オカルト研究部の部室に入ると、そこにはすでに匙先輩がおり、私はすぐに匙先輩のもとへと向かった。
私と匙先輩の身長差は大体四十センチ位だ。そのため、私が結構見上げる形で匙先輩を見ることになる。
というか、私の身長で見上げることのない人は、小学生くらいのものだ。
私は、匙先輩の足にしがみつき、恐る恐るグレモリー先輩を見る。
すると、グレモリー先輩は、私に近づいてきて、私と視界を会わせるためにしゃがんだ。
「こんにちは、雨月彩南さん。私はリアス・グレモリー。ソーナと同じ七十二柱の悪魔、グレモリー家の時期当主よ」
グレモリー先輩は私を見ながら、どこか懐かしそうな表情に変わる。
なんだろう、嫌な感じはしないけど、失礼なことを考えられてる気がする。
私はグレモリー先輩にここ最近よく使う名乗りをすると、匙先輩の後ろに隠れた。
いや、あのね。私、グレモリー先輩のこと、嫌いじゃないけど、苦手意識があるの。背は高いし、きれいだし、胸大きいし、私の持ってないものを持っている。
私なんて、背は低い(百二十八点六センチだ)し、きれいか?と聞かれると、保とうと努力するけど、限界があって、人より少し良いよね、位だし、胸なんて言わずもがな。バストイコールウェストだ。
頑張ってかわいさというものを追求した結果、『同級生なのに、どこか妹っぽい』という認識に変わってしまった。酷い。あまりにも酷い。せめて、塔城さんくらいの身長が欲しかった。
「昔のソーナを思い出すわね……」
「ソーナ先輩に?」
「えぇ。あの子の小さい頃もあなたみたいな感じだったわ。セラフォルー様の後ろをよく、ついていってわがままをいって困らせていたわね」
「リアスも似たようなものでしょう?」
「私は違うわよ? しっかり言いつけは守っていたし」
嘘だ。私はそう確信した。グレモリー先輩、そんなに心臓ばくばく言わせていたら、嘘だってわかりますよ。
お父さんとお母さんが私の通帳からお金を取り出したあと、私に対して話すときだけの心音と同じだから、嘘だってことくらい、すぐにわかりますよ?
当然、グレモリー先輩の過去を知っているソーナ先輩は、それに対して、なにもいっていなかった。きっと、グレモリー先輩の尊厳を損なわないようにするためなんだろう。
「それにしても、似てるわね。昔のソーナに」
「そうね。私もそう思っていたの」
次は容姿の話かな?
私の顔がそんなにソーナ先輩に似てるの? つまり、これから、成長すれば匙先輩を落とすことも可能に……? それに加えて、メガネも掛ければ……。
よし、匙先輩に振り向いてもらうためには手段を選ばないからね、私。
「あの、匙先輩」
「なんだ?」
「私がメガネを掛けて、似合うと思います?」
「あぁ、似合うんじゃないか?」
むっ、これは適当にいってるやつだ。不思議そうな顔をして、なおかつ、動揺が感じ取られない。
まさか……、私が『匙先輩のお嫁さん候補』と言っても園児が『お兄ちゃんと結婚するー』みたいなものとして受け止めてる?
いやいや、流石にないでしょ。ある方がおかしい。見た目はこんなでも、高校生なのだ。そんな判定を下す方がおかしい。いや、でも……匙先輩なら納得するために、そういう風に捉えていても違和感がない……。
ルルちゃん、どうしよう。この先輩落とすの難しすぎる……。
私が悶々としていると、グレモリー先輩は微笑み、ソーナ先輩に、「これって、そう言うこと?」と尋ねており、ソーナ先輩も「そういうことです」と返していた。
ふむふむ。そんなに分かりやすかったのだろうか? いや、まあ、匙先輩にはここまで分かりやすくしないと、私の気持ちに気づいてもらえない可能性があるんです。
つまり、ルルちゃんの攻めはまだ生ぬるい。
私なら、匙先輩がお風呂に入っている間を狙って、匙先輩の体とかを、私の手で洗って、狙うはそのまま既成事実!
