「ソーたん、ソーたーん」
るんるん気分のソーナ先輩のお姉さんに、私は困惑しつつ、その様子を見守っていた。
いや、あのね。さっきまでお風呂にいた人が突然出てきたと思ったら、今度はソーナ先輩に抱きついてたの。つまり、全裸。
立派なお胸をお持ちのようで。少しくらい分けてくれてもいいよね? と思いながら、私は服を脱ぎ始める。
触らぬ神に祟りなし。そんな諺もあるわけだし、ソーナ先輩とお姉さんの交流に手を出さないでおこう。
最近習った気配遮断術で、さっさとお風呂に入っていく。
「あ! こっちには小さいソーたん!? なになに、ソーたん分身の術が使えたの!? それも、こんな成長期真っ只中みたいな姿に!?」
こっちにきたぁ!?
私は全裸のソーナ先輩のお姉さんに、抱き締められた。
うにゃぁ! その胸どけろー。もげろー。あ、でもなんか柔らかくて気持ちいい……。
そんなことを思いながら、お姉さんに身を任せる。
「お姉様! 彩南に手を出すのはお止めください!!」
「あやな? あやな……あ、もしかしてお母様が言ってたあーたん!! もー、それならそうと先にいってよー。あーたんのためにソーナちゃんのよく利用している服屋さんにオーダーメイドさせてた衣装持ってきたのに」
「彩南に……あれを?」
「そうよ! かわいいと思わない」
「かわいいと思いますけど、彩南の教育に悪いので却下です!」
「なんで!? ソーナちゃんとにてるって話だったから、八歳くらいの時のソーナちゃんの写真だして、サイズを計算してもうつくったって言うのに!?」
「なぜ、彩南の身長が低いって知ってるんですか!?」
「そ、それは……」
あれ? よく見ればこの人、見覚えがあるぞ?
「もしかして、セラフォルー先輩?」
「気づいてくれた!? もー、あーたんってば、心臓の音から誰か判別できるのに、あたしに気づくの遅すぎよー?」
「い、いやぁ、そのぉ」
「あ、もしかして、髪下ろしてるから? でも、心音でわかるよね? そっか。あのときはちょっと身長を低くして低血圧に調整してたからわからなかったのかぁ。なるほどなるほど」
「そんなことできるんですか!?」
「乙女のたしなみよん」
間違いない。この人、セラフォルー先輩だ。
ゲームセンターで中々魔法少女のフィギュアがとれなくて、泣きそうになってたセラフォルー先輩だ……。
私はセラフォルー先輩との出会いを思い出していた。
「お姉様、少しお話があるので、服を着てくださいますね?」
「そ、ソーナちゃん? もしかして怒ってる?」
「いえ。悪魔の長の一人としての自覚が足りないようですので、少しお説教が必要と思いまして。彩南。一人ではいれますね?」
「はい!!」
私は声を張り上げて返事をする。
セラフォルー先輩に手を貸してあげたいけど、ソーナ先輩のお説教に巻き込まれるのはごめんだ。許して、セラフォルー先輩。
私は、服を無理やり着せられ、脱衣所から引っ張られていくセラフォルー先輩に黙祷した。
脱衣所から二人が見えなくなると私はお風呂場に入る。
相変わらず広いなぁ……。最近、ソーナ先輩と一緒に入る事が多かったから、ちょっと寂しいかも。
遠くから聞こえてくるソーナ先輩のお説教を聞きながら、私は体を洗っていった。
半泣きのセラフォルー先輩の声は聞こえなかったことにしよう。そうしよう。うん。
湯船に浸かりながら、二人が戻ってくるのを待つ。
だって、一人でいるの寂しいんだもん……。
数分くらいたつと、二人は戻ってきた。
「ただいまーあーたん。一人で寂しくなかった?」
「大丈夫でしたよ。はい。ちょっと、逆上せそうになったから、湯船から出たり、体が冷えてきたから浸かり直したりを繰り返しましたけど」
「ねぇ、ソーナちゃん」
「お姉様、考えていることはよくわかりますよ」
「あーたんが忠犬属性持ってるなんて、私知らなかったわ」
失礼な!? 私、今もセラフォルー先輩に撫でてもらってるけど、別に気安く差し出してる訳じゃないんだから!
