遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
キンコンカンコンと始業を告げるベルが鳴る中、遅刻したらしい一人の男子生徒が正門にいるであろう教師達に見つからないように裏門からこっそりと校内へ侵入する。彼はここ『デュエルスクール クスィーゼ校』の生徒のため厳密には侵入とは言わないがその挙動はまさに侵入者や不審者のソレであった。
「おはよう
その紅蓮と呼ばれた男子生徒の前に気配もなく姿を見せたのは、今年入学した彼のクラスの担任である男性教師だった。
「ゲッ先生、今は
「いや何、先生ほどにもなると遅刻しそうな生徒を見つけるなんて朝飯前なのさ♪」
『フフフ』と不敵な笑みで余裕そうな男性教師だが、男子生徒の耳に『ぐぅ』という音が聞こえると同時にそのまま突っ伏し腹を押さえる。
「・・・・・・なるほど、文字通り朝飯前だったってワケか」
「ぶっちゃけ言うと書類仕事終わんなくて昨日の夜も食べてない。おかしいな、予想以上に教師ってブラックだ」
まだ若いはずの男性教師をここまで使うとは、全く教師とは恐ろしい職業だ。余談だが彼がそんなに書類に追われていたのは日頃サボっていたツケだったりする。ブラック関係ねぇじゃねぇか。
「なら、とっとと何か買いに行けよ先生。何、オレも先生のことを誰かに言ったりしねぇさ。先生の態度次第では」
弱っている教師を前に悪い笑みでもって付け上がる不良の鏡。これが主人公だというのだから救えない。
「フッ先生を舐めてもらっちゃあ困るな♪ 人は一週間絶食しても死なない、ならこの程度問題ナッシング! さあ灰村くんキミには遅刻の罰則を受けて貰おうか!」
左手に装着された少し古い型のディスクを展開し構えながら右手で腹を押さえ立ち上がる男性教師に、紅蓮は特に感銘を受けることもなく比較的新しい型の真っ赤に塗装されたディスクを構え、口元を歪める。
「いいぜ、オレがデュエルに負けたら大人しく罰則を受けるし先生を見逃そう。代わりに、オレが勝ったらオレへの罰則は帳消しついでに飲み物の一つでも買ってきてもらうぜ! モチロン先生のオゴリでな!」
「何勝手に要求付け足してるの!?」
しれっと追加された財布へのダイレクトアタックに教師は悲鳴をあげる。紅蓮は最近流行りの『ブルーアイズ・オルタナティブ・マウンテン』を買わせる予定なので300円プラス税ほどのダメージだ。缶飲料のためこの値段だが、お店で頼む時は当然3000円である。恐ろしい。
加えて男性教師の
「いいんだぜ? これが飲めないならオレは罰則を受けるがそれは先生も同じ
公務員である以上減給はないだろうが空腹で狭まった思考回路では冷静な判断を下せるはずもなく覚悟を決めた彼はデッキからカードの剣を抜く。五本も剣は持てるはずもないのでこの表現は不適切に思えるが装備カードは五つ以上付けられるので五本剣を持つことは可能である。
「クッ仕方がないその身をかけて生徒を正しい道へ導くのが教師の勤め、そのデュエル受けて立とう!」
もっともらしいセリフでデュエルを受ける男性教師だが、その心の内に秘めたる思いはただ一つ、『減給嫌だ、ご飯食べたい』である。二つあるじゃねぇか。
「「デュエルッ!」」
男性教師
LP8000
灰村紅蓮
LP8000
切って落とされた醜い戦いの火蓋。ディスクが先攻を示したのは男性教師である。
「先生のターン、まず【汎神の帝王】発動、【真源の帝王】をコストに二枚ドロー」
「
男性教師とデュエルするのは初めての紅蓮は教師のデッキを【0帝】かと推測するがディスクに表示される相手のエクストラデッキ枚数は15枚。ならばエクストラも使う変態的な帝か、あるいは帝王カードを出張させたアドバンス軸のデッキだろう。
(一番辛いのは真竜だな。何で永続魔法・罠にカード破壊が付いてんだよ意味わからん)
彼が警戒するのは未だに二枚もの禁止カードを有するカテゴリ【真竜】。しかし、その心配は男性教師が次に使ったカードにて打ち砕かれる。
「【輝光竜セイファート】を通常召喚♪」
「ッソイツはダメだぜ【エフェクト・ヴェーラー】!」
輝光竜セイファート ☆4 攻撃力1800
登場するなり性別不詳の天使に効果を無効にされるセイファート。これではただの光属性ドラゴン族の攻撃力1800アタッカーだ。ドラゴンサポートや【オネスト】の存在を考えると普通に強いかもしれない。
「そう来たか、なら【竜の霊廟】で【亡龍の戦慄-デストルドー】を墓地へ送って効果発動♪ レベルを3にして特殊召喚」
男性教師
LP8000→4000
亡龍の戦慄-デストルドー ☆7→3 守備力3000
ドラゴンに限らず汎用性の高いソリティアパーツ。その意外に高い守備力を活かす日はいつ来るのだろうか。
