Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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493話です!どうぞ!


Mission493 元呉コンビ(後編)〜“ごめんね”しよ!〜

3隻までの編成による合同演習に向けて、有志で集まった龍驤と五十鈴、川内が訓練に励んでいた。

しかし、五十鈴と川内が一緒にチームを組むのは、前途多難だった。

 

 

*鎮守府近海海域 11月3日 10:14*

 

訓練相手となる別艦隊を見付け、戦闘になった龍驤達だったが、彼女達は一旦、海面に突出した岩場に身を隠し、様子を見ていた。

 

龍驤「めっちゃ撃ってきたそうにしてるわ」

 

川内「1回マジで大人しくしましょ」

 

龍驤「は?待って、多聞丸の機体 飛んでる。二航戦、飛龍おる!」

 

川内「飛龍さんコラァ!被弾0コースで」

 

敵艦隊の隙を窺うように そのまま岩場に身を隠してると、川内が ふざけて五十鈴を後ろから殴った。

 

五十鈴「龍驤さん、龍驤さぁん!」

 

川内「龍驤さぁん!」

 

龍驤「何や何や何や?」

 

川内「ねぇ殴られた、殴られたー!」

 

などと ふざけていたせいで、龍驤と五十鈴が別艦隊の攻撃に晒され、どんどん被弾して3人は阿鼻叫喚となる。

 

「「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!」」

 

五十鈴「おーい!!!ねぇ龍驤さぁん、川内が ふざけて━━」

 

龍驤「撃たれる撃たれる ここヤバい!」

 

川内「ヤバい ここ」

 

更に爆撃まで来て、龍驤が大破した。

 

龍驤「おい」

 

五十鈴「飛龍さんだー。龍驤さんが大破した」

 

更に追撃で砲弾も飛んできて、五十鈴まで大破となってしまった。

川内は上手く2人を犠牲にした事で、無傷だった。

しかも川内は、インチキで隠し持っていたバイタルスターで2人の損傷を修復しようとしたのだが、立て続けに来る砲撃に中断させられてしまう。

それによって川内も損傷を受け、先ずは自分の損傷から直そうとしたのだが、1発の砲弾が直撃した。

 

川内「ふぁああああああっ!!!」

 

大破してしまった龍驤と五十鈴では、ほぼ何もできないため、川内1人で応戦し、龍驤と五十鈴は野次を飛ばしていた。

 

五十鈴「それ長門さんだ!殺れ殺れ!」

 

川内「コラァアアア!!!」

 

龍驤「逃げんなー!」

 

川内「戦えー!!!」

 

こんな時だが、いや こんな時だからこそ、龍驤には1つ、許せない事があった。

 

龍驤「え、お前ら何してん?」

 

敵艦隊の対処をしなければならないため、ふざけてた事は忘れられてると思っていた川内だったが、龍驤が忘れてなかったので思わず笑ってしまう。

 

龍驤「おい、おい、お前ら何してん?おい。延期になって これ歯茎 出てんちゃうんかって、おい。お前ら何してん?」

 

龍驤が割りと本気で怒っているのに、笑うのを やめられない川内は必死に笑いを堪える。

 

龍驤「延期になったからって ちょっと歯茎 出てんちゃうん、お前ら、え?何してん?おい。めちゃめちゃ撃たれてウチが何か大破したんやけど どうなっとん これ?え、なぁ?ウチ周り見てただけやのに何でウチが大破になるん、おい?」

 

五十鈴「龍驤さん怒った、めっちゃ。キレた」

 

龍驤「おかしいよな?どう考えても。これ、ウチ大破するの、なぁ?」

 

川内「あっはっはっはっ・・・!」

 

龍驤「絶対 大破するの お前ら2人の どっちかやな?ウチ大破するの おかしいよな、1番(いっちゃん) 最初にな?」

 

五十鈴「待って、これ私が怒られてるの?」

 

龍驤「お前ら2人やな」

 

