遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
【レッド・ライジング・ドラゴン】が売ってない・・・・・・。
新ルールが発表された。
これにより多くのデッキが蘇り、多くのデッキが見直しを余儀なくされ、多くの満足民が咆哮を上げ。
そして紅蓮は、少し気分を落としていた。
(いや、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどさ・・・・・・)
柊太とデュエルしてから数日。目を合わせようとしない彼にどうしたものかと頭を捻る日々だったが、新ルールで更に混乱した。
新ルール自体は嬉しい。喜ぶべきことだ。
しかしリンクモンスターのルールに思うところがあったからこその真っ白なエクストラデッキ。それが今では普通のエクストラデッキである。
(出鼻を挫かれたというか、何というか・・・・・・)
先生が喜びの余り有給を取って研究しているというので自習になった『不動性ソリティア理論』の授業に頬杖をついて脱力する紅蓮。一応脳内ではサブデッキとしての【ソリティアレモン】を構築しながら、その姿はやる気なさげであった。デュエリストならばこの程度できて当然である。
「意外だな、灰村ならもっと喜んでそうなのに」
前の席の野呂が紅蓮の様子に首を傾げると、その隣の席の栗原がそうだね、と頷く。
しかしその手は机に広げた自身のデッキのカードを入れ替え、纏め、一人回しからまた広げて入れ替えを繰り返していた。
栗原 盤面
□□□□□
シコシコシ
□ コ
□ラララ□
□□□□□
シ:シューティング・ライザー・ドラゴン
コ:コズミック・ブレイザー・ドラゴン
ラ:ラーの使徒
六十枚デッキ、相手が四十枚想定の【隣の芝刈り】スタートでこの有様である。盤面に並べた順番に悪意はない。というか『シ』が【シューティング・クエーサー・ドラゴン】ではなく【シューティング・ライザー・ドラゴン】である時点でまだまだである。制圧としては【ラーの使徒】だけでも十分なのだが。
「うわ、手が4つに見える・・・・・・やっぱ俺はデュエリストにはなれなそう・・・・・・」
野呂が一人戦慄しているが、実際は手札誘発などで止まるため、精々【コズミック・ブレイザー・ドラゴン】一体程度である。それでも十分な気もするが。
「はあ、このクラスにマトモなのはいないのか・・・・・・」
紅蓮が盛大なブーメラン発言をしながら教室の右後ろにたむろしている三人の男子生徒へ目を向けると、彼らは『サモン・ソーサレス陵辱』(ある日突然
ーーーーーーーーーー
自習時間が終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴る。日直がかける号令に合わせて紅蓮も起き、マンガをしまった男性教師に礼。
どうやら紅蓮以外誰も男性教師を見ていなかったようで、彼の本についての話題は一切出ない。まあ自習なんてそんなものか、と一人納得して、紅蓮は弁当箱を取り出す。
「野呂、一緒に食うか?」
「ごめん、今日補習があって」
補習、とは言うが、彼はそこまで成績が悪い訳ではない。ルールが新しくなったことで、大会運営等での裁定に多少の変更があるため、それについてだろう。彼は大会運営を目指してこの学校に来た、と以前言っていた。
「そか。呼び止めて悪かったな」
その紅蓮の言葉は届いたのかどうか。野呂はさっさと教室を出てしまった。
「さて、どうするか」
弁当の中身を箸でつつきながら考える。
今日も懲りずに先輩へ果たし状を送っていたのだが、新ルールでデッキを見直す、ということで断られてしまった。それ故やることがなく、野呂を誘ったのだが。
(・・・・・・まあ、デュエル場にでも行ってみるか)
そうと決まれば早い。紅蓮は弁当をかき込み片付けると、足早に第三デュエル場へ向かう。
デュエル場では、まだ昼休みの早い時間にも関わらずデュエルが行われ、観客もそれなりの数がいた。
「フッフッフ! 【
奥で高笑いしているのは華道雪村。はっちゃけすぎたかな?と笑みを浮かべる彼は出番がなかったことを気にする様子もない。
「まあ、雨四光のバーンと【契約書】のダメージで終わりだろうけどね?」
