496話です!どうぞ!
*ロサンゼルス・オリーブ財団 ブリーフィングルー厶 アメリカ時間11月14日 11:00*
五十鈴と川内、
ステフの説明で解析によって判明したデータの中身は、数々の著名人や政治家、企業の代表、警察や軍で重要なポストに就く者の、裏でやってる不正や犯罪の証拠だった。
ただ この事実に、ステフは頭を押さえた。
ステフ「Mr.Jが、様々な場所に手を回せる理由が これで判ったわ・・・」
これらの証拠があれば、関わりのある者を脅し、自分に都合がいい手駒として操る事ができる。
このデータに関係する当事者達からすれば、何があっても表沙汰にはしたくない話であり、ひた隠しにしたいはず。それを使って脅されているとすれば、どうあっても従わざるを得ないだろう。
刹那「従わなければ、不正や犯罪の証拠が公開され、地位や名声が地に落ちる。失う物が大きい奴ほど、大人しく従っただろうね」
川内「それはいいんだけどさ、本来の目的だったオリジナルの映像データってのはあったの?」
ステフ「あったわよ。見てみる?」
ステフからの問いに、五十鈴達は全員 頷いた。
ステフ「あまり気分のいい物じゃないわ」
そう言って、ステフがタブレットを操作し、ブリーフィングルームの巨大モニターに映像が流れ始めた。
そこには去年、シカゴの市長に就任した男と、1人の黒人女性が映っているのだが、2人は何やら揉めていた。
市長が女性を突き飛ばすと、女性は倒れ込む拍子に机の角で頭を打ち、映像からフェードアウトした。
市長は倒れた女性を見詰めてるのか、床の方を見ながら膝を突き、愕然とした様子で固まっていた。きっと女性の方は、頭を打った時に死んでしまったのだろう。
そして映像は そこで途切れた。
映像が終わってからも、生々しい殺人映像に、五十鈴達は黙ったままだった。
ステフ「映っていた女性の身元を調べたら、彼女はシカゴ市長の秘書をやってた《ローズ・ガルシア》。表向きの死因は交通事故となってる」
健「・・・じゃあ、市長は殺人を隠蔽してるってこと?」
刹那「なら次は市長の逮捕だね」
ステフ「いいえ、逮捕はしない」
川内「どうして?市長もMr.Jの手先なら、拘束すれば向こうを追い詰められるチャンスじゃん」
ステフ「絶対にダメよ」
Mr.Jはシカゴを拠点としている。こんな映像があるという事は市長も脅し、自身の後ろ盾にしてる事も考えられる。
もし今 市長を逮捕してしまえば、後ろ盾を失ったMr.Jが どんな暴挙に出るかも判らない。安易に市長を逮捕すれば、無用な混乱を引き起こす可能性があるのだ。
五十鈴「じゃあ どうするの?何もしないなら、何のために私と川内が痣だらけになって このデータ盗ってきたか分かんないんだけど」
ステフ「市長の逮捕は全てが終わってからよ。彼が関わってるなら、Mr.Jに関する更なる情報を持ってるはず。できるだけ それらの情報を集め、証拠とすれば、先にMr.Jを潰す事もできる」
川内「先に大物を釣り上げて、小物は後で乱獲しようってこと?」
ステフ「そういうこと。今の私達の優先順位は、Mr.Jを確実に捕まえる事よ」
健「で・・・次は何をやれって?」
ステフ「近々シカゴで、市長が開くチャリティーイベントがあるの。そこに侵入して、彼のパソコンからデータを抜き取って」
川内「またシカゴにトンボ返り・・・」
戻ったと思ったら また すぐにシカゴに行く事になり、五十鈴達はゲンナリした。
ステフ「給料 上げてあげるから」
「「「「はーい・・・」」」」
どうせ給料が上がらなくても行かされる事になると分かっているため、五十鈴達は大人しくシカゴに戻るための身支度に向かうのだった。
・・・・・・
*Devil May Cry鎮守府 工廠 日本時間11月15日 11:23*
ヨーロッパから戻ったダンテと神通は、魔女の里で見たビデオレターで、セリーナが言っていた“因果律”について問い質すため、アーロンに会いに工廠に来ていた。
そこで“因果律”について訊いたのだが・・・。
アーロン「(また知らなくてもいい事を・・・。)君達が知る必要はない」
答える気のないアーロンの態度に、ダンテは彼の胸ぐらを掴み押し込むと、壁に叩き付けた。
神通「提督!」
更にダンテはエボニーを抜き、銃口をアーロンの顎に突き付けた。
ダンテ「また隠し事か?口が もう1つ増えるのが嫌なら答えろ。それとも そっちの口で お喋りする方が好みか?」
