サメもナチスも出ません。
【防衛省の偉い人達】
防衛省・視聴覚室
そこでは連日連夜のように研究会と称して世紀末日本から嫌がらせのように送り届けられている現地での戦闘映像が公開されていた。
中には勝手に日本のネットへアップロードされていたりしている戦闘映像とかもあったりする。
様々な種類のサメとの戦い。
現地の核武装した武装勢力との抗争。
金が掛かったゾンビ映画のような凄惨な状況。
他の自衛隊の駐屯地や基地、防衛大学校でも公開されてるが揃って絶句もんである。
中には目をキラキラと輝かせる異常な奴が何人か出現したが・・・・・・きっとゲッター線にでも汚染されてるんだろう。
「何度見ても信じられない光景ですな」
「ですがこれが現実で、酷い時は連日連夜発生するのです」
「魔境よりも魔境ですな」
憲法九条とか軍規とか違反しまくってるんじゃと声が上がりそうなもんだが――仮に、現地の自衛隊を懲戒免職して日本に送り返して変わりの部隊を派遣するとしよう。
問題なのはその変わりの部隊をどうするかだ。
「自衛隊全体の士気も下がっております。防衛大学校の卒業者の多くは自衛隊に入らないとか――中には気に入らない隊員はこの地獄に放り込まれるなんて言う噂もあるぐらいで」
「それは私も聞いている・・・・・・困ったものだ・・・・・・」
また懲戒免職した自衛官をどうするかも考え物だ。今はただでさえ国内外がキナ臭い上に自衛隊の士気が下がりつつある現状下で彼達の戦闘力は誠に遺憾ではあるが貴重であった。
「現状彼達に頼る他ありませんな」
「ああ、古の魔法帝国絡みでも厄介なのにまさか平行世界の日本と一戦交える事になるとは」
それに完全に現代の関東軍化しているワケでもない。
事実グラ・バルカス帝国では――政治屋連中は戦争に勝って政治で敗北した戦いと愚痴を漏らしている――が、彼達の健闘がなければ丸く収まらなかっただろう。
そもそもグラ・バルカス帝国に世紀末日本の方々を派遣する事態になったのは、日本の後継者やフロンティアの残党のせいでもあるが――日本の政治屋連中が世紀末の日本から得た武器などの実戦配備を渋ったのが原因でもあるからだ。
大体は最近息を吹き返してきた左翼寄りの連中のせいである。
もうフェン王国で観光客が200人犠牲になったり、グラ・バルカス帝国に巡視艇の職員が公開処刑されたり、民間人を殺されたりしたのを忘れたらしい。
このぶんだと首都に核兵器を撃ち込まれても日本の自称平和主義者は学ばないかもしれない。
「政治家連中は話し合いが通用すると思っているのでしょうか?」
「さあな。だが日本の後継者やフロンティアの連中の軍備を考えれば武器の増強は必須だ。最悪あいつらは大義のために核兵器すら使用してくる可能性すらある」
漫画に出てきそうな最強最悪の核テロリストが今この世界のどこかにいる。
それがもう一つの未来の自衛隊だとは、皮肉にしても笑えなかった。
「問題は身内だ。第二日本駐屯地に工作員を我が国の人間が送り込んだと言う・・・・・・まあそいつは壮絶な戦闘に心が折れたらしいがね。中にはサメの餌になったらしい我が国の国民と思わしき武装勢力なども現地で見つかったそうだが・・・・・・」
かなりの数のサメを屠った筈だがサメバリアは未だに健在らしい。
さすがは魔境である。
「ああ、本当だ。サメに食われて死んだり、オーガの餌になっていたり、アンデッドにバラバラにされたり――参考資料で見たB級映画とかFalloutまんまな世界観だ」
「参考として自分もアサイラムの映画とか見ました。正直苦行ですよアレは」
「自分はメタルマックスですかね」
「自分もFallout4やりました。あとワールドウォーZも――第二日本の情報のせいでその手の娯楽作品が売れるのは皮肉っちゃ皮肉ですね」
大の五十代や四十代のいい歳した大人の自衛官が苦笑混じりにオタトークをしていた。
だが実際現地で日本のサブカル文化が重要になったりしているのも事実だ。
特にガンダム。
武装や機体設計などで参考にされており、現にガンタンクやガンキャノン型のロボットが現地で大量に製造されている。
現地の自衛官は古の魔法帝国通り越して何かまた別の奴と戦うつもりなんじゃないだろうかと防衛省の人達は本気で危惧している。
「それにしても外務省は大丈夫でしょうか?」
「ああ。宇宙人が来たからな」
「外務省も異世界で地獄を見ていると言うが――今回ばかりはなぁ・・・・・・」
外務省は現在修羅場である。
古の魔法帝国ではなく、アール星人やベルセルク星人との未知との遭遇――ついでにひっついてきた、どう見てもスターウォーズの敵役にしか見えないグランドオーダーの人達とかのせいで地獄を見ている。
