Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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473話です!どうぞ!


Mission473 辞表~笑顔を取り戻すために~

明陽(めいよう)学苑2年4組で これまで起きた数々の事件が、ネロの悪名としてマスコミに知られてしまった。

そんな中で(かえで)が学校に来なくなり、ネロと羽黒は改めて、生徒達から2年4組が抱える過去、楓の親友である奈南(なな)の死の発端を聞く。

理事会まで動き出し、全ての責任を取る覚悟をしたネロは楓の心を救うため奔走するのだが、楓には響かなかった。

楓が抱える問題に更に踏み込むため、ネロは潤羽(うるは)と共に奈南の家に向かい、そこで ある真実に辿り着くのだった。

 

 

*街 9月21日 19:32*

 

街では輝男(てるお)晶人(あきと)(たくみ)、1人の男子生徒が、制服のまま どこかに遊びに行ってたらしく、その帰りで楽しそうに話しながら歩いていた。

すると4人の携帯が鳴り彼らはスマホを見ると、潤羽からのメールが届いていた。そのメールは輝男達4人だけでなく、2年4組の生徒全員に一斉送信されていた。

 

輝男「何だよ これ・・・?」

 

輝男達はメールの内容を読み、さっきまでの楽しい雰囲気など吹き飛び互いの顔を見合った。

 

 

・・・・・・

 

*喫茶店 20:13*

 

明子(あきこ)「先生!」

 

金剛が働く喫茶店には羽黒と輝男達が先に来ており、潤羽のメールを見た生徒達が続々と集まってきていた。

 

羽黒「教えてくれて、ありがとう」

 

輝男「皆・・・潤羽からのメール見たよな?」

 

明子「・・・うん」

 

輝男「楓の奴、何で今まで黙ってたんだよ?」

 

杏子(あんず)「何で、楓1人で そんなこと・・・」

 

すると生徒達のスマホが一斉に鳴り、確認すると今度は楓からのメールだった。

 

明子「楓ちゃんから・・・」

 

そのメールには、『今まで ごめんなさい。ケジメは ちゃんと つけるから』と書かれていた。

 

美香(みか)「楓・・・」

 

金剛「マズいデスヨ、それ」

 

奈南の死と“ケジメ”、いま起きてる問題の一連の話から、楓が死によって償おうとしてると、その場に居る者達は理解できた。

足音がして振り返ると、ネロと潤羽が来た。

 

羽黒「ネロ先生、楓さんが━━」

 

ネロ「どうするんだ?」

 

輝男「・・・え・・・?」

 

ネロ「また喪うのか?ダチのこと」

 

『・・・・・・・・・』

 

ネロ「あいつは全部1人で背負い込んでんだよ。それを一緒になって背負ってやるのがダチってもんじゃねぇのか?」

 

『・・・・・・・・・』

 

ネロ「本当の友情ってのはな、どんな時も ちゃんと同じ方向 見んだ。一緒に喜んで、悲しんで、苦しんで、皆で一緒の時間 過ごすんだ。俺は そう思うぜ。楓を本当に救えるのは、オメェらしか居ねぇんだ!」

 

 

・・・・・・

 

*明陽学苑高校 校舎・屋上 9月22日 6:15*

 

夜が明けた翌日、楓は校舎の屋上で、ずっと保存してしていた奈南の写メを見て立ち尽くしていた。

楓の脳裏には、奈南が飛び下りる瞬間、彼女の腕を掴めなかった時を思い出していた。

 

楓「ごめん・・・今から私も逝くから・・・」

 

楓はスマホの画面を落とすと、歩みを進め屋上の縁まで行く。

 

?「死ぬ奴が皆にメールなんてするなー」

 

呆れたような声がし振り返ると、少し離れた場所にネロが立っていた。

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロは歩みを進め楓の前へと出る。

 

ネロ「居ると思ったぜ、ここに」

 

楓「来ないで・・・」

 

ネロ「奈南の後を追うのは無理だ」

 

楓「え・・・?」

 

ネロ「これのせいなんだろ?オメェが死にたがってんのは」

 

そう言ってネロが懐から取り出したのは、奈南の家で見付けた手帳だった。

 

ネロ「これ、奈南の日記だ。教室の お前の机に入ってたやつ、奈南の遺書、そこには何て書いてあったんだっけ?」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「“信じてほしかった。藤森(ふじもり)先生にだけは”、だったよな?」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「でもよ、ほんとは違うんだろ?担任のせいで死んだっつーのは」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

 

“私はやってない!”