五十鈴「龍驤さぁん?最初に、川内がやってきた、私じゃない」

 

龍驤「こんな敵に狙われてる状態で、ウチら、撃たれてたん見えてたよな、2人共な、な、な?結構 強めに“見に来てる”ってウチ言ってたよな、な、な?は?聞いてたよな、見えてたよな、撃たれてたよな?」

 

龍驤の話を聞きつつも、別艦隊は待ってくれず接近してくるため、川内は そちらの対処に砲撃を再開する。

 

川内「戦え戦え!」

 

龍驤「あいつら逃げてばっかりやなー」

 

川内「おいマジ挑むなら来いよって話!!なぁ?!おーい、挑むなら来いよ!長門さん!!格の違いを見せてやるよ艦娘としての!!おい何がビッグセブンだ あんた!!辱めてやる来いよ!辱めてやるよ あんた!おぉい味方 呼ばねぇと勝てねぇか長門さん?!何がビッグセブン━━イッテ・・・」

 

勇ましく挑発しながら砲撃していたが、反撃の砲撃を喰らい、一気に川内の勢いが失速した。

 

川内「おい、味方の射線 消せ。味方の射線 消せ!」

 

龍驤「1V1しろ」

 

川内「やーめーろ、1V1しろ!おい、当てれねぇか主砲。えっ・・・?やーめーろ、味方の射線 消せ」

 

龍驤「1V1しろ」

 

川内「1V1しろ やーめーろ、消せ、味方の射線は。おい、来いよ来いよ」

 

龍驤「え、てか今ウチ回復できん?」

 

龍驤の指摘に、川内はバイタルスターを使って彼女の損傷を修復したのだが、同時に同じく大破していた五十鈴が、轟沈判定を喰らってしまった。

 

五十鈴「あ・・・あ!あ!え!えっ!?えー、龍驤さんだけー!?えっ!?」

 

龍驤「あざっす」

 

轟沈判定を受ければ離脱しなければならないため、五十鈴は陸へと戻っていく。

あのまま修復していなければ龍驤も轟沈判定を喰らっていただろうが、自分だけは生き延びた事で機嫌が直っていた。

しかし・・・

 

龍驤「やーめーろ!!」

 

すぐに集中砲火を喰らって龍驤は秒で大破に逆戻りし、更に轟沈判定まで喰らい、コントみたいなオチに川内は笑わずにはいられなかった。

 

龍驤「やーめーろ、バカ野郎!無線 繋ぐわ・・・長門に」

 

自分が大破になる事に納得できない龍驤は、クレームを入れるために長門に無線を繋いだ。

 

龍驤「あっ、もしもしー、やめろっ。やーめーろ」

 

川内「加賀さんの艦載機に、めっちゃダメージ貰ってたこと言ってください」

 

龍驤「おい、加賀に お前、負けてたな、おい」

 

川内「“最大火力の兵装 使って”って」

 

龍驤「最大火力の兵装 使って!」

 

川内「“めっちゃ受けてたな、ダメージ”って言ってやってください」

 

龍驤「おい!やめろ、煽らないで」

 

川内「あはははははっ!」

 

龍驤「やーめーて」

 

川内「あははははははははっ!」

 

龍驤「嫌や」

 

川内「色々 言われてるっぽい」

 

急に流れが変わったようで、龍驤の声に覇気がなくなり、色々と察した川内は他人事のように笑っていた。

そして話したくなくなったのか、龍驤は長門との無線を切った。

 

龍驤「“2回も大破しやがって、ウォイ ウォイ”って言われた」

 

とりあえず轟沈判定であるため、龍驤は陸に戻り川内1人となってしまう。

 

川内「えっ!?これ!ムムムムムッ!見えた、隙の糸ー!!!」

 

