あとスコピ、すまんな。
死ぬかと思った。ただの輸送任務がそのまま死刑宣告になる所だった。
私って人形はメンタルモデルのバックアップがない。
事故とは言え人間がベースになって416ダミーとゴチャ混ぜになって出来上がったものだ。
事の発端は行く先に警告灯と止まれというガイダンスが来た後だ。
なんとグリズリーがのっしのっしと歩いてくるじゃないか。
野生のグリズリーは流石に想定外で私もマカロフもPPKも固まる。
この地域に生息している報告は上がってない。
生息しているのは主に北米、かなり危険な猛獣だ。
これが子熊だったらまだ可愛げがあるんだが……どう見ても成獣だ。
しかもめっちゃ唸り声挙げてるしなんだなんだと……
しかしその上に人が乗っているのが見えたからいくらかは安全か……と落ち着かせることは出来た。
一応ながら車両にはG&Kのロゴもあるし不必要な警戒は……されないと良いなぁと思ってた。
「こんにちは、D08地区からデリバリー……というか安売りに来たHK417です、一応電話連絡は入れてあるはずですが……」
とまぁそんな感じで話したと思う。
その前後メモリーとか消し飛ばしたんだもん!!!
なんで消したかって……それは後でまた話す。
グリズリーの上に乗ってたのはリベルタちゃん……リベルタドールってマチェーテにぎったちょっと個性的な子。
ユノちゃんとはお友達で私とも友達になったんだけど……
そのね……声がくっっっそ小さいから耳を寄せたりしないと聞こえない……
こっちはほぼ非武装なのにマチェーテとグリズリーの驚異に晒されて流石に死ぬかと思った。
PPKが話していた相手は向こうのスコーピオン。
んでもってスコーピオンが来る手はず……だったんだけど……
虎にぶん殴られて入院って……そういえば向こうの97式が飼ってたなぁと
人形ぶん殴ってベッド送りにする虎って中々居ないと思うんだけど。
件の物資はとりあえず前哨基地……私達の第一目的地に置いた。
それからヘリで運搬する流れが構築されたと思う。
不審なトラッカーとかくっついてたら私がぶっ殺されると思うけどね……ははは……
あとは向こうの財政管理官とかおえらいさんの許可を得たら正式に私達がMSFの支援に入るって訳だ。
まぁ主にウチで生産している食料物資だけどね。
向こうの許可で乗ったはずだけど……ヘリにね、乗って……本拠地に行っちゃったんだ。
長距離移動でちょっと疲れてたしこっちが無防備なの見せれば警戒はされないよねー……
って算段もあって3人そろって寝たんだ……これが私達の首を繋いだ。
起きたらまぁご立派……海上の上に連なる大型施設。
これがMSFの家、マザーベースだと言われて見れば……いやーもう興奮。
と思うでしょー?私達が来るのは想定外だったみたいで。
取り囲まれて銃を突きつけられる始末。
両手を上げて跪いてとしてみれば……部外者立入禁止でした、テヘペロ★
死ぬしか無いとか死ぬ間際までリベルタちゃんのこと覚えてれば良いとかね……
うぅ、漏らさなかった私を褒めて欲しい……今でもゾっとする。
その後私達がそれまでの飛行経路を覚えていないのをちゃんとね……証明されてから開放されました。
一部区間私が知った風に歩いたのがちょっと怪しまれたけどね……
「スコピー?ちょっと一発ビンタさせろ♪」
「ちょっとまって、あたし入院患者!!ギャー!!!」
とまぁ入院中でも元気そうな向こうのスコーピオンに景気よく一発乳ビンタを食らわせた。
というか全然ピンピンしてるし私の乳ビンタくらい屁でもないでしょ……
八つ当たりにも近いけどそもそもスコーピオンがちゃんと来てればこうはならなかったんだ。
不幸中の幸いでリベルタちゃんとは文通とか電話でよく喋るようになったんだけど。
突発的に名乗りを挙げた私達の物資はまぁ喜ばれたと思う。
代わりにこっちに来たのは未加工のメープルシロップの原材料。
サトウカエデの樹液だ。これ、加工してもってこいって事かな?
「という訳で今日はメープルシロップの製造に入っていきたいと思います」
「あとついでにサトウカエデの木の群生地の割り出し、一部の移送も開始したわ」
できるだけ自分のところでがモットーですので。
純天然のメープルシロップを作れるのは春の始まり……その数週間のみに限定される。
樹液を取って煮詰めればOKって言えば簡単だけど……
メープルシロップの樹液を採れる木も限られている。
樹齢30年以上の老成したモノから採取できる。
ちょうど今ぐらいの時期……日が落ちればくっそ寒く日中は温かい春の始まり。
採取用の木に穴を掘がしてから蛇口をポンッとつける。
その下にバケツをセットすると透明な樹液がぽたり……ぽたりと出てくる。
木一本で採取できる量は限られているから総生産量も限られる。
かつてはメープルシロップなんてありふれた甘味料だったらしいけど……
今は原産国で有名だったカナダとの輸送ルートはほぼ途絶。
めっちゃくちゃ高騰している高級甘味料です。
んでだ、樹液40Lに対して精製できるメープルシロップはたったの1L。
瓶詰めにするのは大体は150グラムとか。
製造は簡単な物で加熱して凝縮させるんだ。
シロップは琥珀色が薄く味がキメ細やかな物が上等と言われる。
ちなみに固体になるまでやったらメープルシュガー、加熱後急速冷凍したらメープルバターになるね。
まぁ向こうのスプリングフィールドが欲していたのはお砂糖だからこっちで栽培しているサトウキビとか流せば喜ぶと思うけどね。
サトウキビの栽培に関してはまた今度。
兎も角メープルシロップの精製は煮詰めることに限る。
煮詰めてろ過してまた煮詰めて……これをひたすら繰り返す。
ただこの煮詰める作業……何時間も続けてやらなきゃならない。
火の調整もやらないといけないし焦がす?以ての外だね。
煮詰める中で気をつけないといけないのは煮詰める温度。
これをしくじると糖度が変わってしまってメープルシロップじゃなくなる。
66%これをしっかり守らないとメープルシロップでは無くなっちゃうのだ。
煮詰め過ぎたら結晶化しちゃうからね。
糖度70%超えで結晶化してしまう……煮詰めすぎ=アウトなわけだ。
「あっつい……」
まぁ煮詰めている間は目が離せない訳で……
当然私はその間ずーっと火の点いた鍋の真ん前。
露出が多い服装してても暑いものは暑い……谷間に汗も溜まって最悪。
なによりCPUのクロックとか内部的な機械部品に不具合が出そう。
いや、それで壊れるI.O.P製品じゃないけどさ……スペックに影響出るよね。
オートメーション化してもいいけどこういうのはちゃんと手で作って送り返さないとねー……
うんうん、最初の4時間くらいはほぼ変化無しだけど煮詰めてくると琥珀色が出てきてとろみも出てくる。
この変化を楽しめるのは製造過程の醍醐味だねー。
じゃ、出来上がったら前哨基地に輸送するだけ。
もうヘリには乗らないぞ。
じっさいメープルシロップは結構高価。
200gで800円とかじゃなかったっけ?
今後ともご贔屓に~
なお417がヘリ恐怖症とマチェーテ恐怖症を引き起こした。
マカロフとPPKも同じく。