私は宙に矢を置き、フリードの一挙手ごとに立つ音を聞き逃さないようにする。
できれば巡先輩の動きも聞きたいけど、そんな暇はない。
「彩南。逃げ道に矢を放ってくれれば良いから。それだけに意識を割いてて」
「わかりました」
「おやおや、敵を相手に作戦を言うとは。間抜けな悪魔くんですねぇ。それじゃ、ボクチンに警戒しろっていってるようなものだよぉ?」
巡先輩が振るう刀を弾きながら、そういってくる。
フリードの相手を巡先輩がしてくれている間に、私ができることを考える。
一つ、設置型の魔法を逃げ場、もしくは巡先輩の有利になるように配置する。
私に、まだ、相手の動く位置を推測するような能力はない。
二つ、矢をフリードの回避先に放つ。
予測できないけれど、回避を制限することはできるかもしれない。
三つ、ソーナ先輩に連絡を取る。
論外。巡先輩を見捨てるわけにはいかない。
結果、私は宙に置いた矢を出来るだけフリードが避けれないように、放った。
おそらく全て弾かれるだろう。だけど、その隙を巡先輩が見逃すはずない。
「うおっとと。危ない危ない」
おどけながら、フリードは私の矢を切り捨てる。そして、巡先輩が振り下ろした刀はバックステップで避けた。
なんで?
「手加減とかして、ボクチンをなめちゃってる? 悪魔が? ハッハッハー。屈辱だねぇー。ぶち殺したくなった。あっ、俺様、もともと悪魔はぶち殺したくなる質だったわ」
うるさい、黙れ、耳障り。
私の耳はこういった醜い存在の声さえも拾う。せめて匙先輩クラスまで矯正してから出直せ。一生無理だと思うけど。ていうか、ソーナ先輩と匙先輩とルルちゃん以上の性格の持ち主なんて、歴史に名を残すレベルの聖人以外あり得ないから無理か(偏見)。
「彩南」
巡先輩が私をちらっと見た。
私はその視線の意味に気づき、コクりと頷く。
「そう。それじゃ、作戦に変更はなしよ」
「了解です」
私が返事をしたのを聞くと、巡先輩はフリードに向かって剣を振り下ろす。
私は、横にフリードが避けたのを聞くと、そこに矢を放つ。フリードはその矢を切り落とす。そこに、巡先輩は接近し、切りかかる。
すると、フリードは、バックステップでその刀を避ける。
だが、そこからが違った。
「後方不注意だな。神父」
由良先輩がそこにいた。それも、思いっきり、構えた状態で。由良先輩は構えた拳を放ち、フリードを上空へと打ち上げた。そこに、いつの間にか到着していた真羅先輩が長刀でさらに上へと打ち上げる。
そして、民家の屋根の上から、匙先輩が腕についている黒い蜥蜴のような形の機械から伸びるピンク色の『ライン』で、フリードの足を絡めとり、地面へと叩きつけた。
勢いの乗った落下だったため、相当な衝撃が彼を襲っただろう。
私はぐっと、拳を握りフリードを見る。
叩きつけられたときに、口から血を吐いていたので、相当なダメージのはずだ。
「あや、無事? 怪我してない? あんた、傷とか出来るとなおるのがちょっと遅いんだから、怪我してるなら早く言いなさいよ?」
「無事だよ、ルルちゃん。けど、まあ、転んじゃって」
「今すぐ、見せなさい。どこを怪我したの?」
「ちょっと、擦りむいただけだから、そんなに重症じゃないよ」
「ばい菌が入ったら大変でしょ。ほら、洗うわよ。あたしが背負ってあげるから」
ルルちゃんは、私を持ち上げ、背中にのせる。
すごい。いつの間に、こんなことできるようになったの? って、まてまてまてまて、まてぇい!!
「ルルちゃん下ろして! 匙先輩の前なんだよ!?」
「あんた、匙先輩にいつもしてもらってるくせになに言ってんの!! それよりも、怪我の手当てが先よ」
「正論だけど違うの!! 匙先輩じゃないとダメなのー!!」
「俺を巻き込むな!! それよりも、会長、この神父どうします?」
「そうですね。とりあえず、家で身動きをとれない状態にして、情報を聞き出しましょう。それと、留流子。彩南を治療するなら、先に帰っておいてください。メイドたちが手伝ってくれるはずです」
「わかりました!」
ソーナ先輩も!? まあ、けど、ソーナ先輩も帰ってくるなら、問題ないかな? いや! 問題はある!!
