89話です!どうぞ!
*城塞都市フォルトゥナ*
キリエがフォルトゥナから消えた後、孤児院の子供達は、町の人達の手伝いをしながら世話になっていた。ネロとキリエが戻ってきた時は大変だった。皆 泣いて喜び、しばらく2人から離れなかったのだから。
ダンテが旅行から戻った1週間後、セリーナはフォルトゥナに来ていた。理由は当初の予定通り、ネロ達を迎えにだ。
セリーナ「ここがフォルトゥナか。さて、小僧が居る場所は・・・」
セリーナは寄り道もせず、真っ直ぐ孤児院へと向かった。
*孤児院*
孤児院に着くと、ガレージが開いていた。中ではネロがレッドクイーンの整備をしていた。ガレージの入り口まで近付くと、ネロもセリーナに気付いた。
ネロ「どうした?何か用か?」
セリーナ「小僧、迎えに来た」
ネロ「小僧?俺の方が年上だと思うぞ。それに迎えに来たって何の事だ?」
セリーナ「(・・・しまった!元の世界に戻って1ヶ月は経っていた!)」
元の世界に戻り、ネロは向こうでの記憶が消えていた。記憶が残っているのは精々1週間 程度。
ネロ「もしもーし、聞いてるかー?」
セリーナ「兎に角 一緒に来い!」
ネロ「だから何でだよ?」
セリーナ「行けば分かる!」
ネロ「分かんねぇっての」
・・・・・・
*Devil May Cry鎮守府 執務室*
同じ頃、執務室では2人の艦娘が敬礼しながらダンテに挨拶していた。
千歳「千歳です。日本では初めての水上機母艦なのよ。よろしくね!」
千代田「水上機母艦、千代田です。」
ダンテ「千歳と千代田か。水上機母艦ってのは初めて聞いたな」
赤城「提督は そうでしたね」
千歳「私達 水上機母艦は、水上機を沢山 運用できる優れものですが、給油艦として、重油を他の艦に補給もできちゃうの」
ダンテ「そいつは便利だな」
千歳「でしょ!」
今回、千歳と千代田が来たのはダンテとの顔合わせとは別に、2人には特別な遠征任務に行ってもらう為に来てもらっていた。
南方海域にて、哨戒用 水上機基地を建設する事が大本営からの通達で決まった。これにより、水上機母艦2隻を基幹とする艦隊を、同海域に展開しなければならない。
赤城「彼女達は改装を重ねる事で軽空母になれるんですが、今回のように水上機母艦が必要な任務もありますから、そのままで居てもらってるんです」
ダンテ「2人ができるのは、水上機 飛ばすぐらいか?」
千代田「魚雷も撃てます!」
千歳「必要であれば、対空装備も使えますよ。ただ、装甲の方が ちょっと・・・」
ダンテ「守りに不安がある訳か」
加賀「お喋りもいいけれど、任務は行かなくていいの?」
ダンテ「そうだったな。あと他に軽巡が1隻に駆逐艦を3隻 連れてく事になってるから、適当に捕まえて行ってきてくれ」
千代田「(噂通り、本当に指示が適当な提督なんだ・・・)」
加賀「提督、あなたは さっきから何をしているの?」
ダンテは話しながら、ずっと時雨と夕立の頭を何度も押さえていた。2人の髪の毛が、犬の耳のようにピョコンと出ているのが気になるらしい。ダンテは2人の髪を手で押さえ付け、離すと またピョコンと出てくる。
ダンテ「こいつらの頭どうなってんだ?」
夕立「ぽい~」
時雨「提督、そろそろ僕達で遊ぶのやめてくれないかな?」
ダンテ「引っ込め。・・・あ、出てきた」
時雨「うん、聞いてないね」
ダンテ「リベリオンで切るか」
夕立「ぽい!?」
時雨「冗談だよね!?」
赤城「千歳さんと千代田さんは、行ってください」
「「あ、はい・・・」」
千歳と千代田は執務室から出た後、部屋で寝ていた川内、曙、朝潮、吹雪を捕まえて出撃した。
水上機母艦の2人が執務室から出た直後、執務室に空間の歪みが発生し、中からセリーナが現れた。しかも ちょっと泣いてる。
セリーナ「半魔、助けてくれ・・・」
加賀「ネロは どうしたの?」
セリーナはネロを連れ戻すのに失敗し、追い払われた。セリーナも粘ったが、結局 門前払いでダンテに泣き付いてきたのだ。
ダンテ「お前ちゃんと説明したのか?」
セリーナ「ちゃんと迎えに来たと言った!」
赤城「・・・・・・それだけ!?」
セリーナ「行けば分かるとも言った!」
赤城「(説明がヘタクソ過ぎる・・・)」
ダンテ「それで泣いて帰ってきたのか?中身ミイラ並みのババアなんだから もっと しっかりしてくれ」
セリーナ「誰がババアじゃ!」
加賀は自分自身に何の影響もなかったから、今まで気にしてなかった事を今になって疑問を感じた。ダンテが元の世界に戻ると、こちらの世界での事を忘れるのは知っている。恐らくネロも同じなのだろう。しかし、加賀は1度フォルトゥナに行き、元の世界に戻っても その記憶がある。この違いは何なのだろうか?
