ACの愉快な仲間たち(一部)と一緒に艦これの世界に来てしまった…   作:とある組織の生体兵器

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随分と待たせたねぇ…。
「筆者さんはあるゲームをやっていて遅くなったようだよ。」
気が乗らない上に、最近忙しいから…。まぁ、ゲームもだけど…。
「この小説、終わるのかな…?未完するの?」
できれば、したくない。ま、いいんじゃないの?どうでも。
「よくないでしょ…。」
そろそろ、瑞鶴も休暇を終えて帰ってくるかな?
「うーん、どうだろう?」
てか、そろそろはじめようか。あらすじ。

あらすじ
雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ雨はいつか止むさ…


259話 さよならタウイタウイ

…………

 

「んー…。叢雲、どう見る?」

 

「…かなり怪しいわね。」

 

ドミナントと叢雲は、報告書にあった金網を直しに来ている。

 

「…押し切った感じの穴じゃない。かじられた形跡もない。…おそらく、カッターのような物で破られてる感じ。」

 

「…この大きさ…もしかしたら、不審者が入り込んでいる可能性があるわ。」

 

「だよね…。でも、こんな辺境の鎮守府に入る奴がいるんだろうか…。」

 

「…嫌な予感がするわ。とにかく、すぐに全体放送にかけるわよ。そして、人員の確認を最優先に。」

 

「ああ。」

 

ドミナントと叢雲は急いで、全体放送をかけた。

 

…………

 

「はぁ…。こんなことは初めてだ…。」

 

「そうね…。」

 

執務室で、人数の確認をする二人。

 

……今まで、そういうのはジナイーダがやっていたからな…。ジナイーダやセラフたちがいないだけでこの有り様か…。俺は、ジナイーダたちに頼りすぎていたのかもしれん。

 

そんなことを思いながら、確認するドミナント。

 

……不安そうな顔…。こんな時こそ、秘書艦である私がしっかりしないと…。…でも、しっかりってどうすればいいのかしら…。いつも、あんたに助けられてばかりだったし、仕事だって任せていたから…。…私は、あんたがいないと全然出来ないのね…。

 

叢雲は目を光らせながら思った。

 

「「はぁ…。」」

 

そして、同時にため息をつく。

 

「…今のところはなし。あとは、警備だね。」

 

「そうね。…警備?」

 

「そう。一応穴は直した。もし入り込んでいるとしたら同じ穴は使わないだろう。…全体放送もしたし。だから、必ず他の道を探すはず。かと言っても、そこの警備をしないわけにもいかないけどね。それに、倉庫や保管庫、艦娘寮とか施設内とかを見回らなくちゃいけない。穴の発見が2日くらい前だから、危ないし。夜間の外出を気をつけさせないといけないし…。」

 

「大変ね…。」

 

「別に、叢雲は休んでいていいから…。」

 

「そういうわけにもいかないわよ。秘書艦なんだし。」

 

「…そっか。」

 

ドミナントはそう呟いた後、書類を一気に片付ける。

 

「…あー、どうしてこんなになるかなぁ…。俺の聞いていた話じゃゆるゆるで行くって感じなのに…。」

 

「なぜかしらね。」

 

「よし終わり。」

 

「お疲れ様。さっさと行きましょ。」

 

「うん。」

 

二人は外に出る準備を始めた。

 

「あぁ、あと叢雲これ。秘書艦歴長いから。」

 

「何かしら?」

 

「なんかあったら、これで…。」

 

ドミナントは叢雲に無線機を渡す。

 

「なんかあったら、すぐに使って。」

 

「分かったわ。」

 

「その時は俺はすぐに駆けつける。」

 

「えぇ、よろしく頼むわ。」

 

二人は執務室を出ると、歩き出した。

 

…………

廊下

 

二人が見回りをしていき、どんどん潰していった。そして、いつの間にか夜になる。廊下を歩いているのはドミナントと叢雲だ。

 

「叢雲。」

 

「また酸素魚雷くらいたいの?」

 

「んや。今回はふざけてもからかってもない。」

 

「なによ。」

 

「…今回の騒動が終わったら、俺は任務終了で自分の鎮守府に戻る。」

 

「……。」

 

叢雲は突然そんなことを言われて黙ってしまう。分かっていたのだ。いつかは帰ると。しかし、受け入れたくなくて目を背けてきた。

 