このままじゃ、ほんとに、匙先輩から女の子認識されなくなっちゃう!!
私の心の叫びはルルちゃんに聞こえることはなく、無慈悲にも空を飛んで、ソーナ先輩の家に帰ることになった。
「それにしても、あんた、よく先輩たちがあの場所にいるってわかったわね。耳が良いってレベルじゃないわよ?」
「そんなこと知ってますぅ。けど、まあ、私が気づいていても、匙先輩たちが知らないとあの連携はできなかったと思うよ?」
「となると、会長が? もしかして、あのときすでに会長はこうなること見越してた?」
「違うと思うよ。私はてっきり、真羅先輩が打ち落とすものだと思ってたから、たぶんあそこはアドリブ。匙先輩が近くにいることに後で気づいて、真羅先輩に打ち上げるように指示したと思うよ」
「あれ? もしかして、あたし必要なかった?」
「たぶん、ルルちゃんの方に飛んできたら、そこから踵落としとかで打ち落としたんじゃない?」
「あ、そっか、由良先輩からはあたしたちの位置なんてわからないものね。……って、あんた、あたしの位置まで把握してたの?」
「当たり前じゃん。心音や足音、呼吸、その他もろもろの音を発生させるものであれば、大体個人を把握できるから」
「それ、いつ身に付けたの?」
六歳のときかな? 少なくとも七歳くらいの時には、すでに無意識で識別できるようになってたから、そのくらいだと思う。
あそこら辺の記憶は曖昧だからなぁ。仕方ないよね?
「それより、ルルちゃん」
「なに?」
「すごく疲れた」
「でしょうね。あんた、初めての戦闘だったんでしょ? 疲れて当然」
「うん。そうだね……。ルルちゃん、ソーナ先輩の家に泊まってくの?」
「たぶんそうなるわね。あの神父を交代で見張らないといけないと思うし」
「そっか……。寝るとき、一緒にいてもらってもいい?」
「良いわよ。久しぶりね、あやに抱き枕にされるの」
「うぅー……。そんなつもりないのにー」
「はいはい。むくれないの」
うぅー。あれ、わざとじゃないんだよ? ただ、何となく、なんとなぁーく、抱きついてると安心感が得られるから勝手に体が動いちゃうだけなの。
だから、私のせいじゃない。たぶん……。
そんな会話をしていると、ソーナ先輩の家の近くについていた。
ルルちゃんは私を下ろすことなく、そのまま、ソーナ先輩の家に入っていく。
ねぇ! ねぇ!! なんで!? なんで、下ろしてくれないの!? 私、子供じゃないんだよ!? 高校生なんだよ!!!! 一人で歩けるから、下ろしてー!!
私の心の叫びもむなしく、ルルちゃんはさっさと、私の借りている部屋へと入っていく。
私はベッドの上に座らされ、擦りむいている部位をルルちゃんに見せた。
右手と両膝、両腕が結構傷が大きいけど、皮膚が軽く擦りむいた程度で見た目ほど重症じゃない。というか、これが重症だと骨折はもっと大変だと思う。
「あぁー、もう。めんどくさいことになってるわね」
「そうでもないでしょ? とりあえず水で流そ。その後消毒でしょ? 痛くしないでね?」
「わかってるわよー。あと、消毒とかは最近、有効じゃないってことで、変わったから」
「えっ、ほんと!?」
「そう。あ、あったあった。ほら、一気に済ますわよー」
ルルちゃんは、水で軽く私の傷口を流しながらそう言う。うぐっ、痛い。さっきまでそんなに痛くなかったのに……。
アドレナリンだっけ? が、分泌されて痛みに気づいてなかっただけなのかな? まあ、なんでもいいや。
傷口を洗い流すと、軽くタオルで拭いて、水気を取り除き、テープ……のようなものを私の傷の大きさより、少し大きく切っていく。
あれが、何て言う名前のものなのか全然わからない。
「仕方ないわね……。あや、これ、被覆材っていうらしわよ。ま、あたしも名称以外知らないけど」
「ルルちゃんもダメじゃん」
「あんたは名前すら知らなかったでしょ?」
「そうだけどさー」
「はい、終わり。最近は効率よく終わるようになってよかったわね」
