神話生物でもサッカーがしたい!   作:ウボァー

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イナイレ世界、誰でもサッカーしすぎではなかろうか。
天使に悪魔に宇宙人。なんでもありなイナイレ世界。
じゃあ、神話生物はどうなんだって話。


神話生物でもサッカーがしたい!

「サッカーやろうぜ!」

 

 

 ――それが全ての始まりであり、終焉への引き金となった。私はあの時何故承諾してしまったのか、と永遠に後悔し続けるだろう。

 

 ――願わくば、この手記がかの邪神に目をつけられた哀れな被害者達の助けにならんことを。

↑それって個人の日記じゃなくて故人の日記になるってこと? あっ上手いこと言えた!byニャル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちやがれニャル! そして死ねぇ!」

 

 叫びと共に轟々と炎が巻き上がる。殺意を込めてサッカーボールを射出したのはFW、クトグア。

 

「ちょっやめてよね!? 新人さんの前でぐほぁ!?」

 

 無駄に顔がいいMF、ニャル。クトグアの蹴ったボールが腹にめりこみ、着弾地点を中心に爆発大炎上。

 

 

 

 必殺技。サッカーを嗜むものなら一つは所持しているだろうそれは、科学で解明できない超次元パワーを秘めている。

 必殺技と称されているからといって、殺人に使用するものではない。ないったらない。あくまでもサッカーでのみ使う技だ。

 

 

 

 ――じゃあ、目の前で繰り広げられているコレはなんだ?

 

 

 

 グラウンドを溶解させる超高温を発生させたクトグアの必殺技をまともに食らったにもかかわらず、ニャルは平然と佇んでいた。

 

「もーう、いくら私が黒き神って呼ばれてるからってー、こんなダイナミック日焼けサロン開いちゃうなんて――――開戦の合図と見て良いな?」

 

「ハッ、上等だ――――跡形もなく消してやろう」

 

 

 

「(だれか たすけて)」

 

 グラウンドの端で何も出来ずかたかた震えているのは、かの黒き無貌の神に目をつけられてしまった人間。

 

「あら、あら。どうしましょう?」

 

 新人の正気が直葬されつつあるのに気が付いたのはマネージャー、シュブ=ニグラス。喧嘩と人間、どっちをどうすれば良いのかわからずおろおろしている。

 

「避難だ避難! こんな場所になんの力もない人間を置いておけるか!」

 

 常に黄色いフードを被っているMF、ハスター。硬直している人間の手を引き、保健室へダッシュ。

 

「あれ、どうかしましたか皆さん? 僕が校外走ってる間に何が起きたんです?」

 

 風になろうよ系DF、イタクァ。つい先ほど自主練から帰ってきたので状況を把握できていないようだ。

 

「ふわぁ……ニャルが新人さん連れてきた。で、クトグアといつもの喧嘩中…………ねむ」

 

 眠気と格闘しながら会話に参加したのはGK、クトゥルフ。彼らの喧嘩にそこまで興味がないのか、船をこぐ幅がだんだん大きくなっている。

 

「くだらん。全くもってくだらん。毎度毎度飽きもせずに喧嘩、喧嘩。直せど直せどグラウンドは元に戻らず荒れに荒れて……手がつけられん」

 

 どこにでも行ける系FW、ヨグ=ソトース。眉間にしわを寄せつつもグラウンド整備用のトンボを用意している。

 

「ふつうのにんげんさん。でもこれでじゅういちにん! しあいができる? てけりり」

 

 耐久力に定評があるちびっ子DF、ショゴス。試合ができるかもしれない、という興奮からぴょんぴょん飛び跳ねる。

 

「試合? 馬鹿言うんじゃないよ全く! 僕の巣作りの時間をこれ以上減らせって言うのか!? 大体僕はサッカーにそこまで乗り気じゃなかったんだよ! それをアイツが!」

 

 編み物大好きDF、アトラク=ナチャ。お手製のマフラーを常に首に巻いているが、その原材料が何かは知らない方がいいだろう。

 

「やめんか蜘蛛の。今更何を言おうと奴が喜ぶだけじゃ……ニャルの奴め、何を考えてここまで人間を連れてきおった……?」

 

 見た目に似合わず年寄りのような話し方をしているのはMF、ノーデンス。ニャルの行動の真意について考えようとあごに手を当てる。

 

「…………。………………? ???」

 

 常に目を閉じ、その上にアイマスクを被せているのはFW、アザトース。屡塁江サッカー部の部長である。

 なぜかその手には誰かの入部届けが握られていた。どうして今、と疑問に思いつつも取り敢えず入部届けなのでいつも持ち歩いている判子をぽん、と押す。

 

