525話です!どうぞ!
ダンテとバージル、香取、夕張の前に、鹿島とセリーナが立ち塞がった。
バージルは その場をダンテ達3人に任せ、1人でMr.Jを追う。
鹿島とセリーナとの戦いが始まり、ダンテ達は2人を撃破する。
セリーナには頭へ直接 電流を流して記憶を吹き飛ばし、鹿島には死によって逃げるのではなく、生きて罪を償う事を説き伏せるのだった。
そしてMr.Jの背後からは、その命の狩り取るため、バージルが着実に迫っていた。
*シカゴ・ビル 1月17日 16:19*
何者かの足音がし、Mr.Jが振り返ると、通路の角からバージルが現れ、悠々と歩きながら追ってきていた。
Mr.Jは忌々しそうに顔を歪めると、バージルから逃げようと通路を進む。だが どんなに急ごうと、杖を突くMr.Jでは走る事もできないため、その足取りは重かった。
今の状況で、バージルならMr.Jを すぐに殺す事は容易いが、そうしないのには理由があった。これまで奴がやってきた事と、自分を助けようとした艦娘売買の被害者である艦娘を、ただ死なせてしまった不愉快さから、できるだけ長く、迫り来る死の恐怖をタップリと味わわせるためだ。簡単には、楽には死なせない。
バージルが鋭い眼光で、Mr.Jの背中を捉えながら追っていると、逃げるためにMr.Jが作動させた防護壁がバージルの前後で下りて、行く手を阻んだ。
Mr.Jは これで時間を稼ぎ、今の内にできるだけ距離を取り、行方を晦まそうと考えていた。
だが金属を斬る音が鳴り響き、防護壁の一部が崩れ落ちると、そこに出来た穴からバージルが出てきた。
更に悠々とバージルが追っていると、また前後で防護壁が下りて行く手を阻む。
しかも今度は猛毒の毒ガスまで充満する。
この毒ガスは普通の人間であれば、僅かに吸っただけで絶命する猛毒だ。バージルなら すぐに死ぬような事はないが、それでも徐々に命を削られていく。
バージルは防護壁を斬り抜き毒ガスから脱出し、Mr.Jを追う。
すると通路の奥で、横に伸びたレーザーが現れ、バージルに迫る。バージルはレーザーを飛び越え回避する。
しかしレーザーは それだけでは終わらず、様々な角度で次々と迫る。それでもバージルは、トリッキーな動きで全て避けていく。
ずっとレーザーを避けていると、レーザー1本では駄目だと判断したのか、通路全体に広がった網目状のレーザーが現れ迫りくる。
バージルは横の壁を見るとベオウルフを装備し、その壁を殴り壊して通路から外れ、レーザーを回避する。
そのままバージルは、トラップが仕掛けられた通路を迂回するように、次々と壁を壊しながらショートカットし、Mr.Jを追うのだった。
・・・・・・
トラップを回避し、Mr.Jを追うバージルはビルを駆け上がり、遂に社長室へと辿り着いた。
中へ入るが、そこには誰も居なかった。
Mr.Jに完全に逃げられたかのように見えるが、バージルは直感で、Mr.Jが近くに居るのを感じていた。何故なら、この部屋に入った時から ずっと、誰かの視線を感じるのだ。
バージルは周囲を見渡しながら、部屋の中を調べていく。
デスクを確認していく中で、引き出しの中に妙なスイッチを見付けた。
バージル「(・・・これか)」
バージルが そのスイッチを押すと、横の壁がスライドし、その後ろにガラス張りの壁が有った。
その向こう側には別の小さな部屋があり、そこからMr.Jがバージルを見ていた。
バージルは そちらに歩み寄り、ガラスを隔ててMr.Jと対峙する。
すると、スピーカー越しでMr.Jの声が聞こえてくる。
J『よくも まぁ、諦めが悪く ここまで来たものだ』
バージル「それは こちらのセリフだ。こんなガラス程度で逃げおおせたつもりか?」
J『このガラスは特別仕様だ。このガラスが有る限り、君は私に手も出せないという事だ』
バージル「・・・・・・・・・」
J「しかし分からんな」