 

“じゃあ誰?!他に居るなら、誰が盗んだって言うの?言いなさい!”

 

 

当時 奈南は藤森に追求され、奈南は助けを求めるようにクラスメイト達を見た。しかし皆は何も言わず、助けようとせず、奈南から顔を逸らし知らぬ存ぜぬだった。それは楓も同じだった。

 

 

“こんな事で、私の足を引っ張らないで。学校に知れたら、私が どうなるか不安よ!”

 

 

そして親を呼び出した三者面談の終わりにも、廊下で奈南の母親は藤森に謝っていた。

 

 

“申し訳ありませんでした・・・よく、言って聞かせますので・・・”

 

“本当に お願いしますよ。お母さん”

 

“・・・はい・・・”

 

 

その時の様子も楓は見ており、奈南と目が合うと視線を逸らし、奈南が犯人ではないと信じてあげられなかった。

そして翌日から、クラスメイト達は奈南と距離を取り、彼女は孤立していた。

そんな中、男子生徒達が奈南を囲んだ。

 

 

“どうした?まっ、俺にもあるよ。出来心っつーやつ”

 

“え・・・?”

 

“奈南さぁ、金に困ってるなら俺達に言えよな”

 

 

男子生徒達は気まずい雰囲気を払拭するために言った発言だったのだが、奈南が盗んだ前提での言葉であったため、奈南からすれば心ない言葉で、刃となり心を抉った。

そこに、楓は追い打ちを掛けてしまう。

 

 

“そうだよ”

 

“・・・・・・やっぱり疑ってたんだね皆・・・私のこと・・・”

 

“え・・・?”

 

“・・・・・・友達だと、思ってたのに・・・”

 

 

そして奈南は、屋上の縁へと立った。自殺するために。

 

 

“奈南!”

 

“奈南お前なにやってんだよ?!”

 

“馬鹿な事しないで・・・!”

 

“信じてほしかった・・・・・・皆にだけは”

 

 

それが、楓だけに聞こえた奈南の最後の言葉となり、彼女は飛び下りた。

 

 

“奈南!”

 

“奈南ー!”

 

“・・・・・・何よ・・・それ・・・”

 

 

同日の夕方、奈南の死に立ち会った生徒達は教室で悲しみ、楓は呆然としていた。

そんな中 楓は、自分の机に何か紙が入ってるのに気付いた。手に取り紙を開いてみると、それは奈南の最後の言葉と同じものが書かれた遺書だった。

楓は悲しむ皆を見てからノートを取り出し、自分達が奈南を追い詰め死に追いやったという現実から目を逸らすため、奈南の遺書と同じ文を書いた。“みんな”という部分を“藤森”に変えて。

その日から、楓は1人で この事実を背負い込み、現実から目を逸らすために全てを担任のせいにして、担任外しが始まるのだった。

 

ネロ「手帳(そこ)には、仲間と一緒に居て楽しくて仕方がない、奈南の想いが詰まってるんだ」

 

奈南の手帳を手渡された楓はページを開き、中に書かれてる事に目を通していく。文化祭の実行委員長をしていた事から、そこには皆でやる文化祭の準備の様子や、成功させるという意気込みが綴られていた。

 

ネロ「そんな奈南が、いくら先生に疑われようが、死ぬとは思えなかった」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「奈南が悲しかったのは、こんな大好きなダチに、信じてもらえなくて、庇ってくれなかった事だと思うぜ」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「お前らも分かってたんじゃねぇのか?・・・お前らのせいで、奈南が死んだ。それを認めたくなくて、担任のせいにしただけなんだろ?」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「けどよ、それは お前1人で抱え込む事じゃねぇぞ。クラス皆の問題なんだからよ」

 