加賀「私はフォルトゥナに行った事は覚えてる。どうして私には記憶があるの?」
セリーナ「言わなきゃダメか?」
赤城「言えないような話なんですか?」
セリーナ「いや、普通に面倒臭い」
加賀「そんな理由なら話して」
セリーナ「これは飽くまで推測だが・・・」
ダンテは こちらの世界に深く関わり過ぎている。記憶を残したまま帰らせば、向こうの世界で悪影響が出る可能性もある。逆に加賀は向こうでは大して影響を及ぼす程の行動をしてなければ、関与もしていない。だから記憶を忘却するまでもない・・・らしい。
セリーナ「艦娘である事も関係しているかもしれんが、妾だって何でも知ってる訳ではない」
ダンテ、赤城、加賀は腕を組んで考える。考えても何も分からないのだが・・・。
いや、そんな場合ではない。今はネロの話が大事だ。しかし、ダンテとしては好都合な状況だ。
ダンテ「もう このままで良くないか?」
このままネロを巻き込まず、自分だけで問題に対処できる。ダンテはネロを迎えに行かない方向で考え始めていた。
加賀「駄目よ、約束でしょ?こっちに戻れば記憶が戻るし、何かの切っ掛けで戻ってきて思い出せば、ネロが怒るわよ」
ダンテ「俺1人で閻魔刀も取り戻すしアーロンも ぶっ飛ばす。だから安心だろ?」
加賀「ネロと2人なら もっと安心って前にも言ったでしょ。セリーナ、入り口を開けて。私と提督で行ってくるから」
ダンテ「マジかよ・・・」
加賀が空間の歪みに入り、ダンテも嫌々だが一緒に行く事になった。
・・・・・・
*城塞都市フォルトゥナ 孤児院*
ネロ「ダンテに加賀!?」
ダンテ「ネロ、さっさと あそこに入れ。加賀はキリエの お嬢ちゃんとガキ共を」
ネロ「ちょっと待てよ!何が どうなってる!?」
ダンテ「引っ越しだ」
ネロ「はぁ!?」
キリエ「加賀!?今まで どこに行ってたの!?」
加賀「キリエ、出発するわよ。子供達も、着替えとか荷物を纏めて」
結局ダンテと加賀が行っても、セリーナ同様 碌な説明もせずに、強行手段で無理矢理 荷物を纏めさせている。
ネロ「どういう事か説明しろよ!さっきも子供が似たような事 言ってたし、何なんだよ!」
ネロの横には、大量の荷物を持たされたキリエと子供達も居る。孤児院組の頭には『?』しか浮かばない。
ダンテ「閻魔刀は どうした?」
ネロ「閻魔刀なら ここに・・・何で・・・?」
ネロは今でもデビルブリンガーに収納してると思っている閻魔刀を出そうとした。だが閻魔刀は現れず、ネロも動揺する。
ダンテ「それが答えだ。真実が知りたけりゃ中に入れ」
ネロ「キリエと子供達まで連れてく必要があるのか?」
加賀「キリエは1度 拐われたの。だから子供達と一緒に保護する為に移動しないと」
ネロ「キリエが拐われた!?」
キリエ「そういえば、あの時・・・」
ダンテ「もう面倒だな!中に入れば全部 思い出す!さっさと入れ!」
ネロ「おわっ!?」
説明も連れていくのも面倒になったダンテは、ネロを後ろから蹴り飛ばして歪みの中に入れる。ダンテと加賀も、キリエと子供達を連れて中に入った。
*Devil May Cry鎮守府 執務室*
ネロ「ここは・・・鎮守府?何で ずっと忘れてたんだ?」
赤城「おかえりなさい、ネロさん、キリエさん」
歪みの先は鎮守府の執務室だった。ネロとキリエ、子供達を赤城とセリーナが出迎える。
ネロとキリエは、戻ってきた事で全ての記憶を思い出した。
ネロ「セリーナ、さっきは悪かったな」
セリーナ「もう2度と迎えに行かん!」
余程 酷い追い払われ方をされたのか、セリーナは ご機嫌斜めだった。
夕立は初めましてのネロとキリエ、子供達を見て首を傾げる。
夕立「誰っぽい?」
時雨「あっちはネロ。隣がキリエ。その後ろに居るのが、2人と一緒に暮らしてる子供達だと思うよ」
夕立「何しに来たっぽい?」
時雨「ネロも提督と同じで、悪魔の力を持ったデビルハンターなんだ」
夕立「へー、賑やかになるわね」
・・・・・・
*グラウンド*
グラウンドに移動すると、夕張と青葉、工廠の妖精さんが待っていた。