「そしてサーキットご開帳、召喚条件はドラゴン族モンスター二体カモン【天球の聖刻印】!」
天球の聖刻印 link2 リンク 攻撃力0
デッキの底へ沈むデストルドーと現れる天球儀型ドラゴン。これが日の出と日没を表していたりすることはない。
「最後に忘れる所だった【汎神の帝王】の効果発動、墓地から除外してデッキから【連撃の帝王】と【連撃の帝王】、【連撃の帝王】を選択、さあ選んで♪」
「選択肢なんてねぇじゃねぇか! 真ん中!」
提示された三枚の罠カードに憤りを感じつつない選択肢を選ぶ。このことから教師は世の中の不条理さを教えたかったのだがそれは上手くいかなかったようだ。嘘である。
「先生は謎のカードを伏せてターン終了」
男性教師
LP4000 手札3
□□□□■
□□□□□
天 □
□□□□□
□□□□□
灰村紅蓮
LP8000 手札4
天:天球の聖刻印
■:伏せカード
「オレのターンドロー!」
「スタンバイフェイズ、リバースカード【連撃の帝王】を発動♪」
「構わねぇ、【緊急テレポート】を発動してデッキから【サイキック・リフレクター】を特殊召喚するぜ」
サイキック・リフレクター ☆1 チューナー 守備力0
緊急でもないのに呼び出されたのはレベル1のチューナー。はてさてレベル1デッキだろうかと現実逃避する男性教師に構わず紅蓮はデッキを回す。
「【サイキック・リフレクター】の効果で【バスター・ビースト】をサーチし効果発動、デッキから【バスター・モード】を手札に加えるぜ」
「さっきの言葉そのまま返すよ♪
男性教師の言葉を素知らぬ顔で聞き流した紅蓮はそのまま【バスター・モード】を見せることで墓地の【バスター・ビースト】を特殊召喚した。
バスター・ビースト ☆4→7 守備力1200
並んだ二体のモンスターに「ハリファイバーかな~?」と明後日の方向へ思考を飛ばす男性教師。空腹で頭がイッているのかもしれないが恐らく現実逃避だろう。問題ない。
「【サイキック・リフレクター】で【バスター・ビースト】をチューニング! 吠えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
光射す道となった二体を糧に降り立つ紅蓮魔竜。名前の割にはその身体に赤要素は少ない。
「【天球の聖刻印】の効果発動! リリースしてそのモンスターには帰ってもらうよ♪」
すかさず男性教師が天球儀を生け贄に悪魔祓い。
創世の竜騎士 ☆4→8 守備力600→0
「よっし使ったな? 【コール・リゾネーター】を発動してデッキから【レッド・リゾネーター】を手札に加えて通常召喚!」
レッド・リゾネーター ☆2 チューナー 攻撃力600
【天球の聖刻印】の効果で特殊召喚された【創世の竜騎士】に一瞬だけ意識を向けるも問題ないと判断し無視して進める。無視された竜騎士は泣いていい。
「【レッド・リゾネーター】の効果で手札から【風来王ワイルド・ワインド】を特殊召喚!」
風来王ワイルド・ワインド ☆4 守備力1300
赤い調律魔に呼び出されたのは風来坊なのに王というタイプ:ワイルド。
「チューナーとそれ以外のモンスター、来るぞ遊馬!」
「古いネタだな先生、【レッド・リゾネーター】で【風来王ワイルド・ワインド】をチューニング! 来い魂の種火【レッド・ライジング・ドラゴン】!」
レッド・ライジング・ドラゴン ☆6 シンクロ 攻撃力2100
悪魔と王が調律し、火竜が燃え上がる。この文だけを人に見せたら意味がわからないだろう。
「【レッド・ライジング・ドラゴン】の効果発動だ。墓地から【レッド・リゾネーター】を特殊召喚して更に効果発動、ライフを回復するぜ」
レッド・リゾネーター ☆2 チューナー 守備力200
灰村紅蓮
LP8000→10100
赤い調律魔が復活すると、火竜の炎が紅蓮を包み込み、その身体を癒やす。炎で何故人の身体が癒えるのかわからないが火傷させて止血することもあるのでつまりそういうことだろう。
「魔法カード【エンシェント・リーフ】発動だ。ライフ2000払って2枚目ドロー」
灰村紅蓮
LP10100→8100
一万を越したもののすぐに減るライフ。多くのデュエリストにとってライフなんて残っていればいいだけのコストだ。
「【レッド・ライジング・ドラゴン】に【レッド・リゾネーター】をチューニング! 燃えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
再びフィールドに姿を表すレッド・デーモン。傷付いているのはきっと天球儀にバウンスされてから紆余曲折あった証なのだろう。知らんけど。
