まん丸お山に輝きを。 作:さぼらいね
午前6時。太陽はまだ仕事をせず、町は暗いままだ。俺はこの時間に起床する。
大学生だから自炊をしているのかって?違う。
なら余程、大学までの距離が遠いのかって?違う。
答えはそう、二人分の朝食を作るためだ。
この家に女の子が来て以降、これまでの朝食であった晩飯の余り物であったり、カップ麺はやめた。理由はまぁ言わなくてもわかるよね。
冷蔵庫を開けてざっと見てみると野菜と卵とハムがあったから朝ごはんはハムエッグと野菜炒めだな。あとインスタントの味噌汁か。それだけインスタントって突っ込みは無しな?味噌汁って面倒だからな…
俺がフライパンを使って野菜を炒めていると女の子が寝ぼけ眼をこすりながら起床してきた。そう言えばだが、彼女は7時30分より後に起きた事がない。7時30分ジャストに起きてくる。軍隊か何かかな?
「おはよう、もうちょいで出来るから待っといて」
「わか…ました」
最初と比べると随分口をきける様にはなったが、未だに吃ってしまう所もあるようだ。まぁでも大きな進歩をしていると俺は思う。
もうそろそろ本当の名前とかを教えてもらって会議をしていかないといけない気もするけど、踏み入っても行けない気もするから微妙な距離感が続いてるんだよな。なんとかしないとな。
そんな様な事を色々と考えていると、野菜が丁度いい感じになってきたので皿に盛り付ける。野菜炒め以外はもうテーブルの上に用意してあるからこれを運べば朝御飯の時間だ。
「よし、じゃあいただきます」
「いた…きます」
数日一緒にいて気づいたのだが、女の子は顔から読み取れないが割と表情が豊かである。
そう思ったのは、ある夜ご飯の時にハンバーグを出したのだがその時は目がもうキラッキラしてた。子供みたいに目が光ってた。ちょっと引き気味に驚いてしまった。
あとそれの反対に夜ご飯にたこわさを出して見たところ、明らかな嫌悪を表していた。なんか申し訳なくなってしまった。たこわさ美味しいのにな…
こんな感じで表情が割と変わりやすいから元は明るかったんじゃないかなって思ったりもする。まぁあくまで推測だけどな。
そして今の話なのだが、今も美味しそうにハムエッグを食べている。こういう表情をしてもらえると作った甲斐があるって言う物だろう。とても嬉しさを感じながら俺もご飯を食べる。最初と比べて味付けも良く、割と美味しく出来ていて何か嬉しい。
だが、昔と比べて良くない所もある。それは食卓に音がない所だ。昔なら適当に動画サイトかテレビを見ながらカップ麺をズルズルと食べていたのだが、今は何も音がしない。
女の子から話を振られる事なんて殆ど無いのはわかっていると思うが俺も持ちかける事が出来ない。所謂、コミュ障と言う奴だ。女性と話す時に緊張しちゃったり吃っちゃったりするわけだ。
まぁでもこのままだとまずいから頑張ってみようと思う。
「あ、あの…天気良いですね」
「?は…はい」
こうなるわけよ。泣きたくなるよね。
「きょ、今日も大学あるので僕いないんで昼ごはんは冷蔵庫の中を漁ったりカップ麺食べたりして下さいね」
「ありがとうござ…ます」
コミュ障あるある、早口になりがち。あると思います。いやどっちかで言うとオタクなんじゃ…
「あのぅ…」
「どうかしました?」
「今日早め…出るんじゃ…?」
しまった、完全に忘れてた…
「やっべ、ごめんなさい残りの僕の分も食べておいでください!それじゃ!」
「あっ、いってらっしゃ…です」
お魚咥えたどら猫とか、パンを咥えて走ってぶつかるとか焦った感じのシチュエーションがこの国にはあるがまさか自分がこうなるとは思わなかった。
そして、いつもの倍以上のカロリーを消化してギリギリ間に合ったのであった。
「おーう今日は珍しく遅かったな!」
「朝っぱらからうるせえよ…」
朝っぱら鼓膜が破れるくらいの声で話しかけてきたのは
「いつもは授業開始の15分前には居るのに珍しいなぁ!明日は雪でも降るんじゃねえの?」
「お前、何日か前に雪降っただろ」
「それもそうだったな!」
「だからうるせえよ…」
