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471話です!どうぞ!
楓は秘密にされていた潤羽の出生を学苑で暴露し、潤羽は姿を消して行方知れずになってしまった。
その報復に、潤羽は楓の家に盗聴器とカメラを設置し、自分で立ち上げたサイトで その動画を公開しようとしていた。
そんな最中、ネロは2年4組の生徒達から、1年前に以前の担任のせいで、クラスメイトの1人が死んだ事を聞かされる。それが、楓が“担任外し”に執着する理由だった。
ネロは楓と潤羽の戦争を止め、2人の心を救うために奔走するのだった。
*
ネロが潤羽の聞き込みをしてるのと同時刻、潜入する学苑に出勤していた羽黒が廊下を歩いてると、3人の女性教師が慌てた様子で駆け寄ってきた。
羽黒「どうしたんですか?」
教師「これ!」
そして見せられたのはスマホの画面だったのだが、そこには楓の盗撮映像を公開しようとするサイトが映っていた。
爆弾のマークの横にあるタイマーのカウントは、残り3時間50分となっていた。
羽黒「何ですか これは!?」
*2年4組*
2年4組の教室でも、生徒達がスマホの画面を見ながら、そのサイトの話に持ちきりだった。
生徒「潤羽から来たメール、見た?」
生徒「これマジかよ・・・」
そこに、
輝男「マズいぞ これ」
男子生徒達がネロに駆け寄り、問題となってるサイトが映るスマホの画面を見せた。
ネロ「・・・何だ これ?」
昂「もしも、もし こんなの公開されたら楓さんが・・・!」
輝男「潤羽、本気で楓のこと潰すつもりだ」
ネロ「クッソ・・・」
ネロはスマホを取り出し、どこかに電話を掛け始めた。
輝男「おい、誰に電話 掛けてんだよ?」
ネロ「潤羽に決まってるだろ」
輝男「今更 出る訳ねぇだろ」
ネロ「うっせぇな」
ここまでしてネロから電話が来れば、潤羽ならネロが止めようとしてるのは容易に理解できるはずだ。それが分かってる上で、潤羽がネロからの電話に出ようとするとは到底 思えないが、それでもやめようとしないネロに、男子生徒達は呆れた溜め息を吐いた。
*楓の自宅*
楓の自宅では、しらみ潰しに盗聴器やカメラを探して荒れた部屋の中で、楓が床に座り込んで蹲っていた。
床には大量の盗聴器とカメラが、無造作に転がっている。
すると部屋の扉がノックされ、扉を開けようとノブが何度も回されるが、楓が内側から鍵をしていたため、開けられる事はなかった。
母親「どうしたの、楓ちゃん?何かあったの?開けて。開けてちょうだい」
扉の向こうから楓の母親が声を掛け続け、何度も扉をノックしてはノブを回すが、楓は何も言わず その場に座り込み続けるだけだった。
母親「楓ちゃん」
*明陽学苑高校 2年4組*
潤羽『もしもし』
ネロ「繋がった」ボソッ・・・
『おっ・・・!?』
予想とは違い、ネロが掛けた電話に潤羽が出て、ネロは男子生徒達に顔を向け、男子生徒達は驚き前のめりになる。
潤羽『電話 掛かってくると思ったよ』
ネロ「潤羽、お前なにしてんだよ?」
潤羽『言ったでしょ。私と同じように、楓ちゃんの居場所なくしてやろうと思って』
ネロ「お前、今どこに居るんだ?」
潤羽『高いとこ。すぐに死ねられる場所』
ネロ「どこだ?!」
潤羽『言わない。でも眺めはいいよ。ここなら すぐ無に戻れるよ・・・一瞬で。骨なんて粉々だろうなぁ。肉の塊になるの。ただのタンパク質に』
ネロ「おい、お前ふざけてんじゃねぇよ」
潤羽『やっぱり人生なんて ただの暇潰しだった。だからね、終わらせようと思って』
ネロ「・・・おい?潤羽!」
そして通話が切れてしまい、スマホを持つ手を下ろしたネロは、呆然とした。
輝男「ネロ?」
ネロ「・・・あいつ、死ぬ気だ」
輝男「はぁ?」
冗談では済まされない言葉に、生徒達は顔を強張らせる。
だが、ネロは まだ諦めた訳ではない。
ネロ「お前ら、ちょっと来い!」