 

 

「ああ。部長、判子、押しましたね? ふ、ふふふ――」

 

 

 

 ニャルの凍えるような笑い声が頭に直接響いた気がした。……いいや、気がしたのではない。本当に響かせたのだ。その程度、かの神にとっては容易いこと。

 思わずニャルを見る。見た。見てしまった。

 ニャルの顔には深淵へと続く暗闇が、何もかもを飲み込む影が、べったりと張り付いていた。

 

 

 

「あ、あ、あ――――」

 

 

 

 彼は気付いてしまった。気付かされてしまった。

 

 

 

 ここにいるのは全て人間の理解が及ばぬ存在であることを。

 

 

 

 今まで普通だと思っていた日常は、彼らの気まぐれによって続く仮初めの世界であることを。

 

 

 

 今、自分の手を引いているのは、触れているのは。

 

「……む、どうかしたのか? 大丈夫か……?」

 

 人間の姿をしているが、人間ではない。

 

「ひぃいぃっ、ば、ばけ、ばけも――」

 

 黄衣の王。

 

「っ!? まさか、見えて――ニャル! あいつがまた何かしたのか!?」

 

 異常に触れたものが日常を過ごせるはずがない。目を逸らすのには限度があり、心は磨り減り削れ無くなるが定め。

 

 現実逃避とも、走馬灯とも言えない幻覚。つい先程の出来事が、遠い。あの言葉だ。あの言葉で全てが狂い出したんだ。

 ――ああ、頼むから誰か。これを、夢だと言ってくれ。

 

 

 

 

「コッケェーーーッコッコッコッ、コケェーーーーッ!」

 

「まてこら逃げるなシャンタくーん!」

 

 シュート練習中、ちょっと力を入れすぎて狙いと違う場所にボールがすっ飛んでしまった。それだけなら良かったのだが、運悪くボールはニャルが学校の許可なく勝手に作成した飼育スペースに激突。

 破壊された柵から脱走し、自由を満喫しようとするニワトリ。それをなぜかサッカーボールをドリブルしながら追いかけている褐色イケメン、という妙な図が出来上がっていた。

 

「何が悪かったんだい? エサかい? 一番安いので我慢してくれないかなこっちは一応中学生として生活してるんだから必要以上の金銭を動かすと多方面から怪しまれるんだよ妥協してくれないかなぁうーん無理っぽいね! こうなれば必殺技を――ん?」

 

 曲がり角を走り屋もかくやといったスピードでドリフトしようとしていたシャンタくんの足が止まる。

 

「コケッ!?」

 

 突然シャンタくんは目の前に誰か現れた――のではなく、その人物がちょうど角にいたからシャンタくん視点から見えていなかっただけなのだが――ことでビックリしたようだ。

 

「こら! 神妙にお縄につけーい!」

 

 もう逃げられない、と悟りしょぼんとしたニワトリを確保する。

 

「いやーありがとうねー! お陰でシャンタくんを捕まえられたよ!」

 

 戸惑いながらもどうも、と返事を返したのはニャルの見覚えのない生徒だった。

 

「……へえ、ところで君はどこのクラスに? 私はこの学校に長いこといるんだけど、見覚えないから気になって……B組? ああ、転校生か! ふーん、そっかぁ……」

 

 何かに取り憑かれて……いない。狂信者……でもない。普通であることが異常となるこの屡塁江中学校で、本当に異常を何にも持たない一般人がいるなんて! 私の言葉にどこか疑問を持ったようだが、考えるのを後回しにした! 実に愚か! 故に気に入った!

 こんな面白そうなオモチャ、どうして今の今まで気が付かなかったんだ!

 

「……うん、突然で悪いんだけどね。君が良かったら、なんだけど」

 

 サッカーボールを掲げて、笑って。

 

 

 ――サッカーやろうぜ!

 

 

 誰が見ても良い印象を抱く笑顔の練習を欠かさなかった過去の自分に感謝しつつ、なんの疑いもなく承諾した愚かな人間をこれからサッカーで好きにいじり倒せることにワクワクしている自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いやー大成功! いえーい」

 

 黒煙を上げながらも嬉しそうに一人で万歳しているニャルを見て、クトグアが怒りの炎を巻き上げ……はせず、どうしてという疑問の方が勝った。

 

「あ? 何がだよ……待ておいニャル、お前、まさか」

 

「うん、あの子が最後のメンバー! 私とお前の喧嘩見て動けなくなってたから、その隙に入部届け勝手に出しちゃった! 勿論判子もあの子のカバンからこっそり取ってこっそり使ってこっそり返したから問題ないよ!」

 

「いやどこが大丈夫なんだよ。冗談言うんじゃねえよお前燃やした」

 

