「乗せてくれ、武藤!」
朝。生温かい雨が、武偵校の生徒たちの心を憂鬱にする。
7時58分のバスは普段と違い、満員のようだ。
「しかたない。サボるか」
少年。遠山キンジの叫びにより、状況を理解した、東雲祐樹は1時間目をゲーセンでつぶすことにしたらしい。のんびりと、出発前のバスを追い越す。
「俺のチャリぶっ壊れちまったんだよ。これに乗れないと遅刻するんだ!」
まさしく不運。いや、『これは作為的な不運なのだ』
「無理なもんは無理だ! 祐樹を見ろ! 一瞬も考えず、むしろ嬉しそうにゲーセンに向かったぞ!」
「バカ野郎! 俺がこれ以上単位落としたら、冗談抜きで進級できなくなるぞ!」
しかし、無情にもバスの扉が閉まってしまう。ちなみに、武藤剛気が満面の笑みだったことをここに記しておこう。
願わくば、小さな事件。そんな、願いをあざ笑うかのように、女子寮の屋上の扉を開けた俺の目に飛び込んできたのは、
C装備に身をかため、鬼気迫る顔で無線に何かを叫ぶアリアの姿だった。
「……?」
ふと気が付き、視線を階段の方に向けると、そこには二人の武偵がいた。
一人は、祐樹。俺たちと同じくC装備に身を包んだ、茶髪の少年。壁に体を預け、装備の点検をしている。
もう一人は、レキ。祐樹の横で、体育座りをしている。
アリアのやつ。転入生のくせに、いい駒がわかってるな。
祐樹やレキは入試で俺と同じくSランクに格付けされている。
「祐樹、レキ」
二人に声をかけると、祐樹はこちらに顔を向け、苦笑いを浮かべる。ああ、こいつも半強制的にここへ呼ばれたのか。
もう一人の、でかいヘッドホンで音楽を聴いているせいで、全く反応のないレキの頭を軽く指でたたく。
「お前らも、アリアに呼ばれたのか」
「はい」
「てか、あいつはどうやって俺の電話番号を入手したんだろうか」
抑制のないレキの声と、思わず同情したくなる、祐樹の言葉。
ドンマイ!
アリアに(というか、インカムから入ってくる通信科)よると、今回の事件はバスジャック。それも、武偵殺しによる。ちくしょう! なんでこんなでかい事件を持ってくるんだ、アリア!
『空中からバスの屋上に移るわよ。あたしはバスの外側をチェックするから、キンジは社内で状況を確認。祐樹は屋上で周囲を警戒してて。武偵殺しなら、きっとあれが来るはずよ』
アリアはてきぱきと指示を出し、強襲用のパラシュートを天井から外す。
キンジの不満はだれの目に見ても明らかだが、少し、反論しただけで、不満は心のうちにとどめているのだろう。
強襲用パラシュートで、3人はバスの屋上へと着地する。すこし、アリアとキンジの間で口論があったが、二人はすぐに自分のやるべきことをこなすため、行動する。
「(おいおい、オルメス。パートナーから全然信頼されてないじゃん。こんなんじゃあ、理子とは勝負にもならないんじゃないか?)」
そう思いながらも、祐樹は自らの仕事をこなす。
『お前の言うとおりだったよ、このバスは遠隔操作されている』
『爆弾らしきものがあるわ!』
次々と情報が、耳に入ってくる。
アリアが爆弾の種類の説明をしている。その時、祐樹の目が雨の中を走る一台のオープンカーをとらえる。祐樹が見ているのは、オープンカーの座席部分。そこには、
「気をつけろ。座席にUZI乗せた車ちゃんが愛の突進をしてくるぞ」
直後、大きな衝撃とともに、バスが揺れる。祐樹の言葉通り、オープンカーが追突してきた。しかし、この程度の衝撃は祐樹には関係ない。問題は、
『大丈夫かアリア!』
こっちだ。追突の衝撃で頭でもぶつけたのか? キンジが焦り、窓から身を乗り出すのが、屋上から見える。ついでに、バスの横に回り込む、オープンカーも、見える。
「キンジ、伏せろ。全身穴だらけのびっくり人間になっちまうぞ」
「だあ! もうチョイまじめにやれ! みんな伏せろ!!」
直後、車内に鉄の雨が降る。祐樹は身をかがめ、やりすごす。
大きく揺れ、徐々に速度が落ち始めるバス。どうやら、運転手がやられたようだ。しかし、すぐに持ち直したところをみると、武藤あたりが運転を変ったのだろう。
「あれ? でもあいつ昨日、改造車がばれて一点しか減点できないとか言ってたような……」
数秒後に聞こえた、轢いてやる宣言を聞く限り、免停のようだな。
「――武藤が免停だと聞いて駆けつけました(笑)」
完全に人を馬鹿にした顔で、屋上から顔だけ出した祐樹に武藤が本気のストレートをかましたのは責められないと、バスにいる誰もが思った。
「おいアリア、大丈夫か!」
「キンジ、俺が大丈夫じゃない」
「あんたこそどうしたの!」
「無視か、おい」
顔を青くするキンジ。バスから転がり落ちるアリア。
あたりに飛び散った鮮血が、祐樹の本能を揺さぶる。
幸いだったのは、雨によりすぐに流れていったこと。これがなかったら、今このバスがどうなっていたか。
一つだけわかるのは、生存者は一名。それだけ。
「アリアー!!」
キンジの絶叫により、祐樹は現実に引き戻される。
とにかく今は
一人の武偵として
この事件を終わらせよう。
「レキたん。爆弾壊しちゃって。あっちの暴走車は俺が止めるわ」
『了解しました――私は一発の銃弾』
淡々と受け答えをするロボット娘に嘆息しつつ、祐樹は銃を抜く。
「さて、とっとと終わらせて、『凌辱ロリ○学生』でもみるか!」
取り出したのは、グロック。オーストラリアで作られた銃だが、他国の軍や警察にも使われている、非常に武偵向きの銃だ。
「どーん」
放った銃弾は二発。まっすぐに、オープンカーのタイヤに向かって飛んでいく。
『――私は一発の銃弾』
オープンカーはコントロールを失いスピン。ガードレールへと突っ込んでいく。
爆弾は狙撃により正確に撃ち抜かれ、レインボーブリッジの下。つまり、海へと落ちていく。
オープンカーの炎上と、海から上がる水柱が、事件の終わりを告げる。
・願わくば、小さな事件。
突然の一人称。もうこんなことはやりません、たぶん
・愛の突進
私の愛を受け取って! dy車
・全身穴だらけのびっくり人間
尚、息はしてない
・鮮血が、祐樹の本能を揺さぶる
ふくせん&中に
・凌辱ロリ○学生
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そろそろ高校の試験が近いのに三話目投稿。尚、二週間マウスは没収される模様。