「いや、まだだ。墓地の【DDD極智王カオス・アポカリプス】の効果発動! フィールドの【地獄門の契約書】【魔神王の契約書】を破壊し、墓地から特殊召喚する!」
相対するのは赤羽五河。残りライフはわずかで、かなり劣勢だ。三枚と少ない手札で、タイムを宣言し長考に入った。
「あ、隣いいか?」
紅蓮は知り合いの顔を見つけ、答えを聞く前に空いていた席につく。
「貴方ねぇ・・・・・・せめて答えを聞いてからにしなさいよ」
こちらにジト目を向けてくるのは藤堂千歳。その隣でデュエルにのめり込んでいるのは遊弋鈴だ。過去キャラのオンパレードである。
「というか、よく私の隣に座れるわよね。あんなことあったのに」
「あれは勘違いが元だろ。そんなことを一々気にする程暇じゃないんだよ」
後、言われるまで忘れていた。そうぬけぬけと言った彼に千歳は呆れ顔を作ってため息をつく。
「それより、今はどういう状況なんだ?」
「はあ・・・・・・華道先輩が先攻でソリティアしてあの二体を揃えて、赤羽先輩がそれを突破して、五光の効果で雨四光が出て来て反撃、赤羽先輩が更に巻き返して、【花合わせ】と【死者蘇生】を使って五光と雨四光を揃えた、ってところよ」
なるほど【
「つーか、今日は人が多いな。まだ昼休み始まったばっかりだろ」
「新ルールのせいで『クリスト論』と『不動性ソリティア理論』が自習だったのよ。それで早弁したんでしょ」
まあ、私もその一人だし、と言う千歳。鈴もいるということは、彼女も早弁したのか、と紅蓮は意外に思った。そんなことをするタイプには思えなかったのだ。
「そうか・・・・・・『クリスト論』は前ルールでこそ生きたからな・・・・・・」
【
(【琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ】を相手ターンに出すルートとか考えてくれたっけな・・・・・・いい先生だったぜ)
少し曇った空へ向けて敬礼する紅蓮。だが学年ごとに教師が異なっているため、紅蓮のクラスの担当をしている『クリスト論』の教師は学校に来ている。なんて勤勉。
「【DD魔導賢者トーマス】をペンデュラムスケールにセッティングし、効果発動! エクストラデッキの【DDD運命王ゼロ・ラプラス】を手札に加え、セッティング! その効果でエクストラデッキの【GOーDDD神零王ゼロゴッド・レイジ】を手札に加える!」
長考を終え、カードを発動していく五河。彼の声に、千歳と紅蓮もそちらを向く。
「ペンデュラム召喚、【DDネクロ・スライム】【DD魔導賢者コペルニクス】! コペルニクスの効果で【DDスワラル・スライム】を墓地へ送り、効果発動! 手札から【GOーDDD神零王ゼロゴッド・レイジ】を特殊召喚!」
二体の【
「トーマスとゼロ・ラプラスの動き綺麗だな・・・・・・そこまで考えていたのか」
「長考してたし、そうでもないんじゃない? まあそれも想定してデッキは組んだんでしょうけど」
普段は【グッドスタッフ】に近い、コンボ等とは縁のないデッキを使っている千歳だが、彼女とてデュエルスクールの生徒。ましてや校内で名前の知れ渡っている赤羽五河のデッキなのだから、研究していて当然だろう。紅蓮も同じだ。
「ゼロゴッド・レイジの効果発動! 自身のモンスター一体をリリースし、相手の手札、墓地のモンスターをゼロとして扱う! 更に発動、リリースし相手の場、墓地の魔法・罠をゼロとして扱う! そして最後だ、効果発動! リリースし、相手の場のモンスターそゼロとして扱う! ゴッドフォース
「なっ!? そっか、ソイツがいたか・・・・・・」
ゼロゴッド・レイジが三体のモンスターを取り込み、『ゼロ』の力を相手へ押し付ける。正確には魔法&罠ゾーンのカードの効果、手札・墓地のカードの効果の発動を封じ、直接攻撃を可能にする、という効果だが、
「バトルだ! 【GOーDDゼロゴッド・レイジ】で攻撃! ゴッドフォース
ゼロゴッド・レイジには相手のライフが4000以下の場合その数値分の攻撃力を得る効果があり、雪村のライフは4000を下回っている。
「くっ、これで勝ったと思うなよ!」
