と一緒に、残りの人生を楽しむといい』

 

夕張が何か言い返す前に、ウォードッグの方から通話を切られた。

 

夕張「くっ・・・!」

 

キャシーが死に、ウォードッグが脱獄した事を知った夕張は、オリーブ財団に この事を伝えるため、空港を後にするのだった。




ウォードッグが再登場しましたが、こちらは他の話の進行具合などタイミングを見て、改めてやっていきたいと思います

次回も宜しく お願い致します!
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