楓「うるさい・・・あんたに何が分かんの?!」

 

ネロ「・・・・・・・・・」

 

楓「私が・・・私が書き換えたから・・・・・・担任のせいにしたから・・・」

 

そこに遅れて、羽黒と(のぼる)、杏子、明子、潤羽が駆け付けた。

 

昂「それは違うよ!」

 

ネロ「潤羽に、頼んで皆にメールしてもらったんだ。奈南の死の真相を」

 

楓が潤羽を見ると、潤羽は黙って頷いた。

 

昂「僕達だって、悪かったんだ!」

 

杏子「私も、奈南のこと庇えなかった!」

 

昂「だから・・・責任 取るなら僕達みんなで取る!」

 

明子「そうだよ!楓ちゃん1人で抱え込まないで・・・!」

 

ネロ「まったく、幸せ(もん)だぜ、お前はよ」

 

ネロが楓の方に1歩 踏み込むと、楓は後ろに下がった。

 

楓「来ないで」

 

それを見て、羽黒達も楓に駆け寄ろうとする。

 

楓「来ないで!来たら飛び下りる!」

 

その言葉に、羽黒達は足を止めた。

 

羽黒「楓さん!」

 

明子「楓ちゃん!」

 

ネロ「甘ったれてんじゃねぇぞ楓!!」

 

『・・・・・・・・・』

 

ネロ「お前、親友 死んだから悲しかったんだろ?それが自分達のせいって知って もっと悲しくなった。だから皆に秘密にした。それなのに、またクラスメイト(こいつら)に背負わせる気か?」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「ダチを救えなかった悲しみを また背負わせるのかって訊いてんだよ?!」

 

楓「・・・言ったでしょ・・・私に友達なんて・・・」

 

昂「友達だよ!」

 

杏子「そうだよ!」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

潤羽「死んだら、私 絶対 許さない!」

 

明子「私もだよ、楓ちゃん!」

 

そして羽黒も頷き、意思を示す。

 

ネロ「皆で抱えようって言ってんだ。一緒に やり直そうってな」

 

楓「・・・・・・でも・・・もう やり直す事なんてできないよ・・・」

 

ネロ「・・・そうか?誰も そんな風には思ってないみたいだぜ。お前以外はよぉ」

 

輝男「楓ーー!!!」

 

輝男の呼ぶ声がし、楓は地上を見下ろす。

ネロ達も並び一緒に見下ろすと、そこには他の2年4組の生徒達が大きな紙を広げて手に持ち、楓を見上げていた。

生徒達が持つのは、自分達が写る写真で作ったモザイクアートで、『ALL FOR ONE・ONE FOR ALL』という文字が浮かんでいた。

そして生徒達は楓の名を呼びながら、大きく手を振った。

 

ネロ「あれ、1年前の文化祭で、クラスで作るつもりだったんだろ?奈南と お前のアイディアで。もう1度あの頃に戻って やり直そう、それがクラスメイト(あいつら)なりの考えだ。お前を入れて」

 

楓「・・・・・・・・・」

 

ネロ「んー?でも まだ何か歯抜けがあるなぁ」

 

生徒達が持つモザイクアートは、まだ完成した訳ではなかった。そこには、楓が写る写真だけが抜けていた。

ネロは笑みを浮かべると、楓を連れて生徒達が待つ地上へと向かう。

ネロ達が下に行くと、モザイクアートは地面に置かれていた。

 

ネロ「これにはよぉ、大事な物が抜けてんだ。楓の写真がな」

 

そして輝男が歩み寄ると、数枚の写真を楓に手渡し、彼女は1枚1枚その写真を見ていく。

 

ネロ「完成させろよ、楓」

 

楓は言われるまま ゆっくりと動き、皆が見守る中で写真を貼っていく。

ネロはモザイクアートに使われてる全ての写真を見ながら、感慨深そうにしていた。

 

ネロ「これ、全部 奈南が撮ったんだってな。皆いい笑顔してんじゃねぇか。奈南も嬉しかったと思うぜ。ダチの笑顔にシャッター切るのがよ」

 

輝男から渡された写真を貼り終えた楓は立ち上がり、モザイクアートを見ながら、奈南と一緒に写真を撮った日の事を思い出していた。

 

 

“はい、チーズ”

 

“撮れた?”