そんな中、長門と飛龍が居るチームが、後から来た別艦隊からの攻撃を受け、それによって生じた隙を見逃さず、川内は長門を狙って突撃する。

しかし、川内が攻撃を仕掛ける前に長門が轟沈判定を喰らい、川内だけでなく、陸から見ていた龍驤も爆笑していた。

 

龍驤『長門 死んだ!』

 

川内「長門さん死んだぁ!!」

 

だが笑ってもいられなかった。長門が轟沈判定を受けた事により戦況が変わり、川内が後から来た方の別艦隊の攻撃に晒される事となったのだ。

 

川内「私が糸になりそう・・・!ん、マッズい・・・」

 

無線越しに、川内の最後の言葉を聞いた龍驤と五十鈴は爆笑した。

 

川内「おい死ぬなよ長門さーん!!長門さーん!!!死ぬなってー!」

 

龍驤『もう だーれも幸せじゃな〜い!』

 

 

・・・・・・

 

Devil May Cry鎮守府 食堂 12:12

 

3人共 轟沈判定を喰らい、彼女達は食堂で昼食を摂りながら、午後からの訓練に向けて反省会を開いていた。

 

川内「いや でも、意外と射線 開いてたのよ あそこ。まぁ ふざけてたのも悪いけど多分、ふざけてなくても ああはなってたよね」

 

龍驤「遅かれ早かれ多分 死んでる」

 

川内「うん、でも ふざけてたのも悪かったけどね」

 

五十鈴「ごめんなさい・・・」

 

龍驤「んふふふふふ。拗ねた小学生みたいな言い方やめろって」

 

川内「あはははははっ!いやぁアレは私が ふざけたわ」

 

五十鈴「うん」

 

龍驤「何か、小学生が喧嘩した時の、仲直りの仕方や」

 

川内「“ごめんね”」

 

龍驤「“ごめんね”のやつ」

 

川内「“ごめんね”!」

 

五十鈴「一緒に“ごめんね”しよ!」

 

川内「じゃあ一緒に“ごめんね”しよ、いいよ、せーの!」

 

五十鈴「ご・・・」

 

川内「・・・・・・・・・」

 

龍驤「謝らんやん、また殴っちゃってるやん」

 

川内「五十鈴キモ」

 

五十鈴「川内キモ・・・」

 

川内のは冗談と分かる言い方だったのだが、五十鈴からは本気のトーンの“キモ”が発せられたため、あまりにも本気すぎて龍驤と川内は思わず笑ってしまった。

 

川内「ちょ、龍驤さん言って、龍驤さん掛け声 言ってくださいよ、ラグあるから。一緒に“ごめんね”しよ、五十鈴?一緒に“ごめんね”しよ」

 

五十鈴「え・・・待って」

 

龍驤「遅かれ早かれ、射線が多かったから死んでたにしろ、まぁ、ふざけてたよな?」

 

川内「罪もあるから、一緒に“ごめんね”しよ」

 

龍驤「せーの」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

思った通りの展開になり、川内は爆笑したのだが、この展開に今度は龍驤が怒り始めた。

 

龍驤「え、お前ら悪いと思ってないよな?ここで“ごめんなさい”が言えないって事はさ、お前ら どっちも悪いと思ってないやろ、な?普通ここ“ごめんなさい”どっちか言うべきよな?1人は、1人は せめて言うべきや。どう考えてもさ、どっちかが始めんと これ行われてない訳やからさ。絶対どっちか先に“ごめんなさい”は言うべきじゃない?え、そうじゃない?え、ウチそう思うんやけど、どう?」

 

川内「いや私も そう思うっすよ・・・」

 

五十鈴「ふっ・・・」

 

川内「いや でも、五十鈴が そんな感じじゃない・・・」

 

 

・・・・・・

 

*艦娘寮 龍驤の私室 14:30*

 

龍驤達は反省会もマトモに進まないまま、午後からの訓練が始まってしまい、終わった後に今度は、艤装を装着したまま艦娘寮にある龍驤の部屋で、再び反省会を行っていた。

因みに、訓練の方はボコボコにされ、また轟沈判定を喰らっていた。

 