「その時、新しい提督にも秘書艦になってあげてよ。俺と一緒にいるように、うまくやって。叢雲は優秀だから。」

 

「……。」

 

叢雲は俯く。ドミナントの顔を見ていられなかったからだ。

 

「叢雲?」

 

「……。」

 

「大丈夫?」

 

ドミナントが顔を覗き込む。

 

「うぅ…。ぐす…。」

 

叢雲の目には涙が溜まっていた。

 

「大丈夫に決まってるじゃない!」

 

「……。…そっか。」

 

ドミナントは優しく微笑む。

 

「ちょっと!そんな目で私を見るんじゃないわよ!」

 

「へいへい。」

 

「全く…。あんたのせいなんだからね…。」

 

「僕に非があるとは思えないけどね。」

 

「だまらっしゃい!」

 

ドミナントは苦笑いしながら言った。

 

「まぁ、何にせよ、頑張ってくれ。」

 

「当たり前よ…。それに、たまには来てくれるんでしょう?」

 

「…まあね。」

 

ドミナントは前を向いて頷いた。叢雲も、ドミナントも分かっている。提督はそう簡単には他の鎮守府に来ることはできない。おそらく、次会えるのは何年か先だと。

 

「…ちょっと待って。この流れ、よくあるフラグじゃない?」

 

「突然何言ってるのよ…。」

 

「フラグが立った気がする…。」

 

「あんたねぇ…。」

 

「ん?なんだあれ…。」

 

ドミナントは立ち止まる。そこには、小さな黒い影があった。それは、人のような形をしている。

 

「叢雲…。」

 

「ええ…。」

 

二人はその黒い影に向かってゆっくりと歩いて行く。

 

「誰だ!」

 

「!?」

 

そこにいたのは…。

 

「天龍…何してんだよ…。」

 

「あぁ、提督と叢雲じゃねえか。」

 

「こんなところで何をしているの?」

 

「おう、龍田と二人で警備だぜ。」

 

「いやいや…。警備は俺がやるから、天龍はおねんねしてな。」

 

「おい、提督!なんだって!?」

 

「言い方は冗談だけど、内容はおんなじ。天龍は明日も出撃でしょ?早く寝ないと…。明日疲れるよ?」

 

「でも、お前は警備してんじゃねえか。」

 

「提督特権。天龍は寝なさい。龍田も。欲を言えば叢雲も。」

 

「やだ。」

 

「やだって…。ナチュラルに言われて一瞬戸惑ったけど、ダメなものはダメ。てか、部屋から出られると管理しづらいから。もしかしたら、侵入者がいるかもしれないから危険だし…。」

 

「なら、もっと警備するやつが必要じゃねえか。」

 

「いや、でも…。」

 

「提督。信じてくれよ。俺はもうお前をいじめようなんて思ってねえし、叢雲にも悪りぃことしちまったと思ってんしよ。」

 

「…戦える?侵入者と。」

 

「もちろん。」

 

「相手が誰であろうと、どんなものを持っていようと。」

 

「やるだけやるしかってやつだ。」

 

天龍がドミナントの目を見て言う。

 

「龍田は?」

 

「私も同じよ〜。」

 

「…そうか。」

 

そして…。

 

「なら、警備を頼む。天龍、龍田。無線機だよ。もし何かあったら、すぐに呼んでくれれば駆けつけるから。」

 

「分かった。任せな。」

 

「頼んだぞ。」

 

「えぇ、まかせてね〜。」

 

こうして、ドミナントは天龍と龍田に警備を任せて、また歩き出す。叢雲も隣でついてくる。

 

「…あんたがいなくなるって…。」

 

「話してない。話したのは叢雲だけ。」

 

「そう…。なんで今…?」

 

「なぜだろうな…。」

 

「……。」

 

「…叢雲はさ。最初からずっと俺の秘書艦になってくれた…からかな。」

 

「…ふーん。そうなのね…。」

 

「そう。…俺がいなくなっても、元気で過ごして。叢雲はみんなを引っ張ってくれる人だと思ってる。」

 

「…買い被りすぎよ…。」

 

「いいや。間違いないね。」

 

「…ありがと。」

 

「どういたしまして。」

 

「ふんっ…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

会話が途切れる。二人は黙って歩く。

 

「…もうやだ…。」

 

