Devil May Cry鎮守府   作:しゅんしゅん@よし

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94話です!どうぞ!


Mission94 調印式~少女の笑顔の為に~

*大本営 食堂*

 

大和は大将と共に食事をしていた。

そんな中、ふとした瞬間、大将から ある質問が飛び出した。

 

大将「大和、武蔵と あきつ丸の休暇は終わっているはずだが、しばらく姿を見ない。何をしている?」

 

武蔵と あきつ丸、その名前が出た事で、自然と大和の箸が止まった。

 

大和「さ、さぁ?知りません」

 

大将「・・・?あいつらは いったい何をしてるんだ、まったく・・・」

 

大和「・・・・・・・・・」

 

 

*Devil May Cry鎮守府 中庭*

 

深海棲艦側からの和平の話により、大本営から全鎮守府の待機命令が出された。どこの鎮守府も暇を持て余していた。

ダンテ達も例外ではないが、鎮守府は少し様子が違っていた。中庭ではダンテとネロ、キリエにセリーナ、多くの艦娘が集まって何かをしている。

ダンテがキリエを捕まえた状態で、ネロ達と相対している。

 

ダンテ「俺が、お前の本当の父親だ!」

 

ネロ「・・・う、嘘だー」

 

ダンテは感情的に言い放ち、それを聞かされたネロは、何の感情も込められていない言葉を返す。

 

北上「ちょっとストップ ストップ!ネロ、もっと やる気 出してくんない?ここ大事な場面だから」

 

ネロ「何で俺達が こんな事しなくちゃいけないんだよ?」

 

北上「地域貢献です」

 

ダンテ達は劇の練習をしていた。全ては、那珂のファン1号である憲兵の依頼から始まった。

彼には、親戚に幼い女の子が居る。その子は足が不自由で、ずっと車椅子での生活を余儀なくされていた。それもあり、そういった子達が集まる施設に通っている。

彼女は施設から見える海を眺めるのが好きなようで、よく窓から海を眺めている。それが最近、海を見ても元気がない。憲兵が あの手この手で笑顔にしようとしたが、全て徒労に終わり、皆に泣き付いたのだ。

そこで、施設で劇をする案が飛び出し、艦娘達は それに賛成。当日には保護者も呼ぶ事になっている。

世間では、未だに艦娘が兵器としてのイメージが根強い。あわよくば、これで艦娘のイメージを少しでも払拭できればと考えていた。

そして、鎮守府に新たに着任していた『秋雲』に、子供向けの脚本を発注し、ダンテとネロ、キリエとセリーナまで巻き込んで中庭にて練習となった。

役者でもないネロは どうにも やる気が出ない。ダンテはノリノリでやっているように見えるが、内心やる気はない。

 

ネロ「ダンテ、キリエに くっ付き過ぎなんだよ。離れろ」

 

ダンテ「人質なのに離れてたら逃げられるだろ。それより何で俺が悪の親玉なんだよ?ネロ、俺と代われ」

 

武蔵「提督、それを言うなら我々も同じなのだが」

 

あきつ丸「正義の味方が良かったであります」

 

鎮守府に一時的に居る武蔵と あきつ丸も巻き込まれていた。配役は悪の幹部と下っ端。

 

秋雲「秋雲さんが せっかく手伝ったんだから、ちゃんとやってよね」

 

キリエ「ネロ、子供達も楽しみにしてるから頑張ろ」

 

ネロ「それさえなければ・・・」

 

劇はネロと共に来た孤児達も見る予定だ。それがなければ、ネロは すぐにでも逃げ出したかった。逆にキリエは やる気だ。

練習の続きを始めようとしたが、大淀が報告に来た。

 

大淀「提督、元帥が来られたのですが・・・」

 

ダンテ「今どこに居る?」

 

大淀「執務室で お待ちです」

 

1人 練習から抜け出し、ダンテは執務室へ向かった。

 

 

*Devil May Cry鎮守府 執務室*

 

執務室ではダンテと元帥がソファーで向かい合っていた。

外には元帥と一緒に来た憲兵隊が待機している。

 

ダンテ「それで?連絡もナシに今日は何の用だ?」

 