鹿島からの報告で、バージルは艦娘や人間、況してや世界が どうなろうと興味を持たない人物であると、Mr.Jは聞かされていた。それ故に、ここまで追ってきてまで自分を狙う理由が理解できなかった。
J「君は何故、そうまでして私に歯向かう。君には私が何をしようが、人間が何をしようが、艦娘が どうなろうが、世界が どうなろうが、どうでもいい事のはずだ」
バージル「あぁ、確かに どうでもいい。興味もない」
J「なら何故だ?」
バージル「では答え合わせといこうか」
バージルは鞘から閻魔刀を抜くと、その刃で自身の身体を貫いた。
ここまで自分を追ってきて、その相手を前に自殺しようとする行為に、Mr.Jは意味が分からず困惑する。
するとバージルの身体が消滅し、Vの姿に再構築された。
V「これで分かっただろうか?」
J「ジョン・グルーバー・・・!」
V「俺はジョン・グルーバーではない。それは お前に近付くために借りた名だ。本物のジョン・グルーバーが どうなったかは、俺も知らんがな」
ジョン・グルーバーとは、Vが潜入した艦娘オークションに、本来 行くはずだった男の名だった。
Devil May Cry鎮守府は この男を拉致し、代わりにVがジョン・グルーバーに成り済まして、Mr.Jと直接 邂逅した。
J「君のような者が、なぜ私の邪魔をする?なぜ私を殺そうとする?」
V「・・・・・・最初は、面倒事を押し付けられた気分だった。お前になど興味はないし、艦娘が売られた後の事も どうでも良かった。だが・・・お前は筑摩を殺した」
ジョン・グルーバーと成り済まし、艦娘オークションの招待状を手に入れるため、あるクラブへ客として行った。そこで艦娘売買の被害者である筑摩の協力を得て、Vは艦娘オークションへと潜入した。
だがオークション会場で筑摩を逃がそうとした日、彼女は首の爆弾を起動され、Vを巻き込まないようにと突き飛ばし、自分1人が犠牲となり この世を去った。
V「自分でも何故だが分からなかったが、俺は それが無性に気に食わなかった。助けようとした女を目の前で殺された事がな。俺が お前を殺すのに、理由は それだけあればいい」
Vの言い分を聞き、バカバカしいと言わんばかりにMr.Jは彼を見ながら笑った。
J「ほう・・・たかが艦娘1人のために、仇討ちのために、私の元に辿り着くまでの間、あそこまで暴れ回ったのか?大した正義感ではないか。実にバカバカしい。すまなかった。皆、些細な事で相談に来るのでね。覚え切れんよ」
Mr.Jは、自分の手足として働かせて、艦娘オークションの日に死んだ筑摩の事など、忘れ去っていた。その事実に、蔑む目を向けるVの目が、一層 鋭くなる。
J「だが私なんかより、海軍のやっている事の方が、余程 艦娘を苦しめているとは思わんか?」
Mr.Jの言い分は、海軍が深海棲艦に対抗するために、艦娘を兵器として利用し、轟沈しても また新たな艦娘を建造し、戦力の補充をする。それは謂わば、艦娘を使い捨ての道具としてしか見てないとした。
V「お前は違うとでも言いたいのか?」
J「その通りだ。艦娘売買は、今の私にとってはビジネスだが、同時に、彼女達を救ってるのだ」
艦娘は艦娘である限り、海軍に所属してる限り、深海棲艦との戦争が終わらない限り、死ぬまで戦争の道具として利用される。艦娘売買は、ただ轟沈していくだけの艦娘に、別の人生を与える救済だとした。
J「私も艦娘と同じだ。日本海軍に居た頃、上層部は私を使い捨ての道具のように切り捨てた。自分達に都合が悪い存在は、艦娘であろうが人間であろうが、平気で裏切る連中だ!」
Mr.Jの本名は“
当時 日本海軍は、アイアンボトムサウンド海域の制海権を取り戻すための作戦を計画していたが、状況は芳しくなく、上層部は作戦の中止を決定した。
桐生は今なら制海権を取り戻せると訴えたが、その具申は却下された。それにより彼は、独断で呉鎮守府だけでアイアンボトムサウンド海域へ侵攻する事にした。
だが状況は悲惨なものだった。深海棲艦側の猛攻撃により、艦隊は甚大な被害を受けた。