アーロン「君は何も分かっていない・・・!」
ダンテ「何だと?」
神通「待ってください提督!それではアーロンさんも答えようが・・・!」
アーロン「知らなくてもいい情報を持ってると、それに惑わされ、判断が鈍る・・・!これから先、私達に間違った判断は許されない・・・!」
ダンテ「俺の経験じゃ、事前情報を話しといてもらえない お陰で、後々 面倒な事になって振り回されるのが毎度の事だ。どいつも こいつも隠し事ばかりでウンザリするぜ」
アーロン「知ったところで、意味はない・・・!君が どうこうできる話じゃないからな・・・!」
ダンテ「ほう、なら試してみるか?」
ダンテはエボニーの銃口を更に押し付ける。
それを神通が、ダンテの腕を掴んで必死に止める。
神通「提督!アーロンさんの事が嫌いなのは知ってますが、やめてください!」
アーロン「面と向かって言われると傷付くなぁ・・・!」
こんな状態ではあるが、神通は魔女の里に行き、そこでセリーナからのメッセージを聞いた事を話し、それが残されているDVDを見てくれと頼んだ。
神通「提督、今はアーロンさんに見てもらいましょう。手を離してください」
ダンテ「・・・・・・・・・」
アーロン「ほら、いま手を離さないと、神通君からの好感度が下がるぞ・・・!」
ダンテ「あ?」
神通「アーロンさんも余計な事は言わないでください!提督!」
アーロン「余計な事を言わないようにしたら こうなったんだがねぇ・・・!」
神通「手を離してください!」
少しし、ダンテは舌打ちすると手を離し、アーロンから離れた。
一先ず、これ以上 状況が悪化しなかった事で、神通はホッとした溜め息を吐いた。
“半魔、運命の魔石を・・・いや、赤城を元に戻す方法を これで伝えておく”
“━━方法としては以上になる。これができるのは、魔界医学に精通してる者だけだ。魔界医学に詳しい者を探すといいだろう”
“半魔、人は誰しも役目がある。妾は この世界の因果律における役目に縛られ、自分の意思で お前達の元に戻る事はできない。だから、このような形で最後の手助けをする事にした”
“どういう形であっても、妾が お前達の敵になったのは変わらない。次に相見える時は躊躇う事なく妾を殺せ。お前達の━━”
“お前達の望みを果たすには、そうするしかない!”
それから一通り、DVDに映るセリーナからのメッセージを聞いてもらい、映像が終わると、アーロンは考え込んでいるのか、神妙な顔をしていた。
アーロン「ふむ・・・」
ダンテ「お前の妹が ここまで喋ってるのに、それでも お前は黙ってるつもりか?」
アーロン「・・・・・・先ず赤城君の事だが、元に戻す事は確かに可能だ。そのつもりで方法は見付けてある」
神通「では、セリーナさんが言ってる“因果律”とは何ですか?コナーさんが言うには“様々な説があり、どういう意味で言ってるかまでは分からない”と」
アーロン「魔女ハンターか。彼も余計な事を言うタイプか」
ダンテ「そんなに話すのが難しい事か?お前は何を恐れてる?」
アーロン「・・・世界の崩壊」
「「・・・・・・・・・」」
アーロン「因果律には様々な説があるが、セリーナが言ってるのは “可能性”を意味する」
神通「可能性、ですか?」
アーロン「未来とは ある程度 決まってる。全ての存在は役目を与えられ、その辿るべき未来に向かうよう行動する。無意識の内にね。自分の意思決定だと思っていても、多くの者は それが、何かに定められた宿命だと気付かず」
神通「・・・・・・つまり、私達が悪魔や深海棲艦と戦ってるのも、辿るべき未来に行き着くために必要な事であると、そういう事ですか?」
アーロン「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。全ては可能性の中の過程でしかなく、私達には その答えを知る術はない。しかし その道筋から外れたら どうなると思う?間違った行動、間違った選択をし、辿るべき未来に行き着かなければ、世界の崩壊を招く危険もある。それも“可能性”だ」
神通「では、私達は どうすればいいんですか?」
アーロン「ありのままに、心が命じたままに動けばいい。君達らしく」
神通「・・・何だか、要領を得ない事を言われてる気がします・・・」