三下のようなセリフを吐いて、ゼロゴッド・レイジの攻撃を受ける雪村。『勝ったと思うな』とは言うが、普通に勝ちである。
だが五河は静かに一つ笑い、右手でメガネに触れる。
「フッ、これで俺の31勝28敗・・・・・・随分差が開いたな」
「いや、それ今年の勝敗でしょ? 通算なら782勝763敗で僕が勝ってるよ」
妙な張り合いを始め、もう一戦するかとお互い構えるが、次に使う人のことを考えて退いた。流石は三年生、と思ったが観客席を使ってテーブルデュエルを始めたのでそうでもないなと目を外した。
しかし、興奮するデュエルだった。全て見たワケではないが、燃えてくる。後でパソコン室を使おう、と心に決めながら、紅蓮は腕を組む。
「すご、かった・・・・・・あ、ぇと、灰村、くん・・・・・・」
そしてようやくこちらに気付いたらしい鈴。よほどデュエルに集中していたのだろう。彼女は目が見えないため、デュエルの状況を把握するには聴覚に頼るため
「よう。久し振りだな」
「ぁ、久し振り、です・・・・・・」
軽く手を上げて挨拶しる紅蓮に、つっかえながら応じる鈴。やはりまだ慣れないか、と残念に思う紅蓮と、彼を軽くねめつける千歳。恐らく紅蓮の座った席が空いていたのも、彼女が睨みを効かせていたからなのだろう。鈴がそれを迷惑に思っていない辺り、いい友人関係なのかもしれない。
さて次は誰のデュエルだろうかと視線を移すと、そこには意外な人物がいた。
「よろしくお願いします」
「・・・・・・あぁ」
片方は、
そして、彼と向かい合うのは宮津柊太。少し古い型のディスクを構え、正面を見据える。
「・・・・・・いくぞ」
「「デュエルッ!」」
影裏通
LP8000
宮津柊太
LP8000
先攻は通。彼は片目を隠すほど長い前髪の下で目だけを動かし、手札を見る。
「・・・・・・【レスキューキャット】を召喚」
レスキューキャット ☆4 攻撃力300
現れたのは彼に似付かわしくない猫が現れると、観客の約半分が悲鳴を、一部は黄色い声を上げる。前者は恐ろしい呪文『サモサモキャットベルンベルン』を知る者、後者は単純に見た目の可愛さからだ。
「【レスキューキャット】の効果、発動・・・・・・自身を墓地へ送り、デッキからレベル3以下の獣族モンスター、【ライトロード・ハンター ライコウ】二体を特殊召喚」
ライトロード・ハンター ライコウ ☆2 リバース 守備力100
猫に呼び出されたのはすこし前に闇落ちした光の尖兵。この動きだけでは何のデッキかよくわからない。
「ライコウ二体をリンクマーカーにセット、サーキットコンバイン・・・・・・リンク召喚、【サブテラーマリスの妖魔】」
サブテラーマリスの妖魔 link2 リンク 攻撃力2000
召喚条件はリバースモンスター二体。なるほどこんな出し方もあるのかと紅蓮は唸った。自分とのデュエルでは見れなかった動きだ。
「影裏の奴、容赦ないわね・・・・・・」
隣で千歳が呟いているが、両サイドの鈴と紅蓮の耳には入らない。どちらもデュエルを見る時は集中する
「【地中界シャンバラ】を発動・・・・・・効果処理としてデッキから【サブテラーの導師】を手札に加える」
俗に言う【導師ビート】というデッキの格となるカードだ。【サブテラー】最強のカードと言っても過言ではない。
「妖魔の効果発動。ターンに一度、手札からリバースモンスターをリンク先に伏せ、デッキからリバースモンスターを墓地へ送る・・・・・・導師を伏せ、【シャドール・リザード】を墓地へ」
【シャドール・リザード】の効果で【
「シャンバラの効果・・・・・・ターンに一度、場の【サブテラー】を反転させる。反転召喚【サブテラーの導師】」
サブテラーの導師 ☆4 リバース 守備力1800
奇妙な仮面を被った白竜が反転する。このモンスターはドラゴン族なので、やはりドラゴンは環境に連なるほど強いということだろう。虚しくなってきた。
「導師のリバース効果、妖魔の誘発効果が発動・・・・・・妖魔の効果でデッキから【
これで手札は五枚、そして墓地も肥えている。派手さはないが、確実にアドバンテージを稼いでいる。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
影裏通
LP8000 手札4
□□□□■