川内「何で こんな私らと違う?どこが違う、これ?」

 

龍驤「先ずチームの雰囲気」

 

川内「仲いいんですかね、向こう?」

 

龍驤「柔らかい雰囲気でやってると思う多分」

 

川内「和気あいあいと?」

 

龍驤「うん」

 

川内「どこで間違えた、これ?」

 

龍驤「いや でも4日目やから・・・仕上がってるはずなんよね、一応、明日 本番想定で、今日までやってきてたやん、ウチら。仲はいい、はずなんよね・・・」

 

川内「ふふっ・・・」

 

龍驤「普通やったら。普通やったら。普通やったらな」

 

川内「そうですよね・・・」

 

龍驤「うん!」

 

五十鈴「ふふっ・・・」

 

龍驤「んふ、ところで ところで、訓練 終わったから、一応 訊くんやけどさ、お前ら1回でも“ごめんなさい”言ったか?」

 

川内「うっ・・・」

 

龍驤「・・・・・・おーい?」

 

川内「んっ・・・へっ・・・」

 

龍驤「おいおーい?」

 

五十鈴「んふっ・・・」

 

川内「あはっ・・・」

 

龍驤の怒りの矛先が再び向き、五十鈴と川内は俯きながら笑いそうになるのを必死に堪える。

 

龍驤「聞いてまっか?」

 

川内「んふふふふふっ・・・」

 

龍驤「聞いてま・・・」

 

川内「ぷぷっ・・・」

 

龍驤「っか?」

 

川内「でも だって・・・ぶっ・・・!」

 

龍驤「でも だって?!“ご・め・ん・な・さ・い”、“で・も・だ・っ・て”!文字数しか一緒じゃなぁい」

 

「「?????」」

 

龍驤「文字数も違ぁう」

 

川内「あはははははっ!」

 

龍驤「1文字 多い、ごめんなさい、(ウチが)“ごめんなさい”なっちゃう。ウチもう おかしくなっちゃう」

 

「「ふっ・・・!」」

 

龍驤「こぉんなの。・・・トイレ行ってくる!ウチ!」

 

五十鈴「いってらっしゃい・・・」

 

龍驤「毒素 抜いてくる!」

 

龍驤はトイレに行くため部屋から出たのだが、残された五十鈴と川内としては、龍驤が怒ったのは相手に非があると思っており、案の定、言い合いが始まってしまう。

 

五十鈴「川内マジふざけんなよ」

 

川内「五十鈴がマジふざけんなって」

 

五十鈴「ふざけんなよ お前マジで」

 

川内「先生 怒ってるじゃーん五十鈴!」

 

五十鈴「ねぇー!どうする?」

 

川内「たっはっはっはっはっ!“ごめんね”、“ごめんね”しろって五十鈴!五十鈴」

 

五十鈴「“ごめんね”言え」

 

川内「いや お前が言ってない」

 

五十鈴「私いっつも最初に言ってる」

 

川内「いや私、私 言ってたよ、“ごめんね”って。“せーの”のやつ」

 

五十鈴「言ってないじゃん」

 

川内「耳の問題じゃない?私ほんとに言ってた」

 

龍驤「ウチさ、別にトイレ我慢できるんよね」

 

こんな風に言い合いをしてると、いきなり龍驤の声がして そちらを見ると、龍驤が扉の隙間から顔だけ出して見ていた。

ずっと聞かれてたと察した川内は、笑い声を我慢しながら龍驤から顔を背けた。

 

龍驤「6時間とか、7時間とか。今ドアの前ずっと立って聞いてたんやけど」

 

五十鈴「ドアの前で見られてる・・・」

 

龍驤「ドアちょっと、スッと開けて、君達のこと見てたんやけど」

 

川内「キモ・・・」ボソッ・・・

 

龍驤「まだ、バレてないみたいやね」

 

五十鈴「ごめんなさい!」

 