「なら【連撃の帝王】の効果発動! レベル8になっている【創世の竜騎士】をリリースしてアドバンス召喚! 【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】!」
「なっ!?」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
黄金の鎧を纏った竜騎士を踏み台にフィールドへ躍り出るオッドアイズ。竜騎士は泣いていい。
「【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】の効果発動! キミの【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】を破壊して攻撃力分ダメージだ♪」
オッドアイズが尻尾でスカーライトを殴ると、その赤さと竜であることから赤き竜だとでも勘違いしたのか、大人しく破壊されるスカーライト。
灰村紅蓮
LP8100→5100
自分のターンにも関わらず飛んできたバーンダメージに不快そうに眉を歪め、紅蓮はまだ使わない予定だったカードを切る。
「ならさっき引いた【復活の福音】発動! 蘇れオレの魂!」
「ウソん!?」
このタイミングで最適なカードを引いた強運に男性教師は素っ頓狂な声を上げる。素っ頓狂って今日日聞かねぇな。ジェネレーションギャップかな?
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
墓地でオッドアイズが赤き竜ではないことに気付いたのか、何事もなかったかのように帰ってきたレッド・デーモン。素レモンから期間を開けて登場したスカーライトとしては言い得て妙である。
「さて、もう妨害はねぇだろ。【強欲で貪欲な壺】を発動し二枚ドロー。【シンクローン・リゾネーター】を特殊召喚しそのままスカーライトをチューニング!」
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
呼ばれて飛び出るなり不機嫌なスカーライトと調律するシンクロン擬き。
「シンクロ召喚! 深炎より来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
「【シンクローン・リゾネーター】の効果で墓地の【レッド・リゾネーター】を手札に加えるぜ。バトル、【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】で攻撃だ」
その姿に騙されたことが癪だったのか、容赦なくオッドアイズの顔に右拳を叩き込むアビス。オッドアイズからすればただの八つ当たりである。
男性教師
LP3500→3300
「【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】が戦闘ダメージを与えたことで、墓地から【シンクローン・リゾネーター】を特殊召喚だ」
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
ここで紅蓮は考える。【シンクローン・リゾネーター】と【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】で【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】をシンクロ召喚するか、このままターンを終えるか。
ベリアルを出してもリリースするモンスターがいないためアビスを残すことはできずそして墓地にもうリゾネーターはいないため【シンクローン・リゾネーター】の効果を使う意味はなく総括してこのままで良いと判断した。
「カードを伏せて、ターンエンドだ」
男性教師
LP3300 手札2
□□□□連
□□□□□
□ 琰
□□シ□□
■□□□□
灰村紅蓮
LP5100 手札3
連:連撃の帝王
琰:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
シ:シンクローン・リゾネーター
■:伏せカード
「じゃあ先生のターン」
カードを引きながら伏せられたアレは十中八九【バスター・モード】だろうと半ば断定した断定教師はこの盤面をどう返そうか思案する。
「まずは【連撃の帝王】をコストに【パラレル・ツイスター】を発動♪」
「させるか【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果発動だ!」
相手モンスターをアドバンス召喚の生贄にするという疑似壊獣カードを紅蓮は間髪置かずに止める。が、それが狙いだったのか男性教師はこれでもう邪魔はなくなったと効果を使う。