□□導□□地
□ 妖
□□□□□
□□□□□
宮津柊太
LP8000 手札5
妖:サブテラーマリスの妖魔
導:サブテラーの導師
地:地中界シャンバラ
柊太のターン。デュエルが始まってから一言も発していない彼の方へ目を向ける。また手札と睨めっこして相手を見ていないのだろう、という紅蓮の予想は、いい意味で裏切られた。
彼は、ただ真っ直ぐ通を見つめていた。自然体で、口を横に結んで。
「僕のターン」
宣言と共にドローカード。手札を見ながら、時折ディスクを操作し状況を確認している。
「【調律】を発動。デッキから【シンクロン】を手札に加え、デッキトップを墓地へ送る」
「・・・・・・」
無言を肯定と受け取り、【ジェット・シンクロン】を手札へ。そして妨害のタイミングを予測しつつ、次の手を打つ。
「【ジャンク・コンバーター】の効果発動、【ジェット・シンクロン】と一緒に捨てて、デッキから【ジャンク・シンクロン】を手札に加える」
恐らく次に来るだろうな、と紅蓮は悟った。それを柊太も感じているのか否か、【ジャンク・シンクロン】を通常召喚する。
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300
「【ジャンク・シンクロン】の効果発動、墓地からレベル2以下のモンスターを特殊召喚する」
「チェーンして【サブテラーの導師】の効果だ・・・・・・【ジャンク・シンクロン】を裏返す」
導師が仲間を呼ぶジャンク・シンクロンを剣で殴り、カードを反転させる。
「特殊召喚するのは【ジャンク・コンバーター】、そして墓地からの特殊召喚に成功したことで、【ドッペル・ウォリアー】を特殊召喚する」
ジャンク・コンバーター ☆2 守備力200
ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800
連続して並ぶモンスター達。通のような堅実さはないが、瞬発力があるのが柊太のデッキだ。
「手札一枚をコストに【ジェット・シンクロン】を特殊召喚、そして【ドッペル・ウォリアー】【ジャンク・コンバーター】をチューニング、シンクロ召喚。【ジャンク・スピーダー】」
ジャンク・スピーダー ☆5 シンクロ 攻撃力1800
現れたのは白銀のボディを持つ【ジャンク】の新人。とは言え一年前のカードだが、入社二年目はまだ新人の範囲だろう。
「スピーダーがチェーン1、チェーン2で【ドッペル・ウォリアー】の効果発動」
「・・・・・・手札の【サブテラーの妖魔】の効果発動だ。導師を裏返し、ドッペルの効果を無効にする」
【ジャンク・コンバーター】は対象不在のため不発だ。デュエルモンスターズは『空打ち』*1ができないため、【ドッペル・ウォリアー】を無効化させない*2ことはできなかったが、【サブテラーの妖魔】を使わせたので十分だろう、と紅蓮は顎に手を当てる。
「スピーダーの効果でデッキからレベルの異なる【シンクロン】モンスター、【ジャンク・シンクロン】と【ジェット・シンクロン】を特殊召喚」
ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0
ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 守備力500
裏側のままの【ジャンク・シンクロン】に煩わしそうに眉をしかめてから、柊太は続ける。
「墓地の【ボルト・ヘッジホッグ】の効果発動、場にチューナーがいることで自身を特殊召喚、【ジャンク・シンクロン】で【ボルト・ヘッジホッグ】をチューニング、シンクロ召喚。【アクセル・シンクロン】」
アクセル・シンクロン ☆5 シンクロ チューナー 守備力2100
光輪と光点から現れたメ蟹ックのバイクがトランスフォー厶し人型となる。形状的にはオートボット。*3
「まだまだ、【アクセル・シンクロン】で【ジャンク・スピーダー】をチューニング、アクセルシンクロ。【サテライト・ウォリアー】」
サテライト・ウォリアー ☆10 シンクロ 攻撃力2500
柊太のターンに現れた衛星戦士に、紅蓮は目を細める。前は相手ターンに出すことに固執していたように感じたが、今はそうでもないらしい。