ネロは教室から飛び出し走っていき、男子生徒5人が それを追って走る。
*パソコン室*
そして着いたのはパソコン室で、ネロは輝男を椅子に座らせた。
ネロ「潤羽は俺が何とかする。お前らは、このサイトどうにかしろ」
ネロの考えとしては、ネロ自身が自殺しようとする潤羽を見付けて止め、その間に生徒達が、ハッキングなり何なりしてサイトのタイマーを止めるというものだった。
しかし、輝男は苦笑いを浮かべていた。
輝男「はは・・・できる訳ねぇだろ」
ネロ「俺の合成写真 作ったろ。それで どうにかしろって」
輝男「全然 技術 違うし・・・」
パソコンが使えるなら どうにかできるだろうとネロは安易に考えており、その認識の誤りに輝男は顔を しかめる。
するとネロが輝男の胸ぐらを掴み、無理矢理 立たせた。
ネロ「仲間が また死んでもいいのかよ?!こんなの公開されたらなぁ、楓も どうなるか分かんねぇぞ。このままにしていい訳ねぇだろ。どうにかしろ。いいな?」
ネロは輝男の胸に拳を当てると、その場を後にした。
輝男「やるしかねぇだろ」
生徒「おし」
晶人「よし」
巧「おし」
男子生徒達は それぞれ席に着き、知識のない状態で盗撮映像の公開の阻止を試みるのだった。
*校舎*
ネロが校舎の階段を駆け下りてると、その姿を見た理事長が血相を変えて駆け寄ってきた。
理事長「あぁ、ネロ先生」
ネロ「理事長。潤羽が自殺しようとしてる」
理事長「えぇ?」
ネロ「原因は潤羽の秘密を、楓が暴露した事だ」
それを聞いた理事長は、動揺して目が泳いだ。だが その反応は、理事長も潤羽の秘密を知っていたと、ネロに気付かせるには充分だった。
ネロ「知ってたのか、理事長?」
理事長「・・・・・・・・・」
ネロ「だったら何で俺に言ってくれなかったんだ?!学校の問題にジャーマン決めろって言ったのも、潤羽の事も、頼むって言ったの理事長だぞ」
理事長「それは・・・」
ネロ「どうにかして立ち直らせて、生徒を連れ戻すから」
その言葉に、ネロと目を合わせられなかった理事長が驚き彼を見る。
ネロ「例え俺が学苑に居られなくなったとしても、絶対に」
そしてネロは理事長の横を通り過ぎ、走り去っていった。
理事長は走り去るネロに振り返る事もできず、その場で立ち尽くしていると、階段の上に
善之「ネロも気付いたんじゃないの?理事長の罪に」
理事長「・・・・・・・・・」
善之「あの事をなかった事にはできないからね」
校舎の外に出たネロは走りながら、改めて潤羽に電話を掛けていた。
ネロ「潤羽、お前は絶対 死なせねぇからな!」
潤羽『先生?一緒に乗った観覧車、楽しかったね・・・私の退屈だった人生で、1番 嬉しかった・・・』
ネロ「観覧車なら いつでも乗ってやる!100回も、200回でも、飽きるほど一緒に乗ってやる!」
そう言って、ネロは停めてあったキャバリエーレに跨がる。
潤羽『・・・優しいね、先生』
ネロ「潤羽、どこに居んだよ?いま迎えに行くからよ」
潤羽『来ないで。私の決意は変わらない』
ネロ「潤羽・・・」
潤羽『誰も私の事なんて望んでないの』
ネロ「そんな事ねぇよ。俺も、きっとオメェの母ちゃんも、お前が必要なんだよ」
潤羽『あの人が必要なのは、私の頭脳だけ』
ネロ「・・・・・・・・・」
潤羽『きっと お母さんは、私が死んでも悲しまない』
ネロ「・・・・・・分かった・・・分かったよ潤羽。じゃあ最後に1つ、俺の頼みを聞いてくれないか?」
潤羽『・・・・・・・・・』
*パソコン室*
サイトを止めようとしていた男子生徒達は、悪戦苦闘して頭を抱えていた。と言うのも、管理者権限を奪ってサイト自体をデリートしようとしたのだが、パスワードが必要で行き詰まっていた。
輝男「サーバーにアクセスしたまではいいけど、パスワードが分かんねぇんだよ!」
巧「ああもうっ!片っ端から文字 入れるしかねぇよ!」
晶人「ああもう・・・」
巧「潤羽の誕生日とか携帯番号とか!」