「墓地の【真源の帝王】の効果発動、【連撃の帝王】を除外して墓地から特殊召喚♪」
真源の帝王 ☆5 守備力2400
【天帝アイテール】の像がフィールドに直立不動するがこれを天使族だと言い切れるのかは怪しいライン。
「レベル5のモンスター・・・・・・」
恐らく男性教師のエースであるカードがあれば出されるこの状況をなんとか出来ないかと紅蓮はアビスを見るが、アビスは「
「ではご期待に応えて。アドバンス召喚【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
ディスクに表示された【真源の帝王】のモンスターステータスから何かを察した紅蓮に応えるようかのごとく男性教師がアドバンス召喚。後は先程のターンと同じである。
「【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】の効果発動! もう効果を使えない【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を破壊して攻撃力分ダメージ!」
「効くかよ【復活の福音】の効果発動! 墓地から除外して破壊を防ぐぜ!」
【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】が再び尻尾で【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を殴ろうとするが同じ手は食らわないとでも言うようにその尻尾をアビスが掴む。
「なら次だ【創世の竜騎士】の効果発動! 手札一枚をコストに墓地から除外して【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を蘇生!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 守備力2500
二体並んだ【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】のレベルは8。つまりUMAの出番である。
「行くよ♪ 二体の【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】でオーバーレイ、エクシーズ召喚【銀河眼の光波竜】
「【銀河眼の光波竜】を素材にフルアーマー・エクシーズチェンジ【ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン】!」
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ★8 エクシーズ 攻撃力4000
【銀河眼の光波竜】が鎧を身に纏い背中のキャノンを構える。対象は【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】。
「効果発動!」
男性教師がどこからか取り出した奇抜なヘルメットを被り「対閃光防御!」とついでに耳を塞ぐ。
「ファイア」
ギャラクシーアイズの背中から砲撃される弾丸。ちなみに閃光は一切なかった。
「チッアビスがやられたか・・・・・・」
「まだあるよ♪ ランクアップ・エクシーズチェンジ【銀河眼の光波刃竜】」
ギャラクシーアイズが使い終わった装甲をパージすると刃のような翼を持つ竜へと進化していた。
「【銀河眼の光波刃竜】の効果発動♪ オーバーレイユニットを一つ使い、【シンクローン・リゾネーター】を破壊!」
【銀河眼の光波刃竜】が刃翼を羽ばたかせると、それに驚いた【シンクローン・リゾネーター】がショック死。悪魔なのに音に弱いのか。
「バトルフェイズ、【銀河眼の光波刃竜】でダイレクトアタック!」
「させると思ってんのか? 【バトル・フェーダー】!」
バトル・フェーダー ☆1 守備力0
ギャラクシーアイズが殲滅のサイファーストリームを放つべく口を開くと鐘の
「失敗したか♪ ・・・・・・あっヤバい今ので気が抜けて空腹感が」
「おいおい先生大丈夫か?」
腹をカードを持った左手で押さえながら右手で大丈夫だと示す男性教師に紅蓮も一応心配する素振りを見せるが、デュエルを中止するつもりは一切ないので結果は変わらない。なんなら途中棄権扱いで勝ったことにすることまで考えていた。
「た、ターンエンド・・・・・・」
男性教師
LP3300 手札0
□□□□□
□□□□□
刃 □
□□フ□□
■□□□□
灰村紅蓮
LP5100 手札2
刃:銀河眼の光波刃竜
フ:バトル・フェーダー
■:伏せカード
手札を使い切り、残りライフも半分を割っている男性教師に対し、手札もライフもある紅蓮。結果は目に見えているように思える。