「サテライトの効果発動、対象は
どこからか取り出したキャノン砲を取り出す【サテライト・ウォリアー】に、通は隠れた目ごと双眼を細め、ディスクの液晶へ触れる。
「リバースカード、【
ウェンディが裏側のカードを風で操り、自身と共に融合する。
エルシャドール・シェキナーガ ☆10 融合 守備力3000
サテライト・キャノンの一つは空振り、もう一つは【サブテラーマリスの妖魔】を撃ち抜いた。
サテライト・ウォリアー 攻撃力2500→3500
「墓地へ送られた【
これでモンスターの数は回復した。柊太は少し動揺し、ここからどう動くか考え込もうとして、やめた。
そして、もう一度盤面、その奥の通へと目を向ける。
(今伏せた【シャドール・リザード】は墓地の【
紅蓮は柊太を見ながら、ニヤニヤと口元を歪めている。
そしてそれを気味悪げに少し身を引きながら眉をピクつかせる千歳。
「貴方、ゾッとするほど笑顔が似合わないわね・・・・・・」
「ヒデェなおい。言われ慣れてるけど」
少し悲しそうな顔を作ってから、何でもないようにデュエルへと意識を戻す。さて柊太はどうするか。
「・・・・・・場にチューナーがいることで、【ブースト・ウォリアー】を特殊召喚。【ジェット・シンクロン】で【ブースト・ウォリアー】をチューニング、シンクロ召喚。【フォーミュラ・シンクロン】」
フォーミュラ・シンクロン ☆2 シンクロ チューナー 守備力1500
ミニ四駆型の希望の光がシンクロされ、強制効果で一枚ドロー。通はそれには反応せずスルーした。合計レベルは12、シンクロ召喚するであろうモンスターに使った方がいい。
「バトルフェイズに入る」
「・・・・・・何?」
予想を裏切ってバトルを宣言する柊太。ならばと通は動く。
「スタートステップ、墓地の【
色の薄い糸によって【シャドール・リザード】のカードが反転し、【サテライト・ウォリアー】の影が纏わりついて引きずり込もうとする。
「速攻魔法、【リミットオーバー・ドライブ】! フィールドのシンクロモンスターとシンクロモンスターのチューナーをエクストラデッキに戻して、疑似アクセルシンクロを行う!」
影に沈みかける【サテライト・ウォリアー】が光点に、【フォーミュラ・シンクロン】が光輪へと転じて一つになる。
「アルター・アクセルシンクロ! ―――彼女の想いの結晶よ、今光となって舞い降りよ。【聖珖神竜スターダスト・シフル】!」
聖珖神竜スターダスト・シフル ☆12 攻撃力4000
まばゆい光が収まると、そこには白い閃珖竜がいた。
ひゅう、と一つ紅蓮は口笛を吹く。
【シャドール・リザード】の効果を使わせた上でアクセルシンクロ、それも破壊耐性と無効効果を持つシフルだ。もし通が【エルシャドール・ネフェリム】などを出したとしても、一方的に破壊することのできるモンスター。
ふと紅蓮は偉そうな妹のことを思い出した。あちらは【コズミック・ブレイザー・ドラゴン】を出していたが、【リミットオーバー・ドライブ】を使っていたし、話が合うのではないだろうか。今度会わせてみよう、と思いつつデュエルへ集中する。口笛を吹いたことで睨んでくる千歳は気にしない。
「【聖珖神竜スターダスト・シフル】で【エルシャドール・シェキナーガ】に攻撃!」
シフルが飛翔し、太陽を背にして止まると、そこから光のブレスでもってシェキナーガを攻撃する。
ガラガラと音を立てて崩れるシェキナーガを一瞥し、通は表情を変えずに効果を使う。
「【エルシャドール・シェキナーガ】の効果発動・・・・・・墓地の【
先ほどまでは【サブテラー】の動きだったというのに、今では完全に【シャドール】だ。どちらもサーチやリクルートに優れていて共通する部分もあるので状況に合わせて選んでいるのだろう。
「ここまでだね・・・・・・ターンエンド」
影裏通
LP8000 手札4
□□□□□
□□□□リ地
□ □
□□聖■□
□□□□□
宮津柊太
LP8000 手札2
リ:シャドール・リザード
聖:聖珖神竜スターダスト・シフル
■:伏せ
モンスター地:地中界シャンバラ
通のターン。彼は眩しいくらいに輝く白竜に目を細め、それからカードを引く。
