神話生物でもサッカーがしたい!   作:ウボァー

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み じ か い


必殺技 とは

 ティーダを愛でるのが毎朝の日課になりつつある。はーかわいい。柴犬最高。柴犬の中でもティーダがナンバーワンの可愛さを誇ることは全俺の中ですでに決まっているのだ!

↑親バカですね、わかります byニャル

 

 

 

 

 

「――必殺技とは何か、か……難しいのぅ」

 

 ノーデンスは人間の問いに答えようとしてくれている。が、かなり悩んでいるようだ。

 超次元サッカー初心者にとって、必殺技は有り得ないものだ。その壁を取っ払うことが超次元先輩部員の役目、だと分かってはいる。分かってはいるのだが……。

 

「儂……というか我等はまあな? 曲がりなりにも神じゃからな? 思いついたことは大体出来てしまうからのう」

 

「他の中学の試合で使われた必殺技を真似したりとかもよくすっからな……」

 

「ひっさつわざなくてもからだでどーんすればなんとかなるー! てけりりー!」

 

「ちびは野蛮だねぇまったく……」

 

「むー!! あみものおわらないくもにいわれたくないー!! てけりり!!」

 

「ハンターズネットォ!!」

 

 常識神達が相談に乗ってくれてはいるが、彼らの言葉は人間の参考になるものではない。人間の姿でいるとはいえ中身は別物、人間と神話生物では体を動かす感覚が違う。あと部室で必殺技使うのやめろ。

 

「…………」

 

 部員が困っていたら助けるのが部長の務め。アザトースは部室の隅にあったホワイトボードを引っ張ってきて赤マジックできゅきゅきゅっと書き上げ、どや! と見せびらかす。

 

『必殺技とは! 自分ができる事だ!』

 

「…………はあ」

 

 いや当然では? とも思ったがまだ続きがあるようなので反論はせずに黙って見ておく。

 

 きゅきゅきゅきゅきゅ。

 

『必殺技は必ず自分の延長線上に存在する。自分の得意なこと、好きなこと。そういうのを極めた先に必殺技がある。まず、サッカーをやっていればエネルギー波は大体のプレイヤーが出せるのは当然だろう。そのエネルギーをより高めていくと生物のビジョンだったり自然現象になっていく。そうして出てくるビジョンがその人らしくない……ってことはそうそうないだろう?』

 

「あ、あー? ……確かにそうだな」

 

「はーい! しょご、とらさんみたことあるよー! てけりり」

 

「虎? 動物園に行ったのか?」

 

「ううん? さっかーでみたの! てけりり」

 

「虎か、柄物としてはダメダメ。大阪のおばちゃん受けはいいかもしれないけどね。ウケる幅が狭すぎる」

 

 きゅきゅっ。

 

『必殺技、一度練習してみる?』

 

「おっついにシャイニングトラペゾヘドロン使っちゃう?」

 

「そぉら目潰しだ!!」

 

「ぐっほおああ!? 目が! 目がああああ!!」

 

 部室の床でびったんびったんしているニャルを放置し、一同はグラウンドへ移動する。

 

「儂が付き合うとしようかの。何、遠慮せずとも良い。必殺技の習得となれば本気で練習せねば意味がないからの」

 

 ノーデンスと人間の1対1。この部内でも力の加減が上手い神話生物一二を争う神が相手ならば不慮の事故は起きるはずがない。……まあ、ニャルがちょっかいを出してきたときに備えてクトグアがスタンバってはいるが。

 

「シュートは……無理やりニャルが仕込んだ必殺技があったのぅ……ではブロック技を考える方が良いかの?」

 

 ブロック技、と言われても人間にはなんとかできるビジョンが全く見えていない。相手は神話生物、人間の力が及ぶ存在ではない。ぶつかる前から勝てない、と本能が警鐘を鳴らしている。

 そんな内心が伝わったのか、ノーデンスは心配から顔を歪めた。

 

「むぅ……難しかったかの? まあ初めてじゃからな、基礎練からにした方が良いかもしれんが」

 

「指笛吹いたら? 何か起きるんじゃない? 赤いペンギンが生えてきたりとかさ!」

 

 才能に溢れた人間の顔が苦痛に歪み、選手として使い物にならなくなっていく様がとても楽しかったなあ、あの見世物……と思い出してニヨニヨしている邪神。あの邪神の言うことをそのままするのもアレだが、ブロックできるイメージが浮かばない以上、今は致し方ない。

 

 

 

 

 俺の力になって、なおかつ必殺技をなんとかしてくれる存在、来てください――!

