狂犬が如く   作:マキシマムダンガル

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第一章 始動

その日、幻想郷にて事件が起きた

 

妖怪の山にて行方不明事件が発生

 

行方不明者は「犬走 椛(いぬばしり もみじ)」「射命丸 文(しゃめいまる あや)

の二名

目撃者によると

二人が会話中に突如、光が二人を包み、光が消えたと同時に二人も消えていたという

 

そして、捜索が行われるが一向に報告が上がらず

二人の安否が心配されている

 

二人は一体どこに行ってしまったのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代 東京 神室町

 

アジア最大の大歓楽街「神室町(かむろちょう)

そこは全国よりさまざまな事情を抱えた人間がやって来る

 

そして、その街を納めるのが

関東最大の暴力組織「東城会(とうじょうかい)

東城会の統率のため現在の神室町がある

 

ある日、その神室町に変化が訪れた

それは

 

 

 

 

 

神室町 ホテル街 竜宮城

 

神室町 ホテル街の裏通りにある廃ビル

その実、中身は竜宮城と呼ばれるカジノ、賭博場そして道場があるビル

 

「ZZZ・・・」

 

そのビルの三階、道場の中

みすぼらしい服装の女性があぐらをかいて眠っている

その女性の髪色は雪のように真っ白だった

今はホームレス生活のせいでお世辞にもキレイとは言えなくなっている

 

女性が眠っていると思っていると

突然、目を開き立ち上がり外へと出た

 

ビルの外へと出るとホームレスの男と若者がいる

一目で何かが起きたことは明白だった

 

ホームレスの男は鼻血を流して地面に倒れている

どうやら若者の中で流行っているらしい「ホームレス狩り」

と言うヤツらしい

 

「うぅ・・・」

 

「へへへ、中々ストレス発散になるなぁ」

 

若者はまったく悪びれることなく今にも

ホームレスの男に飛びかかろうとしていた

しかし

 

「梶原さん、大丈夫ですか」

 

若者に立ちはだかるようにしてホームレスに声を掛けた

 

「も、椛ちゃん・・・こりゃあ、恥ずかしいところを見られちまったなぁ」

 

「だから言ったんですよ、最近は物騒だから夜中に出かけない方がいいと」

 

若者を完全に無視して二人は会話をしている

すると、若者は椛の肩を掴み

若者の方へ顔を向くようにした

 

「おうおう、嬢ちゃん、何のようかな」

 

その時、男は完全に油断していた

男の目に映っているのは確かに華奢な体躯の女性だった

ただ一つ誤算があった、それは相手が妖怪であること

そして

 

「私の命の恩人に手を上げて、五体満足で帰れると思わないでくださいね」

 

その表情は柔らかく優しそうに見えた

しかし、正面から見ていた男はその目の奥に

「確実に貴様を殺す」

そんな殺気が潜んでいる事に気づいた

が、気づいたところで手遅れだった

 

男の方へ体を向ける勢いを利用し

肩と腰の回転の乗った鳩尾を当てた

若者の腹から

「グチャッ!」

という音が鳴り

その場に倒れた

 

「あなたたちがくだらない遊びを広めたせいでこっちも迷惑してるんですよ?

 しっかり責任をとってもらわないと・・・ねぇ」

 

椛は狂気に満ちた目で近寄った

すると、若者は悲鳴を上げて逃げていった

 

「大丈夫ですか、急いで先生に見てもらいましょう」

 

椛は梶原に肩を貸し竜宮城の中へ入っていった

 

 

 

 

竜宮城 三階 道場内

 

道場の中には

数人のホームレスに格闘技を教える老人がいる

その老人は

 

「古牧先生、梶原さんがケガをしてしまって」

 

老人の名は古牧 宗太郎(こまき そうたろう)

古牧流古武術の正当継承者

昔、伝説の極道にその技を教えていたと言う

 

「いやぁ、面目ない」

 

「まったく、わしが技を教えておるというのに」

 

「取りあえず、応急治療を」

 

 

 

 

梶原は応急治療を受けて眠っている

古牧と椛はあぐらをかいて話をしている

 

「その若者はどうしたんじゃ」

 

「取りあえず、一撃で沈めて脅しておいたので余程の阿呆でなければ大丈夫かと」

 

「うむ、やはりお主は筋がよい、女子(おなご)にしては肝も据わっておる」

 

「いえいえ、そのお歳でまだまだ現役の先生の方がスゴいですよ」

 

「ほっほっほ、人を立てるのも上手いとは、ますます気に入った」

 

椛は古牧より技を教わり

今は師弟関係となっている

しかし、椛の学習能力は古牧も驚くほどで

たった数日で古牧流の必殺と言われた「虎落とし」まで習得した

 