(さて、後は影裏先輩のデッキに、これを突破できるカードが入っているかどうかだな)
以前紅蓮がデュエルした時は、先ほどの柊太と同じようにチューナーを潰され、更に展開しようとして【サブテラーの妖魔】に止められ、そのまま何も出来ずに負けた。
この手のコントロールデッキは、一度突破されると立て直しが難しいのが弱点だ。しかし通の手札はドローして五枚、初期手札と同じと考えれば、動けないことはないだろう。
しかし、柊太のフィールドには破壊耐性を持ち、ターンに一度モンスター効果を止められる【聖珖神竜スターダスト・シフル】がいる。これを突破するのは【レッド・デーモン】を使う紅蓮でも難しい。
「・・・・・・俺のターンだ」
引いたカードを見て、ふっと一つ息を吐く。
「どうやら、運は俺に見方したらしい・・・・・・手札一枚をコストに・・・・・・」
その発動コストで、紅蓮は察した。多分、隣の二人も、柊太も。
「発動せよ、【超融合】!」
【聖珖神竜スターダスト・シフル】と【シャドール・リザード】とが融合し、新たなモンスターに生まれ変わる。
「融合召喚、【エルシャドール・ネフェリム】!」
エルシャドール・ネフェリム ☆8 融合 攻撃力2800
【ジェムナイト・ラズリ】が闇落ちした姿。『闇落ち』だと【ヴェルズ】っぽいので今後シャドール化することを『影落ち』と呼ぶのはどうだろうかと提案してみる。【ヴェルズ】の場合『ウイルス落ち』の方がいいのだろうか。薄い本が厚くなりそうな単語である。
「・・・・・・ネフェリムの効果でデッキから二枚目の【
巨大な人形が糸によって動かされ、その拳を伏せられていた【ジャンク・シンクロン】へ振り下ろす。
だが、これ以上展開は出来ないのか、モンスターを伏せてターンを終える。
影裏通
LP8000 手札2
□□□□□
□□ネ■□地
□ □
□□□□□
□□□□□
宮津柊太
LP8000 手札2
ネ:エルシャドール・ネフェリム
■:伏せモンスター
地:地中界シャンバラ
「僕のターン、ドロー・・・・・・」
圧倒的劣勢だった。【エルシャドール・ネフェリム】は戦闘すれば問答無用で破壊してくる。【
だが、まだ動けるだろう。紅蓮のそんな期待は、裏切られなかった。
「【ネクロイド・シンクロ】を発動、墓地の【ジャンク・シンクロン】と【ジャンク・スピーダー】を除外して、エクストラデッキから【スターダスト】シンクロモンスターをシンクロ召喚する!」
墓地で眠っていたモンスター達が光輪と光点になって浮上する。
「―――彼女の輝きを、今ここに。シンクロ召喚、【閃珖竜スターダスト】!」
閃珖竜スターダスト ☆8 シンクロ 攻撃力2500
効果は無効になっているためにただの2500打点だが、これだけでは終わらない。
「【マグネット・リバース】を発動、墓地の【アクセル・シンクロン】を特殊召喚して効果発動、デッキから【ジャンク・シンクロン】を墓地へ送ってレベルを三つ下げる。レベル2となった【アクセル・シンクロン】で【閃珖竜スターダスト】をチューニング!」
今度は正規のアクセルシンクロ。【サテライト・ウォリアー】がエクストラデッキに戻っているが、恐らく違うだろう。
「―――彼女の輝きは、曇りなき黄金の如く! アクセルシンクロ、【真閃珖竜スターダスト・クロニクル】!」
真閃珖竜スターダスト・クロニクル ☆10 シンクロ 攻撃力3000
輝きと共に飛翔する黄金の竜。登場順番も原作通りである。
「クロニクルの効果発動、墓地のシンクロモンスターを除外することで、このターン他のカードの効果を受けない!」
【閃珖竜スターダスト】のカードを取り込み、耐性を身につけるクロニクル。【ネクロイド・シンクロ】の特殊召喚はシンクロ召喚扱いのため、蘇生制限は満たしている。
「バトルだ! 【真閃珖竜スターダスト・クロニクル】で【エルシャドール・ネフェリム】に攻撃!」
ネフェリムの強制効果が発動するが、効果を受けないクロニクルがそれを弾き返しそのままブレスで粉☆砕する。
影裏通
LP8000→7800
「くっ・・・・・・だがネフェリムの効果で、墓地の【
ダメージは与えた。だがアドバンテージの差が大きくて、巻き返したとは言い難い。
「これで、ターンエンド」
影裏通