まぁ祐樹といたら退屈はしないし、面倒ではあるがまぁ楽しいし何より優しいし周りが見えるからな。警察官とか向いてると思うな。そういえばコミュ障しないなって?そりゃ仲良くなった男相手にはしない。あくまでも初対面とかの女性だけだ。
「はぁ…」
「ん?どうした、最近溜息も多いな」
「別に何でもない。ただ祐樹がうるさいっていうのと授業がつまらんだけだな」
「あーまじでごめんな〜」
「別に良いけど」
「それにしてもあの教授は何が伝えたいんだろうな?」
「そりゃ授業の内容だろ」
「いや〜頭に入って来なさすぎてさ、催眠術でも教えてんじゃねえかって思うわ」
「実はそうだったりするかもしれんな」
毎回大学の授業を受けるたびに思うんだが、この人らは何の為にやってるんだろうな。時間潰しなのか?まぁ研究だけじゃなくて授業にも力を入れて欲しいってのが生徒側からの総意だと思うんだけどな。
そんな事を考えたり、祐樹と駄弁ったりしていたらいつの間に午前中の授業が終わっていた。
「秀也〜食堂行こうぜ〜」
「おっけー」
祐樹と連れ立って食堂に行く。沢山の人はいるが何とか席を確保する事に成功した。そして何と無くカツ丼を買って席に戻った。
ふと急に思ったのだが、そう言えばあの女の子は今頃何をやっているのだろうかな。
ちゃんとご飯を食べているのだろうか、そもそも家から出て行ってしまったかな。など色々と思考が巡る。考えれば考えるほどこれからどうして良いのか全くわからずに、はぁ……とつい溜息をついてしまう。
「あれ秀也…秀也??」
「うお、どうした?」
「どうしたじゃないやん、最近元気ないな」
「バイトとかあるしな」
「目に隈もあるじゃねえか」
「…色々あるんだよ」
「ほーん。まぁ何かあったら相談してくれよ、絶対に力になるぜ」
「絶対ってどこからその自信が出て来るんだよお前」
「そんなの決まってるだろ!出来るとしか思ってないからな!」
「…何でやねん」
こいつはよく分からないんだけど、オーラみたいなのがあるんだよな。他の人を引き寄せるって言うか、こいつになら秘密を打ち明かしても解決してくれそう?みたいな感じのだ。
現に俺はどうしていいかわからなくなった秘密を打ち明けようとしていた。
「なあ祐樹」
「何だ?」
「もし仮に、仮の話だけどだ。家出して何かトラウマらしき物を持っていて根暗になってしまった女の子がいるとする。お前ならどうする?」
「そんなん決まってるじゃねえか。勿論その子の力になる!」
まぁ普通はそうだよな、俺もそう考えたしな。
「具体的にどうするとかあるんか?」
「具体的かぁ、俺ならまずその子に寄り添うだろうなぁ」
「それから?」
「寄り添って少しずつ傷を埋めてって、後々に何があったか聞いてあげて一緒にトラウマを克服するとかじゃねえのか?」
「なるほどね…」
「超極端に言っちまえばトラウマさえ解決できれば大丈夫なんだよ。今のその状態になったのはトラウマのせいなんだろ?だったらトラウマを死にもの狂いで解決するしかねえだろ!」
そうなんだよなぁ…解決するにはそれしかないよな…
「でもトラウマを知らないといけないって事は触れないといけないよな?」
「そうだな!」
「大丈夫なのか?」
「まぁ俺がそんな事経験した事ないからわかんねえんだけど、そう言う人って自分の仲間を求めてると思うんだよな。だから俺がその子の仲間ってのと、どんな事があっても一緒に乗り越えるってのを誓って行動してあげるしかないと思うぞ」
こんな感じで真剣に答えてくれるから好きなんだよな。本当にありがとう。
「まぁ何だかんだ言ったけど、いっっちばん大事なのはな…」
息を飲む。
「気持ちをぶつける事やろ!」
コケそうになった。まぁそうなんだけども。
「とにかく自分の気持ちとか思ってる事全部ぶつければ、きっと通じる物だぜ!」
確かにな。気持ちを伝える他にないに決まってる。
「なんかありがとな。モヤモヤが全部無くなった気分だ」
「別に良いって!でも報酬としてカツ2個もらうぞ!」
「今日は特別に許してやるよ」
この胸のモヤモヤを解決してくれてありがとな。てかその報酬がカツ2個って割にあってねえだろ。まぁでもこれのおかげでようやく腹は決まった。
俺が出来るのは気持ちをぶつけるだけだ。
多分次の投稿は大分遅れます。申し訳ありません。