匙先輩はなんだかんだ言って、責任感が強いから、そこに着け込む隙がある。
不純異性交遊の禁止が生徒会にはあるらしいが、不純でないなら良いのだろう。
正直、私はこの年で親になっても良いと思っている。匙先輩と私の子であれば、私はうんと愛を注いであげられる自信がある。
「よし……今度匙先輩の家につれてってもらおう」
「別にいいけど、面白いものなんてないぞ?」
「大丈夫です。匙先輩の性癖がわかれば、それで」
「女の子が『性癖』なんて言葉を使うな!」
「怒るところそこなんですか!?」
「いいか? 女の子である以上は一定の慎みを持ってだな」
なぜか、匙先輩から教育を受けることになってしまった。なんで、なんでなの!? 普通そこは、『やっぱり、お前をうちに招くのはやめるわ』って、反応するところでしょ!? そして、私がそれをからかう場面のはず。
それが、なんで、女子としての慎みを持とうって話になるんですか!!!!
私の目は気づいたら涙が溜まっており、肩で息をし始める。
うぅ、ううぅー。
だんだん、私の我慢が効かなくなり、とうとうポロリと、涙がこぼれる。
「うわぁぁぁあん!! ソーナせんぱーい!! 匙先輩が一般家庭のお父さんみたいなこと言う──!!!」
そして、私はソーナ先輩に泣きついた。ガチ泣きだ。それはもう、本気で、羞恥心などかなぐり捨てて、本気で泣いた。
それに対して、匙先輩は、「おい、まだ、話は……」って言ってくる。
私はソーナ先輩にヨシヨシと撫でてもらって、漸く落ち着きを取り戻した。
ふぅ。ホントに、ホントにもう!! なんで、匙先輩は私のこと、子供扱いするの!?
ひっく、えっくと泣くだけ泣いて、しゃっくりがではじめたころ、オカルト研究部の部室のドアが開かれる。
そうだった。今日は匙先輩にアタックするためにここに来たんじゃなく、兵藤先輩とアーシア先輩との顔合わせのために来たんだった。うっかり、うっかり。
私は、呼吸を整え、目の赤くなった顔で対面することになりそうなところで、ソーナ先輩が魔力で、目元を洗ってくれて、ハンカチで拭いてくれる。
「すいません。ソーナ先輩」
「いえ、気にしないでください。ほら、あなたも挨拶を」
「はい……」
私はソーナ先輩に鼻も拭いてもらうと、兵藤先輩とアーシア先輩に向き直る。
「こんにちは、シトリー眷属の兵士、雨月彩南です。兵藤先輩は一生恨むと決めてますけど、よろしくお願いします」
「イッセー。なにをしたの?」
「部長!? い、いや、俺、この子とは初対面ですよ。名前だけなら有名なんで知ってましたけど」
「なるほど、今まで覗いた女子の名前は忘れてる……と。女の敵ですね。やっぱり一生許せません」
「いや、その、なんか……ごめん」
「『なんか』じゃないですよ!! なんで、覗きなんてしてるんですか!? 怒りをストレートにぶつける女子が多いから錯覚してるのかもしれないですけどね! 女の子にしてみれば、好きでもない人にみられるんですよ!! 許せるわけないじゃないですか!! 匙先輩に初めてをささげるつもりだったのに、どうしてくれるんですか──!!!!!!」
私は羽を生やし、空に浮くと、兵藤先輩の胸ぐらをつかみ、ユサユサと揺する。
わかるか! わかるか、この怒り!! いつも剣道部の人たちにソッコー見つかって折檻されてたから知らなかっただろう? これが、剣道部女子の本音(だと思う)だ!!
あくまで私、個人の見解だから、彼女らが許すと言うのなら、私は兵藤先輩と松田先輩が泣いて許しをこいて、今まで覗いてきた女子生徒全員に土下座して許してもらって、その上でフルボッコにして許そうと思う。
そして、それを私が提示していない以上、一生許すことはない。まあ、彼らが自主的にやったと言うのであれば、そのときは許そうと思う。
ほんと、なんで、こう、時々、ボランティア活動とかやってるのにも関わらず、覗きなんてするのだろうか?
あのね、どんなに中身がよくても、やってることが女子生徒から反感を買うようなことをしたら、そりゃモテないですよ? イケメンを恨む資格をあなたたちは持ってないんですよ? わかります?
