さて、本編に戻ります。
95話です!どうぞ!
*南方海域 某所*
神通、那珂、吹雪、初雪、村雨、五月雨の6隻で編成された第4艦隊は、南方海域の偵察に来ていた。
艦隊は1ヶ所に留まり、神通と那珂が発艦した偵察機の帰還を待っていた。
吹雪「偵察機、戻ってこないなぁ・・・」
村雨「焦っても いい事ないわよ。気長に待ってましょ」
吹雪「うん・・・」
その後も しばらく待つが、偵察機は戻ってくる気配がなかった。
旗艦である神通は、最悪の状況が頭に過る。
すると、艦隊の頭上を敵偵察機が通り過ぎる。
五月雨「敵偵察機!?」
初雪「これ、見付かったかも・・・」
神通「えぇ、確実に見付かりましたね」
艦隊は海面から飛び出した岩場に隠れていたのだが、空からは丸見えだった。
恐らく こちらの偵察機も既に見付かっており、破壊されているだろう。
旗艦の神通は すぐに判断を下し、随伴艦へ指示を出す。
神通「全速力で現海域を離脱、五月雨さんは鎮守府に打電を!」
五月雨「はい!」
*Devil May Cry鎮守府 指令室*
大淀「提督、第4艦隊から入電、敵偵察機に発見されたようです!」
今回の作戦は横須賀鎮守府との共同作戦だった。Devil May Cry鎮守府の艦隊が敵の動きを偵察し、夜間に横須賀鎮守府の艦隊と奇襲を掛ける手筈だった。
ダンテ「おいおい、見付かったら作戦が台無しだ」
大淀「敵艦隊、動き出したようです!」
ダンテ「赤城、加賀」
加賀「赤城さん、ここから支援を出しても間に合いません。後方の横須賀の艦隊に前に出てもらいますか?」
赤城「・・・いえ、横須賀の艦隊には待機してもらいましょう」
ダンテ「理由は?」
赤城「深海棲艦の動きが気になります。このまま敵艦隊を釣り上げ、横須賀の艦隊が待つ海域まで誘い込みましょう。第4艦隊と横須賀の艦隊に打電!」
大淀「了解!」
・・・・・・
*南方海域 某所*
神通達 第4艦隊は すぐに その場から離脱したが、艦隊の後方から敵水雷戦隊が追ってきていた。
鎮守府からの入電により、横須賀鎮守府の艦隊が待つ海域を目指す。
那珂「神通ちゃん、あれ!」
那珂が指 指す方向からは、空母ヲ級flagshipを主軸にした空母機動部隊が接近してくる。
敵空母機動部隊は、艦隊の前方に回り込むように動いている。このままでは、後方から追ってくる敵艦隊と挟み撃ちにされてしまう。
吹雪「どうして・・・」
最近、深海棲艦の動きが妙な事になっている。
別件で深海棲艦の偵察をし、深海棲艦の討伐に出た時があったのだが、深海棲艦は 忽然と姿を消していた。まるで艦娘が来る事を察知していたように。
そして今回も、横須賀鎮守府の艦隊が待つ海域まで後退する事を知っているかのように、道を塞ごうとしている。敵は こちらの動きを見抜いていた。
更に、敵空母機動部隊は艦載機を発艦、艦隊に迫る。
神通「(このままでは、追い付かれる・・・!)」
*Devil May Cry鎮守府 指令室*
大淀「敵空母機動部隊が現れました!」
加賀「何ですって!?」
次の指示を出す前に、横須賀提督から通信が入る。
横須賀『ダンテ提督、やっぱり敵の動きが おかしいわ』
ダンテ「そっちの状況は?」
横須賀『戦艦を基幹・・・た敵艦隊・・・て・・・よ』
ダンテ「おい、よく聞こえないぞ。大淀」
大淀「分かりません。・・・何かと混線してる?」
横須賀「ダン・・・く、こっ・・・は交戦中よ!」
ダンテ「交戦中?これは罠だ」
赤城「どういう事ですか?」
ダンテ「嵌められたんだ。敵は こっちの動きを知ってる。艦隊が あそこに来る事を知ってたから、先手を打ってきたんだ」
加賀「赤城さん・・・」
赤城「くっ・・・」
赤城は、他に何か手が無いか考える。
必死に頭をフル回転させて考えていると、ダンテが動いた。
ダンテ「俺が行くしかねぇな」
加賀「待って!まさか、また あれをするつもり?」