元帥「敵側から和平の申し込みがあった」

 

ダンテ「知ってる。本人から聞いた」

 

元帥「会ったのか?」

 

ダンテ「色々あってな」

 

元帥「向こうは和平の条件として、お前が持つ石と、赤城が隠した石を渡すように言っている」

 

ダンテは目を細め、懐から黄色い光を放つ石を取り出した。

 

ダンテ「石って これの事か?」

 

元帥「単刀直入に言う。その石を渡せ」

 

ダンテ「それで めでたく和平 成立ってか?これを渡せば碌な事にならないぞ」

 

アーロンは石で魔界を復活させた。セリーナの話では、人を悪魔に変えた事もある。他にも何かあるかもしれない。渡すのは新たな危険を招く事になりかねない。

 

元帥「それは私も分かっている。奴は信用できない。だが政府は和平を承諾した。各国政府も同意している。石を渡すのは政府の決定だ」

 

アーロンは信用できない。だが政府の決定であれば、海軍は それに従わざる終えない。板挟みの状態で、元帥は政府の決定に従う事にした。

 

元帥「それを渡さなければ、お前を逮捕する事になる」

 

その言葉を引き金に、外で待機していた憲兵隊が執務室に雪崩れ込んできた。ご丁寧にダンテに向かって銃まで構えている。

ダンテは そちらを一蹴してから、元帥に向き直る。

 

ダンテ「赤城が隠した石は、もう向こうが盗んでいきやがった。条件を無視して盗みに入る奴に従うってのか?」

 

元帥「もう決定は覆せない。渡せ」

 

元帥も和平について、反対する意見は伝えてある。それでも政府は、この和平に一隅の望みを賭けたのだ。

調印式の日取りも決まっており、当日は各国の首脳陣も日本に来日する。

ダンテが石を渡さなければ、和平は破談になり、日本の世界的立場が危うくなる。

ダンテは、石を渡す他なかった。

 

ダンテ「どうなっても知らないからな」

 

元帥「・・・すまん」

 

石を受け取った元帥は、憲兵隊を引き連れて執務室から退室した。大本営に戻るのだろう。

1人 残されたダンテは愚痴る。

 

ダンテ「これだから役人は・・・。しかし困ったな」

 

しかし困った事になった。元帥の話では、和平の為の調印式が行われる場所は、憲兵の親戚が通う施設がある町。どういう巡り合わせか、ダンテ達が劇を行う日と重なっているのだ。もしかしなくても、当日は間違いなく面倒な事になる。

 

ダンテ「よう、頼みがあるんだ」

 

ダンテは あちこちに電話を掛け始め、どの相手にも何かを頼み込む。

電話が終わると、ダンテは執務椅子で静かに目を瞑り、動かなくなった。

 

 

・・・・・・

 

*施設*

 

調印式 当日、施設はピリピリとしていた。艦娘達は せっせと準備をしているが、保護者は落ち着かない。艦娘に対して いい印象を持っていないのが大半だが、近くでは深海棲艦との調印式が始まる。いつ反故にして深海棲艦が襲ってくるか分からない。落ち着けるはずがなかった。

保護者からは口々に愚痴が出て、只でさえ元気のない女の子の顔が曇る。憲兵は それを聞きながらも親戚の女の子を励ます。

 

憲兵「大丈夫だよ。これから おもしろいの見れるからね」

 

女の子「うん・・・」

 

憲兵「・・・・・・・・・」

 

どれだけ言葉を掛けても、元気が出ない。元気がない理由も分からず、どうしてあげるのが1番なのかも分からないままだ。

 

秋雲「何か、劇やる雰囲気じゃないけど・・・」

 

叢雲「いいから準備しなさい。司令官も予定通り進めろって言ってたでしょ」

 

村雨「その提督が居ないから困ってるんだけどね・・・」

 

初雪「・・・ネロも どっか行った」

 

施設のある町までは皆 一緒に来た。だが町に着くと、ダンテとネロは どこかへ姿を消してしまった。それから中々 戻ってくる気配がない。これでは準備が整っても始められない。

 

 

*浜辺*

 