龍驤「おっ!」

 

五十鈴「ごめんなさい・・・」

 

川内「ごめんなさい!」

 

龍驤「おぉおお。仲良く」

 

川内「うん!」

 

龍驤「仲良くいこうね」

 

川内「うん」

 

五十鈴「うん。はい!」

 

龍驤「そうよね?」

 

川内「トイレ行ってきて・・・」

 

五十鈴「仲良くするます・・・」

 

龍驤「トイレ行ってきていい、ウチ?」

 

川内「仲良くします」

 

龍驤「もう仲良くできる?」

 

川内「ごめんなさい、はい!」

 

五十鈴「できます」

 

五十鈴と川内からの返答に、機嫌を良くした龍驤の顔がニコッと笑顔を見せる。

 

龍驤「最初から それ言えたら!」

 

川内「はい」

 

龍驤「じゃあ行ってくるから」

 

川内「はい」

 

五十鈴「いってらっしゃい、ごめんなさい」

 

川内「いってらっしゃい」

 

笑顔の龍驤は五十鈴と川内から目を離さないまま、扉の向こうへと顔を引っ込め、静かに扉を閉めた。

その瞬間・・・。

 

川内「おい五十鈴お前が ふざけるから!」

 

五十鈴「お前よぉ、お前がさぁ!」

 

川内「お前マジふざけんなよ五十鈴!」

 

五十鈴「ごめん・・・何で私が謝んなきゃいけないの・・・?」

 

川内「おい いす・・・最悪・・・五十鈴、五十鈴が悪い これ」

 

五十鈴「はぁ?川内が最初パンチしてきたから、私が わぁーってなってさぁ」

 

川内「あぁ?!いや、だって あの、はぁ?」

 

喧嘩コントを続けようにも、そろそろ言葉のレパートリーもなくなってきて、一気に語彙力が低下して大した事が言えなくなってきた。

 

川内「はぁー?」

 

五十鈴「川内が悪いじゃん、あの時は」

 

川内「いや、は?私、は?」

 

五十鈴「しかも私の損傷 修復してくれなかったしさ・・・」

 

川内「・・・・・・あれは無理・・・あれはコント除いて無理だった・・・」

 

五十鈴の指摘に、おふざけやコントを除いても本気で無理だったため、川内は苦笑いを浮かべた。

 

五十鈴「いや まぁ、それはいい」

 

川内「コントとかじゃねぇからマジ!」

 

五十鈴「は?何で“コント”って言うの?」

 

川内「マジ ダリィわ五十鈴・・・」

 

五十鈴「ほんとに、マジで・・・」

 

川内「謝れよ、もっと早く」

 

五十鈴「オメェが謝れよ!」

 

川内「五十鈴からでしょ、これ」

 

五十鈴「バーカ」

 

川内「あっ!お前この野郎!たっはっはっはっはっ!」

 

五十鈴「ふっ・・・」

 

川内「お前この野郎。何つった今?」

 

五十鈴「は?“バカ”って言った。ウマシカ」

 

川内「はい、ヤバ。ヤバ過ぎ。馬、鳥・・・鳥、犬・・・」

 

五十鈴「・・・・・・は?なに言ってんの?」

 

川内「ぷっ・・・」

 

“馬鹿”のように、動物を表す漢字が並んだ単語を探した川内だったが、何も思い付かず失敗に終わった。

 

五十鈴「ねぇ、龍驤さん帰ってくるから仲良くしよ」

 

川内「ちょ、あのブス帰ってくるから行こうよ━━あ、ヤベッ・・・」

 

扉の向こうから物音がし、龍驤が帰ってきた気配を感じて川内は焦った。

すると艤装の妖精さんが、無線が繋ぎっぱなしと教えてくれた。教えてくれたのはいいのだが、無線から龍驤の声がしてくる。

 

龍驤『無線の確認できるかな?聞いてたでー』

 

五十鈴「おっ・・・」

 