セラフォルー先輩の手、気持ちいいなぁ。こう、女の人の手って感じで、もう、身も心もこの人のものになりそうな位には気持ちが良い。
撫で手マイスターの私が言うのだ。間違い。
「お姉様?」
「良いじゃない、ソーナちゃん。あーたんとは久しぶりにあったんだから。ね?」
頭を撫でられてベロンベロンにとろけてる私は、ふらーっと、セラフォルー先輩にもたれ掛かった。
「……彩南?」
「もしかして、逆上せてる?」
「そんらことないれふよー?」
あれー? 呂律が回らない。あと、心なしか頭がふらふらする。
あ、でも、セラフォルー先輩の体柔らかいなぁ。なんだろう、安心感がある? ソーナ先輩たちとは違った魅力があるんだよね。
私は、朦朧とする意識のなか、一言たぶん、セラフォルー先輩かな? に言った。
「ま、まぁ……」
「いま、ママって言った!? ねぇ、ソーナちゃん聞いた? あーたん今、ママって言ったよ!!」
「『まあ』と言えなかっただけかもしれません。この子、親にたいしてはあまり良い感情を抱いていませんから」
「ソーナちゃん、それは無理あるわよ? まあ、良いわ。あーたんが逆上せちゃってるし、上がっちゃいましょ。ねぇねぇ、そーたん。今日は三人で一緒に寝ない?」
「はぁ……ダメ、といっても聞かないでしょう?」
ちょっと、飛んでしまった意識のなか、私はむにゅぁと、セラフォルー先輩の胸に全体重を預けた。
※※※
意識がない彩南を抱え魔力で作った氷を側におき、膝枕をしているセラフォルーは、ソーナと対面していた。
ソーナの目的は、セラフォルーがなぜ彩南と知り合いだったのか……というわけではなく、というか、その話はすでに彩南の前で、ソーナの部屋に連行されたときにすべてはいた。
話を少し戻すと、ソーナの目的は、その話の中で出ていた、『セラフォルーの養子として彩南を貰う』という計画である。
ソーナとしてはどこまで計画されているのか気になるのだ。特に彩南がいつ、どこで、何時何分何秒にセラフォルーの娘として確定するのか、それが、気になって気になって仕方がない。
内心穏やかではないソーナは、セラフォルーにその事を尋ねる。
「あーたんが私の娘になりたいって言ってくれれば、ほぼ確実にいけるわ。まあ、少し時間がかかるでしょうけど、大丈夫。ちょっと、法律とかに詳しい昔馴染みがいるから」
「そうなんですね。でも、驚きました。彩南とお姉様が知り合いだったなんて」
「私も驚いたわよ? あーたんがソーたんの眷属になってるんだから」
「彩南の人脈の話は聞いていましたけど、お姉様にまで届いてたとは……」
「サーゼクスちゃんも私経由で知り合ってるわよ?」
「……………………」
ソーナはセラフォルーの発言により、言葉を失った。
下手すると人脈だけで見たら自分よりも上かもしれない。そう言えば、自衛隊や忍者、最近だと医者(あれを医者というのかは甚だ疑問)や心理学者(車イスが多機能すぎて車イスしてない車イスに座っている女性)と知り合っていた気がする。
そんなことを思いだし、軽い頭痛を起こした。
「そう言えば、あーたんの両親、パチンコ業界では結構有名人みたいよ。一部のお店では出禁を食らうほどの幸運の持ち主とかで」
「有名なのに、なぜ?」
この『なぜ?』には、おそらく、『なぜ、有名人なのに、他の関係者が彩南に一度たりとも目が向かなかったのか、また、ごみ屋敷同然の環境なのか』という、二つの疑問が織り込まれているのだろう。
それに対するセラフォルーの回答が。
「たぶん、うまく隠していたんでしょうね。それこそ、家の付近に知り合いを近づけないように工夫したり、誰かにあーたんの存在が感知されたときのための保険をたくさん用意しておいたり……それに、そんなことを普通の人間ができるとは思えないわね」
「つまり……」
「悪魔かそれとも高位の魔法使いか……まあ、でも、それは定かではないわね」
「この子の魔力が中級悪魔並みだったのも、それが関わっているのかもしれないですね」
「そうね。あーたん、オーラと耳を併用して誰がそこにいるか特定してるみたいだから」
そこにソーナは「いえ、違いますよ」と、セラフォルーに反論する。
「彩南の耳の良さはオーラがどうのこうのというのは関係ありません。聴力という機能が人よりも数倍あるというだけです。まあ、ここ最近はオーラという概念を知って、魔法や結界術を憐耶や桃からまなんでますよ」
「あ、あの子……身一つであんなことしてたの……!?」
「あんなことがどれを指しているのかは知りませんが、まあ、大抵はそうですよ。間接の動き、心拍、血圧、呼吸といった、音を発するものであれば、あの子の聴力の届く範囲ですべて把握できるみたいです」