しばらくして、叢雲が立ち止まった。

 

「どうして…。どうして私たちばっかりこんな目に…。」

 

「……。」

 

ドミナントが来る前、ここはブラック鎮守府だった。提督の日常的に行われる暴力などが原因で、その八つ当たりがドミナントにも来るほどだった。そしてドミナントを信用した途端に、どこかへ行ってしまう。

 

「…大丈夫だよ。次の提督は俺よりいい人さ。」

 

「そんなの分かんないじゃない…。」

 

「…ま、そりゃそうか。」

 

「…ねぇ、お願いがあるの。」

 

「なんだい?」

 

「……。私と一緒にいてくれない?」

 

「そりゃ無理だ。申し訳ないけど。」

 

「わかってる…。でも、どうしても聞いちゃうのよ…。」

 

「…俺は臨時提督。佐世保に帰らなくちゃいけない。吹雪たちが待ってる。」

 

「……。」

 

「叢雲?」

 

次の瞬間、叢雲が突然走り出した。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

ドミナントは慌てて追いかける。叢雲は全力疾走で走っている。

 

「ゼェ…ゼェ…おい…!ヒィ…ヒィ…叢…雲…!どこに…ハァ…ハァ…行く…ゼェ…ゼェ…んだ…!」

 

「…どこでもいいわ!」

 

スタミナのないドミナントはすぐにへばった。叢雲はそのうちにどっか行ってしまった。

 

「待ってよ…ハァ…ハァ…!単独行動は…!ゼェ…ゼェ…危ないじゃん…!」

 

息を整えながら、ゆっくりと歩いて行く。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

……何やってるのよ…。こんなことしても…走っても、問題解決にはならないのに…。

 

叢雲は崖上まで行って、立ち止まった。月の光が反射して、水面をキラキラと輝かせている。

 

「…うぅ…!…どうして…!」

 

叢雲が膝をつく。途端…。

 

ガバッ!

 

「!?」

 

叢雲の視界が黒く染まる。そして、手足も同時に口も縛られた。

 

「んんっ!!んん!!」

 

「静かにしろよ。」

 

「あぁ、悪いな。」

 

「いやいや、問題ないぜ。」

 

「ぐっ……。んんっ……。」

 

叢雲の目の前に男が現れる。

 

「よお、久しぶりだな。叢雲。」

 

「……。」

 

叢雲は相手を睨む。元提督だ。

 

「流石はお前だなぁ?その目つき…。あの頃は何度も何度も、従順にさせようとしたが、他の駆逐艦は言うことを素直に聞く中、お前だけは違った。その時に俺は警戒すべきだったよ。お前が単独行動で本土まで行って、憲兵に直接SOSを出すなんてな?お陰で、電波を完全に遮断していた俺は捕まった。」

 

「……。」

 

「でも、神は俺を見放さなかったようだ。こうして、国のお偉いさんは俺が買収しておいたおかげで、俺は無実で釈放さ。憲兵には提督資格は取られたけどなぁ?」

 

「……。」

 

「あの時の屈辱を忘れたことはないぞ…。」

 

「……。」

 

「まあいい。そんなことよりも、今すぐ無線を操作しようとするのはやめるんだな?」

 

「……。」

 

叢雲は忠告を無視して、自分はどうなっても構わない覚悟で無線をいじろうとしたが…。

 

「もし操作すれば、この子はどうなるかなぁ?」

 

その提督が縛られている古鷹を見せる。古鷹は泣いていた。

 

「!?」

 

「さて、どうする?」

 

「……。」

 

「いい子だ…。」

 

「……。」

 

叢雲は黙って従うことにした。

 

「今すぐ無線を捨てて、足で踏み潰せ。自分で希望を断て。」

 

「……。」

 

叢雲がゆっくりと無線機を踏みつける。完全に壊れた。

 

「よし、それでいい…。」

 

「……。」

 

「おい、そろそろ行かないと怪しまれる。行くぞ…。」

 

「そうですねぇ。分かりました。あとでじっくり痛ぶりますか。」

 

国のお偉いさんに言われて、提督が古鷹と叢雲を山奥に連れて行く。鎮守府敷地外のため、ドミナントはどこにいるのか分からない。

 

…………

 

「っかしいなぁ…。叢雲はどこだ…。」

 

ドミナントは海岸沿いを探す。

 

「…全部探したし…。まさか、侵入者に…?…いや、叢雲だぞ。ないわ。」

 

ドミナントは露とも知らずに歩く。すると…。

 

「青葉参上!」

 

ドッゴォォォ!