「ここの皆さんにはお世話になりましたからこのくらい当然ですよ」

 

椛は神室町にやって来た当初は

誰に対しても警戒しホームレスたちにも

牙を剥こうとしていたが

町のこと

この世界のことを教えられ

わざわざ住む場所として

竜宮城を教えられ現在に至る

 

そうして古牧とも出会い

技を教えてもらう代わりに

竜宮城を守る、門番役を名乗り出た

というのも神室町の治安は年々悪化の一途をたどっている

 

その理由は東城会の弱体化による衰退が原因である

最近では関西最大の暴力団組織「近江連合(おうみれんごう)」が

神室町内を歩き回るのも目撃されている

 

「最近は本当に物騒ですよね、近江連合がその辺を歩き回るし

 チンピラ連中が幅を利かせ始める始末ですし」

 

「うむ、弟子達が襲われる報告も受けておる、嘆かわしい事じゃ」

 

「ホテル街周辺だけでも安全にしておきたいですし

 少しパトロールしてきます」

 

椛はそう言って外へ出た

 

 

 

外へ出ると一見何も異常がなさそうに見えるが

その実、前までそこら中活気に溢れていたが

今では活気が消えたように見える

 

「まぁ、少し前までの神室町を知らないんですけど」

 

独り言を言いながら歩き回っていると

 

「よぉ、椛」

 

声を掛けられた方向へ顔を向けると

そこにはホームレスにしては若い男性が立っていた

 

「あぁ、阿部さん」

 

阿部 雅也(あべ まさや)元東城会系の若衆

現在は組が潰され神室町内でホームレスとして生活している

 

「物騒な事になってきてるからあんまり夜中歩き回るなよ」

 

「あれぇ、心配してくれるんですか?

 まぁ、私に手を出せる奴なんていないですけど」

 

椛はこの世界にやって来てすぐの頃

右も左も分からぬ時に

阿部に出会い

拳を交えたのちに仲良くなり竜宮城の存在を教えられた

 

「まぁ、そりゃあそうだが」

 

二人はそんな風に談笑していると

ヤクザ風の格好をした男が声を掛けてきた

 

「おう、あんたらこの辺で犬走 椛と阿部 雅也ってヤツ知らんか」

 

男は関西弁を喋り

胸元に近江連合の代紋を付けている

 

「はぁ、何か用事でも?」

 

「そいつらに挨拶せなあかんくてな、この辺にいるらしいんやけど

 嬢ちゃん知らんか?」

 

二人は顔を見合わせ頷き

男の顔面を殴り飛ばした

「ブゲェ!」

男はキレイに吹き飛び地面に倒れた

椛は男を踏みつけ

 

「で、その椛が私ですけど

 挨拶とは?」

 

「うっぐぅ、親父があんたらに話がある言うから探しとっただけや」

 

「本当にそれだけか?俺らを狙ってるヤクザ連中がいるのは知ってる」

 

阿部も男の顔を見下ろしながらそう言った

 

「ほ、ホンマや!勝矢の親父にそう命令されたんや!」

 

「勝矢?誰ですそれ」

 

「お、近江連合直参逢坂興業(おうさかこうぎょう)組長『勝矢 直樹(かつや なおき)

 今は蒼天堀(そうてんぼり)を拠点にしとる」

 

男はそう言うと内ポケットから写真を取り出した

その写真には男の言う勝矢が写っている

 

「あぁ、そう言えば聞いたことがありますねぇ

 どっかの芸能事務所の社長さんだとか」

 

「そんなヤツが何のようだ」

 

「そ、それは聞かされてへん

 あくまで俺らはあんたらを親父のところまで案内することやから」

 

男はビクビクしながら顔を逸らした

どうやら本当に何も聞かされていない様子だ

 

「だったら自分から来るべきでは?」

 

「そ、そんなん俺に言われても知らんがな!」

 

「ん?口の利き方がなっていませんねぇ」

 

椛はそう言うと男の胸を踏む力を少し強くすると

男は苦しそうな唸り声を上げた

 

「と、取りあえず、親父は今神室ヒルズの一室におるわ」

 

怯えた表情でそう言うと神室ヒルズ方面に指差した

 

「ふむ、どうします?ヒドく怪しいですけど」

 

「確かにそうだが、近江連合の人間を潰す絶好のチャンスだ

 行ってみるのも手だ」

 

「じゃあ、行ってみますか。

 もし、本当にただの罠だった場合は

 この人に責任をとってもらいましょう」

 

二人は早速神室ヒルズへ向かった


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