「ほら、雨月。離れろ」
「ですけど!!」
「わかった、わかった。ほら、おんぶしてやるから、落ち着け。な?」
むぅー。匙先輩がそういうなら。
私は匙先輩の背中に体重を預けながら、兵藤先輩を睨み付ける。
「まあ、兵藤も悪いからな? 覗きとかして、こういう反応を受けすぎて慣れたのかもしれないけど、こいつはまだ、一年なんだ。あいつらみたいに洗練された動きでボコすことなんてできないんだ」
「あ、あぁ。けど、やっぱり、この抑えられないリビドーをどう発散すれば!?」
「十八禁の本なりDVDなりで発散すればいいだろ?」
「それじゃ、足りないんだよ!!」
「なんでだよ……。まあ、取り敢えず、こいつの言い分もわかってやってくれ。複雑な年頃なんだ。それと、俺は匙元士郎。こいつと同じ兵士だ」
「おぉ、俺と同じか」
「俺としては、お前みたいな兵士と同じにされたくないんだけどな」
「んだとぉ?」
「それ、私も同意見です。覗き魔と同じだと思われたくないです」
辛辣? えっ? 普通じゃない? 誰だって性犯罪者と一緒にされたくはない。ほんとに、ね。
この先輩、何度も言うけど、覗き魔じゃなければ尊敬してたよ? でもね。覗き魔なの。
生理的にダメなの。普通の人は、どんなに性欲が高まろうが自制できるのに、それができないからダメだって思っちゃうの。
匙先輩だって、今こう(私をおんぶ)している間、心臓ばくばく言わせてるけど、必死になにかをこらえるほど、自制効かせてるんだよ?
兵藤先輩も、少しは自制できるようになってください。たぶん、そうすれば女子の評価も変わるかもしれないので。
ちなみに、私からの評価は変える気がない。いや、変えていいと思えるような要素を今見てないからなんだけどね?
そんなことを考えながら兵藤先輩を睨んでいると、アーシア先輩が私の方に歩み寄ってきた。
「あ、あの、アーシア・アルジェントです。イッセーさんも悪い人ではないんです。ちょっと、エッチなところがありますけど、優しい方なんですよ?」
「え、えっと、その、私が言ってるのは人柄じゃないんですよ。噂話でオカルト研究部員に手を出してるみたいなものは聞き齧りましたけど、私はそれについては、どうでもいいんです。私は、私の下着姿を見たことに対して怒ってるんですよ。ついでに言うならもう、一生をかけて許す気もない。ただそれだけなんです」
兵藤先輩の擁護に回る人たちは、基本、彼のいいところを見ているから、擁護に回れるのだろう。その点、私は塔城さんから聞き齧った程度だったり、結構情に厚いところがあることだって、実際に耳に入っている。
だけど、それ以上に、覗き魔なのがデメリットなのだ。そして、私はその被害者である。許さないというのも、そういった理由である。
「彩南も、悪い子じゃないんです。ただ、少し、感情的になりやすいだけなんですよ。兵藤くん、アーシアさん。同じ学舎で学ぶもの同士、節度のあるお付き合いを互いにしていきましょう」
「「は、はい」」
「それでは、私たちはこの辺りで。サジ、彩南」
「はーい。匙先輩、お願いします」
「雨月、歩く気はないのか?」
「えぇー。匙先輩、おんぶしてくれるっていったじゃないですかー」
「だと思った……」
私はだらけた顔のまま、匙先輩の背中に張り付く。
そうしていると、匙先輩はソーナ先輩の後ろを歩き始め、ノッソノッソと教室へと戻っていく。
教室へとつくと、ルルちゃんが「なっ!?」と目を見開き、匙先輩に私を渡すように訴える。
ふふふ、そんなこと知ったことじゃぁない。
私は引き剥がそうとしてくる匙先輩に全力で張り付く。いやだ。この背中は、私が死守するんだー!!