 

「ぐはぁぁ!」

 

青葉が飛び蹴りしてきた。

 

「愛と真実の平和を願う、パパラッチ青葉です!」

 

「まず飛び蹴りはやめような…。威力の音おかしかったし…。」

 

ドミナントがフラフラ起き上がる。

 

「てか、青葉はこんな夜中に何やってんの…。」

 

「犯罪の匂いがしたので、マスコミとしてネタを追っていました!」

 

「うん…。今度から危ないことをするのはやめようね…。」

 

「結果を出せて、報告しに来たんです!」

 

「え?結果?」

 

青葉が写真をドミナントに見せる。

 

「叢雲に古鷹…。」

 

「相手はここの元提督でした。青葉一人だと危険と判断したため、提督に知らせに来たんです!」

 

「…そっか…。よくやった。青葉。」

 

「はい!」

 

「ちなみに、どっちに行ったか分かる?」

 

「森です。鎮守府敷地外の…。」

 

「…なるほど…。」

 

そして、ドミナントが青葉から少し離れる。

 

「じゃ、探しに行かないと。」

 

「恐縮ながら、青葉もお供します!」

 

「…まあ、案内してくれると助かる。それと、鎮守府艦娘全員集めようか。恨みつらみを全部ぶつけようぜ。」

 

「そうですね。ガサの恨みもありますし…。」

 

「ただし、条件があるよ。」

 

「?」

 

「存分にやって。でも、殺しちゃダメ。殺したら、後悔するよ。絶対。」

 

「…わかりました。」

 

「それと、流石に大人2人は危ないから、少し元の姿に戻るね。」

 

「はい?元の姿…?」

 

…………

 

「ここなら誰も来ないだろう。」

 

「では、早速…。」

 

提督が叢雲たちに振り向く。古鷹は完全にトラウマを思い出して、抵抗する気力すらない。叢雲はチャンスをうかがっている。しかし…。

 

ズガン!!

 

「うっ…!」

 

「…!」

 

足に銃で撃たれた。

 

「これで、逃げられませんねぇ?」

 

「歩けないではないか。その荷物はお前が待て。」

 

「大丈夫ですよ。今に軽くなりますから…。」

 

提督が叢雲に近寄る。

 

「さて、ならまずは古鷹を痛めつけるか。」

 

「ひっ…ごめんなさい…ごめんなさい…。」

 

古鷹はとにかく謝る。何もしていないが。

 

「すっかり、調教済みだな。」

 

「何度も何度も…苦痛を与えた結果ですよ。もう、逆らう気力もありませんし。」

 

「ほう。」

 

国のお偉いさんと提督が話す。

 

「なんなら、臓器売買も出来ますよ?ちょうど、古鷹くらいの子の臓器は高く売れるんで。」

 

「それはいい!だが、まだ殺すな。」

 

「はい。」

 

「あぁ…!お願いします…やめてください…!」

 

「うるさい!」

 

ドガッ!!

 

提督の蹴りが古鷹に入る。古鷹はうずくまったまま動かない。

 

「死んだか?まあ、死んでも別に構わないが。」

 

ヘラヘラしながら言う。叢雲は、それを目の前で見せられて、怒りを抑えていた。

 

「次は叢雲だな…。」

 

「……。」

 

「おい、起きてるよな?」

 

「えぇ、起きてるわよ。この縄がとけたら、あんたたち二人をどう苦しませるかで頭がいっぱいよ…!」

 

「ほぅ?元気そうだな?安心したよ。」

 

提督はポケットに手を入れて何かを取り出す。

 

「これはなんだと思う?」

 

「なによそれ…。」

 

「お前みたいな、反抗的な奴にはぴったりのものだ。覚醒剤だ。」

 

「やってみなさいよ…!その腕の神経を食いちぎってやる…!」

 

「だろうな。だが、こっちも痛いのは嫌だからな。こういうものを用意した。」

 

麻酔銃を見せる。

 

「弾は睡眠薬じゃない。こいつは注射器代わりだ。これをお前の腕に打ち込む。痛みはないぞ?」

 

「ふん…。やれるものなら…!」

 

叢雲は敵意ある目つきで提督を睨む。

 

「く…。」

 

「?何だ?叢雲…。その目、気に入らんな…。」

 

パァァァァァン!