 

 

 ――ピイィーーーーーーッ!

 

 

 

「――わんっ!!」

 

「ティーダ!?」

 

 指笛を聞きつけ駆け寄ってきたのは、家にいるはずのティーダだった。

 

「えっアレの名前ティーダ? 何で? 召喚繋がり? あっそうだ畜生お前竹を家の下に埋めただろ床突き破ってきたぞ竹!」

 

「アロガント・スパークッ!!」

 

「ニャルガァッ!?」

 

 サッカー関係ないことで怪我させるのは超次元的にはあまりよろしくないですが、相手はニャルなので何も問題ありません。

 

「さて、どう来るかの……?」

 

 初めて見る必殺技にワクワクしているノーデンス。攻撃的な必殺技ではなさそうだが、果たして――?

 

 

「わんわんわん!」(相手選手目掛け走る柴犬)

 

「む、ぬおっ!?」

 

「わんわんわんわふっ」(数秒の格闘の後、人間へボールを持ってくる柴犬)

 

「ほう、なんと鮮やかなボール奪い……いや見事」

 

「わんわんわおーん……」(どこかへ消えていく柴犬)

 

 

「てぃ、てぃーだぁぁ!! 待ってー!」

 

「落ち着け、あの犬が来たのは必殺技じゃ! あの犬は必殺技が終わり元いた場所に戻っただけ、落ち着けい!」

 

「家に帰っただけ、本当に……?」

 

「勿論。儂は絶対に嘘はつかぬ」

 

 ひい、ふう、と深呼吸して落ち着きを取り戻した人間。召喚された柴犬、足元に転がるボール。

 

「――よし! この必殺技の名前は『とってこーい!』だ!」

 

 急募、ネーミングセンス。

 

「えっティンダロスコールとかで良くない?」

 

 クトグアが全力で放ったアロガント・スパークを受けても謎の生命力を発揮して生きているニャル。くたばりかけでも玩具がサッカーをしているとなれば首を突っ込むこの強さ。あ、参考にしなくていいです。

 

「……は? ティ……何て?」

 

「いやその犬のしょムグー! ムググー!!」

 

 右からアトラク=ナチャ、左からはヨグ=ソトースに口を塞がれるニャル。

 

「世の中には知らなくていいこともあるってことだよ、人間」

 

「然り、然り」

 

 

 

 

 

 

「あっそうだ! 今日のドリンクは特別製なんですよ!」

 

「ほう? それは楽しみだな」

 

「風の噂で『神のアクア』というブランドものっぽい高級そうなドリンクがあると聞いたので、張り合ってみました! 黄金の蜂蜜酒です!」

 

「や め よ」




おいでよ楽しい屡塁江中学校。
同級生は神話生物だったり狂信者だったりグールだったり深きものだったりする楽しい中学校です。
建築技術はミ=ゴが提供。安心安全!

〜オリジナル必殺技〜
「とってこーい!」
人間の必殺技。かわいい柴犬が鋭角から現れ、相手からボールを奪って人間に渡してくれる。顔が「あそぼ」って言ってる。癒し。ネーミングセンスは柴犬に食べられました。
ごく稀に柴犬のガワを被るの忘れてくる。

〜キャラクター紹介〜
FW クトグア
キレるのはニャルが絡んでくるときだけなので普段は優しいヤンキー。炎系必殺技担当。豪炎寺君をひそかに応援している。そのままニャルを焼き尽くす火力出せるよう頑張れ頑張れ。
本気じゃないクトグアは嫌がるニャルを無理やりド根性バットのバットにしてイライラを発散する。ところでド根性バットは秋葉名戸の必殺技なんだけどおま――(迫り来る炎)
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