浜辺では調印式の準備が行われていた。

相手が海から来るという事で、異例ではあるが、浜辺で調印式が行われる事となった。

各国政府の首脳陣は用意された椅子に座り、アーロンが来るのを待っている。側には、護衛の為に各国の艦娘が待機している。浜辺には元帥と大将、大和も待機している。

しばらくすると、艦娘や深海棲艦のように海の上を滑りながらアーロンが姿を現す。

 

アーロン「約束の物は用意していただけましたかな?」

 

元帥が警備兼護衛の人間に向かって頷く。それを見た男は、持っていた箱の蓋を開ける。中には黄色い石が入っている。アーロンは それを確認すると、同じく用意された椅子に座った。

浜辺には各局メディアも殺到し、生中継で その様子が放送されていた。

鎮守府で待機しているはずの横須賀提督が、人垣を掻き分けて現れた。

 

横須賀「元帥、大将、お話があります」

 

元帥「何をしている?鎮守府で待機と指示していたはずだが?」

 

横須賀「ご報告があります。ここでは あれですので、こちらに」

 

元帥と大将、大和は横須賀の提督に連れられ、調印式の場から離れた場所に移動した。

 

元帥「報告とは何だ?」

 

横須賀「現在、沖に出た先の岩山に深海棲艦が集結中です」

 

大将「それは間違いないのか?」

 

横須賀「はい、私の艦娘が飛ばした偵察機が確認しています」

 

元帥「しかし、どうして偵察機など・・・」

 

横須賀「全ては、ダンテ提督の考えです」

 

元帥「ダンテだと?」

 

ダンテが電話を掛けたのは横須賀鎮守府、舞鶴鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府、大湊警備府の各鎮守府にだった。

アーロンが出てくる以上、何もないはずがない。ダンテは調印式当日に、それぞれの鎮守府に艦隊を出撃させるように頼んでいた。

 

大将「お前の艦隊は いつ出撃できる?」

 

横須賀「今すぐにでも。横須賀だけでなく、舞鶴、呉、佐世保、大湊警備府の艦隊も近くで待機しています」

 

艦隊を出撃させれば、待機命令に背く事になる。軍人として、命令に背く事は許されない。だが、各提督は艦隊を出撃させた。ダンテの直感を信じる方を選んだ。

 

元帥「待て。先に動いて艦隊を出撃させれば、宣戦布告になるぞ」

 

大将「元帥、戦争は まだ終わっておりませんぞ」

 

元帥「・・・大和、お前も出撃しろ。連合艦隊の指揮を執れ」

 

大和「はい!連合艦隊 旗艦、大和、推して参ります!」

 

大和は艤装を展開し、海へ出た。

大和は各鎮守府の艦隊に自分の位置情報を打電する。すると、各鎮守府の艦隊が大和の元に集った。

連合艦隊は深海棲艦が集結している場所へと向かう。

元帥と大将、横須賀提督は調印式の場に戻り、3人は それぞれの首脳の秘書に何かを伝える。それを聞いた秘書は各首脳に耳打ちする。そして各首脳達は全員 頷いた。

調印式が始まり、各国政府の首脳とアーロンは椅子から立ち上がる。目の前の台に、書面が置かれる。

テレビを見ている者は、今か今かと固唾を飲んで見守っている。

 

アーロン「欲しい物は手に入ったので、この茶番も終わりにしようか」

 

アーロンは邪悪な笑みを浮かべながら、指をスナップする。だが何も起こらない。

 

アーロン「・・・・・・あれ?」

 

アーロンは予定が狂い、不思議に思いながら海の方を見る。

予定では深海棲艦が調印式を襲撃し、各国のトップを亡き者にするはずだった。なのに、深海棲艦は いつまで経っても来ない。

 

元帥「残念だが、深海棲艦は来ないぞ。こちらには、枠に囚われない馬鹿者が居るのでな」

 

アーロン「ダンテか・・・!」

 

大将「政府要人を避難させろ!」

 

大将の一声に、警備と護衛、憲兵隊が避難誘導を開始する。

 

 

*施設*

 

高雄「ゆっくり、落ち着いて避難してください!」

 

夕立「保護者の人は、子供から離れないようにしてほしいっぽい!」

 