 

“撮れた”

 

 

ネロ「なぁ楓。何度 失敗しても、やり直せばいいんじゃないのか?戻って、何回でも。間違いを認めるのは、つれぇかもしれねぇ。やり直すのは、しんどいかもしれねぇ。でも、分かっただろ?お前は独りじゃねぇって事を」

 

ネロの言葉に、楓の目から一筋の涙が流れた。

 

ネロ「クラスメイト(こいつら)と一緒に、もう1度 初めから始めればいいんじゃねぇのか?それでよ・・・こんな笑顔、もう1度 取り戻そうぜ」

 

涙が止まらなくなる楓が皆の方を見ると、クラスメイト達は笑顔で彼女を見ていた。

 

楓「っ・・・っ・・・・・・取り戻せるかな・・・?」

 

ネロ「あぁ。大丈夫だ。こいつらとなら」

 

そのネロの言葉に同意するように、生徒達全員が頷いた。

 

楓「皆ごめん・・・ごめん・・・!」

 

楓は謝罪の言葉を口にしながら、頭を下げた。

 

ネロ「バカ。言う言葉が違うだろうが」

 

楓「・・・・・・ありがとう」

 

頭を上げた楓は、今度は優しい笑みを浮かべて お礼を言うのだった。

 

潤羽「楓・・・これ」

 

すると潤羽が歩み寄り、また1枚の写真を手渡した。

受け取った楓は頷き、その最後の1枚をモザイクアートに貼った。それは、楓と奈南が笑顔で写る、2人で撮った写真だった。

 

輝男「うおおおおお!!完・成・だー!!」

 

モザイクアートが完成した事で輝男が叫び、それに続いて喜びから他の生徒達も歓声を上げる。

生徒達は楓の所に集まり、ネロと羽黒は邪魔しないよう後ろに下がり、彼らを微笑ましそうに見守る。

 

ネロ「お前ら・・・最高にイカしてるぜ」

 

羽黒「あれ?ネロ先生も泣いてるんですか?」

 

ネロ「バカ、ちげーよ。ゴミが目に入っただけだ」

 

生徒達の様子を見ながら、ネロと羽黒は貰い泣きしていた。

 

 

*理事長室*

 

理事長室では理事長が、窓から2年4組の様子を見ていた。

その様子から、今回もネロがやってくれたと理解し、安心したように息を吐き出した。

 

 

・・・・・・

 

*2年4組 8:30*

 

善之(よしゆき)が登校して教室に来ると、普段なら先に来てるクラスメイトの姿が1人も見当たらず、空っぽだった。

すると彼は、教室の後ろの掲示板に見慣れない物を見付け、それを確認するために近付く。それは完成したモザイクアートと共に、ネロと羽黒、生徒達で撮った写真だった。

 

善之「・・・・・・・・・」

 

そう・・・楓の心を救う事はできたが、まだ これで終わった訳ではなかった。

そして事態も待ってはくれなかった。

 

 

*理事長室*

 

教頭が勝手に理事会に報告し、理事会の面々が理事長室に押し掛けていた。

 

理事「教頭先生から、理事長がネロ先生を辞めさせる気がないと伺ったものですから」

 

理事長が教頭を見ると彼は何も言わず、理事長から視線を落として逸らした。

 

理事長「えぇ。ネロ先生は、この学苑に必要な人ですから。これまで彼は、多くの生徒を救い、立ち直らせてきました」

 

理事「だから何です?」

 

理事「入学志願の取り消しが相次いでるのを、ご存知ですよね?」

 

理事「教師の行き過ぎた行動が世間に取り沙汰され、学苑の評判が落ちてるのは事実です」

 

理事「あなたは1人の問題教師のために この学苑を潰すおつもりですか?」

 

ネロが生徒達に どう影響し、どう必要なのか理解しようともしない理事達に、理事長はウンザリして溜め息を吐いた。

 

 

*奈南の自宅*

 

