緋弾のアリア さよなら殺人鬼   作:されかうべ

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 今回はオリジナル


4弾

 いくら、武偵といっても、高校生。土曜、日曜は普通に休日である。

 こんな時、武偵の人たちは何をするのだろう。

 銃の整備をするのもありだろう。訓練に費やす人もいるだろうか? 寮でゲーム、パソコンをする人もいるだろう。しかし、いくら普段帯銃が義務付けられていようが、彼らは高校生である。休日は、島から出てショッピング。なんてのも十分ありだ。

 東雲祐樹も今日は島を出て、新宿に来ていた。……一人で。

「あれ? 悲しくないのに涙が出てきたよ……」

 広場の真ん中で目頭を押さえ始めた男から周りの人間が距離をあけるのは、まあ、当り前だろう。

 キンジは電話に出ず、武藤は最近なんかキレていて、不知火は家で勉強をするなどと言い出した。

 ちなみに、理子を誘ったら、鼻で笑われ、レキを誘ったら、ガン無視だった。

 

 ともかく、家に一人でこもるのは彼の趣味ではない。仕方がないので、こうして一人で新宿に来たというわけだ。

 さて、何をするか……。と、考え始めるが、ふと視線を後ろに向ける。理由は簡単。視線を感じたから。

「ん? ……中空知?」

 後ろで、祐樹を凝視していたのは、通信科の天才少女、中空知美咲だった。びくーん! と、大きく肩を震わせた少女は、両手を顔の前でパタパタと振りながら、

「わひぃ……し、しの、しののの、東雲くん!」

 ものすごい勢いで、後ずさりながら祐樹の名前を呼ぶ。祐樹は首をかしげながら、一歩近づく。二人が会話をするにはこの距離は少々遠すぎるのだ。

「ちが、えっと。これは違くて、じ、実家から帰る途中で、途中なので。えっと、し、東雲くんをストー……尾行してたとかじゃなくて、た、たまたまで」

「うん。分かった」

 意味不明。祐樹はとりあえず言葉をパーツごとにわけ、おそらく日本語であろう今の言葉の解読を試みる。

 が、

「(やべぇ!? 解読できない!)」

 まあ、要するに、実家から武偵校に帰る途中なのだろう。祐樹は、『ストー』とか『尾行』とかその辺の言葉を脳内データから全削除することにした。

 その時、自らのすべての知り合いに裏切られた少年が出した一つの結論は、明らかに少し考えれば違うとわかるものだった。 

 この状況、まさしくロミオとジュリエットのそれではないか! つまり俺たちの出会いは!? と、ロミオとジュリエットを見たこともない祐樹がなぜか確信する。

「そうか。つまり俺と君がここで出会うのは運命だったってことか」

「えふぇっい!?」

 一時という最も人が集まりやすい時間帯。広場の真ん中で突然告白まがいのことを始めた男に注目が集まるのは当然のことだろう。

 

 しかし

 

 どれだけ人が集まろうが、どれだけ注目されようが

 

 東雲祐樹は止まらない

 

「この後、君と遊びたい。だめかな?」

「えっと、えっと……い、いいでしゅ」

 最後噛んだとか、そんなのは誰も気にしない。祐樹は、彼女の手を握り、ギャラリーは二人に祝福の拍手を送る。

 

 

 

 

 意識が正常になってまず思ったことは、

「……やっちまった」

 これである。

 ちなみに二人がいるのはファーストフード店。某サンダースさんと激しい戦闘を日々繰り広げる変態ピエロのお店である。

「悪かったな、中空知。――中空知?」

「あへぇ。――東雲くん、運命……あへぇ」

 幸せそうな顔で何かをつぶやいているこの少女の戻し方がわからない。とりあえず、ケータイを取り出し、戻し方を知ってそうな人に電話をかける。

「お~す、武藤。アヘ顔少女の戻し方を教えてくれ」

『知るかぁ!!』

 ブツ! と、電話が切れる。祐樹は一度ため息をつき、白雪似の女性のエロ画像を添付して送っておく。――返信早! 『ありがとう友よ(^O^)/』扱いやす! でも、俺の質問にこたえてないし……使えな! 散々、武藤を罵倒したのち、次は頼れる相棒に電話する。