町では避難警報が鳴らされ、艦娘達が居る施設にも聴こえていた。艦娘達は冷静に、施設に居る人間の避難誘導に徹する。

 

赤城「千歳さん、千代田さん、偵察機を飛ばして状況確認してください!」

 

「「了解!」」

 

施設の外に出た水母の2人は艤装を展開。すぐに偵察機を飛ばす。

 

 

*浜辺*

 

大将と横須賀提督が軍刀を抜き、アーロンに斬り掛かる。アーロンは素手で その刃を受け止めた。

アーロンの肌が白くなり、眼球が黒一色に変わる。

黒い目と目が合った大将と横須賀提督は、その異様な風貌に息を飲む。

 

大将「ぐぅっ!」

 

横須賀「あうっ!」

 

油断した隙に、2人はアーロンに吹き飛ばされた。

 

元帥「貴様・・・!」

 

アーロン「欲しい物は手に入ったから、帰ってもいいかな?」

 

アーロンは懐から黄色い石を取り出して見せびらかす。

だが おかしい。石は警備と護衛を兼ねた人間が今も確かに持っている。アーロンが持っているはずがない。

 

アーロン「手品だよ。種明かしは こうだ」

 

警備兼護衛の2人の男が、皮膚を脱ぎ捨てて中から悪魔が現れる。

人間の皮を被った悪魔が警備の人間に成り済まし、本物の石と偽物を入れ替えていた。調印式の場に現れた時には、アーロンは既に本物の石を手にしていた。

2体の悪魔が元帥に襲い掛かろうと向かってくる。勝てる見込みなどないが、元帥は軍刀を抜いて迎え打とうとする。

 

大将「いけません!」

 

横須賀「逃げてください!」

 

そこに、跳躍しながら銃を撃つダンテとネロが現れた。悪魔は無数の銃弾で蜂の巣になり、バラバラになりながら吹き飛んだ。

元帥の前に下り立つダンテとネロ。

 

ダンテ「だから言っただろ?と言っても、当たっても何か嬉しくないな」

 

元帥「ダンテ提督・・・」

 

ダンテは、あとは任せろと言わんばかりに笑い、アーロンに向き直る。

 

アーロン「悪いが相手してられない。帰るよ」

 

アーロンは背を向け、海に向かって歩き出す。

ネロが その背中にブルーローズを撃つが、アーロンの歩みは止まらない。

 

ネロ「銃じゃダメだ」

 

ダンテはリベリオンで、ネロはレッドクイーンでアーロンの背中から斬り掛かる。斬られているアーロンはフラつきながらも海へ向かう。

渾身の一撃を入れ、アーロンが倒れた事で その歩みが止まる。

だがアーロンは すぐに動き始める。

 

アーロン「だから・・・死ねないって言っただろ!」

 

立ち上がりながら振り返ったアーロンは、ダンテとネロの首を掴む。掴んだ状態で至近距離から魔力弾を放ち、ダンテとネロを吹き飛ばす。

吹き飛ばされた2人は受け身を取りアーロンの方を見るが、アーロンは既に姿を消していた。

 

 

*近海*

 

大和 率いる連合艦隊に海外艦も加わり、深海棲艦との戦闘も終わろうとしていた。

一斉射撃により、僅かに残っていた深海棲艦を撃破、轟沈していく。

任務を終え、無線を入れる。

 

横須賀扶桑「提督、こちらは終わりました」

 

横須賀『ありがとう。全員 帰投して』

 

横須賀扶桑「了解。艦隊 旗艦、帰投命令が出ました」

 

大和「分かりました。皆さんは帰投してください」

 

島風「早く帰ろ!」

 

横須賀山城「あ!待ちなさい!」

 

漣「ダンテ提督に よろしく言っといてください」

 

大和「伝えておきます」

 

五十鈴「提督、終わったから戻るわよ」

 

舞鶴『よくやった!パンケーキ作ったから早く戻ってこーい!』

 

漣「キタコレ!」

 

呉『うちの娘達も早く戻りなさい』

 

佐世保『帰投次第、引き継ぎ作業をして入渠しろ。以上だ』

 