「オレのターン、ドロー。【レッド・リゾネーター】を召喚して効果で手札から【終末の騎士】を特殊召喚、さあ休暇なんざねぇぜ効果発動だ!」
レッド・リゾネーター ☆2 チューナー 攻撃力600
終末の騎士 ☆4 守備力1200
制限カードにも関わらず何故か過労状態の騎士がデッキから【亡龍の戦慄-デストルドー】を墓地へ引きずり出す。
「っていうことは、またか」
「先生を空腹で放置するのも可哀想なんでな、直ぐに終わらせてやるよ。【レッド・リゾネーター】で【終末の騎士】をチューニング、さあ燃えろ魂の種火【レッド・ライジング・ドラゴン】」
レッド・ライジング・ドラゴン ☆6 シンクロ 攻撃力2100
再び燃え上がる火竜。名前的にアルティメットの力の片鱗っぽいが【レッド・アルティメット・ドラゴン】なるカードは存在しない。なんでさ。
「【レッド・ライジング・ドラゴン】の効果で墓地から【レッド・リゾネーター】を特殊召喚、効果発動で【銀河眼の光波刃竜】の攻撃力分ライフを回復するぜ」
灰村紅蓮
LP5100→8300
赤い悪魔の異名を持つ調律魔がその手に持つ音叉でギャラクシーアイズをビビらせると、止めて欲しくばよこせとライフを回復させる。カツアゲか。
「【レッド・ライジング・ドラゴン】を対象に【亡龍の戦慄-デストルドー】をレベル1にして特殊召喚だ」
灰村紅蓮
LP8300→4150
亡龍の戦慄-デストルドー ☆7→1 チューナー 守備力3000
初期値を超えていたライフがオベリスクでは死なない程度の中途半端なライフまで減る。
「【レッド・リゾネーター】で【レッド・ライジング・ドラゴン】をチューニング! 爆ぜろオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン】!」
琰魔竜レッド・デーモン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
また異なる姿で登場するレッド・デーモン。裏での衣装替えとか忙しそうだが大丈夫なのだろうか。
「まだだぜ。墓地の【風来王ワイルド・ワインド】を除外して効果発動! デッキから【シンクローン・リゾネーター】を手札に加えてそのまま特殊召喚するぜ」
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
琰魔竜の横に赤いのとは別の調律魔が並ぶ。
「直ぐって?」
「ああ! それってソリティア? 【亡龍の戦慄-デストルドー】で【琰魔竜レッド・デーモン】をチューニング、深炎より再び来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
骨龍と調律しレッド・デーモンが進化する。やはりアビスは二積みらしいが勿体ない気がしなくもない。
「もっと、もっとだ! 【シンクローン・リゾネーター】で【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】をチューニング! 悪魔を焼けオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】!」
琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル ☆10 シンクロ 攻撃力3500
今度は調律魔と同調し力を増す琰魔竜。ベリアルとは悪魔なのだが「悪魔を焼け」とは自殺の隠喩か何かだろうか。
「効果で【レッド・リゾネーター】を手札に加えるぜ」
「ベリアルまで出てきたか♪ そしてそこで棒立ちしてる【バトル・フェーダー】をリリースするのかね」
「流石先生だぜご明答だ。【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】の効果発動、【バトル・フェーダー】をリリースしてくすぶってねぇで出て来い【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
ベリアルが鐘の悪魔を墓地へボッシュートするとそれでキャッチボールするべくアビスが蘇る。尚【バトル・フェーダー】は除外へ逃げ出した。
「足りねぇなぁ、もっと寄越せ! 墓地を【レッド・ライジング・ドラゴン】の効果発動! 除外して墓地の【シンクローン・リゾネーター】二体を特殊召喚!」
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
墓地で種火竜が燃え上がると、火傷を恐れてか二体の調律魔が慌ててフィールドに飛び出す。悪魔なのに火に弱いのか。