夕張「さぁ、ネロ!夢のマイホームよ!感謝しなさい!」
連日 徹夜で作業していた時もあり、夢のマイホームが約1ヶ月で完成した。夕張と工廠の妖精さんの、職人としての意地とプライドを賭けた戦いが始まり、早期完成を目指した。それに青葉も巻き添えを喰らい、全員の目に隈ができていた。
ネロ「夢のマイホームって・・・元はと言えば お前のせいだろ。家 建てるぐらいで大袈裟なんだよ」
夕張「建築物 建てるだけだと思ったら大間違いよ!地面 掘って水道管とガス菅の工事までしたんだから!1ヵ所でもミスったら全部やり直しなのよ!」
青葉「司令官、罰の方は・・・」
ダンテ「もういいぞ。ご苦労さん」
ダンテの お許しが出た事で、気の抜けた青葉と夕張は倒れて そのまま寝てしまった。工廠の妖精さんは一瞬で その場から消えた。恐らく工廠に帰ったのだろう。
キリエは、先に子供達に家の中を見てくるように言うと、子供達は一目散に家の中を見に行った。
キリエ「加賀、私達も見に行きましょ」
加賀「そうね」
キリエも、加賀と一緒に家の中に入る。それを赤城は、どこか寂しげに見ていた。
赤城「加賀さん、すっかりキリエさんと仲良しですね」
ダンテ「何だ?大切な相棒を取られて嫉妬か?」
赤城「まぁ、少し妬けちゃいますね」
ダンテ「俺が居るから寂しくないだろ?」
赤城「提督では、加賀さんの代わりにはなれませんよ」
ダンテ「ほーう、言うじゃねぇか」
赤城「提督は提督、加賀さんは加賀さんですから」
そんな話をしてると、大淀がダンテを呼びに来た。話によると、大和がダンテに相談があるとかで、鎮守府を訪ねてきたそうだ。
ダンテ「時雨、夕立、青葉と夕張を運んどいてくれ」
時雨「えっ、僕達で?」
そのまま任せ、ダンテは赤城と大淀を連れて執務室に向かった。
夕立は言われた通り運ぼうとするが・・・。
夕立「うーん!普通に重いっぽい!」
ネロ「俺が運んでやるよ。見ない顔だな」
夕立「白露型 駆逐艦 夕立、先週 鎮守府に着任したっぽい」
ネロ「ぽい?ハッキリしないな。ちゃんと着任したのか?」
夕立「だから着任したっぽい!」
ネロ「だから どっちだよ?」
夕立「もー!だからー!」
お互いの言葉に翻弄され、話が進まない。時雨も どうにかする気が起きず、黙って放置した。
・・・・・・
*執務室*
執務室に戻ると大和の話し相手にセリーナが居た。だが来たのは大和だけではなかった。過去、ダンテが陸軍の基地から助け出した武蔵と あきつ丸も一緒だった。
ダンテはソファーからセリーナを退かすと自分が座り、本題に入った。
ダンテ「俺に用だって?」
大和「見てもらいたいものが。武蔵、あきつ丸」
武蔵は包帯を取り、あきつ丸も袖を捲って腕を見せる。そこには大きめの白い痣があった。大和の話によると、その痣は少しずつだが、日に日に拡がっているらしい。
大和「武蔵と あきつ丸は陸軍に捕まっていたので、ダンテさんなら何か知らないかと思ったんです」
ダンテは2つの事が頭に浮かんだ。1つは、陸軍基地でアーロンに実験台にされた呉の艦娘達。彼女達は、アーロンに悪魔の細胞を埋め込まれ、異形の存在へと変貌してしまった。
もう1つは、前任の元帥が話していた艦娘と深海棲艦の関係だ。艦娘が沈めば深海棲艦となり、逆に深海棲艦が沈めば艦娘となる。だから この終わらない戦争が続いている。
だが武蔵と あきつ丸は沈んだ訳ではない。沈まずに深海棲艦に変わるのかは疑問だが、アーロンが2人に何かしたのなら、可能性はある。
ダンテ「セリーナ、何か分からないか?」
セリーナ「ふむ・・・」
セリーナは杖を掲げ先端が光ると、武蔵と あきつ丸の身体も一瞬だけ光った。
セリーナ「悪魔とは関係なさそうだ」
となると、あとは深海棲艦の方と関係がある可能性がある。痣は白い。深海棲艦の肌も白い。深海棲艦との繋がりの方が有力な可能性が出てきた。
だが この話は艦娘には教えられない。前任の元帥との約束もある。真実を知れば、戦う事に疑問を抱き、戦えなくなる者が出てくるかもしれない。そうなれば、深海棲艦の やりたい放題となる。
