狂犬が如く   作:マキシマムダンガル

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第二章 首輪

二人はホテル街裏通りを通って公園前通りにある神室ヒルズについた

『神室ヒルズ』

二年前に建設され一年前にやっとグランドオープンした

一階から三階までは

ファッション フードコート アミューズメント施設が並び

さらに四階からは宿泊施設としても利用できるようになっている

 

「うーん、こんな格好じゃ、門前払いが関の山ですねぇ」

 

「そうだな、どうするか」

 

二人はヒルズ前で悩んでいると後ろから

 

「お待ちしておりました、犬走さん、阿部さん」

 

二人は驚きながら振り向くとそこには

勝矢 直樹が立っていた

 

「あなたが勝矢さん・・・ですか」

 

「えぇ、どうぞこちらへ」

 

勝矢に案内されヒルズ内の従業員用通路を通りスウィートルームに通された

 

「こんな立派な部屋にホームレス二人を入れて大丈夫なんですか?」

 

「えぇまぁ、あくまでお二人は私の客人なので

 それ相応の部屋を用意するのが礼儀ですよ

 それに、近江連合の器の大きさを見せるためにもね」

 

「で、何のようだ」

 

二人は椅子に座り

勝矢は二人の前にあるテーブルに飲み物を置いた

 

「話の内容は現在の近江 東城会の関係についてです」

 

「はぁ、東城会を潰してくれとかですか?」

 

椛のその発言に対し

勝矢は眉間にシワを寄せた

 

「実は、近江連合の組を潰してほしいんです」

 

「はっ?」

 

二人は鳩が豆鉄砲を食ったような表情になってしまった

 

「つまり、近江連合の組長になりたいから、と言うことですか?」

 

「いえ、理由としては近江連合内で抗争が起きようとしているのです」

 

「内部抗争ってことか」

 

勝矢は立ち上がり窓の前に立った

 

「現在の近江連合は渡瀬の兄貴が納めています」

 

近江連合八代目組長『渡瀬 勝(わたせ まさる)

渡瀬組の組長でもあり

勝矢とは兄弟の杯を交わした

 

「そのおかげで組もかなり大きくなり

 構成人数も金も武器も

 全てにおいて東城会に一切引けをとらないほどになりました

 しかし、そうなると次第に言うことを聞かない者も出てきてしまいます

 渡瀬の兄貴は強い東城会と戦うことを望んでいる

 しかし、現在の東城会は冴島さんは東京刑務所にて留置され

 真島さんは組を開けている

 堂島会長の力だけでは東城会を大きくすることは出来ないでしょう」

 

「そこまで聞くと近江連合にはプラスしかないように聞こえますが」

 

椛の発言に勝矢は振り向いて

 

「えぇ、渡瀬の兄貴がただ東城会を潰したい

 そして、近江連合に膿が出来ていなければ

 私としても結構なのです」

 

「それは内部抗争のことで?」

 

「先ほど内部抗争といったのですが

 実は少し違いましてね

 近江連合内に裏切り者がいるみたいでして」

 

勝矢が続けようとすると

椛が遮るように

 

「で、その裏切り者を排除しろと」

 

「報酬もこちらから出します

 どうでしょう一つの組を潰したら

 一本ってところで」

 

二人は一本という言葉に反応した

当然である

二人はホームレス一千万もあれば

普通の生活どころか

億万長者になるのも夢ではない

 

「本当に支払ってもらえるんですよね」

 

「嘘は言いません

 それに、私としては貴殿方の

 言い値を呑むのも吝かではありません」

 

二人は少し悩み

最初に口を開いたのは椛だった

 

「分かりました

 その依頼引き受けます」

 

阿部は驚き椛に目を送る

しかし、口を挟むことができなかった

椛の目には確固たる自信があった

 

「ありがとうございます

 では、早速ですが」

 

勝矢は棚の中から書類を取り出した

 

「この写真の男は

 千石組(せんごく)三代目組長万田 総司(まんだ そうじ)

 彼は次期近江連合若頭候補です

 とはいえ、ただそろばんを弾くのが上手いだけですが」

 

阿部は千石組の名前を聞き主はず口を開いた

 

「千石組って言ったらあの郷田 龍司(ごうだ りゅうじ)がいた時代の幹部だった組か?」

 