一応平和に進んでいるが、前の世界の地球の総戦力でも何度も滅ぼされそうな――対応間違えれば冗談抜きでスターウォーズに発展し、古の魔法帝国が来る前に世界が滅ぶ事態になるので政治、官僚連中は皆眠れぬ夜を過ごしていた。
「まあ仕返しのつもりで今回は――な?」
「ええ、そうしましょうか」
この件に関して自衛隊はと言うと――今迄の便利屋扱いの鬱憤でも溜まっていたのか、
それともパーパルディア関連やグラ・バルカス帝国関連で恨みでも溜まっていたのか、
はたまた第二日本の人達の思想に染まったのか半ば他人事を決め込むことにした。
【ドキュメンタリー映画:アルタラスを救った勇者達】
完全無編集。
自衛隊から提供された資料を基に制作された映画。
この映画の興行収入はアルタラスやパーパルディアなどの被害地域の復興予算として割り当てられることになると言う。
第二日本、もとい世紀末日本からやって来た暴走軍艦を倒すために自衛隊がアルタラスで行った死闘を描いた物語である。
左翼連中はワケ分からん因縁をこの映画に付けてきたが日本国民達も全員が全員バカではなく、日本国民は概ねこの映画を楽しんでいた。
☆
忘れている人もいると思うのでこの映画について語ろう。
この映画は本作のエピソード、SS二本立て(サメが世界の覇者の次のエピソード)で投稿されたパーパルディア皇国に起きた大惨事――暴走軍艦により沿岸地域が悉く灰にされる。
さらに暴走軍艦はその矛先をアルタラスに向けて自衛隊は必死の抵抗をするが足止めが手一杯。
そんな状況に第二日本から駆けつけた援軍が暴走軍艦内部へ決死の突入作戦を敢行すると言う内容だ。
じつはこの映画、防衛省としてもいろんな意味で賭け――戦意高揚や士気低下の解消、さらには自衛隊の新たな入隊者募集の宣伝も兼ねていた。
まあそんな裏事情など知らずに多くの人々はこの映画を楽しんで観ることになるのだが――
☆
Side 三枝 ユキノ
どっかの映画館。
まだ午前中にも関わらず人で混雑していた。
全員が全員、「あの映画が」お目当ての映画と言うわけではないと思うがもう席がほとんど埋まってる状態だった。
第二日本でシェルター管理経営者でもある三枝 ユキノは嘗て自分がいた日本を懐かしみながらこの映画館に訪れていた。
ただ遊びに来たわけではなく、食料や資材などの買い付けなども目的ではある。
危険ながら日本政府に探りを入れるのも目的もある。
他にも仲間がいて問題なのはロボットであり、周りの人間や映画館の職員も驚いていたがどうにか突破口を開けた。
女性陣――とりわけアンドロイド少女のアイはその優れた容姿から人気の的だった。
ちゃらい男性が纏わり付いてきたが、ヘタな自衛官よりも修羅場慣れしている第二日本から付いてきた女性達に阻まれ、撃退されて泣いて逃亡するなどの一幕もあった。
そうしてちょっとしたお祭り騒ぎを経験してお目当ての映画を観ることに。
他にも色々と映画を観るつもりだが今日はこれである。
せっかく平和な日本の大地を踏んだのに観る映画が「殺伐とした内容」だけなのは自分もごめんこうむる。
殺伐なのはあの土地だけにしてほしい。
とは言う物の、あの人達の活躍を観たいと言うのも本音だった。
噂では既に続編が予定されており、それには自分達が登場するとかどうとか――あんなB級映画みたいな展開の戦いを上映して人が集まるのかどうか気になるが――
ともかく映画の内容に注視しようと思った。
☆
まず圧倒的な暴走軍艦の力。
歯が立たない日本の軍備が強調して描かれている。
パーパルディアを焼け野原にし、アルタラスを襲った暴走軍艦の力とその衝撃は自衛隊の内部でも未だにショックを与えており、巨大生物の驚異的な生命力に太刀打ちするためにも「戦艦の再建造計画」が噂で囁かれている程だ。
物語の前半は現実で起きた映像を踏まえて解説され、徐々に物語は戦艦に突入したメンバーの視点画像を元に語られていく。
ガンテツなどのロボットや、パワーローダーの記録映像が元になっている。
内部には夥しい数の白骨死体や幽霊のように彷徨うロボット、自動迎撃システムが行く手を阻む。
敵の武器も様々で中には光学迷彩を使って奇襲してくるロボットまでいた。
さながらSF映画のようだ。
戦いもただレーザーを発射するだけでなく、白兵戦も多く見受けられる。
現代戦のセオリーと言う物は分からないが、想定する敵に応じた意識改革を起こす必要があるように感じた。