鎮守府から第4艦隊が居る海域までは、どれだけ飛ばしても1日か2日は掛かる。それを短時間で行くとなると、方法は1つしかない。
それは嘗て、幽霊船を操る海賊を追った時に、ダンテが艤装に魔力を送り込み、通常より速いスピードで海上を移動した事があった。
だが その時は、艤装がダンテの魔力に耐えきれず、煙を上げて壊れてしまった。行きは良くても、戦闘中や帰りに動かなくなってしまう可能性がある。加賀は それを心配している。
ダンテ「海を渡る方法は、1つじゃない」
加賀「提督!」
ダンテは加賀の制止を躱し、指令室から出ていってしまった。
ダンテが出た直後、赤城は何かを閃いた。
赤城「大淀さん、第5艦隊は どうなっていますか?」
大淀「現在、鎮守府へ帰投している途中です」
赤城「第5艦隊に反転して第4艦隊の支援に向かうよう伝えてください」
大淀は赤城の指示に従い、別任務で出撃していた第5艦隊に打電する。
*港*
ダンテ「頼むぜ、相棒」
ダンテは、港に停泊させていた幽霊船に乗り込んだ。舵を握り、赤黒い帆が下りる。
そこに、偶然 通り掛かった艦娘が居た。
羽黒「司令官さん、何してるんですか?」
妙高「提督、今は作戦行動中では?」
ダンテ「お前らは、確か羽黒の姉貴だったか?」
そこに居たのは、妙高型 姉妹である妙高、那智、足柄、羽黒の4人だった。
ダンテ「丁度いい。お前らも乗れ」
那智「どこに行くつもりだ?」
ダンテ「仲間のピンチってやつだ」
妙高型は、訳も分からないまま幽霊船に乗り込んだ。
錨が巻き上げられ、突風が吹く。帆が突風を受け止め、尋常ではない速さで海を進む。
目指すは南方海域。
・・・・・・
*南方海域 某所*
初雪「こっち来ないで・・・!」
艦隊は、頭上を飛び交う敵艦載機を撃ち落としながら堪え忍んでいた。
しかも、後方からは敵水雷戦隊の砲雷撃も来る。
攻撃を躱し反撃するが、現状を打破するには至っていない。
那珂「もー!那珂ちゃんは皆のものなんだから!いたっ!?やめてってば!」
吹雪「神通さん!」
神通「支援が到着するまでの辛抱です!」
少しずつ被弾する回数も増えていく。このままではジリ貧で、最悪 轟沈する者まで出てしまうかもしれない。
それでも第4艦隊の面々は、支援が来ると信じて奮闘する。
比叡「三式弾、撃ちます!」
そこに、どこからか三式弾が飛んできた。連鎖的な爆発が起き、敵艦載機は纏めて墜落する。
神通「あれは・・・!」
吹雪「第5艦隊!」
瑞鶴「どうにか間に合ったわね」
鎮守府に帰投途中だった第5艦隊が到着した。
敵空母機動部隊は、次の艦載機を発艦。敵艦載機が艦隊を狙う。
翔鶴「行くわよ、瑞鶴」
瑞鶴「うん、翔鶴姉」
「「艦載機 発艦!」」
翔鶴型の2人も艦載機を発艦して迎え撃つ。第5艦隊は それに続き、敵空母機動部隊に向かっていく。
空からの攻撃は、第5艦隊が引き受けてくれた お陰で止まった。残るは、後方から迫る敵水雷戦隊だけだ。
その敵水雷戦隊も、どこからか砲撃を受ける。
五月雨「妙高さん!?」
羽黒「皆、大丈夫?」
吹雪「羽黒さん」
那珂「でも どうして・・・?」
鎮守府から出撃しても、とてもじゃないが間に合うとは考えられない。第4艦隊は、 ここに妙高型が居る事が不思議で仕方なかった。
足柄「提督の船の お陰よ」
神通「提督の・・・」
初雪「司令官・・・どこ?」
那智「提督は横須賀の艦隊を支援してる」
妙高「私達は敵水雷戦隊の相手をしますよ」
足柄「この飢えた狼と呼ばれた足柄の実力、見せてあげるわ!」
那智「今度は こちらから行くぞ!」
妙高の言葉に全員が頷き、第4艦隊と妙高型は敵水雷戦隊へ攻撃を始める。
*南方海域後方*
ダンテは横須賀鎮守府の艦隊と協力し、敵艦隊と交戦していた。
ダンテ「Fire!」
幽霊船の片舷に備え付けられた大砲を一斉射する。無数の砲弾が、敵艦隊に降り注ぐ。
横須賀鎮守府の艦隊も それに続き、砲雷撃を繰り返す。
戦艦を基幹戦力とした敵艦隊は轟沈した。