結局私は、匙先輩に引き剥がされ、自分の席に座らされた。
そのときの、匙先輩のやれやれという表情を私は見逃さなかった。
私が見逃さないということは、ルルちゃんも見のがさないということなので、肩にポンと手をおいて、いい笑顔で、「ドンマイ」といってきた。
くそぅ。慰めなんて要らねぇやい。私が最近匙先輩から女子としてみられてないことなんて知ってるもん……。
「あんた、女子高生というより、女子小学生みたいだもんね。普通の女子高生ならいくらして欲しくても、彼女になるまでは好きな人におんぶしてもらおうなんて、恥ずかしくて思わないわよ?」
「えっ……、ほんと?」
「たぶん、兄弟でも相当年齢差が離れてないとやらないかもね」
「なん……だと……?」
って、年の離れてる兄弟? まさか、まさかだけど、
「ルルちゃん。もしかして、私のこと幼児体型っていった?」
「くっ、ばれたか」
「なんだとぅ!?」
「だって、あやって、匙先輩が相手だと、完全に幼児になるでしょ?」
「なるけど、なるけどぉ!」
「言語能力が、落ちてるよ?」
「ルルちゃんの意地悪ぅ! 塔城さーん!」
「ルル吉、あーちゃんをいじめすぎるのは、めっ!」
「小猫ちゃん、あやのレベルまでに落とさなくてもいいからね?」
うぅー。ルルちゃんめー、なんで、そんなに私の地位を幼児に落としたいのさ。ちゃんと生徒手帳も持って、アルバイトもバリバリやってる現役JKだって言うのに……。
バイト先の店長も偉い偉いって頭撫でてくれるのにー。
……あれ? 店長も子供扱いしてない? え、してないよね? ね?
私はルルちゃんに視線で訴えると、『あんたがそう思うならそうなんじゃない?』と視線で返してきた。
うぞだ、ぞんなごどぉぉぉお!! なんで、なんでなのぉ!?
「あーちゃん。これが、身長が伸びないものの宿命……」
塔城さんは、私の気持ちがわかってくれるのか、肩に手をおき、同情の眼差しと諦めろと言外に伝えてくる。
うぅ、うぅぅぅー。いいもん。匙先輩にさえ女の子として見てもらえればそれでいいもん。
私は、床に体操座りでいじけた。
「ほら、スカートの中は、隠してあげるから、授業が始まるまで存分にいじけなさい」
なぜか、お姉さん風を吹かすルルちゃんにムッとしたけど、我慢することにした。
私は高校生なのだ。この程度で起こったりなんてしない。
私は、先生が来るまで存分にいじけさせてもらった。
※※※
学校も終わり、アルバイトも勤務時間ギリギリまで働いて、私は帰宅(ソーナ先輩の家に)していた。
「今日の晩御飯はなーにっかなー」
私は、昨日の晩御飯を思い出しながら、そんなことを呟いた。
それにしても、昨日の晩御飯は凄かった。ルルちゃんや先輩たちは慣れているのか、気にしていなかったけど、一般より少し悪い環境で育った私としては、もう、ものすごく豪華な晩御飯だった。
うん。思い出しただけでお腹が減ってくる。
そんな、ルンルンな私は、突然現れた白髪の神父に鳥肌がたった。
生理的にダメというより、根拠のない恐怖感が襲ってくる。
「おやおやぁ。悪魔くんの匂いをおってきたら、ロリ悪魔ちゃんでしたかぁ。いやぁ、子供を殺すのは心苦しいけど、悪魔だから仕方ないよね?」
「……どちら様で?」
「はっはぁー。僕としたことが、自己紹介を忘れてましたかー。いやぁ、ごめんちょ? 僕の名前はフリード・セルゼン。いけない悪魔を退治するお仕事をしてるんですよぉ。と言うわけで、死んでくれる?」
そういって、私の目に止まらないほどの速さで近づいてきて、手に持つ剣を振り下ろしてくる。
ゾワリと、そう毛だったとき、私は本能的に横に回避した。
私の居た場所に、その嫌な雰囲気を纏う剣は下ろされていた。
本気だ。
そう理解させるには十分な一撃だった。
考えろ、考えるんだ。私……。今必要なのは、逃げ切ること。私のできることと言えば、設置型の魔法を利用して、場を撹乱することと、魔力を矢に変えることの二つ。
だけど、設置型は準備までに時間が掛かるし、魔力を矢に変えるにも時間が掛かる。
どちらにせよ、時間稼ぎが必要だ。戦闘経験が豊富じゃない私ができることなんて、限られてる。
だから、私は距離を取るために全力で回れ右をして、走り出す。
「おや、鬼ごっこですかい? この