ドキュメンタリー映画なので面白いとかどうとかはともかく、現実にあった事を詳細に伝えようとする作り手の姿勢には共感できた。
☆
アイと一緒に付いてきたセミロングの赤髪の少女、レベッカは「私達も出るんだろ?」と尋ねてくる。
「ああ、グラ・バルカス王国編だね」
グラ・バルカス王国の一連の戦いでは自分達も随分暴れ回った。
今回観たドキュメンタリー映画でも活躍していた木之元 セイさんやアイラさんなどのリアル異能生存隊、リアル船坂 弘たちがリミッターを外したように暴れ回って、味方や自衛隊からも恐れられていた。
それを上映する前に五十時間耐久基地防衛戦のドキュメンタリー映画とかもやるかもしれないが、あれは大人の都合などで日本での上映は難しいそうだ。
「それよりか、尾行している連中が鬱陶しいんだけど」
「まあそう言わずに・・・・・・」
レベッカの愚痴を俺はドウドウと抑える。
自分達の存在は――自分でこう言うのもなんだが――ハッキリ言ってグレーな存在だ。
何もしてこないと言うことはそう言うことだろう。
とにかく他にもやるべき事は沢山あるのでその場を後にした。
【次の作戦に向けて】
自衛隊富士駐屯地
「話を聞いたか?」
「次はリーム王国か」
「ああ。そこにフロンティアと日本の後継者の残党が集結しているって話だ」
「中にはパーパルディアやロウリア、グラ・バルカス帝国の残党も集まってきているらしい」
「そこに日本のあっち系の連中とかも合流しているそうだ」
「政治的失点を取り返すのに躍起でそこまで狂ったか・・・・・・」
日本国内は宇宙人の来訪だけでなく、更なる戦いに向けて大忙しだった。
新たな戦いの土地はリーム王国。
そこにフロンティアの残党や日本の後継者の連中だけでなく、過去に日本と敵対して恨みを持っている連中が集結しているそうだ。
どうしてリーム王国に集まっているのかは不明だが恐らくは元グラ・バルカス王国の同盟国時代からの縁だろうと考えられる。
近隣諸国にとっても脅威であり、世界各国合同でこのリーム王国に攻め込む事が決まった。
日本は核兵器の存在もあるので及び腰だが、政治的な都合で傍観するワケにもいかず、リーム王国とその王国に集結した残党達をテロリストとして扱う事で一応対決の姿勢を決めることにした。
その一環として――グラ・バルカス帝国戦での手痛い教訓から第二日本の武器やパワーローダーの配備などが急速に進められている。
どっから話を聞きつけてきたのか戦争反対派の連中がプラカード片手に富士の駐屯地に集結しており、今の飼い主を辿れば面白いことになりそうだがそれは他の部署の仕事になるだろう。
この富士駐屯地には現在、第二日本の国家、ヒノモトから一人だけ出る作品が違う強さの木之元 セイやヒノモト第1201小隊などが集まっていた。
内容はかつてアルタラスで行った教導任務。
特に対パワーローダー戦の教導は最優先で行われた。
日本が採用しているパワーローダーは第三世代型の月光――木之元 セイが使用しているのと同じ最新型だ。
核戦争で滅ぶ直前まで使用されていたパワーローダーで性能や信頼性は折り紙付きだ。
もちろん訓練用に出力を落としたりと色々と工夫はしている。
未来兵器にパワードスーツ。
そして仮想攻撃目標のためのガンキャノンやガンタンクに似た戦闘ロボットまでもが導入され、オタク自衛官達は歓喜した。
そうでなくても日本のこれまでの兵器開発の遅れを挽回できる程の最新鋭の装備を学べると言う点は自衛隊の大きな士気向上に繋がった。
他にも――第1201小隊が少女だけで構成されていて波紋を呼んだりとか、
元米軍で名誉勲章持ちのアイラさんが男女問わず魅了したりとか、
元女死刑囚がなんだかんだで馴染んでいたりとか。
木之元 セイの周りの女性関係やリア充ぶりに嫉妬されたりとか――
ともかくパワーローダーの教導が続いた。
それと平行してアイラと木之元 セイが特殊作戦軍、第一空挺団、レンジャーなどと一緒に訓練、演習などをしたりと言う一幕もあった。
木之元 セイは生身でも戦える。
生身でパワーローダーの撃破記録があるぐらいには。
どっかのパワードスーツ漫画の特殊部隊隊長みたいだ。
顔面ヤケド、傷だらけの金髪美女アイラさんも別格だった。
それはもうBIG BOSSと言うコードネームが付けられるぐらいに。
そもそも二人とも物量が売りの東側陣営の敵相手に生き延びたエースである。
その敵の中には特殊部隊なども当然混じっている。
実力もそれ相応である。
屈強な自衛官ですら地獄を見た者は数多くいたそうな――
こうして自衛隊の蛮ぞ・・・・・・もとい戦力強化は進められていくのであった。