ファイアーエムブレム風花雪月 番犬のカスパル   作:ヒラメもち

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第12話 交わる道

遠征に行った生徒たちは暗い顔のまま、心配そうに駆け付けた他の生徒たちに迎え入れられた。休む間もなく、エーデルガルト、ディミトリ、クロード、そしてシルヴァンを伴って、べレトは課題の報告のためにレアに謁見する。

 

シルヴァンの手には、布で厚く巻かれた『破裂の槍』がある。

 

「よく戻りました、べレト。どうやら、かの愚か者を討ち果たしたようですね。」

「……マイクランは魔物となった。無論、討伐はした。」

 

シルヴァンが酷く顔を顰めたが、レアの視界には入ってはいない。

 

「魔物とは、紋章を持たざる者の末路のことでしょうね。愚昧で傲慢な使い手が、またもやフォドラに現れるとは、嘆かわしいことです。」

「……魔物を知っているのか?」

 

「それよりも。べレトはその背中の剣を用いて……、槍と刃を交えて、何か変わりはありませんか?」

 

『馴染むというくらいじゃの。決して、魔物になるような兆候はない。』

「……特にない。」

 

「そう……ですか……」

 

酷く残念そうに、俯く。

あまりにも顕著な反応にべレトたちは動揺。

 

「なあ、レアさん。『英雄の遺産』とは、一体何なのですか?」

「槍が意志を持ったかのように、彼を取り込んだことは私たちの総意よ。」

「鉄を斬り、鋼をものともしない武具など『英雄の遺産』以外にはない。」

 

「……レア?」

「古の時代から伝わる武具です。それ以上でもそれ以下でもありません。」

 

何かを隠していることは誰でも察することはできる。魔物を知っていて、英雄の遺産の正体を知らないはずはない。生徒たちは、家宝とされている『英雄の遺産』が普通の武器ではないとわかっている。

 

背中の剣も、普通ではない。

なぜそんな危険な剣を、人に渡せるのだ。

 

「おいおい、それで納得すると思ってるのか……?」

そのクロードの小声はレアの耳には届いてはいない。

 

「かの塔で起こった惨事は、胸の内にだけ留めておいてください。」

「……なぜだ?」

「遺産を使った人間が化け物になったなどと噂が広まれば貴族の権威に関わり、フォドラは混乱に陥るでしょう。それは避けねばなりません。級長たちも自学級の生徒に伝えなさい。いいですね?」

 

箝口令を敷くということだ。

貴族や軍部に関わる者なら経験する可能性はある。

 

「応じましょう。」

「わかりました。」

「はいはい。」

 

教会から、三大勢力に対する命令。

次期皇帝、次期国王、次期盟主は乾いた笑みを零す。

 

 

「さて。槍は教会からゴーティエ家に返還しましょう。お渡しなさい。」

 

シルヴァンは大きく息を吸った。

 

「レア様。我が家から出た罪人の討伐課題を出していただき、誠に感謝しています。」

「構いませんよ。『英雄の遺産』絡みで、ゴーティエ家には重い課題でしたでしょうから。」

「……槍についてですが、我がゴーティエ家次期当主の私自らが管理することを申し上げます。父の許しは得ています。」

「次代の当主としてこのような不祥事を起こさぬと誓えますか?」

「兄の命にかけて、必ず。」

「わかりました。ゴーティエ家の異端児のような末路を誰かが進まないようにしなさい。」

「はい、必ず。」

 

シルヴァンは最後まで頭を上げなかった。

 

 

「それでは、べレト。また来てくださいね。」

「……ああ。」

 

べレトは背を向けて、足早に去る。

 

 

 

****

 

 

『まるで尋問だったの。おぬしには柔らかく話すのにな。』

(……シルヴァンは大丈夫だろうか。)

 

大聖堂から出るまで無言だった。

槍を強く握る彼の顔には、軽薄さは決してない。

 

「先生。兄を止めてくれたこと、感謝しています。」

「……よく耐えたな。」

 

「先生の言うとおりだ。シルヴァン、お前の覚悟を見せてもらった。」

「自分でも褒めてやりたいくらいですよ、まったく。今すぐにでもこの槍を折りたいくらいだ。」

「そうしないのはなぜかしら?」

「父上に叱られるのは嫌ですからね……。」

 

シルヴァンが復讐する相手は一体誰なのだろうか。彼を軽蔑した家なのか、彼を魔物にした槍なのか、人生を狂わせた紋章なのか。

 

「この槍は、兄上の仇を取るまでは利用してやりますよ。」

 

それとも、才能を持って生まれた自分自身なのか。

 

 

「それはいい考えだ。」

「……ディミトリ?」

 

好青年の彼の様子が、どこかおかしい。

 

「何に対して復讐するにしても、『力』をなくしては成せないからな。より一層、鍛錬に励むことが一番だ。」

「いや、確かにそうなんですけどね。」

「少し休んで気が向いたら、お前も鍛錬に来い。」

 

シルヴァンの肩を軽く叩いて、鍛錬場の方向へ歩いていく。

 

 

「たくっ、あんたも休めって言うのによ。」

「どいつもこいつも、世知辛い生き方をしているな。」

 

クロードはおどけた様子だが、ディミトリが歩いていく背中から目を離さない。

 

「……どういうことだ?」

「あいつも、復讐者なんですよ。先代の王がダスカーの悲劇で殺されたんですが。おっと、ドゥドゥーたちダスカー人じゃないですよ。真の敵っていうのかな。」

 