ルルちゃんは被覆材の上から白いネット? を被せるようにして、手当てを済ませた。
早い……。私、中学生になってから傷をあまり負わないようになってたから、傷の手当ての知識は小学生で止まったままなんだよね……。
だから、手当てするときはものすごく痛いイメージしかなかった。
「それにしても、あんたよく聖剣を前に怯えたりしなかったわね。普通、悪魔で戦闘経験が少ないなら警戒するとかしてても可笑しくないわよ?」
「せいけん?」
「まさか、あんた……」
「ねぇ、ルルちゃん。せいけんってなに? 政治の実権を握るための剣とかそんな感じ?」
「聖剣っていうのは、悪魔や堕天使に対して、絶対的な力を持つ剣。わかりやすくいうと聖なる剣で、聖剣。日本だと天叢雲剣とか十束剣とか、そんなところね」
「へぇー」
「理解してない……というより、当たらなければいい的なこと考えてるわね……」
「そ、そそそ、そんなことないよ? いやぁー、せいけんこわいなー……あははー。すいません……」
「わかってた。わかってたから、あたしは起こらないわよ。優しい留流子さんは怒らない、怒らない……」
うん。とにかく、あの嫌な雰囲気と言うのは悪魔の本能が危険と伝えてくれていたからなんだね。あれ? あの人たちも、同じ雰囲気のものを持ってたよね?
ってことは、あの人たちも聖剣を持ってるってこと?
それと、コカピエールだっけ? まあ、名前忘れたからコカPでいっか。が、どうのって言ってたけど、それと関係しているのかな?
まあ、難しい話はソーナ先輩に投げっぱないジャーマンしよう。私には政治の話はNGなのだ。無理なものは無理と割りきる。それがいい。
私にできることはまだまだ少ないのだ。無理をして死んだって、匙先輩と付き合えない。そんなの本末転倒といいところだ。
その後、ソーナ先輩の使用人の人たちも来て、傷痕が残らないか確認したりして、私たちはいつも集まってミーティングとかをする部屋へと向かった。
そこには花戒先輩と草下先輩もいて、最初に私の無事を確認してくる。
私は、無事を伝えると、花戒先輩の膝の上に座った。
いや、あのね。わかる人にはわかるかもしれないけど、花戒先輩には匙先輩とは違った魅力があるの。その一つが、膝の上。というか、花戒先輩の場合、膝の上に座ったら、頭をセットで撫でてくれるから、それを目的にしてる。だって、気持ちいいんだもん。仕方ないよね。
私は花戒先輩に頭を撫でてもらいながら、意識を失っていた。疲れた、つかえた……。
※※※
ソーナたちは、留流子に背負われる彩南を見送った後、全身にダメージを負ったフリードをロープで身動きを取れないようにしていた。
「さて。フリード・セルゼンですね? 今から質問することに嘘なく回答を要求します」
「お断りしまーす」
「あなたに拒否権はありません。言葉を変えますね。嘘なく回答しなさい」
「命令したって無駄っしょ。あんたに嘘を見抜ける能力なんてないんだからさー」
「人間の世界には心理学と言うものがありましてね。私は少々人の嘘を見抜けるんですよ?」
「へぇー、それはこわい。それで、ボクからなにを聞きたいわけ?」
「コカビエルの目的です。彼は何を考えているんですか?」
「さあー、ぼくはなにも聞かされてない下っ端ですからー? あのお方の真意は図りかねますねー」
情報をはくつもりがない。それを、ソーナは見破った。
ならばと、考え方を変える。
フリードは稀に見る聖剣使いだ。ならば、相手も捨て駒にするにはもったいないと考えるはず。
それを利用しよう。そう判断した。
「それでは、あなたは私の家にて拘束させてもらいます。安心してください。トイレ程度なら許してあげますから」
「ペットボトルでしろ何て言われても、ボクチン困るなー」
「あら。よくわかりましたね? あなたみたいな危険人物の管理を私の家でする以上、彷徨かせる訳にはいけませんから」
『あと、彩南を襲ったことが何よりも許せない』と心のなかでソーナは呟く。因みに、これが本音である。