大湊『適当に よろしく・・・』

 

各鎮守府の提督も、労いの言葉や帰投命令を伝え、それぞれの艦隊は自分達の鎮守府への航路を進む。

大和も それを見送り、元帥達の元へと戻った。

 

 

・・・・・・

 

*浜辺*

 

元帥「すまん、石は盗られてしまったな・・・」

 

アーロンは最初から、和平を結ぶ気などなかった。挙げ句の果てには、石まで奪われる始末。

それなのに、ダンテとネロはニヤニヤしていた。笑いを堪えようにも、堪えきれない。

そんな2人を気持ち悪いと思ってしまった元帥と大将、横須賀提督は顔を しかめる。

 

ネロ「ダンテ」

 

ダンテ「もう ちょっとだけ」

 

ネロ「ダメだ・・・早く言えって・・・ぶはっ!」

 

堪えきれず吹き出すダンテとネロ。

もう訳が分からない。

 

ダンテ「はぁ~、おもしれぇ。石って これか?」

 

ダンテは懐から、奪われたはずの黄色の石を出して見せる。それを見て元帥と大将、横須賀提督は更に混乱する。

 

元帥「お、おい、説明しろ」

 

ダンテ「目に見える物だけが真実じゃない。つまり こういう事だ」

 

ダンテが元帥に渡した石は偽物だった。

アーロンから和平の話を聞いた時点で、この石を渡すのを条件の1つに組み込んでくるのは予想していた。

だが、ただ偽物を用意するだけでは駄目だ。石は魔力を放っている。そこでセリーナにも協力してもらい、アクリル素材で加工した偽物に、僅かな魔力を込めて造ったのだ。

つまり、アーロンは偽物と偽物を入れ替えて持ち帰っただけだった。

 

ダンテ「しっかし笑えたな。普段 石頭の あんたが素直に謝るなんてな」

 

元帥「う、うるさい・・・」

 

普段なら、こう言われれば怒鳴り散らしていただろうが、今回は自分の責任でもあるので、強く反論できない。

そこに鈴谷が駆けてくる。

 

鈴谷「提督ー!」

 

ダンテ「おう、鈴谷か」

 

鈴谷「おう、じゃないよ!劇どうするの?避難警報も鳴って大変だったんだから!」

 

ダンテ「そうだなぁ・・・天気もいいし、ここでやるか?」

 

鈴谷「え、ここで?」

 

大将「何をするつもりだ?」

 

ネロ「地域貢献と艦娘のイメージ改善だってさ」

 

 

・・・・・・

 

劇は とんでもない事の連発だった。ダンテのアドリブ元い悪ふざけ。夕張のミスで赤城の服が燃える。セリーナの天然ボケと言うかバカ正直さで、一般人が見てる前で魔力弾を発射。都合の悪い事は全て苦しい言い訳で躱した。

トラブルはあったが、劇は成功と言えた。子供達は しっちゃかめっちゃかな劇に大喜び。保護者も最初の頃とは違い、トラブルに狼狽える艦娘の人間臭さに、最後は笑みを浮かべていた。調印式に集まっていたメディアも、急遽 艦娘達の劇を撮影して放送した事で、多くの人が艦娘のイメージを改める事となった。

劇が終わり、見ていた人達やメディアも解散する中、憲兵の親戚の女の子は、最後まで笑顔を見せる事はなかった。当初の目的が達成されていない事に、皆も困ってしまう。

そこでキリエが動いた。キリエは少女に目線を合わせるように しゃがむ。

 

キリエ「ねぇ、楽しくなかったかな?」

 

キリエの問い掛けに、少女は首を横に振る。楽しくなかった訳ではないようだ。

キリエは、もう少し踏み込んだ質問をする。

 

キリエ「皆、あなたの笑顔が見たくて集まったの。あなたの願いは何かな?教えてくれる?」

 

少女「私ね・・・」

 

少女は海が好きだった。いつか、自由に海に出たいと思った。だが、足が不自由な自分は、1人で外に行くのもままならなかった。車椅子があれば、行けない事もない。それでも、周りの人に心配や迷惑を掛けてはいけないと思い、これまで そんな我儘を言わなかった。まだ子供である為に、1人で外を出歩く事も許されなかった。それでなくても、海には深海棲艦が居る。自分は一生 海には出られないと憂い、いつしか笑顔を見せる事がなくなった。