シルヴァンは、エーデルガルトに配慮したようだ。口説いた時には模擬戦でかなり酷い目に遭っている。

 

「まったく。私たち帝国も、恨まれたものね。」

「帝国の政治体制も一筋縄ではいかないからな。別にエーデルガルトがやったわけじゃないだろ。」

 

クロードの言う通りだ。べレトは最近知ったが、帝国貴族にはきな臭いところが多い。

 

 

「それでも。皇位を継ぐ者にはそれ相応の責任が生じるわ。過去も含めてね。」

 

べレトが接してきた生徒は、過去に囚われている者が多い。

 

 

「……ディミトリは何か患っているのか?」

 

最近、目に見えて調子が悪い。

模擬戦の授業に、倒れる時がある。

 

「さすがにそろそろ気づきますか。頭痛、幻覚、幻聴、悪夢、それに味覚障害も、……他にもありそうだな。まあ、俺たちがいなかったら、あいつはとっくに逝っていますね。」

 

「おいおい。無茶苦茶かよ……」

「ディミトリ、貴方そこまでなの……?」

 

シルヴァンが言ったことに、エーデルガルトたちも目を見開いた。

 

「怪我をしても鍛錬を続けるものだから、メルセデスとアネットがいつも追いかけ回してますよ。いやはや、同じ男として羨ましい限りだとは思いませんかねぇ、先生!」

 

幼なじみであったシルヴァン、フェリクス、イングリットは彼を止めることはできない。ドゥドゥーも結局は殿下の望みならと協力をしている。だから、メルセデスとアネットに懸けている。

 

もし、べレトが青獅子の学級の担任だったなら。

そんな理想を考えてしまう。

 

「それじゃあ、先生。俺はこの槍の管理をイングリットにでも任せて、気分転換に女の子と遊んできます!」

 

嘘ばかりだけど、周りに気を使える優しい人物。

彼が去っていく道は濡れていく。

 

 

「紋章も血筋も、生まれた国も……今更、俺たちにはどうしようもないことなのにな。なぜ出自で、差をつけたがるんだろうな。」

「マイクランの指揮系統や人望は、目を見張るものがあったわ。あれだけの数の兵士を領民から集めたんですもの。その実力は軍の小隊長に任命したいくらい。……紋章の有無がゴーティエ家の貴族の視野を狭めたのよね。」

 

「へぇ、実力がなけりゃ、あんたは人を評価しないのか?」

 

クロードは頭の上で手を組んで、そう告げる。

エーデルガルトは挑戦的な笑みを返す。

 

「人には人の役目がある。人の優れた部分を活かすことが、上に立つ者の役目よ。」

「人には弱い部分もあるだろうに。強さも弱さも認め合ってこそだろう。」

「弱さなんて、見せなければいいわ。」

 

価値観の違いで、いまだこの2人は決して交わることはない。

 

「そうだな。例えばだけどな。戦うことで存在意義を満たすやつが、もし戦う必要がなくなった後はどうするんだろうな。」

「一体、何が言いたいの?」

 

エーデルガルトは問い詰めた。

 

「あんたやヒューベルト、それにリシテアに比べれば、カスパルのやつはずっと平凡なやつだぞ。始まりが誰かは知らないが、番犬とはよく言ったものじゃないか?」

「喧嘩なら。彼の代わりに、私が買うわよ。」

 

エーデルガルトは、右手で二の腕に触れる。

 

「おっと、踏み込みすぎたか。あんたやディミトリの考え方を俺は否定する気はないが、少しくらい歩み寄ってくれ。それじゃあな、先生。」

 

まだ生徒たちの抱える闇をわかっていない。

笑顔が陰る姿を見る度に、哀しい気持ちになる。

 

 

「師には3つ、いや4つの選択肢があった。傭兵のまま生きる選択肢もあったものね。」

「……傭兵は成り行きだ。」

「そうだったのね。ねぇ、師は私たちの学級を受け持ってよかったと言えるかしら?」

「……まだ半年も経っていないが、充実した日々だ。」

「ふふっ、そうね。まだ師とは出会ったばかりだったわね。」

「……戦いを共にしているからか、長くは感じるな。」

「ええ。私たちにとって貴方は最高の教師よ。卒業してもずっと、師が私たちの教師のままでいてほしいくらいだわ。」

「……皇帝の教師とはな。」

「前例がないからといって、その役職があってはならないと決まっているわけじゃないわ。狭い視野を持ってはダメよ。私たちが思いもよらない考え方をする人が外の世界にはいるようにね。」

 

海の向こうにも世界がある。

 

「……フォドラの外にも世界があるということか。」

「ええ。」

 

 

それにね、とエーデルガルトは微笑んで会話を紡ぐ。

 

 

「こうやって夢を語ると、あたたかい気持ちになれるらしいわよ。たまに切なくなるけどね……。それで、どうかしら?」

「生徒たちとの穏やかな時間が続くのなら、教師を続けるのもいいな。」

 

「ええ、本当に。続いてほしいわね……」

 

 

大聖堂からおびただしい数の騎士団員が慌てて出てきたところを見て、2人は大きくため息をつく。休む暇はなさそうだ。

 

「はぁ……続いてほしかったわ……」

 

FE風花雪月、皆さんはどこまでやりこんでいるのでしょう?書き方に反映させます。

  • 全ルート攻略済。
  • 途中。いまだ未知の内容がある。
  • 攻略動画の視聴はしている。
  • 知識ゼロで読んでいる。
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