横須賀摩耶「助かったぜ、ダンテ提督」
ダンテ「お役に立てて何よりだ。もう作戦は頓挫してる。お前らは鎮守府に戻れ」
横須賀 摩耶「あんたは?」
ダンテ「俺は自分とこの お嬢ちゃん達を助けに行く」
横須賀 摩耶「待てよ。だったら あたしらも・・・って、もう行っちまいやがった」
横須賀 鳥海「別の鎮守府とは言え提督の指示だから、私達は鎮守府に戻らない?」
横須賀 摩耶「しょうがねぇ、そうするか」
横須賀鎮守府の艦隊はダンテの言葉に従い、海域を離脱して鎮守府への航路を執る。
・・・・・・
*南方海域 某所*
第5艦隊と妙高型が駆け付けた事で、敵の戦力が分散して戦況が好転した。
そこへ、幽霊船に乗ったダンテも駆け付ける。
ダンテは甲板でパンドラをガトリング砲に変形させ、上空に残っている敵艦載機を撃ち落とす。
幽霊船は大砲を発射し、敵水雷戦隊へ砲撃。
追い詰めていたはずが、逆に深海棲艦が追い詰められる状況となる。
状況が好転してから深海棲艦を全て撃破するまで、そう長くは掛からなかった。
・・・・・・
*大本営 会議室*
近頃の深海棲艦の動きから、大本営で緊急会議が行われた。会議には、各鎮守府の提督にも出頭命令が出された。
提督達の後ろには、それぞれの秘書艦が控えている。
元帥「深海棲艦が妙な動きをしているのは諸君も理解しているはずだ。現場を よく知る君達の意見が聞きたい」
佐世保「確かに、最近の深海棲艦は どこか利口です。偵察で事前に得た情報と合致しない動きが頻繁に見られます」
横須賀「どこも同じね。北方海域の方は どうなの?」
大湊「同じだよ・・・」
呉「それよりも不自然なのは、こっちの動きを全て把握してるような気味の悪さね」
舞鶴「こっちも、物資の確保に必ず邪魔が入るんだよな~・・・」
深海棲艦は こちらの作戦を知っているかのように、こちらの予想を上回った動きを見せている。
佐世保鎮守府が睨みを利かしている西方海域。大湊警備府が睨みを利かしている北方海域。それ以外の海域をカバーしているDevil May Cry鎮守府、横須賀鎮守府、呉鎮守府。裏方で資材の確保に奔走している舞鶴鎮守府。どの鎮守府でも、状況は同じだった。
元帥「ダンテ提督、お前は どう思う?」
ダンテ「どうって?」
元帥「お前は直接 深海棲艦を見ているだろ」
ダンテ「直接 見てても すぐに沈めるしなぁ・・・。だが明らかに、こっちの動きは全て把握されてるな。また内通者でも居るんじゃないのか?」
元帥「本気で言ってるのか?海軍に裏切り者が居ると」
佐世保「それは重大な告発と見なすぞ」
ダンテ「なら、逆に100%ないと言えるのか?」
過去、海軍に裏切り者は確かに居た。可能性としては有り得ない話でもない。
ダンテの発言に、会議室の空気が重苦しいものとなる。
大湊「・・・その考えは いい線 行ってると思うよ」
大湊提督は不敵な笑みを浮かべながら、ダンテの意見に賛成する。
元帥「お前まで言うのか」
横須賀「どういうこと?」
大湊「裏切り者が居るか どうかは兎も角、情報が漏洩してるのは間違いない」
横須賀「どうして情報漏洩なんか・・・。でも誰が?」
大湊「軍人やってて そんな事も分かんないの・・・?」
横須賀「何ですって!!」
舞鶴「おおおおおお落ち着けって!」
大湊提督の発言に、横須賀提督が激怒して机を叩きながら立ち上がる。
舞鶴提督も慌てて止めに入り、無理矢理 椅子に座らせる。
大湊「情報を漏洩させてるのは、ここに居る僕ら全員だよ・・・」
舞鶴「うん、うん、うん・・・どういうこと?」
横須賀「はぁ!?意味 分かんない!」
佐世保「お前、自分で何を言ってるのか分かってるのか?」
大湊提督の意見が理解できず、横須賀提督と佐世保提督は大湊提督を睨む。非は自分達にあると言われ、心当たりのない事で咎められれば、納得できないのは当然だ。
大将「説明しろ」
大湊「はい・・・。我々は、作戦行動中は通信を使います。無線通信、暗号通信。敵が それを傍受している可能性があります・・・」