龍驤『無線ずーっとポチポチ押して聞いてたでー。ブス・・・?』

 

五十鈴「あっ・・・あっ」

 

調子に乗って“ブス”と言ったのは川内であるため、龍驤の標的が川内になると容易に想像できた五十鈴は、川内が怒られる未来を想像し、楽しそうに意地悪な笑みを浮かべていた。

 

龍驤『川内ちゃんっ♪』

 

五十鈴「ははっ・・・うっほっほっ・・・♪」

 

川内「はい・・・」

 

龍驤『せ・ん・だ・い・ちゃんっ♪』

 

川内「はい・・・」

 

龍驤『何て言った?』

 

川内「何がですか・・・?」

 

龍驤『ずーっと無線ポチポチしてた時に・・・“ブス”って♪“ブス帰ってくるから”って♪ブス帰ってきましたぁ☆』

 

龍驤のネットリした喋り方に、五十鈴と川内は必死に笑いを堪えるが、腹筋が頑張り過ぎて腹が痛い。

 

川内「えぇ・・・?違う違う、違いますよ。あのブラッディパレスが あのー、財団の訓練施設に帰ってくる、頃かなーっていう」

 

龍驤『あ〜、なんや♪』

 

オリーブ財団の訓練施設に、“ブラッディパレス・プログラム”というのがあったのだが、前に天龍が やらかしたのを理由に、プログラムを消去して使えなくされていた。

 

川内「艦隊演習 延長した、本番にはブラッディパレスが━━」

 

龍驤『あ〜、はいはい♪』

 

川内「私ブラッディパレスの事“ブス”って略して呼ぶから、それが帰ってくるかなっていう話」

 

龍驤『あ〜♪省略が大事やんね、報告の』

 

川内が「そうです そうです」

 

龍驤『ごめんね、勘違いしちゃった』

 

川内「勘違いすんなブスが」ボソッ・・・

 

龍驤『殺すぞ』

 

龍驤の素早い切り返しに川内は大笑いし、それに釣られて龍驤と五十鈴も一緒になって笑った。

ここまで言い合ったのも、全て冗談と分かり合えているからこそ、最後には笑って済ませられる。

 

 

・・・・・・

 

*鎮守府近海海域 15:31*

 

本日 最後の訓練を行うため、龍驤達は再び沖へと向かっていた。

 

川内「ちょ、仲良くやりたい。不毛だと思う」

 

五十鈴「思春期!」

 

川内「五十鈴が そうなんだろうね、多分」

 

五十鈴「何か川内がさぁ・・・」

 

また同じ事が繰り返されるのかと思った瞬間、龍驤が大きな咳払いをした。

 

五十鈴「ごめんなさい・・・」

 

五十鈴が秒で謝り、龍驤と川内は思わず笑ってしまった。

 

川内「ガチ権力持ちじゃん。咳払いで人 黙らすのはガチ権力だよ それ。えっぐ!」

 

龍驤「よく分かってるやん」

 

五十鈴「うん・・・」

 

龍驤「良かった良かった、分かってくれて」

 

川内「普段“家族”とか言ってるのに、上下関係な感じ違うと思うけどな・・・五十鈴 怖い?」

 

五十鈴「怖くないよ」

 

川内「あ、怖くないか・・・」

 

龍驤「そうだよね?」

 

五十鈴「うん・・・」

 

川内「ああ ほら震えてる!大丈夫 五十鈴?」

 

五十鈴「大丈夫・・・」

 

川内「ほら可哀想!」

 

龍驤「体調 悪いんかな?」

 

川内「龍驤さんヤバ マジで!五十鈴 大丈夫?」

 

五十鈴「っ、頑張る、次・・・」

 

川内「何かあったら言いなよ私に」

 

五十鈴「分かった・・・」

 

龍驤「んふっ・・・!」

 