 

その提督が思いっきり頬を引っ叩いた。叢雲は意識が飛びそうになったが、なんとか耐える。そして、歯を食いしばりながら睨みつける。

 

「やめろ。傷つけるな。値が下がる。」

 

「…すみません。どうも気に入らんのでな…。」

 

2人が話す。

 

「やっぱりやめだ。古鷹を嬲った方がよほどこたえそうだ。どうだ?お前の行動ひとつで、古鷹は痛い目をみる。まず、これはお前が俺を睨みつけているからだ。」

 

パァァァァァン!

 

その提督が古鷹を引っ叩く。古鷹は悲鳴をあげる。

 

「ぐっ…。」

 

「分かったか?俺に反抗的になるということは、古鷹が痛い目にあうということだ。」

 

「……。」

 

叢雲は何も言えなかった。しかし、望みは捨てていない。大きく息を吸う。

 

「さて、じゃあ始めるか…。」

 

「ひっ…。」

 

古鷹がまた蹴られそうになった瞬間…。

 

た、助けて…。

 

叢雲が呟く。

 

「あん?よく聞こえないなぁ?」

 

元提督はヘラヘラしながら煽る。

 

「助けて!司令官!」

 

叢雲はプライドも何もかもを捨てて叫ぶ。仲間のために、自分の今まで築いてきたプライドを捨てた。

 

「ははは…。こんな森奥まで来るはずが…。」

 

ガシャァァァァン!

 

「「「!」」」

 

目の前に、大きな機械が落ちてきた。軽量二脚の機械が。

 

「な、なんだ!?」

 

そして、その機械の頭部が2人を見る。

 

「う、撃て!撃てぇぇ!」

 

カァン!ガギィン!…!

 

どれだけ撃とうが、鋼鉄よりも硬い、オーバーテクノロジーの塊には効果がない。

 

「な、なんて硬さ…。」

 

言い終わる前にその機械がその2人を叩いた。それだけで3mほど吹っ飛ぶ。

 

「……。」

 

その機械の頭部が叢雲を見た。

 

ブチッ

 

「…?」

 

その機械が縄を千切る。

 

「…遅すぎるわよ…。馬鹿…。」

 

「!?」

 

叢雲が言う。

 

「…何故分かった…?」

 

「…なんでかしらね…。…なんとなく分かったのよ。」

 

叢雲が笑みをこぼす。

 

「な、なんだと…!?それに、何故ここが…!?」

 

「青葉、見ちゃいました!」

 

「青葉ぁぁぁぁ!」

 

元提督が聞き、暗闇の中で青葉がやってやったと言わんばかりの、仕返しと言わんばかりの顔でニヤけて言う。

 

「おい、何叫んでんだ。自分の置かれた状況を見ろ。クズが。」

 

「き、貴様…!臨時提督の分際で…!」

 

「それがどうした?俺は臨時提督だ。だが、お前はなんだ?今はもうすでに提督ではない。」

 

ドミナントはACのまま相手を睨みつける。

 

「クソッ!」

 

「殺れ!」

 

2人がその隙に銃をドミナントに構えようとしたが…。

 

ズガァァァン!

 

ズガァァァン!

 

「なっ!」

 

「ぐあっ!」

 

2人の手にある拳銃を素早く、見事に撃ち抜いた。拳銃は半分溶けていた。

 

「…ろくに銃を扱えない素人に、セラフから訓練を受けた俺が負けるはずがない。大人しくしろ。」

 

ドミナントが冷静に言った。

 

「て、提督!」

 

古鷹がドミナントのところへ駆け寄り、青葉に縄を解いてもらう。

 

「貴様…!」

 

ズガァァァァン!