輝男は横に座る昂を見ると、昂は頷いた。
パスワードは分からないが、止めるには それでもやるしかない。
輝男「おう・・・」
?「それじゃ無理だ」
輝男がキーボードに手を添えるが、後ろから声がし振り返ると、善之が立っていた。
輝男「善之・・・」
善之「相手は潤羽だ。そんな単純じゃない」
輝男「じゃあ どうすんだよ?」
善之「パスワードが分からないなら、他の方法で止めるしかないだろ」
生徒「どうやるんだよ?」
善之は席に座る輝男を どかすと、そこに座りキーボードを操作し、コメント欄に楓を装い挑発的なコメントを投下していく。
善之「まぁ見てろって」
*街*
潤羽との通話が終わったネロは、彼女の自宅を目指してキャバリエーレで爆走していた。
・・・・・・
*マンション 15:56*
潤羽の母親は、部下と共に自宅にあるオフィスの環境を整え終わり、既に仕事に戻っていた。
そこで、何度もインターホンが鳴らされる。しかも執拗に連打され、仕事に集中できない程に迷惑と言えるくらい鳴らされまくる。
母親「何?うるさいわね・・・ちょっと見てきてくれる?」
部下の1人に対応を任せ、玄関に向かった部下が扉を開くと、スッとネロが中に入り込んだ。
部下「ちょっと!?」
部下が止める声を無視し、ネロは奥まで行って潤羽の母親を見付けると、彼女が座るデスクの前まで詰め寄った。
母親「また あなたなの?しつこいわね。これ以上 関わるなら訴えるわよ」
ネロ「潤羽の居場所が判ったぞ」
母親「・・・そう。案外 早く見付かったのね。こんなの家出の内に入らないわ。これが終わったら迎えに行くから」
ネロ「随分と仕事が大事なんだな。アンタの娘はなぁ、今ビルの屋上に居んだ。飛び下り自殺するつもりなんだってよ」
その話が意外だったのか、ずっとパソコンに目を向けネロと目を合わせようともしなかった母親が、やっと顔を上げてネロを見た。
母親「・・・自殺?」
ネロ「おう」
すると母親は、そんなのは有り得ないと馬鹿にするように笑った。
母親「あっはは、潤羽が自殺?そこらの子と一緒にしないで。あの子なりの考えがあるのよ、バカバカしい」
娘の事を これっぽっちも心配しようともしない母親の態度に、ネロの怒りがフツフツと湧き上がり、母親を見る目が鋭くなっていく。
母親「兎に角 帰ってちょうだい。こっちは それ処じゃないのよ」
ネロ「・・・お゛お゛お゛お゛お゛!!」
そして遂に我慢の限界でネロの怒りが爆発し、パソコンなどデスクの上にある物を全て払い落とした。
母親は突然の事に驚き、思わず席から立ち上がり、部下達の仕事の手も止まった。
母親「・・・何すんのよぉー!?」
ネロ「潤羽が自殺しそうでも、心配じゃねぇのかよ?アンタ母親だろ!」
母親「心配?何で心配しなきゃいけないの?自殺する事の意味を分かってるわよ あの子!頭いいのよ あの子!そんなの分かんない子じゃないのよ!大金 積んでまで造った天才児なんだから!」
ネロ「行ってやれ、娘の所に」
母親「金の動きを片時も目を離せないの。出ていかないなら警察を呼ぶわ」
そう言って、母親はスマホを手にするのだが・・・
ネロ「テメェ・・・」
ネロの鋭い眼光に睨まれ、警察に電話しようとする手が止まった。まるでヘビに睨まれたカエルだ。
母親「・・・何よ?」
ネロ「・・・・・・・・・」
母親「・・・・・・・・・」
ネロ「そっか・・・分かった」
ネロは母親に背を向けてデスクの上に腰掛けると、スマホを取り出し どこかへ電話を掛け始めた。
ネロ「・・・おう、潤羽。どうやら賭けは俺の負けみたいだ・・・金が大事で動けないんだと。お前の母ちゃん、娘の心配より仕事の方が大事なんだってよ。だから もうオメェの好きなようにしていい・・・・・・おい・・・?聞こえるか潤羽、なぁ?」
母親「何?どうしたの?」
ネロは焦ったようにデスクから立ち上がり、潤羽に呼び掛ける。
ネロ「おい、返事しろ潤羽、おい!」
母親「何なの?潤羽が どうしたの?」