ダンテ「赤城、大淀、セリーナ、武蔵と あきつ丸を連れて席を外してくれ。俺は大和と2人で話がある」
赤城「武蔵さんと あきつ丸さんを?」
ダンテ「鎮守府の中でも案内してやれ。提督命令だ」
赤城「わ、分かりました。では、行きましょうか」
5人が執務室から退室し、ダンテと大和だけが残された。お互いに何も喋らず、執務室は静寂に包まれた。しばらく そんな状況が続いたが、先に口を開いたのは大和だった。
大和「・・・何か知ってるんですね?」
ダンテ「本当は元帥だった じーさんに口止めされてたんだけどな」
大和「元帥に・・・?」
ダンテは、大和にだけ話すつもりだった。もし いざと言う時、深海棲艦に変わってしまい自分の姉妹を沈めなければならないと分かれば、何もできなくなるかもしれない。だが先に知っていれば、自分の中で整理する時間はできる。その方が まだマシだと思った。武蔵は大和の姉妹艦だ。大和には知る権利がある。
どちらに転んでも、酷な話には変わらないが・・・。
ダンテ「落ち着いて聞いてくれ。これは推測だが、武蔵と あきつ丸は・・・深海棲艦になる可能性がある」
大和「深海棲艦・・・?ど、どうして、武蔵と あきつ丸が深海棲艦になるんですか!?」
ダンテ「大和・・・」
大和「そんなの おかしいですよ!艦娘は艦娘です!深海棲艦になるはずありません!」
元帥の秘書艦である大和も、この話は知らなかった。大和に教えたのは残酷かもしれない。だが、いずれ知る事にはなる。
武蔵と あきつ丸が深海棲艦に変わるまで、どれだけの時間があるか分からない。だが少しでも時間があるなら、覚悟を決める時間もある。
大和「冗談ですよね・・・?いつもの冗談だって言ってください!」
ダンテ「・・・・・・・・・」
大和は手で顔を覆い、泣き崩れてしまった。大和も理解したのだろう。深海棲艦になれば、武蔵と あきつ丸を沈めなければならないと。
ダンテは大和に近付き、しばらく背中を擦ってやった。
・・・・・・
ダンテ「落ち着いたか?」
大和「はい、お見苦しいところを お見せして、申し訳ありません」
ダンテ「まだ可能性の話だ。だが覚悟はしといた方がいい」
大和「私達は、何の為に戦ってたのでしょう・・・?」
ダンテ「俺も似たような事を じーさんに言った事がある」
“無駄ではない。深海棲艦を全て沈めれば、戦争は終わる。我々は それを目指して戦っておるんじゃ”
ダンテ「じーさんは深海棲艦を全部 沈めて、艦娘だけになれば戦争が終わると思ってた。沈んだ深海棲艦も艦娘に戻るらしいからな」
大和「じゃあ、武蔵と あきつ丸は・・・。ダンテさん、お願いがあります」
ダンテ「何でも言ってみろ。泣かせた お詫びに、今ならタダで引き受けてやる」
大和「武蔵と あきつ丸を、ここで預かってもらえませんか?」
ダンテ「・・・分かった。だが この話は誰にもするな。いいな?」
大和「はい」
もし大本営に知られれば、武蔵と あきつ丸は即解体となるだろう。それは大和も不本意だ。
深海棲艦となった2人を沈めれば、艦娘として戻ってくるかもしれない。そうじゃなくても、ダンテが また有り得ない事をして救ってくれるかもしれない。大和は、僅かな希望に賭ける事にした。だから大和は、ダンテに2人を預ける事にした。
大和は武蔵と あきつ丸に、しばらく ここで預かってもらう主旨を話した。武蔵と あきつ丸は あまり納得していなかったが、大和は どうにか説得し、1人で大本営へ戻った。
・・・・・・
*食堂*
食堂で武蔵と あきつ丸の紹介も終わり、艦娘達が2人を歓迎する中、ダンテは思った。アーロンのしてきた事は、何年も経った後に尾を引いて新たな問題を発生させる。つくづく面倒な相手だと。
ダンテ「ネロ、セリーナ、今回でアーロンと決着を着ける」
ネロ「何かあったのか?」
ダンテ「いや、そろそろ この茶番を終わらせようと思っただけだ」
セリーナ「・・・・・・・・・」
ダンテは、アーロンを倒すまで自分の世界に戻らないと、密かに決意していた。
次回も よろしく お願い致します!