LP7800 手札3
□□□□□
□□□■□地
□ □
□□真□□
□□□□□
宮津柊太
LP8000 手札1
真:真閃珖竜スターダスト・クロニクル
■:伏せモンスター
地:地中界シャンバラ
「俺のターン・・・・・・ドロー」
「スタンバイフェイズ、クロニクルの効果を発動するよ」
除外される【聖珖神竜スターダスト・シフル】。【超融合】を発動するならこのタイミングしかないが、通に動きはない。流石に二連続で引くことは出来なかったらしい。
「・・・・・・反転召喚、【ライトロード・ハンター ライコウ】。リバース効果発動だ」
ライトロード・ハンター ライコウ ☆2 リバース 攻撃力200
ライコウがその小さな身体で勇敢に黄金竜へ吠え立てるが、両手で耳を塞いでいるため効果がないようだ。
だが本命は墓地肥やし。通は墓地へ送られた三枚のカードに、口元を歪める。
「【シャドール・ファルコン】【シャドール・ビースト】の効果を発動・・・・・・一枚ドローし、ファルコンを伏せる」
五枚になった通の手札。対し、柊太はわずか一枚だ。クロニクルを突破されれば展開し直すのは難しいだろう。
「墓地の【
サブテラーマリスの妖魔 link2 リンク 攻撃力2000
どうやら通は盤面を立て直すことにしたようだ。1ターン目と同じく妖魔の効果を発動する。
「【サブテラーマリス・バレスアッシュ】を伏せ、デッキから【シャドール・ハウンド】を墓地へ送る。ハウンドの効果、フィールドのモンスターの表示形式を変更する・・・・・・反転しろ、バレスアッシュ」
サブテラーマリス・バレスアッシュ ☆12 リバース 攻撃力3000
【シャドール・ハウンド】の効果でリバース効果は発動できないが、仮に発動出来たとしても効果はなかったのであまり関係ない。
【サブテラーマリスの妖魔】の効果で【サブテラーの導師】を手札に加えた通は、険しい顔をした柊太を見据える。
「バトルだ・・・・・・【サブテラーマリス・バレスアッシュ】で【真閃珖竜スターダスト・クロニクル】を攻撃。相打ちだ」
バレスアッシュ の かみつく こうげき !
バレスアッシュ と クロニクル は たおれた !
「クロニクルの効果発動、除外されている【閃珖竜スターダスト】を特殊召喚する!」
閃珖竜スターダスト ☆8 シンクロ 攻撃力2500
効果が復活し、完全体となって舞い戻るスターダスト。妖魔の攻撃力では足りない。
「・・・・・・メイン2、【サブテラーの導師】を通常召喚、これでターンエンドだ」
これによりフリーチェーンで柊太のモンスターを裏側に出来るようになった。
柊太は残った手札を確認し、次のドローに託そうとして、
昼休み終了五分前の予鈴が鳴り響いた。
「あ、やべっ」
「え、もうそんな時間!?」
「あ、ぇ・・・・・・?」
三者三様の反応を見せた紅蓮と鈴と千歳。フィールドでは二人がデュエルを終わらせていた。
「いやー、惜しいなー」「やっぱりコントロールデッキだと長引くよね」「まあ、このまま続けてれば影裏が勝ってただろうけどな」と感想を言い合いなごら教室へ戻っていく生徒達。紅蓮も次が移動教室だったことを思い出し、急いで教室に向かった。
そんな彼らに気付かず夢中でテーブルデュエルを続けていた雪村と五河は、揃って授業に遅刻したと言う。
簡単なキャラクター紹介⑩
影裏通
デュエルスクール クスィーゼ校 二年
二年生のデュエリスト。デュエルの成績では常にトップで、学年では五本の指に入るほど。
コミュニケーション能力が余りなく、デュエルスクールに入ったばかりの頃はそこまで強くなかった。が、授業等でデュエルを重ねる内に実力を身につけた。
基本一人で行動し、他人に話しかけられない限りほとんど口を開かない。
あまり裕福な家ではないため、奨学金で学校に通っている。
特技は裁縫。これは双子の妹達にぬいぐるみを作らされまくった結果とのこと。
身長158センチ。右目を隠すほど長い黒髪で、常に半眼。成長するだろうと大きめのサイズで買った制服が上手い具合に萌え袖になっている。
目標一万文字で書いているのですが、あんまり長くするとグダってしまうので途中で切るようにしています。まだまだ修行が足りない・・・・・・。