そしてネロは、力なく耳に当てていたスマホを下ろした。
ネロ「あいつ、飛び下りやがった・・・」
母親「・・・え・・・?」
ネロは走り出し、潤羽の自宅から飛び出していった。
残された母親は、有り得ないと思っていた状況に動揺し、理解が追い付いていなかった。
母親「なに言ってんのよ・・・?あの子が そんな事する訳ないじゃない・・・・・・皆ボサッとしてないで早く片付けてちょうだい」
「「「は、はい!」」」
潤羽の母親に言われ、部下である女性3人はネロが荒らした物を慌てて片付け始めるのだが、母親のスマホに電話が入った。
相手は警察であると名乗り、潤羽がビルから飛び下り、現在 救急搬送されていると告げられた。
搬送される病院の名前も伝えられ、すぐに病院に来るように言われた。
母親「そんな・・・」
*明陽学苑高校 パソコン室*
学苑では、楓に成り済ました善之がコメントを投下し続け、公開される動画を観ようと待機する視聴者を煽りまくっていた。
視聴者は善之の投下したコメントに機嫌を悪くし、ご立腹の様子だ。
善之「アクセス数が伸びてる。もうすぐ このサーバーはパンクする」
巧「やったー!」
サーバーがパンクすればサイト自体が閲覧できなくなり、タイムリミットが来ても動画を視聴する事もできないだろう。
どうにかなるという安心から、男子生徒達は喜びハイタッチを交わす。
盗撮映像が公開されるまでのタイムリミットは、残り1時間。
だがコメント欄に、煽って炎上させようとしてるのではないかと、善之の思惑に気付いた視聴者が現れ、善之の顔が強張った。
そのコメントが発端となり、更にはサイトを乗っ取ろうとするコメントまで書き込まれた。
善之「マズい・・・」
輝男「え・・・?」
善之「暴走した・・・」
巧「暴走?」
晶人「え?」
善之「こいつらサイトを乗っ取って、動画を公開させる気だ」
輝男「おい、何とか防がねぇと」
晶人「善之」
この流れはマズいため、善之は更にコメントを投下し、視聴者のコントロールを試みる。
*理事長室*
理事長室では、理事長が腕時計を確認しながら、落ち着かない様子だった。
・・・・・・
*病院 16:52*
病院に着いた母親は、潤羽が居る病室を聞き、急いで走ってきた。
病室の前には、1人の警官が立っていた。
母親「潤羽の母です・・・!」
警官「どうぞ」
警官に促され病室に入ると、ネロと羽黒、
そしてベッドには、包帯を巻かれた痛々しい姿の潤羽が、意識もなく横になっていた。
母親「・・・・・・潤羽・・・?」
ネロ「
美香「・・・・・・潤羽から電話があって・・・私達ビルの屋上に行ったの・・・潤羽・・・もう生きていけないって・・・!」
杏子「必死に止めたんですけど・・・ごめんなさい・・・!」
明子「潤羽ちゃん、私達の目の前で・・・」
羽黒「私が着いた時には もう・・・大事な娘さんを・・・・・・申し訳ありません・・・!」
女子生徒3人は泣き、羽黒も泣きながら母親に頭を下げ、助けられなかった事を謝罪した。
ネロ「・・・俺達は潤羽を救えなかったんだ」
母親「そんな・・・潤羽が・・・」
医師「手は尽くしたんですが、余命は、あと僅かです」
母親「そんな・・・」
母親は まだ信じられず、潤羽が横になるベッドに歩み寄る。
母親「何で・・・?何で こんな馬鹿な事するの?あなた天才児なのよ。天才なら、何で自殺なんて馬鹿な選択肢 取るの?!何のためにアメリカまで行って、大金 懸けたと思ってるのよ!全部 頭のいい あなたを造るためなのよ!なのに、何でなのよぉ!!」
ネロ「・・・母親のアンタが そんな風に思ってるからじゃねぇのか?」
母親「・・・・・・・・・」
ネロ「ハッ、金 積んで造っただぁ~・・・?ふざけんなババア!!子供はプラモデルじゃねぇんだよ!血ぃ通ってんだよ!!」
ネロは潤羽が横になるベッドに駆け寄ると、母親を押し退け潤羽の手を握った。