私は神父の言葉を無視して、人気の多いところに向かう。相手もさすがに人の多いところで、剣を振り回したりなんてできないだろうし、普通なら一般人を巻き込むと思って引き返すはずだ。
あと、もしかしたら、ルルちゃんに会えるかもしれない。そのときに、ソーナ先輩でも、誰でもいいから救援を貰えれば万々歳だ。
私はとにかく走った。戦闘能力を持たないがゆえに、逃げることしか出来ない私は、聞こえてくる足音から距離を計りながら逃げ回る。
フリードとか言う人の足音が止まり、私は更に駆け出す。距離をとにかくとりたかった。
だけど、それは幻想だと理解させられた。
「うん。鬼ごっこに飽きたから、本気出しちった」
あぁ、なんで、こう、私は運がないんだろう? せめてさ、弓が完成したとかで扱いに慣れてきてからにしてくれればまだよかったよ。
私は走りながら、魔力で編んだ矢をフリードに向けて投げた。
それを、フリードはペシッと剣で払い落とす。
だと思った。
『逃げきる』この一心で行動してたけど、できたのはこれだけ。
私は、一か八か、相手に依存する形ではあるけどかけにでる。
「うーん。やっぱり逃げ回る悪魔は最高ですなぁー。それも、幼女。尻振って、必死に生きようとする……。あぁー、気持ち悪い。悪魔なのに生きようとすんなよなぁ」
気だるそうに今度こそ、私に剣を振り下ろす。私はその剣から逃れるために走ろうとしたけど、つまづき転んでしまった。
今だ。
私は魔力の矢を転けたさきで手をついた場所にセットし、魔力を風に変えフリードへと放った。
さっきも投げたときに使えばよかったと反省する。
先ほどと違う形で奇襲すると、流石に油断していたのか、フリードの頬に切り傷ができた。
「は?」
フリードは頬をさわって、傷ができたことを確認した。大きな傷は与えられなかったけど、プランBは成功した。
よかったぁ。
上空に打ち上げられた矢は大きなおとをたてて破裂する。花火くらいの音だから、私基準で言うと限界まで音量をあげたイアフォンを耳につけて、音量調整をミスして、叫ばれるくらいの音量だ。
つまり、私的には半端なくうるさい。鼓膜が破れるかと思うくらいにはうるさい。
「ははー、こんなところで花火かい? よほど余裕があるんだねぇ」
「余裕なんてあるわけないじゃん」
「およ、ようやく反応してくれた。さあさ、それじゃ大人しくしててねぇ。ダイジョブ、痛みは一瞬だから」
私は、そのままの体制で後退する。そんなに早く移動できるほど成長してないし、能力もない。だけど、きっと誰かが助けに来てくれることは予想できている。
私は一週間前、ソーナ先輩からいざというときは大きな音をたてなさいと言われていた。そのため、私は魔力の矢を花火へと変え、空へと打ち上げたのである。
この過程でフリードに大きいダメージを与えることができたらいいな、と思っていたのがプランAだ。
本命は二射目。これこそがソーナ先輩が、私をサポートタイプにして徹底させようと思っている計画だ。
そのため、基本はサポート主体の立ち回りの勉強を、次に遊撃、斥候ができるようになると、尚良し。
罠の張り方や作り方はこれから勉強するけど、レーティングゲーム見たいな場じゃないと難しいかも。
この襲撃で大体学んだ。
これで最後だ、とばかりに剣が振り下ろされそうになる。私はその剣から目を離さなかった。
私に当たりそう、となるその瞬間。もう一人の人物、巡先輩により、その剣が私を切ることはなかった。
「私の後輩をいたぶってくれたみたいね」
「ここに来て、悪魔の増援かよ」
憎らしげに、フリードは言う。
知ったことじゃない。彼は彼の都合で私に剣を向けてきたのだ。私が逃げ惑っているだけだと思わないでほしい。
私の耳は相当いい。そのため、逃げている最中であれ、どの先輩が近くにいるかなんて言うのは、把握できる。
だから、私は微かに聞こえた巡先輩の声を追って、逃げていた。
そして、今、私のプランB、巡先輩に救援要請して、フリードと戦ってもらおう作戦は成功した。
ホントに、巡先輩が気のせいとして放れていかなくてよかった。
「彩南、無事?」
「少し、転けちゃいましたけど、大丈夫です」
「傷跡が残らないように後で手当てしないとね」
「お願いします……」
「それじゃ、援護よろしく」
「任せてください」
さあ、ここから、第二ラウンドの開幕だぁ!!
私は、宙に矢をつがえ、魔力を高めた。