桐生は作戦を中止にできないとして進軍を決定。敵飛行場に辿り着くも、損傷の大きい艦隊は敵の攻撃に晒される事となる。
艦隊は提督の命令を無視して撤退。作戦が失敗して敗走する。
無理な進軍と作戦失敗が原因で海軍の足並みが崩れ、近海の制海権までもが深海棲艦に奪われる結果となった。
V「その話ならダンテから聞いて知っている。お前の愚かな決断のせいで、赤城が轟沈した」
J「私のせい?違う。作戦を中止にせず、海軍の総力を以て決行していれば、制海権は取り戻せていた。それを奴らは、臆病風に吹かれて中止を決めた。被る被害の責任を誰が取るのかと、押し付け合ってな」
そして桐生は、自ら海軍を退役した。
その後 彼は、桐生 十三の名を捨て“J”と名乗り、権力者や上流階級の人間達に支配されるのではなく、支配する側になるため裏社会へと足を踏み入れ伸し上がり、今の表も裏も支配できるだけの力を得た。
Mr.Jは徐ろにリモコンを手に取ると、それを操作する。すると傍にあったモニターに、五十鈴と川内が、サイモン・フェニックス率いるギャングアジトから盗んだ映像データと同じものが映った。それはシカゴ市長が、秘書だった女性ローズ・ガルシアを殺す殺人の証拠。
J「なんて有り難い女だ、ローズ・ガルシア。全て彼女の死の お陰だよ」
V「・・・・・・・・・」
J「普通の女が無駄死にするところを、見事に、カメラの前で死んでくれた。市長、昔から脇が甘い。そして愚かにも恋に狂った」
その弱味を握った事でシカゴを拠点とし、Mr.Jが様々な業界で他者を操る足場が出来た切っ掛けでもあった。
V「全ては・・・筑摩の死も・・・他者を操り続けるためか。だが どれだけ言葉を並べようと、正当化できる訳がない。お前1人が突っ走った結果、赤城が轟沈した事実もな」
J「だからこそだよ。人身売買で売られた若者は、その殆どが家族の元に戻らない。理由は知ってるかね?」
V「・・・・・・・・・」
人拐いが横行してる国では、小さな村などから子供が拐われる事が頻繁に起こっている。
家族が捜索願を出し、当局が動いて被害者を見付けても、実は戻ってくる事は殆んどないのだ。理由は、拐われた本人が故郷に戻る事を拒絶するからだ。
J「村から拐われ、家族の元から引き離される時は怖いだろう。不安もあるだろう。だが売られた先で、貧しい村ではできなかった裕福な生活ができ、今まで得られなかった富を手に入れる事ができるのだ」
人身売買で取引する者は、富裕層の人間も多く、自分の屋敷で召使いとして働かせ、給金が出る場合も多い。そのため拐われた者達は、故郷の貧しい村に居る時よりも豊かな生活ができ、それを手放したくないという思いから、売られたままの、奴隷としての生き方を望む者も多い。それが、人身売買で被害者を連れ戻せない理由の1つとなっていた。
J「艦娘売買も同じだ。ただ深海棲艦と戦うためだけの使い捨ての道具として終わるのではなく、別の生き方で幸せな人生を歩めるようにするためのものだ」
V「では売った後は どうだ?俺が今まで見てきた中で、売られた艦娘は誰もが、幸せとは程遠い結果となっている」
これまでDevil May Cry鎮守府やオリーブ財団は、艦娘売買の被害者である艦娘を見付けては保護し、然るべき対応をしてきた。
だが彼らが見てきたのは その どれもが、艦娘に犯罪の片棒を担がせたり、売春をさせたり、轟沈よりも惨たらしい死を迎えている。
V「売った後も、そうならないようにケアをしてるなら大したものだ。それで人並みの生き方ができているなら、お前のやっている事は賞賛に値するのだろう。だが、お前のやっている事は、艦娘を更なる地獄に叩き落とす行為だ」
J「運が悪ければ、そういう事もあるだろう。艦娘にできるのは、権力や富を持つ者に買われ、豊かな生活ができる事を願うだけ。ただ道具として使い捨てられる死より、違う死を迎えられる方が まだマシというものだ」