『どうした? 何か、イレギュラーでも起こったか?』

「アヘ顔少女の戻し方を教えてくれ」

 理子は、シリアスな雰囲気で電話に出た自分が馬鹿だったとばかりにため息をつき、

『ユーくん! そういうのは、押し倒してもっとアヘらして、肉便』

 最後まで聞く必要性を感じなかった祐樹は通話をやめる。目の前には、いまだにトリップ中の中空知。祐樹は机に手をかけ身を乗り出す。

「帰ってこ~い!」

「あへぇ……はっ!? って、し、しし、東雲くん!? 近ッ――下……き着替え。や、やさしくお願いしますぅ~――がが、ぴゅい」

 ……もうやだこの子。

 目の前で気絶した少女を見ながら、祐樹は小さくため息をついた。

 

 

 中空知美咲。長い前髪の下にメガネをかけたこの少女は、通信科期待のエースである。どこが? と思ってもしょうがない変人ぶりを発揮した彼女だが、通信機を通すと別人のように作業をこなしていく。実際、祐樹も事件の際にはよくお世話になっている。

 しかし、学校生活は見た目の地味さと、解読不可能な日本語のせいで孤立気味。要するに、残念な少女だ。

 そんな残念美少女と、祐樹は新宿を歩いていた。

 のだが、

「…………」

「…………」

 お互いに、完全に無言だった。そもそも、祐樹は何か明確な目的があり、新宿に来たわけではない。が、女性を誘った手前ハンバーガー奢った程度で「じゃあ、俺帰るわ」とはいかないだろう。しかし、残念なことに、彼は中空知と特に親しいわけでもない。じゃあなんで誘ったんだよ。

「――ノリだよ」

「ひゃい!? き、聞いてませ……すみません。も、もう一回……」

「いや、え~と、そうだな――、」

 祐樹の脳みそが今までにない勢いで高速回転を始める。

 

 ―そもそもあの女が喜びそうな場所ってどこだよ!?

 ―知るか。ホテルに引っ張るか、公園にブルーシート引いて押し倒せば……、

 ―ギルティ!!

 

 ―軍曹! 空知は図書委員だというう情報があります!

 ―却下。本屋に女子と二人で行って何が楽しいんだ、馬鹿野郎!!

 

 ―もう普通に、ゲーセンでいいんじゃね?

 ―賛成。

 ―いあ、ここはラブホテルに行くべきだと思います、軍曹!

 ―ゲーセンですよね、軍曹!?

 ―ラブホテルで一線を越えるべきです、軍曹!!

 ―軍曹!

 ―軍曹!

 

「……し、東雲くん?」

「うおっ!?」

 空知が少し前かがみになってこちらの様子をうかがう。

 前髪から少し見える、瞳や、前かがみになることでかなり、強調されている二つのふくらみなど、キンジではないが、祐樹の息子も若干ヒスりかけていた。

「ラブホテ、いや、なんでもない。そ、そうだ! ゲーセンに行こう!」

 一瞬、欲望が爆発しかけたが、素早く自制。

 おなじみの余談だが、『ラブホテ』に空知が若干反応したのは、彼女の人権的問題から余談にとどめておこう。




・キンジは電話に出ず
 現在尾行中。まだ雨は降っていない

・中空知美咲
 巨乳

・ロミオとジュリエット
 イタリアを舞台にした恋物語、らしい

・某サンダースさんと激しい戦闘を日々繰り広げる変態ピエロのお店
 美味しいか美味しくないか意見は分かれる

・公園にブルーシート
 冬にやったら風邪ひく

・軍曹
 戦争中に敵戦車を素手で破壊したことから、『ワンパン○マン』と呼ばれていた

・そうだ! ゲーセンに行こう
 京都にはいかない
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