「ソーナちゃん的には手札が増えるし、レーティングゲームの学校を作るときの諜報員の教師にしたいわけね?」
「はい。あの子の諜報能力は十分な伸び代があります。結界術はそれらに付随した隠密行動や野営地の設営のために、魔力運用はいざというときの防御手段、武器も同様ですね。後は、あの子の人脈にSHINOBIがいるらしいので、その方からの教えをどこまで身に付けられるかによりますね」
「それじゃあ、憐耶ちゃんの役目がなくなっちゃうんじゃないの?」
「憐耶には別のことができるよう、計画中です」
「それで、それで、匙くんの成長計画とかどんなことを考えてるの?」
「サジにはサポートタイプとしての立ち回りと、ラインの強化ですね。『黒い龍脈』がどこまで伸びるのかわからないですが、相手を足止め、そこに彩南の狙撃というのも考えてあります」
「全方位で活躍できるようにあーたんを成長させようってことね……」
二人はそんな会話を繰り広げながら、彩南に服を着せ、おぶってソーナの部屋に向かう。
ちなみに背負っているのはセラフォルーで、ジト目で睨んでいるのがソーナである。
なぜにらむのか? それは決まっている。公正公平な
そのあとは三人仲良く、同じベッドで彩南を中心に、一緒に寝た。
※※※
朝、目を覚ますと、隣にソーナ先輩とセラフォルー先輩がいた。
うーん、二人とも、まだ寝てるよね? なら、もう一回寝てもお説教はないはず! おやすみなさい。
私は心のなかでそう言って、ソーナ先輩に抱きついて眠ろうとした。
「おはようございます、彩南」
だけど、それはかなわなかった。私が抱きついた瞬間、ソーナ先輩が目を覚ましたからである。
うぅ……私の熟睡二度寝タイムがぁ……。ソーナ先輩に優しく起こして貰う予定がぁ……。
「眠いんですか?」
「はいぃ……」
「仕方ないですね。五分だけですよ?」
「ありがとうございますぅ」
「もう……お姉様はまだ寝てますね」
そんな声が聞こえてくる中で、私は深い眠りについた。あ、ちゃんと五分後には起きるからね? ソーナ先輩の「時間ですよ? 起きてください」を聞いてからね。
五分後、ソーナ先輩は「時間ですよ? 起きてください」という一語一句間違えなかった私の予想通りの起こし方で起こしてくれた。
ソーナ先輩の声は好きなんだよね。こう、凛としててけど、慈悲深い感じで。匙先輩にとっては厳しい感じらしいけど、愛ゆえにって感じがしてなんか、お母さんよりお母さんらしい人柄だと思っちゃうんだよね。あれ? 私なにいってるんだろ?
私がなんか変なドツボにはまっていると、ソーナ先輩から朝御飯を食べると言われ、手を引かれ食堂に向かう。
「ゆっくり眠れましたか?」
「はい。そういえば、セラフォルー先輩はよかったんですか?」
「お姉様はゆっくり休ませてあげましょう。色々忙しかったみたいですから。それと、お姉さまがなぜか彩南の中学校に通っていたみたいですけど、一応お姉様は魔王ですので、セラフォルー様と呼んでください」
…………え?
いや、いやいやいやいやいやいやいや、嘘でしょ? え? ホント? セラフォルー先輩が魔王? なにそれ? よくわかんないよー!
なんで、そんな人がうちの中学に通ってたの? おかしくない? おかしいよね? 茜さんの車イスくらいおかしいよね? あれと比較する方がおかしいのかな?
「セラフォルー先輩が魔王って……え? 学校に制服じゃなくて魔法少女の衣装着て、よく一緒にコスプレしてたあのセラフォルー先輩が?」
「彩南……あなたも何しているんですか?」
「ルルちゃんも一緒に着ました! ルルちゃんもセラフォルー先輩もかわいかったです!」
「そういう問題ではありません! というか、留々子も留々子です。なんで、あの子もそんなことしてるんですか……」
「あのときは三人でよく遊んだんですよー。ご飯とかはセラフォルー先輩がおごってくれたりしましたし」
「シトリー家の資産の数パーセントがなくなっていたのはあなたたちの食費だったんですね……」
「あ、でも、卒業式の日にサーゼクスって人とあったんですけど、もしかしてあの人も?」
「えぇ。サーゼクス様も魔王ですよ。リアスのお兄様でもありますけどね」
「ほへぇー」
スケールが大きすぎてよくわからない。えっと、何て言ったらいいんだろ? あれだよ、きっと、夢なんだよ。そうだ、ソーナ先輩にもう一回起こしてもらおう。
「ソーナ先輩、私の頬をつねってください」
「いやです」
即答だった。いった瞬間、コンマ数秒でそう返ってきた。
えぇ……。なんで? なんでなの?