V「どれだけ言葉を並べようと、自分を正当化できると思うな。お前も所詮は、お前の言う“使い捨てる”連中と変わらん」
J「だから殺すのか?だから私を殺すと言うのか?では私を殺した後は どうするつもりだ?艦娘は また、深海棲艦と戦う兵器として使い捨てられるだけの存在となる。それとも君が、艦娘全てを戦いから解放してやるのか?私も その想いで、艦娘オークションというビジネスを生み出した。艦娘全てを救おうと思うなら、結局は私と同じ事をするしかない。深海棲艦と戦うためだけの兵器ではない、別の存在価値を与えてやるしかないのだ」
V「・・・轟沈した赤城も、それを望むと思うのか?」
J「あぁ、彼女なら分かってくれる。轟沈した彼女と同じ運命を辿らないよう、私は艦娘を救ってるのだ」
V「轟沈した赤城は生きているぞ」
J「・・・・・・!?」
V「あの女は お前のやっている事を認めてはいない」
J「・・・・・・何を、言っている・・・?赤城が・・・生きているだと・・・?」
V「フッ。お前も、そこまでは情報を掴めていなかったようだな。Devil May Cry鎮守府の赤城は、お前が轟沈させた赤城だ」
艦娘が沈めば深海棲艦となり、深海棲艦が沈めば艦娘となる。だが それは、海軍でも秘匿されており、知っているのは僅かな限られた者達しか知らない。例に漏れず、Mr.Jも それは知らなかった事実だった。
Mr.Jが赤城を轟沈させた後、どういう訳か彼女は、艦娘としての赤城と、深海棲艦としてのアカギへと魂が分離し、同一個体が同時に存在する奇妙な事になった。
その後 赤城は横須賀鎮守府に着任し、ダンテに助けられた事でDevil May Cry鎮守府へ異動となった事を、VはMr.Jへ告げた。
V「赤城は魂を抜き取られ、今は お前が取引してるノヴァが その魂を持っている。お前は赤城のためと言うが、ノヴァに手を貸す お前こそ、赤城を苦しめている」
Vは赤城の話を持ち出す事で、Mr.Jの暴挙を止め、大人しく捕まってくれれば面倒が減ると考えていた。これで思い止まらなければ・・・当初の予定通り殺すしかなくなる。
しかし、そう簡単にはいかないようだ。Mr.JはVの話を聞き、そんな事は有り得ないと笑い飛ばし、信じていない様子だった。
J「そんな嘘で、私を動揺させるつもりか?人間性に訴え掛けようとでも?私は確固たる意志を持って行動している。その程度の言葉で、私の目的が揺らぐ事はない」
V「その言葉を待っていた」
J「・・・・・・?」
Vの言葉の真意を測り兼ねていると、彼の身体から3体の悪夢が飛び出し、グリフォンが電撃を放ち、シャドウが その身を刃に変え、ナイトメアが拳を突き出し、ガラスを破壊した。
その衝撃にMr.Jは吹き飛び、壁に叩き付けられると床に落ちた。
グリフォン『よう、枯れ枝ジジイ。ビックリしたか?』
Mr.Jは咳き込みながら身体を起こし、Vと3体の悪夢を見る。
V「どうかしたか?」
実はMr.Jは、最近 心臓の手術をしてペースメーカーを入れており、グリフォンが電撃を放った事でペースメーカーの機能が止まり、心臓も止まりかけていた。
J「ご心配は有り難い。だが、逃げる事を考えた方が、いいぞ」
V「そうはいかんな。防弾ガラスぐらいで止まると思ったか?」
Mr.Jは、このまま自分を殺そうとするのだろうと思っていたが、どういう訳かVと3体の悪夢は動かず見詰めてくるだけで、その行動を訝しんだ。
J「何をしている?」
V「老人の死を看取るのさ」
J「狙われた事は何度もある。八つ裂きにしてやったさ、1人ずつ、な。私は死など恐れない」
Mr.Jは、苦しそうに胸を押さえながらフラフラと移動し、傍に有ったソファーの肘掛けに手を突き、身体を支える。
J「命乞いをするとでも?このMr.Jが?負けを認めると?」
そしてMr.Jはソファーに座り、身体を預けた。
V「命乞いになど興味はない」