 

憲兵「お前、そんな事を考えてたのか?」

 

憲兵も そんな事は知らなかった。恐らく少女の両親でさえ知らないだろう。

少女の話を聞き、憲兵は自分の無力さを痛感した。自分では、この子を海の上に連れてってやれない。望みを叶えてやれない。

だが、いつだって希望はあるものだ。近過ぎて見えていないだけで。

 

あきつ丸「海なら、行けるでありますよ」

 

少女「え・・・?」

 

あきつ丸「これに乗るであります」

 

あきつ丸は艤装を展開し、大発動艇を見せる。

憲兵は本当にいいのかと、ダンテを見る。

 

ダンテ「まぁ、いいんじゃないか?ちょっとだけなら」

 

あきつ丸、天龍、那珂、吹雪、暁、春雨で艦隊を組み、大発動艇に少女を乗せて海に出た。

浜辺では、憲兵がダンテと話していた。

 

憲兵「提督、今日は ありがとうございます」

 

ダンテ「別に」

 

憲兵「俺1人じゃ、何にもできないなぁ・・・」

 

ダンテ「だが お前がやった事は、ムダじゃなかったと思うぜ」

 

憲兵「え?」

 

ダンテ「お前が どうにかしようと動いたから、俺達が訳の分からん劇をする事になって、あの お嬢ちゃんの願いも叶えられたんだからな。前向きに考えろ」

 

憲兵「そうですね。そう考えるようにします」

 

 

*海*

 

少女「凄い凄い!私、海の上に居る!」

 

少女は やっと笑顔を見せた。それを見た艦隊メンバーも、一安心で自然と笑みが溢れる。

 

少女「いつも こうして海に行くの?」

 

吹雪「いつもは陣形を組むんだよ」

 

少女「じんけい?」

 

天龍「よーし、単縦陣!」

 

艦隊は縦一列になり海を進む。そして複縦陣、輪形陣へと陣形を変えていく。

少女は綺麗に陣形を変えていく艦娘を見て、眼をキラキラとさせている。

 

少女「私、大きくなったら艦娘になる!」

 

吹雪「えっ!?」

 

春雨「えっと、それは どうなんでしょう?」

 

那珂「う~ん・・・」

 

あきつ丸「艦娘になるのは無理でありますが、提督にはなれるでありますよ」

 

少女「ていとく?」

 

天龍「俺達 艦娘の・・・何て言えば分かりやすいだろうな?・・・リーダーみたいな奴だ」

 

少女「じゃあ私、提督になる!」

 

天龍「マジか。じゃあ提督になれる日が来たら、今の提督 追い出すか?」

 

暁「司令官 追い出しちゃうの!?」

 

那珂「提督 可哀想」

 

天龍「あいつ気にしねぇだろ」

 

天龍は笑って答える。これも冗談だからこそ言える話だ。

空は、少女の笑顔のように気持ちのいいぐらいの晴天だった。

 

 

・・・・・・

 

*???*

 

無機質な場所に、アーロンは黄色の石を持って台の前に立っていた。

他の台には、それぞれ赤、青、緑、紫、白、黒の石が置かれている。アーロンは手に持つ黄色の石を、空いている最後の台に置く。

まだ偽物とは気付いていない。

 

アーロン「これで全て揃った。あとは、仕上げを待つだけ・・・なっ!?」

 

野望が成就する事を確信していると、黄色の石が割れた。偽物の石は、僅かとは言え魔力を留めておくのに限界が来て割れた。

アーロンは、ダンテに一杯 食わされたと すぐに気付いた。

 

アーロン「ダンテェエエエエ!!」

 

無機質な部屋に、アーロンの怨嗟の声が木霊する。




次回は・・・この話にあった劇の様子を簡単に纏めた話にしようと思っています。
本筋の話とは殆ど関係なく、悪ふざけで執筆しますので、そういうのが苦手な方は、飛ばして95話の方へ進んでください。
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