アーロン「理解は難しいだろう。因果律は概念だ。概念を言葉にしたからと、それが絶対の答えという訳でもない。これに関しては、あまり深く考えない方がいい。考えれば考えるほど、思考のループに陥り、愚かな選択をしてしまう恐れもある」
ダンテ「セリーナは因果律に縛られ敵となったと言っていた。セリーナは裏切った訳じゃないのか?」
アーロン「どちらとも言い難いね。自分の意思じゃないにせよ、あの映像を見るに、セリーナは全てを理解しながら、君達の敵になる事を受け入れてるように見える。それを裏切りと捉えるかは、君達次第だよ」
神通「私は━━」
アーロン「まぁ さっきも言ったが あまり深く考えるべきではないよ!」
神通は、セリーナが裏切ったとは思えないと答えようとしたが、アーロンは それを遮り、全ては“可能性”の話で、最後の最後まで答えは解らないものだと締め括り、ダンテと神通に忙しいから出ていけと捲し立てた。
結局アーロンに訊いても、答えらしい話は聞けなかったので、ダンテは不機嫌なままに、神通は渋々といった感じに工廠から出ていった。
ダンテと神通が離れた直後、アーロンの傍にフレキ&ゲリが現れた。
アーロン「喋り過ぎたかな?」
アーロンはフレキ&ゲリの頭を撫でながら訊ねるが、2体は撫でられるまま目を細めるだけだった。
アーロン「役目か・・・私の役目は、何だろうな・・・?」
その後アーロンは、フレキ&ゲリを撫で続けながら、物思いに耽るのだった。
・・・・・・
*シカゴ 街 アメリカ時間 11月16日 15:39*
シカゴへと戻った五十鈴、川内、健、刹那は、シカゴ市長が主催するチャリティーイベントの会場となる、ビルの外に居た。
刹那「辺りを偵察してみよう。ペントハウスを直接 見れるかも」
川内「確認してみよう」
*ビル*
一方ビルのペントハウス、会場では使われてない一室では、市長の元にMr.Jと鹿島が訪ねに来ていた。
市長「Mr.J。これは驚いた」
J「驚いた?驚くだろうな。酷い顔だぞ」
市長「酷いじゃないか。アンタとMs.鹿島は約束したのに━━」
鹿島「何も約束してませんわ」
J「約束は子供のやる事だぞ」
市長「やめだ。分かったか?もう やめたいんだ・・・!」
J「これ以上 泣き言には付き合えんな」
市長「ギャングの抗争、それに・・・オークションも大失敗した・・・!これで2人共ターゲットだ・・・!」
J「念願の市長だ。仕事をしろ。言った通りに喋ればいい。“皆の市長は、ギャングと戦ってます”と。ローズも きっと喜ぶぞ」
Mr.Jが市長の肩に手を置くが、市長は“ローズ”という女性の名を聞き、その手を払い退けた。
市長「なんて事を・・・!あのビデオを渡せ!」
J「もういい、話は終わりだ。スピーチの時間だ。さぁ、行きなさい。君より大事な事は山程ある」
市長「もうボロボロだ。これ以上は耐えられない。おい聞いてるのか、J?!」
Mr.Jと鹿島は、市長の言葉を無視して その場から立ち去るのだった。
*街*
その隣のビルの屋上では、五十鈴と川内の2人だけが居た。2人は健と刹那の準備が整うまで、ここで待機していた。
川内「ねぇ、見てよ」
五十鈴「ん?」
川内「街が見渡せる」
街を見渡していた川内に並び、五十鈴も街を見渡す。
五十鈴「沢山の人が居る。沢山の人が・・・」
川内「うん、コケにされてる」
五十鈴「実感すらない。ただ、麻痺してる」
川内「クソだね」
人は毎日、仕事や学校に向かい街を行き交い、思い思いの時間を過ごし、毎日を送っている。
だが その裏では、常に悪意ある者達が悪巧みし、暗躍し、誰かが傷付き、命を落としている。
人々は誰もが、自分は そんな被害者にならないと根拠のない安心をし、毎日を生きている。だが、本当に そうならないと言えるのだろうか?
犯罪者は どんな者でもターゲットにし、食い物にする。
たまたま自分ではない誰かが被害者となり、次は自分自身かもしない可能性はゼロだろうか?
何かあれば市が市民を護ってくれる、国が国民を護ってくれる・・・絶対に?
本当に?
市や国ですら不正を働き、犯罪に目を瞑り、人々から真実を隠す。
自分の知らない所で起こっている事は全て、空想上の絵空事なのだろうか?
例え目の前に その現実があったとしても、巻き込まれたくないと見て見ぬ振りをする者だって中には居るだろう。
Mr.Jを中心とする者達は、今は艦娘をターゲットにしている。だが その牙が、今度は人間に向いたら どうだろうか?