さっきまで喧嘩してたくせに、急に川内が五十鈴に歩み寄って徒党を組むので、急な方向転換の流れに龍驤は おかしいなと思いながらも笑ってしまう。

 

川内「何かあったら私が守ってあげるから。龍驤さんマジあんま近付くなよ」

 

龍驤「ウチ嬉しいわ、2人が そうやって手 取り合ってるの。何か良かったなって、これまで言ってきて」

 

川内「1人の悪役が居ると、集まれるからね、やっぱ人って。最近 見た漫画でも そうだった」

 

漫画の話かよと思い、龍驤は首を傾げながらも笑っていた。

 

川内「怖かったら言いなよ五十鈴」

 

龍驤「頑張ろうな♪」

 

五十鈴「が・・・」

 

龍驤「五十鈴、“頑張るぞー”って、言ってみ」

 

五十鈴「っ・・・」

 

龍驤「“頑張るぞー”」

 

五十鈴「頑張るぞー・・・」

 

弱々しくも強制的に言わせられてる五十鈴を見て、川内は思わず笑ってしまった。

 

川内「五十鈴、見るな向こうは」

 

龍驤「頑張るぞー♪」

 

川内「見るな五十鈴・・・目付きが確実にイカれてる奴の目だ」

 

そして最後となる訓練が始まり、気持ちを新たにして五十鈴なりに意気込む。

 

五十鈴「早く索敵しようね」

 

川内「うん、早く索敵しよう」

 

龍驤「あ"ー、じゃあウチ直掩機かぁ、一緒に偵察できなくて残念やなぁ」

 

龍驤の何か含みのあるネットリとした言い方に、五十鈴と川内は身の毛が弥立つ感覚を感じながら笑っていた。

 

五十鈴「こわ」

 

川内「キモ怖い。キモ怖いってー。大丈夫 五十鈴?」

 

五十鈴「はい・・・。偵察機 持ってるんだっけ?」

 

川内「偵察機ある。ありがとう」

 

五十鈴「どういたしまして」

 

すると今度は、少し様子の おかしい五十鈴に龍驤と川内が笑った。

 

川内「ぎこちない。うちの鎮守府に来た時より ぎこちない。劣化してる」

 

龍驤「“初めまして”より距離ある」

 

川内「劣化してるよ関係。クッソぎこちねぇの」

 

龍驤「早めに爆撃機 出しとこうかな?」

 

五十鈴「いいじゃん!いいじゃないですか!ナイスです!」

 

川内「無理してる1人?1人 明らかに、何かに怯えながら訓練してる奴 居ない?可哀想に・・・」

 

五十鈴「あー・・・あ〜・・・!」

 

川内「怯えてる やっぱりぃ!」

 

龍驤「“あー”しか言えんくなった」

 

川内「龍驤さんの影に怯えてる。露骨に怯えてるよ五十鈴がー!可哀想だよー!やめてよ龍驤さん、怖がらせるの人を」

 

五十鈴「りゅ、龍驤様これ・・・」

 

川内「“様”ぁー!?」

 

龍驤「あっはははははははっ!」

 

川内「確実に そういう対象になった」

 

龍驤「ありがとうございます」

 

川内「龍驤さんヤバいよ・・・女の子 怖がらせて“様”呼び」

 

龍驤「ウチ結構、センスあるんかな そういう・・・?」

 

五十鈴「龍驤様ー、偵察機 出させていただくんで、周辺警戒していただいていいですか?」

 

龍驤「あ、オッケ オッケ」

 

川内「五十鈴 可哀想、おいで五十鈴。五十鈴これ あげる。元気 出して これ」

 

そう言って川内は、自分の魚雷を五十鈴に分けてあげるのだが・・・

 

五十鈴「あ、ごめん・・・川内さん、あります」

 

川内「あっ・・・」

 

五十鈴「あ・・・」

 

五十鈴が拒否した事で、2人の空気は一気に気まずいものとなる。

 

五十鈴「ありがとう、優しい気持ち・・・」

 