ネロ「なぁ潤羽、天才児って言ったって、子供は子供なんだよなぁ?母親の愛情が欲しかったんだよなぁ?一緒に飯 食ったり、話 聞いてもらったり・・・別に高望みしてた訳じゃねぇ。手を伸ばせば すぐ届きそうな普通の愛情が欲しかったんだよなぁ?それなのに いっつも仕事 仕事って・・・今までのアンタの そういう態度が どれだけ
そしてネロは、何も言わない母親の方に振り返る。
ネロ「そんな事も分かんねぇで何で子供なんて持ったんだ?!それなら端っから子供なんて産むんじゃねぇよ!こいつはアンタの血を分けた子供なんだぞ」
ネロの後ろで横になる潤羽の目尻からは、一粒の涙が流れていた。
ネロ「アンタが望んで出来た娘なんだぞ!違うのかぁ?!」
母親の脳裏には、潤羽が赤ん坊の頃と、幼少の頃の記憶が蘇っていた。
昔は、今とは違っていた。母子2人だけの生活は今と変わらなかったが、大切に大切に育て、愛情を持って接していた。
どこにでもある温かい家庭のように、互いに笑顔が溢れていた。
母親「・・・・・・駄目な母親ね、あたし・・・今頃 気付くなんて・・・」
ネロ「・・・・・・・・・」
そして母親は、2人の医師に振り返って歩み寄ると、男性医師の腕を掴み縋った。
母親「先生・・・お願いします。潤羽を、潤羽を助けてください。お願いします・・・!私は どうなってもいいから・・・潤羽を、娘だけは・・・」
潤羽を助けてくれと懇願しながら、母親は泣き崩れた。
するとネロが母親に歩み寄り、彼女の肩に手を置いた。
ネロ「その気持ち、ぜってぇ忘れんなよ。はぁ・・・もういいぞ」
ネロが合図を出すと、意識不明だったはずの潤羽の目が開かれた。
ベッドの方に振り返った母親は、起き上がった潤羽を見て、驚きから目を見開いた。
母親「潤羽・・・!?」
潤羽「ごめんね・・・全部、嘘だったの・・・」
母親は潤羽に駆け寄り、抱き締め涙を流した。
そして潤羽も母親を抱き締め、共に涙を流した。
母親「馬鹿・・・!本気で死んだと思ったじゃない・・・良かったぁ、あなたが生きてて・・・お母さんが間違ってた、ほんとに ごめん・・・」
母親の謝罪の言葉に、潤羽は首を横に振り、母親を許した。
ネロ「潤羽・・・知ってるか?産まれてくる時、赤ん坊が泣くのは、その後 笑顔になるためなんだぜ。どんな風に産まれてきたかなんて関係ねぇ。生きてる今が大事なんだ。胸 張って生きていこうぜ」
ネロの言葉に、潤羽は泣きながら頷き、ネロも笑みを浮かべながら頷いた。
直後、2人の医師がマスクを外すと、露になったのは明石とアーロンの顔だった。
そして扉の前に居た警官は、天龍だった。
実は潤羽の母親に電話した警察も天龍で、警官服も以前 左遷させられた警察署から黙って拝借していた。
病院の方は、アーロンのコネで病室の1つを借りれる事になり、母親を改心させるために こうして一芝居 打つ事ができた訳だ。
アーロン「上手くいったようだね」
ネロ「あぁ。潤羽、賭けは俺の勝ちのようだな」
ネロが そう言うと、ネロと潤羽は互いに笑った。
そしてネロは、潤羽のベッドに腰掛ける。
ネロ「だから楓の事も、もう良くねぇか?あいつ、あんな映像 公開されちまったら、それこそ この国に・・・」
楓の事も許してやるよう提案すると、どういう訳か、潤羽は意味深な笑みを浮かべた。
*明陽学苑高校*
学苑では善之が作戦を変更し、管理者パスワードを突破してサイト自体をデリートしようと、必死に文字を打ち込みまくっていた。しかし、パスワードが違いアクセス拒否の表示がされてしまう。
公開まで残り14秒となり、男子生徒達も焦りから頭を抱え、祈り、善之を急かす。
昂「ああもう駄目だっ・・・!」
輝男「おい善之お前なんとかしろよ!」
公開まで残り6秒。
アクセス拒否される度に、善之は次々と文字を打ち込むが、遂にはタイムリミットとなり、サイトに映る爆弾が爆発した。
*病院*
潤羽「どんな映像だと思ったの、先生?」
ネロ「・・・・・・・・・」