 

ドミナントが2人の足元に撃つ。

 

「き、貴様…!私はこの国の幹部だ!後でどうなるか…!」

 

「どうなるか…か。だからどうした。ここは国会じゃない。第8タウイタウイ泊地だ。視察しに来たわけでもない貴様らは不法侵入だ。…もう一度無駄口を叩いてみろ。次はない。」

 

ドミナントが真っ直ぐ、冷静に言う。

 

……本当…。遅すぎるわよ…。

 

叢雲が思う。

 

……でも…。例え鎮守府の皆が何と言おうとも…。今、あんたが1番輝いているわ。

 

叢雲が、自分たちの前にいるドミナントを見て思った。

 

「ひ、ひぃぃぃ…!」

 

「に、逃げろ!」

 

2人が逃げる。が。

 

「照明弾を撃て!探照灯を当てろ!」

 

「「了解!」」

 

ドミナントが叫び、暗闇の中で夕張と明石が返事をする。

 

バン!バン!

 

シュゥゥゥゥ!

 

「ゔっ!」

 

「何も見えん…!」

 

明るすぎて目の前が真っ白になった。しかし、男達は走り続ける。そのうち見えなくなった。

 

「よし、オッケー。」

 

「!?…何で追わないのよ!」

 

叢雲が、追いかけていったと思ったドミナントがすぐ隣にいることに気づき、怒る。

 

「何故追いかけないのか?逃げられるわけがないと分かっているからだよ。全く、素直に捕まりゃ良いものを…。」

 

「?」

 

「それより、傷の手当て。…頬を叩かれたね…。可哀想に…。もう心配ないから…。」

 

ドミナントが叢雲を抱きしめる。大きな怪我をしていなくて心底安堵したのだろう。

 

「…うぅ…。」

 

叢雲は素直にドミナントを抱き締めていた。

 

…………

 

……やっと目が見えてきやがった…!

 

元提督が目を少し開ける。

 

……畜生…!次こそは必ず…!

 

貴様らに次などあるものか。

 

「!?」

 

そこで気づいた。自分やもう1人の仲間が発光していることに。

 

……照明弾と共に発光塗料を…!

 

夜の闇の中、2人は丸見えだ。そのうち…。

 

ドンッ!

 

「ぐわっ!」

 

壁にぶつかり、反動で転ぶ。

 

「いってー…。クソ…!」

 

起き上がり、走ろうとしたが…。

 

「よぅ…。元提督…久しぶりだなぁ…!」

 

「ひっ!」

 

天龍だ。真っ暗な闇の中、天龍の怒りを露わにした目が光る。

 

「提督の言った通りねぇ〜…ふふふ…。夜の闇でも光ってる…。」

 

それだけではなかった。直ぐ近くに龍田の声がする。

 

「ど、どけ!天龍!龍田!」

 

「おいおい、いつまで提督ぶってんだ…?それに、俺たちだけだと思ったか?」

 

「……。」

 

すると、次々と闇の中から目が現れ、囲まれる。今まで散々虐めてきた艦娘達だ。パキパキと指を鳴らす者や、素振りしている者もいる。

 

「提督から許可は取ってある。」

 

長門の声がした。

 

「存分にやれ。ただし殺すな。」

 

長門が言い、元提督は心底自分がやってきたことに後悔した。

 

…………

翌朝

 

「提督、連行完了した。」

 

長門が引きずっているのは、ボロボロの布切れのような2人だ。

 

「おう。ありがとう。」

 

「いや、いい。私たちもスッキリした。」

 

長門が久しく笑った。

 

「…それと、礼を言う。」

 

「?」

 

「…殺すなという命令だ。」

 

「?どゆこと?」

 

「…最初に聞いた時は、少しおかしいと考えたが…。それで良かったんだ。今考えてみたら、そうなったらまず後悔していた。」

 

「…そっか。」

 

ドミナントが少し口元を緩めた。長門の荒んだ心が回復したことが分かったからだ。そして、書類を書く。

 

「…何をしている?」

 

「君たちの報告書。」

 

「?」

 

長門が書類を見る。

 

「大本営審査、合格。どれだけ憎くても殺さない寛大さ、心の回復度、提督が酷くなければ良い子達だと言うこと。結果、満点。」

 

「おぉ!」

 

長門が少し喜ぶ。

 

「…それじゃ、これを提出っと。封筒に入れて、出してくるよ。…留守番頼める?」

 

「勿論だ。」

 

「じゃ、行ってきまーす。」

 

「ああ。」

 

長門はドミナントを行かせた。そして、5分後…。

 

バン!