川内「全然・・・あっ・・・」

 

五十鈴「あ・・・つ・・・あ・・・」

 

川内「全然、いい・・・」

 

五十鈴「初めまして・・・」

 

川内「初めまして・・・」

 

龍驤「“初めまして”、記憶なくなった!」

 

川内「結構 艦娘歴 長いんですか?」

 

気まずさから五十鈴と川内の記憶が飛んでしまったようで、まさかの結果に龍驤は笑いつつも反省していた。

 

龍驤「ヤバい。ウチちょっと やり過ぎたかな・・・?」

 

五十鈴「軽巡1本です」

 

川内「軽巡1本、結構やられてる感じ・・・」

 

龍驤「記憶なくなっちゃった・・・」

 

すると いきなり、川内が また五十鈴を殴り出した。

 

五十鈴「あっ・・・ちょ、また・・・」

 

そのまま無言で殴り続けていると・・・

 

五十鈴「おいテメェふざけんじゃねぇ お前やるか?」

 

元の五十鈴に戻って龍驤と川内は爆笑した。

 

龍驤「行こか!」

 

五十鈴「はーい!行きましょ行きましょ」

 

すると また どこからか弾薬が流れてきて、五十鈴が龍驤と川内に教えるのだが・・・

 

川内「私は明らかに要らないな」

 

龍驤「ウチも大丈夫」

 

五十鈴「はい・・・」

 

2人に拒否されて五十鈴の元気が またなくなった。

 

川内「かわいそー五十鈴ー!五十鈴?」

 

五十鈴「はい・・・」

 

川内「おいで、五十鈴」

 

龍驤「ウチかな、これ・・・?」

 

川内「これあげるから、これ」

 

五十鈴「わぁー!」

 

川内は また隠し持っていたバイタルスターを分けてあげると、五十鈴に元気が戻るのだが、この状況に龍驤1人だけ不満そうだった。

 

龍驤「むっちゃ仲良くなってるやん・・・」

 

五十鈴「ありがとー」

 

川内「いいよ いいよ」

 

龍驤「あいつら むっちゃ仲良くなってるって・・・」

 

五十鈴「貰ったー!緑の星 貰ったよー!」

 

龍驤「あいつら むっちゃ仲良くなってるって・・・」

 

五十鈴「優しい!」

 

川内「圧 掛けんなよ!龍驤さん」

 

龍驤「むっちゃ何か手 取り合ってるって・・・」

 

川内「圧 掛けんな お前、さっきから」

 

龍驤「むっちゃ喧嘩してたのに・・・」

 

五十鈴「優しー!」

 

龍驤「“優しい”とか言い出した・・・」

 

川内「ボソボソ言いやがって お前!」

 

龍驤「おい、“優しい”言い出した・・・」

 

などと無駄話をしていると、訓練相手となる別艦隊を発見し、龍驤達は戦闘態勢に入る。

ただ龍驤は、五十鈴と川内から受けた仕打ちの鬱憤を、その艦隊に八つ当たりしてやろうと考えていた。

 

龍驤「別艦隊(あいつら)に恨み ぶつけてやろ・・・」

 

川内「オッケ。殺しに行こうアレ、あはははははははっ!殺す殺す?処す?」

 

龍驤「何か でも、あの艦隊の動き ちょっと何か・・・」

 

川内「ダメだ。ダメだ撤退」

 

真っ先に潰そうと見付けたのは艦隊ではなく、何故か この訓練に飛び入り参加していたダンテとネロ、バージルの魔剣士一家だった。

 

龍驤「あっつい!!!」

 

五十鈴「龍驤さぁあああん!!!」

 

ダンテの撃ったカリーナ=アンⅡのミサイルに、龍驤が最初に被弾し、その後3人共ボコボコにされて また負けるのだった。

3隻だけとはいえ、先ず編成が悪い。有志で募ったが、もう ちょっと どうにかならなかったのだろうか?




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