きっと人々は、それにも気付かず毎日を生きるのだろう。
川内「これは皆に真実を教える戦い」
五十鈴「えぇ、そうね」
すると健と刹那から、準備が整ったと無線連絡が入った。
五十鈴「オーケー、私達は証拠、健達は脱出計画よ」
五十鈴達が行動に移り始めると、チャリティーイベントが行われるビルの屋上、そこにあるヘリポートから、ヘリが離陸して飛び立った。
川内「あれが市長?」
健『あ〜いや、あれはヘリコプター』
川内「この野郎」
それは見れば分かると、健のジョークに川内は憎まれ口を叩きながらも笑っていた。
すると五十鈴と川内が居るビルの屋上に、クレーンの先に吊るされたゴンドラが下りてきた。
実は健と刹那が準備していたのは、建築工事で使われるクレーンを動かすためのものだった。
このクレーンを使い、五十鈴と川内をチャリティーイベントが行われるビルに運ぶ算段なのだ。
2人がゴンドラに乗り込むと、刹那がクレーンを動かし運んでいく。
建設途中のビルに下りると、五十鈴と川内はゴンドラから降り、更に上へ行くためエレベーターを使う。
エレベーターから出ると、資材が置かれたままのビルの中を進み、別のクレーンのゴンドラが下りてきた。
乗り込み運ばれていくと、目的となるビルの屋上に着いた。
健がビルのシステムに侵入し、監視カメラをハックすると、市長が主催するイベントだけあって、厳重な警備が確認できた。
健『わんさか居る』
刹那『2人だけで行けそう?』
五十鈴「今更 訊かないでよね。最初から私と川内だけで侵入する計画だったのに、“無理”って言ったら来てくれるの?ここまで来れるの?」
刹那『無理』
五十鈴「でしょうね」
川内「脱出計画の準備しといてよ。見付かったら下の出口はロックされるし、袋叩きにされる」
刹那『脱出方法はサプライズって事で』
五十鈴「嫌な予感しかしないわ・・・」
五十鈴と川内は身を隠しながら、健から警備の位置を聞きつつ遣り過し、それが無理な場合は襲い掛かり、静かに無力化していく。
コンピューターがある場所に着くと、五十鈴がUSB端末にハッキングツールを挿し込む。
五十鈴「いいわよ。始めて」
健『ダウンロード開始』
市長がMr.Jに協力した数々の不正や犯罪のデータをダウンロードし始めると、ハッキングを検知され、警備が慌ただしくなる。
端末に近付かれて阻止されては困るので、五十鈴と川内は飛び出し、近付く警備と戦闘に入る。
川内「夜戦パーンチ!夜戦キーック!」
ダウンロードが45%まで到達すると、警察にも通報が行ったのか、ビルの外からパトカーのサイレンが聴こえてきた。
五十鈴「ダウンロードまだ完了しないの?!」
健『まだ半分も終わってない!』
五十鈴「早くしてよ・・・!」
警備を端末に近付けさせまいと奮闘を続け、ダウンロードが80%まで到達すると、刹那から無線が入った。
刹那『撤退作戦の準備ができた。凄いよ、絶対 気に入る』
五十鈴「刹那はドSだから、あんたが笑ってると不安しかない!」
ダウンロードと同時に、健がウイルスを送り込んでいた事で、ビル内にオーケストラ《喜びの歌》が、大音量で流れた。
健『全データ、ダウンロード完了!そこから脱出して!』
川内「どこに向かえばいい?!」
刹那『屋上、北西側。見れば分かる』
警備を倒しつつ、五十鈴と川内は屋上へ戻り、刹那が言うように北西側に行くと、ワイヤーが地上へと続くように架けられていた。
五十鈴と川内は、警備が持っていた銃を拾い、それを滑車代わりにワイヤーに引っ掛け、地上に向かって猛スピードで滑走していく。
川内「ハッハー!ワオッ!刹那、これマジ ヤベェエエエエ!!」
五十鈴「アホか
高層ビルからの滑走は、スリル満点の怖さがあった。怖い感情を振り払うには、キレるしか五十鈴には手がなかった。
地上付近に近付き、五十鈴と川内は飛び下りると、傍の車で健と刹那が待っていた。
健「2人共 乗って!」
刹那「警察が探してる、行くよ!」
刹那が車を走らせ、警察を撒いて4人は、無事オリーブ財団に戻るのだった。
次回も宜しく お願い致します!