まん丸お山に輝きを。   作:さぼらいね

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最初の邂逅

 

冬。

 

 

 それは長く短かった一年も終わりが近づき、とうとう雪が降り始め、寒さに凍える季節だ。

 その季節に俺はあの人と出会った。いや拾ったって言葉が正しいのかもしれない。

 

 そう言えば最初に声かけた日も雪が降っていた。

 

 あの雪の日から全ての物語は始まった───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突だが、普通の大学生が一番励む物は勉学ではない。

 そんな物はある程度単位が取れる位までやれば充分だ。個人的な見解だがな。

 

 じゃあ何をするのかって?それはアルバイトだ。

 ちなみに俺は一人暮らしをしていて仕送りも貰っている。が、それだけだと色々と足りない部分がある。だからバイトをする事で色々と賄っている。

 

 と言うわけで今日も今日とて普通の男子大学生である俺、二村秀也(ふたむらしゅうや)はバイトに勤しんでると言うわけだ。

 

 

 

「お疲れ様でした」

「また明日もよろしくな!」

「うっす」

「雪降るかもしれんから気をつけて帰れよ〜」

「まじっすか、わかりました」

 

 店長と一言二言交わして上がる。店を出ようと店の扉を開けると寒気が俺の体を襲ってくる。うぅ寒っ。

 

 俺の家はバイト先から若干遠い所に位置しているが、道中に街灯も付いていない公園があり、それが怖くて早足になるので実質そんなに掛からない。

 

 いや本当に怖いからな。ここに引っ越してすぐの事だが、独りでにブランコが揺れていたんだ。もうその時は泣きながら走って帰った。死ぬかと思ったわ。

 

 今日も寒さに耐えながら怖さ対策にイヤホンをしながらその公園を通った。

 

 何となく怖いもの見たさで公園をチラッと見てみるとそこには薄ピンクのワンピースを着たピンク髪の女の子がベンチに座っていた。ピンク好きかよ。

 顔は見えなかったが、バイトが終わったのが日付が変わるか変わらないか辺りだったし、俺の月のバイト代くらいのお洒落なワンピースを着ている所からこの時はこれから彼氏とでも会うのかなと思った。畜生うらやましいな。

 

 その後家に帰りこの子の事を多少考えながら、次の日の学校の準備をして眠った。

 

 

 

 

 次の日は学校に遅刻しそうになったり、体育のバレーでスパイクを顔にもらって即保健室行きになったり、そのスパイクをもらって腫れ上がった顔を友達に見られて笑われたりしたりと散々な日だったのでその女の子の事はいつのまにか綺麗さっぱり頭から抜けていた。

 

 そしてその散々な学校が終わり、バイト先へ向かった。何となくここで早く出ないとトラブルに巻き込まれそうな気がしたので何時もより早めに出た。が、何も起きず賭けは裏目に出た。

 

「おっ秀也、45分前出勤とは偉いな〜」

「ありがとうこざいます」

「何かあったんか?」

「いや特に無いっすけど…あっそう言えば昨日公園で一人でいる女の子いましたよ」

 

 急に思い出した。あの子は今頃、彼氏とキャッキャウフフしてるんだろうな。畜生め!

 

「秀也声掛ければよかったのになぁ」

「そんな事出来ませんよ。多分彼氏持ちですよ」

「このヘタレ〜」

「うるさいっすね」

 

 こんな感じでフランクに店長も話しかけてくれるしやり甲斐があるからこのバイトはとても好きだ。あと飯も連れてってくれるしな。

 

「今日こそ雪降るから気をつけて帰りなよ?」

「わかりましたよ」

「うちの大事な戦力やもんな〜」

「俺の心配じゃ無いんすね」

「そうやね」

「微妙な気分です」

「あはは、冗談だよ!冗談!さ、そろそろ準備するから頼むね!」

「了解っす」

 

 今日も変わらず働いたのだが、揚げ物が安くなるセールがあっていつもより数倍の客が来てとても大変だった。何なら今、口もきけないくらい疲れてる。あと言うのを忘れたが俺はコンビニで働いている。

 

 

「お疲れ様でした」

「雪降っとるから気をつけてな!」

「あざっす、じゃあまた」

「おつかれ〜」

 