「そうか。だが、その前に、セラフォルーの妹。そいつを俺に渡してもらおうか」
ゾワリと嫌な感じがし、そう毛立つのがわかる。
レベルが違う。そう感じざるを得ないオーラにソーナは冷や汗をかいた。
だが、その男の要求を飲むにしても何らかの利益がほしい。
「それでは、彼を引き渡すのにともない、あなたの目的とその手段について、教えてもらっても?」
「その程度で良いのか?」
「できれば、彼を引き取ってもらったあと、この町から出ていってもらいたいのですけどね」
「なるほど。それは、さすがに俺が受け入れないと判断したか。良いだろう。答えてやる」
──俺は戦争を起こす。そして、堕天使こそが最強であると証明する。
その答えを彩南が聞いていたら、吹き出していただろう。この時代、戦争なんて起きるはずがない、そう彩南は思っているからである。
だが、ここにそんなことをするバカはいない。そして、彼が本気でそれを目指しているのだと、ソーナは感じ取った。
「目的は、わかりました。それでは、手段について答えていただけますか?」
「聖剣をひとつにする。それだけで十分だ」
「聖剣をひとつに……なるほど。約束通り、彼を渡しましょう」
ソーナはフリードに巻き付けた縄を解かず、男に渡した。
「ではな、セラフォルーの妹。俺を止めたければ策を労することだ」
男はそう言って、フリードを担いで拠点に帰っていった。
ソーナは男の背中が見えなくなると、思いっきりため息をつく。
「あれが、堕天使幹部のコカビエル……。今の私たちでは彼一人に殺されてもおかしくないですね……」
「会長……」
「えぇ。お姉さまに伝えるのは色々と問題そうなので、サーゼクス様に報告するのが良さそうですね。ただ、戦争を起こすことがコカビエル単独での目的なのか、堕天使の総意なのか、調べる必要がありそうです。明日、リアスに話しておきましょう。椿姫」
「はい」
「サジ、巴柄、翼紗は、あの神父以外の悪魔祓いがいるかもしれませんので、その人物を洗いだし、捕縛次第、情報の裏取りを。この場にいない子達には後で伝えましょう」
ソーナの言葉に眷属たちは返事をして、彼女の家に向かっていった。
※※※
ソーナ先輩たちが帰ってきて、私は桃先輩の膝の上から降りて、匙先輩に抱きついた。
「お帰りなさい。匙先輩、ソーナ先輩」
「はい。ただいま戻りました。彩南、怪我は大丈夫ですか?」
「ルルちゃんが手当てしてくれたので、大丈夫です」
「そうですか。ところで、彩南。あの結界は、なんだったんですか?」
あの結界……あ、あのときのか。
私はあの時、魔力で編んだ矢を分解するときにちょくちょく調整していた結界を構築してたんだった。
「たしか、あの時は……そうだ! 吹っ飛び率変更結界を構築したんだった」
「吹っ飛び率?」
「そうなんですよ。ちょっと、結界術を学んでいるときに、某乱闘ゲームを参考に作った結界なんですよ」
「そ、そうなんですか……」
「はい! 蓄積ダメージが吹っ飛ばし率になるので、ダメージが溜まれば溜まるほど危険ですけど、飛ばしたあとの落下ダメージは相当なものになると思いますよ」
「だから、あの時あの神父はあんな飛び方をしたんですね……」
「はい!」
褒めて褒めてと私はソーナ先輩に頭を差し出す。
すると、ソーナ先輩はちょっとぎこちなく、頭を撫でてくれる。ふわぁー、気持ちいい……。
だらける顔を私は出来るだけ、引き締めようとして、引き締められなかった。
「ほら、だらけてるぞ。しっかりしろ、雨月」
「にゃー、ひゃいひぇんひゃい、ふぉーひっひゃりゃにゃいれー」
「うわ、ぷにぷにで気持ちいいな」
「匙先輩! あやの頬が気持ちいいのはわかりますけど、やり過ぎちゃダメですよ?」
「そうだな」
「もー、もっとさわって良いんですよ? (やりすぎですよー)」
「本音がでてるぞー」
え? ほんと? まあ、でも、ね? わかるでしょ? 匙先輩のあの楽しそうな顔。子供っぽくてすごくかわいかった。