意味が分からず、ネロはポカンとした。
*明陽学苑高校*
盗撮映像の公開を阻止できなかったという悔しさと、見てはいけないという思いから、男子生徒達はパソコンの画面から顔を逸らしたり、目を瞑っていたのだが、やっぱり気になり見てしまうと、そこには別の物が映っていた。
輝男「・・・・・・え?」
*病院*
潤羽「大丈夫」
ネロ「はぁ?」
潤羽「あの子(楓)が忘れかけてること、思い出させるためだから」
*明陽学苑高校*
晶人「これって・・・」
輝男「俺達の・・・」
昂「2年4組の、あの頃の・・・」
そして公開されたのは、2年4組の生徒達が1年生だった頃の、楓の親友である
そこには、ネロと羽黒が学苑に来た頃とは違い、2年4組の生徒達の誰もが笑顔で写っていた。
そして それは、2年4組の生徒全員が見ており、懐かしさから皆が笑顔になっていた。
*病院*
そして病院でも、ネロ達はサイトにアクセスして、2年4組の思い出の写真を見ていた。
潤羽「私が楓に見せたかったのは、あの頃の写真。まだ、2年4組の皆が、明るくて、楽しかった頃の」
ネロ「・・・・・・・・・」
潤羽「思い出してほしかったの、楓に。あの頃の笑顔を」
*楓の自宅*
同じ頃、楓もサイトにアクセスして見ていたのだが、まさか思い出の写真が映し出されるとは思っておらず、驚き呆然としていた。
*病院*
楓を本気で潰す気ではなかったと知り、粋な事をする潤羽にネロは嬉しくなり、誇らしくもあり、笑顔を浮かべた。
ネロ「いい笑顔じゃねぇか」
潤羽「でしょ?」
本当の意味で潤羽の心を救う事ができ、最後にネロは、彼女とグータッチを交わした。
*理事長室*
理事長室には、教頭が またネロの事で直談判に来ていた。
教頭「これまでネロ先生のせいで、問題が次々と起こってるんです!一刻も早く対処を!」
理事長「・・・ネロ先生に、全てを託します」
教頭「・・・・・・・・・」
理事長「ネロ先生だからこそ、生徒の心を・・・もう避けてはいられませんね。1年前の、2年4組の事件を・・・」
教頭「しかし!」
理事長「・・・・・・・・・」
もう考えを変えるつもりはないと、覚悟を秘めた眼で、理事長は教頭に視線を向けた。
*パソコン室*
その頃 部屋に引き籠る楓に、輝男は電話を掛けていた。
輝男「楓 見たか?公開された映像。潤羽は、お前の居場所をなくすつもりなかったんだよ。笑顔を失くした お前に、もう1度、笑顔のあるクラスを一緒に やり直そうっていうメッセージだったんだよ」
楓『・・・・・・・・・』
輝男「もう1度やり直さないか?きっと皆も そう思ってる」
そう言った輝男は、一緒に居た男子生徒達の方を見ると、彼らは笑みを浮かべながらサムズアップを向けていた。
楓『無理だよ・・・』
輝男「そんな事ねぇよ!・・・おい、聞こえてるか楓?おい?」
*楓の自宅*
楓は耳に当てていたスマホを下ろしながら通話を切り、亡くなった親友である奈南と一緒に写る写真に、泣きながら視線を向けた。
楓「だって・・・あの子を殺したのは きっと・・・」
*???*
?『君だよ。キャハハハハハハハ!』
明陽学苑の地下にある、誰にも見付かってない遺跡の最奥で眠る魔の気配の復活が、目前と迫っていた。
楓の心に暗い影を落とす切っ掛けとなった事件に切り込み、彼女の心を救う事はできるのだろうか?
ただの人間となってしまったネロではあるが同時に、復活が迫る魔の気配を止める事ができるのだろうか?
理事長も、1年前の2年4組の生徒達の事件に向き合う覚悟を決め、全てはネロに託される事になった。
明陽学苑の話も、そろそろ終わりが近付いてきました
前回2年4組の生徒達が担任外しをする理由が明らかとなりましたが、更に深掘りして その真実を明らかにしていきたいと思います
そして生徒達と魔の気配が どう関係するのかも、この明陽学苑での話のクライマックス直前には明かしていく予定です
次回も宜しく お願い致します!