インターホンが鳴り、奈南の母親が外に出ると、そこには2年4組の生徒達が居た。

その後ろには、見守るようにネロと羽黒も付き添っている。

奈南の母親は、娘のクラスメイトだった者達が突然 来た事に驚いてる様子だった。

2年4組の生徒達は、やり残していた事をするために来ていた。それは謝罪だった。

楓が黙って頭を下げると、それに続き他の皆も頭を下げる。

それでだけで奈南の母親は、生徒達が来た意味を理解し、涙を流した。そして彼女は泣きながら首を横に振り、生徒達を許すのだった。

そんな様子を見ていたネロに、電話が掛かってきた。出ると相手は天龍だった。

 

天龍『ネロ、大変だ!何かスゲー事になってるぞ!』

 

ネロ「何だよ?」

 

天龍『テレビだよテレビ!すぐ見てくれ!』

 

ネロ「は?テレビ?」

 

テレビでは、ネロが楓をライブハウスに連れ込む様子が報道されており、それが問題として批判されていた。

すると天龍との通話に、摩耶が出た。

 

摩耶『ネロ、お前マスコミにマークされてたみたいだな』

 

あの時ネロは、羽黒の協力でマスコミの目を掻い潜って学苑の外に出たが、目敏く気付いたマスコミに尾行され、一部始終を撮られていたようだ。

ネロと羽黒も、ワンセグで報道を確認した。

魔の気配を探るために学苑に潜入してるネロだが、それにも限界を感じた彼は、生徒達の方に振り返り弱々しい笑みを浮かべた。

そんな顔をするネロを見て、羽黒は不安そうに彼を見詰める。

 

 

*理事長室*

 

理事長室でも、理事長と教頭、理事会の面々がテレビで報道を見ていた。

 

理事「ネロ先生の解雇について、すぐに理事会を開いて話しましょう。理事長(あなた)の責任も含めてね」

 

 

・・・・・・

 

*2年4組 9:40*

 

学苑へと戻った生徒達も報道と理事会の事を知り、教室でネロの事を心配する声が後を絶たなかった。

そんな中、美香も不安ながら勢い良く席から立ち上がった。

 

美香「ねぇ!みんな今まで何 見てきたの?こんな事で先生が へこたれると思う?」

 

昂「でも・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

ここまで大事になってしまっては、大丈夫と信じたくても不安は拭えない。

 

 

*会議室*

 

会議室へと場所を移した理事会には羽黒も同席していたのだが、ネロの姿は無かった。

理事会での話し合いも、ネロを解雇する方向で話が進んでしまっていた。

 

理事長「待ってください。ネロ先生は、この学苑に必要です」

 

理事「何度も言ったでしょ。この学苑のために、辞めていただくと!」

 

理事「彼を庇うなら あなたにも辞めていただく事になりますが?」

 

教頭「理事長」

 

理事長「構いません」

 

教頭は それだけは止めようと理事長を説得しようとするが、飽くまでも理事長は敵対する態度を取る。

 

理事長「彼を残していただけるなら、私は この学苑を━━」

 

そのタイミングで、ネロが会議室に乗り込んできた。

 

ネロ「それはダメだ」

 

教頭「ネロ!」

 

ネロ「理事長には この学苑を護る義務があるんだから。それに俺、そろそろ潮時かなって思ってたとこだから」

 

羽黒「ネロ先生!?」

 

そしてネロは、理事長に歩み寄る。

 

ネロ「こんな俺を、学苑に置いてくれて、感謝してる。スッゲー楽しかった」

 

理事長は席を立ち、ネロに向き合う。

 

理事長「ネロ先生・・・」

 

ネロ「2年4組の あいつらに出会えて、俺が味わえなかった経験ができたよ。今あいつらは必死に変わろうとしてる。まぁ、良くも悪くも世話が焼けるけど。でも、最高の奴らなんだ」

 

それは ちゃんと理解してると、理事長は笑顔で何度も頷く。

 

ネロ「俺は あいつらのためなら何だってできる!」

 

理事長「・・・・・・よく、知っています」

 

ネロ「だから・・・あとは頼む!」

 