うん、なんだろう、とても、来るものがありました。誰か、匙先輩をショタ化する装置とか持ってないかな? 私、全力で匙先輩の面倒見るから譲って欲しいなぁ。
私はどこのだれとも知らない誰かに、そんなことを願ってみた。
「それでは、彩南、留流子、桃、憐耶。あなたたちに耶ってもらいたいことがあります」
ソーナ先輩のその一言に私たちは顔を引き締める。
「まずは、彩南と留流子あなたたちは二人で、接触してきた教会所属の悪魔祓いを捜索してください。そして、桃と憐耶は私と椿姫と一緒に堕天使側の動きと教会の動きを調査してもらいます」
私たちは、ソーナ先輩の指示に返事をする。
うーん。あの、嫌な感じのする物を持った二人に接触かぁ……。私の耳ですぐ見つけれるかもしれないけど、範囲内にいなかったら聞こえないしなぁ。
「それでは、みんなお風呂に入って休みましょう。サジは、男湯を用意しておきますので、そっちを使ってください」
「匙先輩、寂しいなら一緒に入りましょうか?」
「別に良いぞ。不安なんだろ? 俺は、気にしないから、一緒に入るか?」
ふぁっ!? なん……だとぉ!! よし、これチャンスだよ! 私にめぐってきたチャンスだよ!!!!!!
やったぁー!! 彩南ちゃん大しょーりー!!
私が内心で狂喜乱舞していると、ルルちゃんがペシッと頭を叩いてきた。
痛い……。
そして、その発言をした匙先輩は、ソーナ先輩含め、私以外の眷属にジトッとした目で見られている。
私は匙先輩の返してきた言葉をよく思い返してみた。
『彩南、結婚しよう』
よし、確かこうだったはずだ。うん。間違いない。私の記憶は捏造されないからね。うん。私の記憶に間違いはない。良いね?
「サジ、私の前で、不純異性交遊をすると言いましたか?」
「えっ? 俺、そんなこと言ってないですよ?」
「えっ!? 違うんですか!?」
「彩南。あなたは後でお説教です。それで、サジ。今のはどういうつもりで発言したんですか?」
「えっと、雨月がてっきり一人ではいるのは寂しいから、一緒に入って欲しいって言っているのかと判断して、まあ、華穂も小学校を卒業するまで、そんな感じだったので、別に良いかなぁと」
ピキッと、私のなにかに皹がはいったような音がした。
いや、うん。そう言うこと? ねぇ、これって、そういうことだよね?
私のこと、妹のようにしか思ってないってことだよね!? なに、それ、変だよ! 特別待遇だけど、おかしいよ!!
私と、匙先輩は血がつながってないんだよ!? 妹のような扱いが通るわけないじゃん!!
と、思ったけど、なんだろう。妹も妹で良い気がしてきた。絶対にルルちゃんや、ソーナ先輩では掴めない立ち位置だし、何よりも合法的に匙先輩にボディタッチできる。
なにそれ、最高。でも、私がなりたいのはお嫁さんなので、妹は却下です。
「つまり、サジは、彩南のことを妹としか見ていない……と?」
「いや、まあ、妹は華穂だけですけど、こいつが甘えてきたら、甘やかしちゃって……」
「気持ちはわからなくもないですし、うっかり忘れるときがありますけど、彩南は高校生です。少なくとも、性のアレコレを知っている年ですよ? 見た目に騙されてはいけません。彼女は高校生なのですから、年頃の男女が同じお風呂に入るなんて、私が許しませんよ?」
……なんだろう。ソーナ先輩が必死な気がする……。て言うか、実質的な妹扱いを受けていたのか、私。
おかしいなぁ。私、こう見えても高校生なんだけどなぁ……。
「彩南。あなたは私たちと一緒にお風呂にはいりますよ? 良いですね?」
「あ……はい……」
しょぼんと、私は露骨にがっかりした。
匙先輩の様子をうかがうと、やれやれといった態度を取った後、頭を撫でてくれた。
えへへー。最高。私、このために今も生きてるかも……。
昇天しそうな私をルルちゃんが現実世界に強制帰還させて、私はルルちゃんとソーナ先輩につれられ、お風呂場に向かうことになった。