今日も重小様々な患者が運び込まれてくる。
だが軽い物でも手首が千切れ、重い物では全身真っ黒な虫の息となっている。
此処は戦場で怪我した者達を治療する為の野外病院である。
私はこの病院の管理を任されている院長カナベだ。
昨晩久しぶりに寝床に横へなっていたと言うのに急な医療要請でこの有様だ。
お陰でヘトヘトだ。
おや、部下が此方へ寄ってきたぞ。
「患者が死にそうです」
「どれ?」
戦場では毎日嫌でも人の死に目に立ち会える。
そして軍隊名簿から削除される。
まぁ、名誉の死を遂げた者は二階級特進である。
殆どの軍人はそんな名誉に与れず統計の数字として一刻一刻として刻まれるだけだが。
そこに人生があったとしても只の数字として刻まれるのだ。
「カアチャンノ……ツクッタミソシルガクイタイ……」
彼も含め前線の軍人達は鷹揚にして故郷の思い出をうわ言のように呟く。
食事の思い出、家族の思い出、土地の思い出。
……そして軍人は今しがた息を引き取った。
「院長。患者の一人が亡くなりました」
「そうかい。では軍に連絡して本国の家族に葬式を挙げてもらおうか」
部下は手際よく準備を進める。
それを尻目に私は仮眠を取る為に寝床へ戻るのだった。
その前に支援物資からお茶を出して喉を潤す。
そしてベッドに入り布団に包まる。
疲れ果てた身体は容易に意識を泥の中へと沈ませようと……出来なかった。
私はベッドから飛び起きた。
〜〜〜
それにしても解せない。
最近のインドゾウの不可解な現象はなんだ?
ある個体は感電しており、ある個体は毒ガスを吸い込んだのか口から泡を吹いている。
それなのに本国の政府は何の声明も出していないではないか。
寧ろ、それを報じた週刊誌の記者が海に浮かんだと言うではないか。
それを受けてなのかTVは有名芸能人のスキャンダラスな内容を報じ始めた。
御老人方はその内容を食い入るように見ていたが、一方でネットではそれらの事件を政府の陰謀ではないか?と議論を始めた。
実は今回の戦争もそれに関連しているのではないか?と私は勘ぐっているのだ。
何しろ派遣した場所がそれこそインドゾウが死んだ場所から近いからだ。
そして相次ぐ軍人の戦死。
疑うなと言われて疑わない者は居ない。
派遣された軍隊内でも今回の件について懐疑的な目を向けている者も居るという。
居ても居られなくなった私は外へ出た。
病院は山の中に建てられていた。
夜風は頬を優しく撫でる。
相変わらず空は綺麗である。
景色を見る度に思う。
一体世界は何処に迎えようとしているのか?と