そしてネロは、長机に叩き付けるように白い何かを置いた。見ると それは辞表だったのだが、漢字を間違えて“事表”と書かれていた。

 

ネロ「理事長は辞めちゃダメだ。この学苑に必要だ。ジャーマン決めてくれ。あいつらが道を踏み外しそうなら正してやってくれ」

 

理事長「・・・・・・分かりました」

 

ネロの意思で辞める事を決めてしまったため、理事長も無理強いする事はできず受け入れるしかなかった。

 

ネロ「・・・・・・ありがとうございました!」

 

ネロは頭を下げてから上げると、無理矢理 作った笑顔を浮かべながら、会議室から出ていった。

学苑から去るためネロが階段を下りてると、追ってきた羽黒に呼び止められた。

 

ネロ「羽黒。あとは頼むぜ」

 

羽黒「・・・・・・駄目です・・・ネロさんが居ないと・・・」

 

ネロ「だーいじょうぶだよ。何てったって2年4組の副担任なんだから。何も心配ないよ」

 

羽黒「ネロさん!」

 

立ち去ろうとするネロを再度 呼び止める羽黒だったが、彼は振り返らず去ってしまった。

 

 

・・・・・・

 

*9:50*

 

羽黒「ネロ先生が・・・本日を以て、この学苑を退職されました」

 

羽黒の授業の時間に、ネロが退職した事は2年4組の生徒達にも告げられる事になった。

しかし、生徒達には その事実を受け入れる事ができなかった。これまでも滅茶苦茶な方法で問題を跳ね返し、今回も そうだと思っていたから。そして、今後も自分達の担任で居てくれると思っていたから・・・。

 

輝男「何で・・・何でだよネロ!」

 

晶人「何か一言くらいあってもいいだろ・・・!」

 

明子「嫌だぁぁぁ・・・!」

 

生徒達は戸惑い、怒り、悲しむ中、善之だけ鼻で笑った。

 

善之「見捨てられたんだよ、お前ら」

 

輝男「はぁ?」

 

善之「そんなもんだよ教師なんて。保身で自分可愛さに平気で逃げる。ネロも そうなんだよ」

 

誠也(せいや)「ネロは そんな奴じゃねぇ!!!」

 

『・・・・・・・・・』

 

誠也「あいつは他の奴とは ちげぇんだよ!」

 

 

*校門*

 

校門では、キャバリエーレに跨がるネロが振り返り、校舎を見ていた。

 

ネロ「元気でな・・・お前ら・・・」

 

キャバリエーレのエンジンを始動し、ネロは颯爽と走り去った。

 

 

*2年4組*

 

輝男「ネロ(あいつ)は きっと、俺達のために・・・」

 

生徒達はネロの事を最後まで信じるが、それを善之は馬鹿にするように笑い飛ばした。

 

善之「ほんとに目出度い頭だな」

 

輝男「・・・テメェ!!」

 

羽黒「やめなさい!!」

 

輝男が善之を殴り、男子生徒達が咄嗟に輝男を取り押さえ、羽黒も そこに加わり教室が騒然とする。

切ったのか口の端から血を流す善之であったが、彼は不敵な笑みを浮かべていた。

 

善之「もうすぐ この学苑は変わる」

 

魔の気配も探れていないまま、生徒達を置いていき、ネロは どうして学苑を去ってしまったのだろうか?

 

 

・・・・・・

 

*??? 20:38*

 

?『楓・・・!

 

?『もっと・・・もっと怒りと憎しみで壊れちゃえ!もうすぐボクが産まれる・・・ママ、早く産んでよ。キャハハハハハ!

 

夜、明陽学苑の地下にある誰にも見付かってない遺跡の最奥では、苦しみ悲しむ少女の声と、楽しそうにする幼い子供の声が響いていた。

そして遺跡から邪悪なオーラが溢れ、それは地上まで飛び出し飛んでいくと、1人の少年の中に取り憑くのだった。




学苑からネロが去り、この先どうなるのか気にはなるところではありますが、真面目な話が続いたので、次回は1話完結の軽めの お話を挟みたいと思います

次回も宜しく お願い致します!
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