「安心してください。これは夢じゃありません。現実ですよ」
夢ならばどれ程よかったでしょう。
私は心底そう思った。だってさ、だってさぁ……。あの二人にたいして、私メチャクチャ変なこといったよ? 魔法少女の常識とか戦隊ものの基本を教えたのも私だよ?
そんな知識は親が昔連れ込んだパチンコ店でのアニメ系の台で打ってたときにそう言った気になったアニメは全部チェックしたから得てるし、日曜の朝は近所のお子さんが見ている戦隊ものを聞いてたから得ちゃったんだよね……。
「お姉様のプライベートは……まあ、わかってると思いますけど、とても軽いです。あれでも、外交官としての仕事をしながらですし、そこに関しては尊敬できるんですけどね……」
「フットワークの軽い魔王様なんですね……」
「はい……」
「もー、二人揃って私をのけ者にするなんてひどいー」
食堂に向かっていると、後ろからセラフォルー先輩、うーん、セラフォルー様に抱き上げられた。
そのまま、無抵抗にセラフォルー様に抱かれていると、ソーナ先輩が大きくため息をつく。
「ソーナ先輩?」
「いえ、気にしないでください。お姉様の行動は読めていましたから……」
うん、なんか、疲れてそうだし、今日は私が手料理でもご馳走しようかな? 使用人さんたちにも確認とらないといけないし、ちょっと、味は劣っちゃうと思うけど、問題ないよね。うん。いや、待てよ……。お菓子を作るのもありか? うん。たぶんそっちの方がいいかも! 私もなれてるし、使用人の人たちの手間もとらせない! 一石二鳥ってやつだね!
「よし、セラ先輩。私、お菓子作ってきます」
「あ! やっと、呼び方昔に戻してくれた!」
「彩南、今から朝御飯ですよ」
「すぐに終わらせますから! 慣れてるしちょちょいっと作ってきます!」
と言って私はセラフォルー様の腕から抜け出し、キッチンへとかけていく。確か、曲がり角は壁を伝って走れば、減速せずに行けるはず!
キッチンへのルートを忍者の知り合いから教わった走法で駆け抜けた。
※※※
「かんせーい!」
私は満足げに出来上がったお菓子を見る。
「べっこう飴は簡単にできるし、魔力があれば、冷やすのもすぐだしね」
まあ、でも中にできた気泡をどうやって取り出すか考えないといけなかったのはたいへんだったよ。結果、冷やしているときに気泡ができそうな所に魔力を使って流し込めばなんとかなった。
私はキッチンを貸してくれた人たちにお礼を言って、ソーナ先輩たちのところに戻っていく。
「ただいま戻りましたー!」
「おかえりなさい。それで、数分くらいで終わったようですけど、そんなに簡単なものだったんですか?」
「当然ですよ。家での家事は私がしてましたから」
えへん、と胸を張る。その時、ソーナ先輩とセラフォルー様が複雑そうな表情をした。きっと、私の両親のことが頭をよぎったのだろう。
私は少なくともあの両親より長生きすることが保証されたので、気にしていないけど、まあ、いつ、帰ってこいって言い出すかわからないからね……あの人たちの基本はパチンコで構成されてるから……。
「もー、そんな表情しないでくださいよ。せっかくの朝御飯が美味しくなくなっちゃいますよ」
「それもそうですね……」
と、ソーナ先輩は言ったものの、少し考え私にこういった。
「ですが、彩南。今や、私たちは家族のようなものです。辛いことや、悲しいことがあれば、いつでも言ってください。私も留々子も、サジも、他の子も、あなたの力になりますから。その分、私たちが困ったときはあなたも力になってくださいね?」
「もちろんですよ!!」
私は力強くそう宣言する。
「ふふ。期待してますね」
ソーナ先輩はそう言って手前に用意された朝食を優雅に食べる。私も最近慣れてきた所作で食べていくが、はし万能論を唱えたくなりそうなくらい、ナイフが使いづらい。
うぅ……これになれるの当分先になりそうだよ……。
大体二、三十分くらいたった辺りで完食すると、私は鞄を取りに部屋に戻り、玄関でソーナ先輩を待つ。
その間に、セラフォルー様がきて、「私も用事があるから、先にいくわね」といったので見送り、ソーナ先輩と一緒に学校へと向かった。
ダイジェストじゃないコカビエル戦、読みたいですか?
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そんなことより本編はよ
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そんなことより、彩南の匙攻略進度だろJK