 

「いる!?」

 

「?どうした?叢雲。」

 

叢雲が走って来た。入渠が終わってすっ飛んできたのだ。

 

「司令官は!?」

 

「提督なら、書類を出しに…。」

 

「…そう…。」

 

叢雲がすごく悲しそうな顔をした。

 

「?どうした?」

 

長門は何も気づかずに聞いた。

 

「…多分、もう帰ってこないわ…。」

 

「なに!?」

 

長門が椅子から思いっきり立つ。

 

「…忘れたの…?今の提督は臨時提督…。いつかは自分の鎮守府に帰らなくちゃいけない…。」

 

「……。」

 

「大本営へ書類を提出したってことは、もう帰ってこない合図なのよ…。」

 

「……。ずるい奴だな。最後まで…。…本当に……。」

 

「…本当…ずるいわよね……。」

 

2人は泣きながら、鎮守府の全員に知らせるのだった。

 

…………

郵便局前

 

「提出しちゃった。」

 

ドミナントが悟ったように独り言を言う。

 

「…さよならを言うと、多分あの子たち泣いちゃうからね。このまま去るのが良いか。」

 

ドミナントは来た道を戻らず、海辺へ歩いて行く。

 

…………

海辺

 

ザザァ…ザザァ…

 

快晴の青い空、美しい青い海。波は穏やかに浜に打ちつけ、海鳥が軽やかに歌う。

 

「さてと…。」

 

……AC化!

 

誰も見ていないことを確認してACになろうとしたが…。

 

「ちょっと早かったかな?」

 

「!?」

 

後ろから声がして、振り向く。

 

「や。久しぶり。」

 

「鬼の憲兵さん…。」

 

鬼の面頬をした憲兵がいた。

 

「鎮守府に悪人2人います。彼らを世に野放ししてはいけませんよ。さもなくば彼ら、また来ますから。」

 

「ん?あぁ、平気だ。一度自分たちに連行されてるから、今度は大丈夫。元提督は完全に身分を剥奪、お偉いさんも身分を剥奪させる。もう二度と海を渡ってここに来れない。安心しろ。」

 

「ありがとう。」

 

2人が話す。

 

「…ところで…。」

 

「?」

 

「こんなところにいていいのか?」

 

「あぁ…。自分、もう帰るところです。」

 

ドミナントが海側へ向く。

 

「…彼女たちを連れ帰るのか?」

 

「連れ帰ることは出来…なんでいる!?」

 

いつの間にか、ドミナントの後ろに沢山いた。

 

「あら、あんた。私たちに黙って行こうとするなんて、いい度胸じゃない。」

 

叢雲が前に出て言う。

 

「今までずっといた私に最後の挨拶が無いなんてね。」

 

「私達も最初の友達じゃないですか!」

 

「そーだそーだ!」

 

「青葉、報道しちゃいますよ!」

 

「一人前のレディを相手にするとしても失礼じゃない!」

 

「ハラショゥッ!」

 

「頼りなさいよ!」

 

「言って欲しいのです!」

 

艦娘達がワーワー言う。しかし、一言一言言うたびに、言った艦娘が泣き始める。

 

「泣くなよ。最後じゃないだろう?また会えるさ。きっと。」

 

艦娘たちはその言葉を聞いて、ますます泣き始めた。

 

「提督!」

 

長門が大声で言う。

 

「胴上げだ!!」

 

「「「ワーッショイ!ワーッショイ!」」」

 

艦娘達がドミナントを胴上げする。長門は大声で言っていた。いや、長門だけではない。大人っぽい艦娘達が大声で言っていた。泣くのを堪えて、気合いを入れるためだろう。

 

「…ありがとう。」

 

しばらくして、胴上げが終わる。すると、暁達小さい駆逐艦達が抱きついてきた。寂しいのだろう。

 

「…あれが本当の提督の姿だ…。艦娘達からすごく親しまれていて楽しそうだろう。」

 

「……。」

 

「お前は楽しかったか?艦娘を虐めて。」

 

「……。」

 

「自分は、あんな風になった方が虐めるより何百倍も…何千倍も楽しいと思うぞ。悪いことをしたら全力で叱ってくれて、優しくしたら全力で喜んで、泣いている時は全力で慰めてくれて、ふざけたら全力で笑ってくれる。どこか行っちゃう時にあんなに泣いてくれる。楽しくないわけがない。」

 

鬼の面頬憲兵が元提督に言う。

 