J「勝ったつもりか?私が死ねば銅像が建つだろうが、君は?世界は君など、無視して進む・・・所詮は脇役だ」
するとVは、3体の悪夢を身体に戻すと、彼の身体が塵となり、再びバージルの姿に戻る。
バージルは、Mr.Jに歩み寄り見下ろす。
バージル「知らなかったか?俺が魔剣士だ。お前のような神になったと思い上がったクズを掃除してる」
J「1つ忘れていないかね?」
バージル「・・・・・・?」
J「“逃げる事を考えた方がいい”と・・・言っただろ・・・」
Mr.Jが再度リモコンを操作すると、ガラスが有った場所で防護シャッターが閉じ、バージルは突然の浮遊感を感じ取った。どうやら部屋自体が、エレベーターのように下に下っているようだ。
バージル「貴様、何をした?」
バージルがMr.Jに視線を戻すと、奴は既に死んでいた。
バージルは天井を見上げ、どこに辿り着くのかと警戒しながら、止まるのを待つのだった。
・・・・・・
しばらくして浮遊感が止まり、防護シャッターが開くと、バージルは部屋から出た。そこは何かのラボのようになっていた。
辺りを見渡しながら奥へ進んでると、正面に、ダンテのクローンであるベルゼに奪われた黄金の像、命の木の樹脂、真鍮の容器が置かれていた。それぞれには、魔帝ムンドゥスと羅王アビゲイル、覇王アルゴサクスの力が封じられている。
バージル「(こんな所に有ったのか。しかし・・・)」
黄金の像と真鍮の容器が奪われたのは、ダンテや艦娘の話で聞いていたが、命の木の樹脂は、バージル自身が向かった古代都市で、全て燃えて消えたはずだった。それが ここに有る事に、バージルは驚きながらも忌々しそうな表情を浮かべる。
バージル「(全て燃え尽きる前に、何者かが ここに運んだか・・・いや、恐らくベルゼの仕業か)」
黄金の像と命の木の樹脂、真鍮の容器が有るのは危険なため、バージルは この3つを破壊しようと閻魔刀の柄に手を掛けるが、何者かの気配がして そちらに振り向く。そこに居たのは、サイモン・フェニックスだった。
バージル「(この男・・・確か情報では、強化人間だったか。五十鈴と川内も取り逃したと言っていたな。俺が尻拭いをする事になるとは。)艦娘が相手なら強者を気取れるのだろうが、強化人間であろうと俺には勝てんぞ」
向かってくるなら死を覚悟しろという警告をするが、フェニックスからは一切 言葉が返ってこなかった。だが それが、不自然さを感じさせた。五十鈴と川内の話では、フェニックスは かなり お喋りな方だと聞いていた。そんな男が、何も言葉を発さないとは どういう訳か?
バージル「(・・・様子が おかしい)」
その不気味な奇妙さにバージルが警戒してると、フェニックスが微かな呻き声を上げながら身体を痙攣させる。
次の瞬間、フェニックスの身体がバキバキと音を鳴らしながら骨格が変形し、両腕と両足が肥大化して獣の脚のようになる。
更に首の皮膚が裂けて千切れると、首の骨が伸びて ろくろ首のようになる。
四つん這いになったフェニックスは、伸びた首の骨を揺らしながら口を開けるのだが、下顎が裂けるように左右に開き、蛇のように長い舌を出し、人間の喉では到底 出せないような奇声を上げた。
バージル「貴様、何をされた?」
強化人間は、艦娘をも凌駕する程のパワーとスピードを発揮する身体能力を持っているが、必ず人の姿をしていた。その事から今のフェニックスの姿は、強化人間である事とは別の要因があるのは明白だった。
バージルの質問には答えず、フェニックスは奇声を上げながら突進してくる。
バージルはジャンプして避けると、後ろに回り込む形で着地し、フェニックスを見据える。
バージル「メインイベントとするには物足りないのだろうが、少しは期待できるんだろうな?」
バージルの挑発にフェニックスは威嚇するように奇声を上げ、裂ける下顎を開きながら首を突き出し、顔面で襲い掛かる。
それを落ち着き払った様子で見ながら、バージルは閻魔刀を抜刀するのだった。
次回も宜しく お願い致します!