「仕上げだ、【シンクローン・リゾネーター】二体で【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】をチューニング! 惨禍と化せオレの魂【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】!」
琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ ☆12 シンクロ 攻撃力4000
二体の悪魔を糧に更に進化するレッド・デーモン。腕まで増えて便利なのか不便なのかよくわからない。
「バトルだ! 【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】で【銀河眼の光波刃竜】を攻撃!」
先程破壊されたアビスのお礼をするべくカラミティが複数ある腕を鳴らしながらノッシノッシギャラクシーアイズの前まで歩く。普通にヤクザだ。キングの魂がヤクザということで起訴できないだろうか。
「それ食らったら負ける! 墓地の【超電磁タートル】の効果を発動! 除外してバトルフェイズを強制終了するよ♪」
「いつの間にンなカードを・・・・・・」
そして【創世の竜騎士】の墓地効果のコストに手札を捨てていたことを思い出す。流石教師、抜け目ない。言い換えればセコい。何故言い換えたのか。それについての激しい論争が今後十年も繰り広げられることになろうとは、この頃はまだ誰も思っていなかった。
「チッならメイン2からターンエンドだ」
男性教師
LP3300 手札0
□□□□□
□□□□□
刃 王
□□ア□□
■□□□□
灰村紅蓮
LP4150 手札1
刃:銀河眼の光波刃竜
王:琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
「オレのターン、ドロー」
空腹が限界なのか、一人称が素に戻る男性教師。よく空腹でデュエルできるものだがデュエリストなら誰でも可能だろう。
「【銀河眼の光波刃竜】の効果発動!」
「やらせねぇ、【エフェクト・ヴェーラー】!」
ギャラクシーアイズが翼を輝かせると、それを察した性別不詳天使が止める。
「墓地の【天球の聖刻印】【ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン】【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を除外して特殊召喚! 【混源龍レヴィオニア】!」
混源龍レヴィオニア ☆8 特殊召喚 攻撃力3000
3つの魂を取り込み混源に至った龍が飛翔する。
「【混源龍レヴィオニア】の効果! カラミティとアビスを破壊する!」
「させねぇよ【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果発動!」
【混源龍レヴィオニア】をアビスが殴って黙らせる。
「それを待ってた♪ 墓地の【輝光竜セイファート】の効果発動、墓地の【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を回収、そのままアドバンス召喚!」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
幾度目かも忘れるほどの登場をするオッドアイズ。咆哮を上げ、カラミティへ尻尾を振るう。
灰村紅蓮
LP4150→150
「チッよくもカラミティを!」
しかしそのバーンだけでは紅蓮のライフを削り切るには至らない。むしろ鉄壁に入り勝つ確率が上がった可能性すらある。
そして。
「【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】の効果発動だ、蘇れオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
更に傷付きボロボロになった姿でそれでも貪欲に勝利を求め復活する紅蓮魔竜。
相対する二体の竜と共に二人のテンションは最高頂に達し―――
「カフッ!」
「せっ、先生――!?」
男性教師が吐血したことにより、このデュエルは幕を下ろした。
この後、紅蓮は男性教師を担いで保険室へ直行。ただの過労だとわかるとホッと胸を撫で下ろしたが、それも束の間。
学年主任に呼び出され、かなりの叱責を紅蓮は受けることになり、男性教師も減給、とまでは行かないものの健康診断を受けることになった。もちろん自腹で。
彼が心配で保健室を訪れた生徒の中には涙を流す者もおり、彼は健康管理に気をつけることにしたという。
追記
【烈旋の帝王】を【パラレル・ツイスター】に変更いたしました。