大将「根拠は?」
大湊提督が言う根拠は、これまでの人間同士の戦争を見れば分かると言う。
戦争において、敵の情報は重要だ。技術が発展してからは、戦争において敵の通信を傍受するのは重要とされている。敵を知ってこそ、勝利がある。戦争では、大昔から情報戦が激しく行われていた。
そうでなくても、今の時代、海外では一般人の知らない所で各国がスパイを送り合い、水面下で情報戦が常に行われている。それ程までに、情報戦は戦争の中では重要だ。
大湊「深海棲艦が同じ事をしていても、何ら不思議な事ではありません・・・。艦娘の皆だって、それは理解してるんじゃない?」
各提督の後ろで控えている艦娘は、どこか納得しているような顔をしていた。
嘗て船だった頃の戦争でも、情報戦は珍しい光景ではなかった。
横須賀「無線は分かるけど、深海棲艦が こちらの暗号を解析できるの?」
大湊「深海棲艦の動きが変わったのは、今に始まった話じゃない・・・。あのドクターを名乗る男・・・」
ダンテ「アーロンだな?」
大湊「そう、それ・・・。あの男が現れてから、深海棲艦の動きは活発になった・・・」
つまり、大湊提督は、深海棲艦が海軍の通信を傍受しているは、アーロンの仕業ではないかと言いたいのだ。
アーロンは科学者だ。通信を傍受し、尚且つ暗号を解析するのも容易だろう。
確かに話の筋は通っている。
佐世保「それは お前の推測だろ」
大湊「もう1つ・・・通信の時にノイズが走る時がある・・・。外部からの介入で混線してる可能性がある・・・」
もし仮に傍受されているなら、困った問題が出る。作戦行動中は、無線通信、暗号通信が使えない。連絡手段が断たれる事になる。そうなると、各鎮守府や大本営との連携も取れなくなる。
呉「困ったわねぇ・・・。人間同士での戦争の話だけど、戦場で1分間 無線が使えないと、兵士が10人 死ぬと言われてるわ。それが24時間 以上 使えないとなると、被害は計り知れない事になる」
戦争の ど真ん中で無線が使えなくなった兵士は孤立する。それは、死の確率が上がる事を意味する。状況によっては確実に死ぬ。
恐らく、シールズ時代や傭兵時代に培った知識だろう。
横須賀「・・・何でダンテ提督を見ながら喋ってるの?」
呉「教えてあげようと思って♪」
ダンテ「勉強になるな」
呉「でしょ~。もっと頼っていいのよぉ~ん♪」
問題は それだけではない。
暗号通信を傍受されているなら、暗号を変えればいいと そんな簡単な話でもない。暗号を変えれば、指揮系統も変わる。一気に変えてしまえば、組織の中で混乱が生じる。少しずつ変えていく必要があり、海軍全体に浸透させるには時間が掛かる。
各鎮守府で暗号を作る手も考えられるが、それも各鎮守府や大本営との連携が取れない話に繋がる。
かと言って、新たな通信手段を確保するまでに、何もしない訳にもいかない。深海棲艦は待ってはくれない。通信が使えない上で、早急に判断を下さねばならない。
大将「元帥、どうされますか?」
元帥「通信手段については こちらでも考える。各鎮守府は、必要最低限で通信を使うようにしてくれ。まだ敵が通信を傍受していると決まった訳ではないからな。以上、解散!」
この日の会議は、これにて解散となった。
・・・・・・
*車内*
鎮守府での帰り道、ダンテと赤城は車で帰路に就いていた。
赤城「提督、あの話、どう思われます?」
ダンテ「深海棲艦が こっちの通信を傍受してるかもって話か?」
赤城「はい」
ダンテ「何にせよ、やる事やるしかないだろ。最悪、俺達だけで動く必要は出てくるな。他の提督も、今頃 同じ事を考えてるだろうさ」
赤城「そうですね・・・」
・・・・・・
*南方海域 深部*
南方海域の深部では、海がポッカリと穴が空き、そこから天に向かって黒い光の柱が伸びていた。
この状況が意味するのは いったい・・・?
次回も よろしく お願い致します!