「さすが元東城会系組員だったことはある

 えぇ、その千石組です」

 

椛はきょとんとした顔をしていた

 

「少し説明しておきましょうか

 郷田 龍司とは五代目近江連合会長郷田 仁(ごうだ じん)の息子で

 今は組を抜けて完全に姿をくらましています」

 

「で、えっと、その千石組の万田って人をシメればいいんですよね」

 

「はい、とはいえ

 腕っ節は全くと言っていいほどないので

 対して難しいことではないと思いますが」

 

「へぇ、それは楽でいい」

 

椛はにやりと笑いながらそう言うと立ち上がった

 

「では、そろそろ行きます

 やり終えた後はどうすれば」

 

勝矢は鞄から二つの携帯を取り出した

 

「この携帯を使ってください

 もしもの時用に足が着かないようにしてあります」

 

「ケータイ?」

 

椛はこの世界に来たのはつい最近のため形態の存在すら知らないのだ

きょとんとするのも当然である

 

「わかった、後で使い方を教える」

 

阿部が二つとも受け取るとその部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外へ出ると辺りは静寂としている

これも近江連合が神室町に進出してきたことへの弊害と言える

 

「さて、じゃあまずは千石組の組員を見つけるところから始めましょう」

 

「あぁ、携帯の使い方も覚えたし

 二手に分れて探すとしよう」

 

「では、金回りが良さそうなピンク通り周辺を回ってみます」

 

「じゃあ、俺は中道通りかな」

 

二人は二手に分れ千石組の人間を探し始めた

幸いなことに二人は神室町の中でも

かなり人望が厚いので

聞き込みをすることは用意であった

特に椛は

 

「あっ!椛ちゃん!」

 

椛はピンク通りではどの店のキャバ嬢からも

厚い信頼を勝ち得ているその理由は

所謂困った客をあしらい

チンピラやヤクザが暴れないように

周辺の警備もしている

 

「あぁ、ゆいちゃんじゃないですか

 デート帰りですか?」

 

ゆいとはSpicaで働くキャバ嬢であり

少し前にチンピラ連中に絡まれているところを

偶然助けたことで仲良くなった

 

「まぁね、椛ちゃんは?」

 

「実は千石組っていうヤクザの人間を探してまして」

 

「千石組?うーん、ヤクザの人は最近たくさん来るから」

 

ゆいは酷く迷惑そうな顔でそう言う

 

「じゃあ、最近の客のなかで金払いのいい客は?」

 

その言葉を聞いてゆいはある人物を思い出した

 

「そういえば、最近よく来る団体客で

 物凄く身なりのいい人いた!」

 

「名前は?」

 

「確か・・・()()って言ってたような」

 

椛の心臓は大きく高鳴った

まさしく思い人に出会ったかのような感覚だった

 

「その人はいつ頃お店に来ますか?」

 

「あぁ、ついさっきアフターに誘われてそれの帰りだよ?」

 

思わず表情に出てしまった

ついさっき別れた後なのだからすぐに店に来るとは考えづらい

 

「別れた場所は?」

 

「えっと、そうそうミレニアムタワー前・・・」

 

椛はその言葉を聞いた瞬間走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猛ダッシュでミレニアムタワー前に行くと

ヤクザ風の格好をした男達が数名ミレニアムタワー前に立っている

しかし、身なりを見るにそれほど金を持っている様子ではない

 

「しっかし、親父もよぉわからんのぉ」

 

「ホンマや、なんであんな女がええんやか」

 

話を聞いていると関西弁で近江連合の人間である可能性が高い

 

「まぁ、親父も考えがあってのことややろ?

 それにあの女ごっつ強いしなぁ」

 

「あぁ、南の兄貴があっさりやったからなぁ」

 

椛は確信した

こいつらが近江連合の千石組で間違いないと

そして、動いた

 

「あのぉ、少しいいですか?」

 

「あぁ?なんや嬢ちゃん」

 

「万田って人、知ってます?」

 

するとヤクザ風の男達の表情が一気に険しくなった

 

「なんでその名前を知ってるんや」

 

「あら?まさかの大当たりですか」

 

椛は顔を伏せてクスクスと笑い始めた

 

「じゃあ、文さんみたいに

 取材といきましょうか」

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