「…あんな風になりたいなら、もう一度提督をやり直すことだな。一から全部。」

 

「…なれるだろうか…。」

 

元提督が呟いた。

 

「なれる。自分を変えることが出来ればだがな。自分が保証しよう。」

 

鬼の面頬憲兵が元提督の目を見て言う。

 

「……。」

 

元提督は無言で頷いた。

 

…………

 

「じゃぁ…行ってくる。」

 

ドミナントはACで艦娘達を見る。艦娘達は全員涙を拭いていた。

 

「行ってきなさい。あんたはすごいってことをそっちの鎮守府でも証明しなさいよ。」

 

「たまに遊びに来てください。…永遠の別れなんて嫌です。」

 

「こっちは任せて。全力で提督業をやって!キラキラ!」

 

「青葉、ピンチの時はいつでも駆けつけます!」

 

「次に会う時は一人前のレディになってるわ!」

 

「ハラショゥッ!いつでも歓迎する。」

 

「ピンチの時は頼っていいのよ。だから、また来てね!」

 

「必ずまた会うのです!」

 

「今度も稽古してくれよ!」

 

「あらぁ〜、天龍ちゃん泣いてるの〜?」

 

「じゃ〜ね〜。」

 

「さようなら。」

 

「また、挨拶しに来てくださいね。」

 

「羊羹などを冷やして待っています。」

 

「また来てください!」

 

艦娘達が敬礼をする。

 

「おう!」

 

ドミナントが答礼をする。

 

「じゃ!必ずまた来る!」

 

「「「はい!!!」」」

 

「じゃあな!」

 

バシュッギュゥゥゥン…ウィィィィィィン…!

 

ドミナントがOB(オーバードブースト)を使って、海を駆けて行った。




ドミナント帰還。最後に、暗躍者たちの活動を書きたかったけど、文字数が多すぎて…。

登場人物紹介コーナー
ドミナント…第4佐世保に帰還。
叢雲…最後まで秘書艦をやりきった。
提督…ブラック提督。憲兵の言葉で変わるかもしれない。
国のお偉いさん…ボロ雑巾のようにされた挙句、マスコミに叩かれて辞職に追い込まれる。

「間宮と…。」
「伊良子の…。」
「「お便りコーナー。」」
「はい、今回は最後ですねー。このコーナーも…。ある佐世保の提督まで届いていることを祈って、このラヂオお送りします。」
「はい、今回のお便りはこちらです。」
「ペンネーム、『ある給糧艦』さんからだそうです。」
「ダレカシラネー。」
「えーっと…。達筆ですね…。ある意味読みづらい…。」
「そうですか?なら、代わりに読んであげます。」
「あ、はい。」
「つい最近、臨時提督が元の鎮守府に帰還しました。今回の騒動では、あまり活躍することも、出番も少なかったですが、私なりに、主に最後の方の担当に活躍できたと思います。臨時提督がいなくなりとても寂しい思いですが、これからも頑張っていきたいと思います。さて、質問はこのラヂオが臨時提督に届いているかです。」
「何故すらすらと…。」
「届いていますのでしょうか…。」
「うーん、ここから佐世保は遠いですし…。」
「頑張れば届きます。」
「おぉ…、いつになく間宮さんが燃えています…。」
「ですが、流石に電波に限界が…。」
「FAXに何か…。ペンネーム『紅茶提督』さんからですね。届いているそうです。」
「そうですか…。よかったです!」
「何故間宮さんが喜んで…?」
「あ、えと…。ペンネーム『ある給糧艦』からのメッセージです。」
「……。…まあ、そういうことにしておきましょう。」
「ふふ…。」
「それと、まだ1人あったのですが…。そろそろお時間なので、名残惜しいですが今までお聞きくださった皆様、今回まで誠にありがとうございました。いつしか、またこのラヂオが受信されるかも知れない…で、その時には…た、よろしくお願いします。」
「では皆さん、ただいま鎮守府では午前…時になります。快晴の空が心地…く、お洗濯はすぐに乾きそ…です。臨時提督はいなくなってしまい…したが、これからも頑張って…ごしていきたい…思います。伊良子ち…ん、そろそ…時間なの………わりに……しょ…。」
「そう…す…。……、皆……いつ…お会い……ょう!…宮…ん、せ………。」
「「さようなら〜。」」
ザーーーーー

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