 そう言って店の扉を開ける。やっぱり寒さが俺の体を襲ってきた。うー寒い、早く帰ってこたつでぬくぬくしたい。

 

 そう言う思いからか何時もより早歩きで家に向かった。が、唐突に暖かい飲み物が買いたくなった。

 

 一度や二度は誰しも、もう家の近くなのに自販機で飲み物を買ってしまう経験はあるだろう。それだ。

 

 そう思ったものの近くに自販機が無く、やっと見つけたと思ったら例の公園の中だった。

 もう辺りは暗くてとても怖いが、飲みたい欲求に駆られていたので気にせず購入して帰ろうとした。

 

 何となくホットココアが飲みたい気分だったのでそれを買い、方向を変えて帰ろうとするとピンクの髪が目に付いた。昨日目にした女の子だろう。何故か動いてない気がして不思議に思って色々と自分なりに考えた。また彼氏待ちなのか?いやそれにしては服が昨日と変わって無い気もするしなぁ…

 

 ここで一つの事に辿り着いた。もしかして幽霊なのではないかという事だ。

 ならこれまでの事は色々と合点が行くし動かないのも頷ける。だが、そう結論づけた瞬間に鳥肌が立つのを覚えた。足も多分震えている。だが人間の悪い所である怖い物見たさと言う物は抑えられなかった。どんな出で立ちをしているのか気になりその子に近づいた。

 

 近づいて行ってその子の顔を見た瞬間に驚いた。ちゃちな幽霊なんかより百倍くらいは。

 

 

 絶望をした顔をしていたのだ

 

 

 常々思うのだが、人間は喜怒哀楽が顔に出やすいと思う。

 例えば、嬉しい時なら顔をくしゃくしゃにする。

 怒っている時ならばこちらを睨みつけたり、顔が赤くなったりするものだ。

 それと同じ様に哀しいを超えた、一言で表すと絶望、みたいな顔は簡単に見て取れた。正直こんなわかりやすく絶望という物が見えるとは思わなかった。

 

 こう見えた要素は沢山あるが、まず目に光が無いのだ。例えるならゾンビみたいな顔をしていた。

 そしてやつれていた。何日か食べ物を口に含んでいないんじゃないか?って勝手に思った。

 後、服も昨日と全く同じ物を着ていて、服に汚れがあった事から勝手に家出と判断した。

 

 絶句という言葉をよく耳にしたりするがその様な経験は無かった。だが、この瞬間は正しくそれだと思った。全く声が出なかったのだ。

 自分の存在に絶望している。そんな感じの顔をしていた。

 俺だって一応、最低限の教育は受けてきた人間だからこんな顔の人を見たら放って置けなくなってしまっていた。だから自ずと口が開いていた。

 

「君、大丈夫かい?」

 

 そう言うとその女の子はゆっくりと顔をこちらに向けて俺の顔をまじまじと見ていた。

 そしてその子が発する言葉を聞こうと耳を傾けた。だが、何も聞き取れなかった。

 

「どうしたの?喋りづらい?」

 

 こう声を掛けた。そうすると次の瞬間声らしき物が聞こえた。

 

「……ぁ、………て」

「わかった、喋りにくそうだから筆談にする?」

「……ぅぁ」

 

 何となく通じた感じがあったので俺のスマホを渡してみる。そうするとパタパタと文字を打ってこちらに渡した。書かれていたのは二言だけだった。

 

「もう疲れました。お腹が空きました。」

 

 何かがこの子にあった事はわかったし、このまま放っておくのは良く無いなと思ってこう言った。

 

「なら、俺の家に来ない?」

 

 女の子は驚いた様子でこちらを見た後、スマホにこう打ち込んだ。

 

「いいんですか?」

「うん、別に大丈夫だよ」

 

 このままだとこの女の子が大変な事になるかもしれない。そんな事が頭をよぎっているのでほぼ即答だった。

 

 そして少しの間を置き女の子はスマホを俺に見せた。

 

 

「ならお願いします」

 

 

 

 

 

 体も心も冷えきった女の子との運命が始まったのはこの日からだった───────

 

 

 

 

 

 

 

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