「結果報告!? あちちちち」

 

 

 

 

「……だから、その、まあ、なんだ……。あー…………すまん」

 

「謝って済むなら警察いらないんだよー?」

 

「どれもこれも貴様のせいじゃろうが! しかも貴様、必殺技の使い方をあの人間の意識がないうちにねじ込みおったな!? そのせいで儂の加護が効かなくなっておる!」

 

「いいじゃん必殺技の一つぐらいさ。あの子まだ必殺技持ってなかったからサービスだよサービス!」

 

「必殺技……ねじ込む……サービス……」

 

「! まさか貴様、後戻りできないところまでこちらに引き込んであの子の逃げ道を断つつもりじゃったか! くっ、気がつくのが遅かったわい……!」

 

「成る程、なぁ? ……ニャル、覚悟はいいか?」

 

「えっ何の覚悟ー?」

 

 理解したくない単語が飛び交う。もうやだこの中学校。日常に帰りたい。

 

「…………」

 

 部長のアザトースにぽん、と肩を優しく叩かれる。死刑宣告だろうか。

 

「せっかくの新入部員なんだし! 初めての練習、うぉう! 見ていっ、てえっ! くれないかなぁってあちちちち!」

 

 最後にせめてシュート練習だけでも見ていってくれないか、とニャルが縋り付く。

 一本だけ、一本だけだから! と明らかに嘘泣きで必死に頼み込む邪神。もういやだはやくかえりたい。精神は復活したのに身体が追いついていない。動かない。

 何も反応がないのをOKのサインだと受け取ったのか、いそいそと準備を始めるニャル。違うそうじゃない。

 

「んむぅ……ねむい……」

 

 眠気からふらふらしながらも、ゴール前に立つクトゥルフ。

 

「それじゃあいきますよー」

 

 とん、と軽くボールを胸元まで蹴り上げる。

 

「シャイニングー!」

 

 ボールが不気味な輝きを帯びる。

 

「トラペゾヘドロン――!」

 

 後ろ回し蹴りの要領で真っ直ぐにボールを蹴り飛ばす。ゴールに向かい真っ直ぐに飛ぶボール。このまま何もしなければ、クトゥルフの真正面にボールが当たるが……クトゥルフはそれを許すKPではない。

 

「んむぅ……コール・オブ・クトゥルフ」

 

「えっそれ使っちゃいます?」

 

 クトゥルフはがおー、と両手を上げて襲いかかろうとする獣を真似たポーズをとる。

 彼の背後に見えたものは、あれは。

 

 

 ――タコに似た頭部から、触手を無数に生やしている。巨大な鉤爪のある手足。ぬらぬらした緑色の鱗に覆われた大きな身体。コウモリに似た細い翼を背負った怪物。

 

 

「…………あっ、コレを見せるのはまだダメだったの? ゴメンねぇ」

 

 ふわあ、とあくびをしながらの謝罪が彼の耳に届いたかどうかは、神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 ――ここは屡塁江(ルルイエ)中学校。邪神が超次元サッカーを興じる為だけに作られた舞台。

 来るもの拒まず去る者おらず。正気を保てる者は無し。

 讃えよ、偉大なる神々を。いあ、いあ――。




これが屡塁江イレブンだ!

FW クトグア アザトース ヨグ=ソトース
MF ニャル ハスター 人間 ノーデンス
DF ショゴス イタクァ アトラク=ナチャ
GK クトゥルフ

マネージャー シュブ=ニグラス

対戦相手が宇宙クラスの強さがあるなら本気出してくれるよ!
神話生物に囲まれたにんげんかわいそう
なお全員「あそこにUFO」に引っかかります


本気技は正体ちらっとでも見せちゃうから強制正気度チェック入ります。勿論対戦相手だけでなく観客もです。ひどい
のでフットボールフロンティアには出ません。代わりに練習試合しかしません。戦った相手は誰であろうと正気が消しとばされます。ひどい


〜オリジナル必殺技〜
「コール・オブ・クトゥルフ」
クトゥルフの本気技。自身の正体を現し、その巨体でゴールを守る。
これ化身じゃない?

「シャイニングトラペゾヘドロン」
ニャルの必殺技。ボールにトラペゾヘドロン的輝きを纏わせシュートする。人間でも覚えられるので威力はそこまで高くない。
この必殺技を覚えた人間の近くにニャルはワープできるというはた迷惑な特性がある。具体的には家の冷蔵庫漁られたり勝手にお風呂沸かされたりする。そして一番風呂は取られる。
人間が書いていた日記にニャルが追記していた。人間に入れられた必殺技の正体はつまり……そういうことです。
帰れ。
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