緋弾のアリア さよなら殺人鬼   作:されかうべ

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 ダブルヒロインでやろうと決め、誰をヒロインにするか決める時、やっぱ一番最初に浮かんだのはこの人でした。
 しかし今回の話はなんか納得のいかない出来でした。


8弾

 青く澄みきった空の下、拳銃の発射音が響き、硝煙のにおいがあたりに充満する。

 人が多い場所は犯罪が多い。日本の首都東京もそれに漏れず、犯罪が多発していた。厄介なのは、どこから手に入れたのか火器を使う連中がいることだ。拳銃手度ならまだ軽い方だ。それなら、BやAランクの武偵が対処すればいいのだから。

 しかし、今回のようにサブマシンガンで武装して銀行に立て篭もる。なんて言う過激な犯罪が起きてしまえば、それはSランクの武偵の任務になってくる。

『周囲に援軍の足音や潜伏者の呼吸音はありません。犯罪者鎮圧成功しました』

 中空知の凛とした声がインカムを通じて聞こえてくる。本当に、休日にアヘっていた彼女なのか。と思うほどに芯の通った話し方をする。

「おっけい。レキたん、もう出てきていいよ」

 窓の向こう。向かいの店からライフルを肩にかけたレキが歩いてくる。任務で呼び出された時は、一人でも十分といったのだが、教師科がそれを許可しなかった。貴重なSランク生にもしものことがあったら困るので、当然と言えば当然だ。まあ、過保護の過剰戦力であることに変わりはないのだが。

「レキたん、この後食事にでも、わーガン無視」

 祐樹のお誘いもむなしくレキは一人で武偵校の方に歩いて行ってしまう。涙をこらえながら追いつき隣に並ぶ。

 直後、二人の間を強烈な風が吹き抜ける。レキの髪が後ろになびきレキの足が止まる。そして、祐樹の顔を数秒感情の読めない瞳で眺めたのち、口を開く。

「――血」

 突然つぶやいた言葉。食事の誘いに対しての返事でもなく、先ほどの戦いについてでもない。ただ何の脈絡もなく。

「強い、血のにおいがします」

 ゆっくりと言葉を区切りながら。

 レキは祐樹が嫌いだった。性格や顔の問題ではない。どんな時でも絶対であるはずの風が東雲祐樹については何も教えてくれず、導いてもくれないのだ。だから、彼については何も分からない。

 ただ一つ分かるのは、祐樹が人を殺したことがある。ということぐらいだ。それは、入学当初目を見た瞬間分かった。

 風の導きは聞こえない。自分が何をしゃべっているのかもあやふやになっている。愛銃を握る手は自然と力がこもり、右手には取り付け式の刃を隠し持っている。

 レキの言葉が引き金となり周りの空気が刃のように鋭く、曇天ように暗くなっていく。

 

 

 

 

 こいつ殺そうかな。殺気のこもった眼で此方をにらむレキを見て祐樹はそう思った。

 レキは強い。スナイパーとしての実力だけではない。アリアやキンジとは違い強い精神力を持っている。決意や覚悟は脆く薄く揺らぎやすい。だが、鍛え上げられた精神力はそれに当てはまらない。

 殺し合いは実力だけでは勝負は決まらない。その日の調子や情報、そしてくどい様だが精神力。

 容姿、実力、精神力。まるで芸術品のように完ぺきで猛獣のように力強い。

 

 壊したい、犯したい、殺したい。

 体の奥で何かが爆発し弾ける。理性が砕け殺意が支配する。体を動かすのは脳ではなく本能。

 殺したい、犯したい、壊したい

 

 嗚呼、カノジョヲタベタイ

 

 

 

 二人はほぼ同時に一歩踏み出していた。祐樹はポッケから取り出した剃刀を首筋に振り下ろし、レキは隠し持っていた刃で心臓を狙う。

 刃を右手でつかみ動きを止めるがその時にはすでに体をかがめることによって剃刀をやり過ごしていた。

 レキはスナイパー。肉薄すれば倒せない道理はなく、レキは最初から祐樹の攻撃範囲に入ってしまっていた。刃はすでに奪われ狙撃銃をこの距離で使うことはできない。明らかに本領を発揮できていない。それは祐樹からして見れば一目瞭然だった。

「――フェアじゃないな」 

 思わず口から洩れてしまった言葉だがこの言葉で自分の意思を確認できた。

 これは自分の望んだ戦いじゃない。レキは高い実力を持っている。ならば自分はそれを最大まで発揮させた状態で戦いたい。

「フェア。問答無用で斬りかかってきた人の言葉とは思えませんね」

 珍しくレキから皮肉を言われ思わず笑ってしまう。右手に握っていた刃を投げ返し剃刀を捨てる。殺気を恐れたのか周りには自分とレキ以外誰もいない。

「まあ、またいつかやろうよ。どう? 今日は一緒に食事でも」

 もちろん奢るよ。と付け足し笑う。一度深くため息をつたレキは刃をしまい歩き出す。やはり無理か! と崩れ落ちそうになるが、

「奢りなら、いいです。行きましょう」

 なぜかは分からない。今まで殺し合っていた少年に対してレキは小さく小さく笑った。

 

 

 

 そして、武偵校に戻るのをやめ、近くにあったラメーン屋に二人で入る。昼食の時間は少し過ぎているので客は少なめで思っていたよりスムーズに二人は席に着いた。

「……なにに、しますか」

 鈴のように澄んだ声。一瞬祐樹は、自分に掛けられた言葉だと思わず反応が遅れてしまった。

 そもそも、祐樹の知っているレキはロボットレキという異名からもわかる通り全く喋らない。事実、祐樹もレキと会話した回数は数えるほどで、それは作戦の確認や指示といった会話ともいえないものだった。

 メニューを片手に祐樹の眼を見つめ続ける、レキは恐らく返答待ちなのだろう。若干どもりながらも祐樹はみそラーメンを選び、店員に同じラーメンを二つ頼んだ。

 先ほどの殺し合いに関しては、お互いに触れず途切れ途切れながら会話を続ける。今日の天気の話から始まり、祐樹が昨日見た番組の話やレキのドラグノフの話。殺人鬼の祐樹も、ロボットと呼ばれるレキもこうして見るとただの学生にも見える。

 

 

 

 

 風は聞こえない

 

 けれど、今は聞こえないでほしい

 

 導きは聞こえなくても

 

 彼の声が聞こえるから

 

 

 




・剃刀
 字はカッコイイ

 チョイ、チョロインすぎたかなともいながらも投稿。
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