遊戯王 スプレッド・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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学校が突然休講になるらしく戸惑いながらも有頂天な作者です。わーい。

・・・・・・また期間が空いてしまった。


紅蓮:九話

 中間テスト。

 皆大嫌い課題テストの一つで、高校生活始まって初めての大きなテストだ。いや、学力テストとか『かっとビング・チャレンジ一年生』でお馴染みの九十九ゼミのテスト等、四月にテスト自体は腐るほどあったが、成績に関わるテストはこれが初めてである。

 

「それじゃ、実技テストを始めるよ♪」

 

 第三デュエル場に集められた紅蓮達がこれから行うのは生徒同士のデュエルだ。勝ち負けではなく、デュエルに対する姿勢やプレイング、誘発の使いどころなどで評価が決定する。筆記試験はカットされた。

 デュエル場の観客席には生徒の他に教頭や学年主任といった先生方が腕を組んだり葉巻を咥えたりしながら座っている。

 

「しかし、何故私と教頭によるエキシビションは却下されたのでしょうか・・・・・・解せませんね」

 

 そう呟くのは校長の後藤(ごどう) (まさる)。首を傾げ左の義腕を顎に当てる。白い長髪と鍛え上げられた筋肉が特徴的な彼だが、使うデッキは【自縛超神官】や【自縛神】を軸としたワンターンキルデッキ。教頭がたまったもんじゃないと辞退するのも仕方ないだろう。

 

「ハハハ・・・・・・それじゃ、今までの授業から実力が近い人同士でデュエルしてもらうよ♪ 最初はデュエル成績はトップの灰村紅蓮! 前に出てきてね」

 

「デュエル成績()、ってなんだよ()って」

 

 不満そうに顔を歪めながら、普段の真っ赤なディスクではなく授業用の古いディスクを付けた紅蓮がデュエル場に下りる。

 

「対戦相手は士道(しどう)(ほむら)だ。出てきてー♪」

 

 男性教師の声に、応!と返事して紅蓮の前に立ったのは、赤いメッシュの入った黒髪の少年だった。快活そうな顔にはデュエルが楽しみで仕方ないといった風に笑みが有る。

 

「お前とはあんまり話したことなかったよな、灰村。・・・・・・お前には、負けられない」

 

「? まぁよろしく頼むぜ、士道」

 

 焔の態度に違和感に覚えた紅蓮だったが、先程まで筆記試験(座りっぱなし)だったために待ちきれないと男性教師へ声を上げる。

 

「先生ェ! デュエル開始の宣言をしろォ!」

 

「ははぁー! デュエル開始ィ! って何やらせてくれてんの!?」

 

「「デュエルッ!」」

 

 男性教師のやっぱりオレはこういう扱いなのね、という呟きは、二人の声に掻き消えた。

 

士道焔 

LP8000

 

灰村紅蓮

LP8000

 

「俺の先攻だな。まずは【召喚士のスキル】を発動! デッキからレベル5以上の通常モンスターを手札に加えるけど、何かあるか?」

 

「ないな、好きに動いていいぜ」

 

 焔が手札に加えたのは【イグナイト・キャリバー】。新たなルールで【イグナイト】は圧倒的逆境に立たされ、それは今も変わっていない。

 

「今手札に加えたキャリバーと【イグナイト・デリンジャー】をペンデュラムスケールにセッティング! イグナイトの共通効果で二枚を破壊して、デッキから炎属性戦士族モンスター、【昇華騎士-エクスパラディン】を手札に加えて、通常召喚! 効果でデッキから【チューン・ナイト】を装備するぜ!」

 

昇華騎士-エクスパラディン ☆4 攻撃力1300→1800

 

 鼠騎士を装備したことでわずかに攻撃力を上げる焔の騎士。外見はまるで灰の人だ。炎にも関連しているのでオマージュかもしれない。どうでもいい。

 

「【チューン・ナイト】の効果で装備しているコイツを特殊召喚するぜ」

 

「ならそのタイミングで【増殖するG】を発動だ」

 

 鼠の騎士が灰の人の隣に並ぶと同時にカサカサと耳障りな音と共にゴキブリがカードとなって紅蓮の手札が収まる。観客席からは軽い悲鳴とわずかな歓喜の声が上がるが、気にしない。ドラゴン好きなデュエリストは数多くいるのだ、昆虫好きなデュエリストだっているのだろう。紅蓮は虫は嫌いではないので問題ない。

 

「う、気持ち悪ぃ・・・・・・」

 

 全然問題だった。

 

「エクスパラディンとチューン・ナイトでリンク召喚、【聖騎士の追想イゾルデ】! 効果でデッキから【イグナイト・マスケット】を手札に加えるぜ!」

 

「一枚ドロー・・・・・・」

 

 黒光りする滑らかなボディがデュエル場を照らす照明を反射し、紅蓮が僅かながら精神的ダメージを受ける。なら使うなという話だが、現環境においてほぼ必須カードなので仕方ない。

 

「イゾルデの効果、デッキから【聖剣カリバーン】を墓地へ送って、【焔聖騎士-ローラン】を特殊召喚! 更に【イグナイト・マスケット】【イグナイト・ドラグノフ】をペンデュラムスケールにセッティング、ペンデュラム召喚! 【イグナイト・キャリバー】【イグナイト・デリンジャー】!」

 

 イグナイトの紅一点と特攻隊長がフィールドへ駆け、紅蓮は二枚ドロー(精神的1000ダメージ)

 

「キャリバー、デリンジャーで更にリンク召喚! 【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】! 効果で【クロノグラフ・マジシャン】をエクストラデッキに加えるぜ! エレクトラムの更なる効果、ローランを破壊してクロノグラフを手札に! 【イグナイト】の共通効果で二枚を破壊してデッキから【復讐の女戦士ローズ】を手札に加えて、クロノグラフの効果でコイツと共に特殊召喚! エレクトラムの効果で一枚ドロー!」

 

「コッチは二枚ドローだチクショー!」

 

 十枚となった手札、その半数以上がゴキブリだと考えると自分のカードであっても嫌悪感を抱いてしまう。一応虫NGな人要にゴキブリ人間(テラフォーマーズ)に切り替えられるが、紅蓮はアレは尚ダメだった。

 

「ローズとイゾルデでリンク召喚、【水晶機巧(クリストロン)-ハリファイバー】! 効果でデッキから【アーケイン・ファイロ】を特殊召喚し、クロノグラフとシンクロ! 来い【ギガンテック・ファイター】!」

 

 【アーケイン・ファイロ】の効果で【バスター・モード】を手札に加える焔と、三枚のゴキブリにダメージを受ける紅蓮。やめて! 紅蓮のライフはもうゼロよ! な段階は通り過ぎ、『止まるんじゃねぇぞ・・・・・・』の準備は整っていた。

 

「エレクトラムとハリファイバーでリンク召喚、【豪炎の剣士】! カードを二枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 ローランの効果でしれっと手札に加えるのは【焔聖騎士-リナルド】。紅蓮は希望の花を咲かせてはいたが気付いていた。

 

 

士道焔

LP8000 手札2

 

□□■□■

□□ギ□□

 豪 □

□□□□□

□□□□□

 

灰村紅蓮

LP8000 手札14

 

豪:豪炎の剣士

ギ:ギガンテック・ファイター

 

 

「お、オレのターン、ドロー・・・・・・」

 

 まだ若干ゴキブリのダメージを引き摺っている紅蓮。焔は何となく『作戦通り』という顔をしておいた。

 

「スタンバイフェイズ、リバースカード【バスター・モード】! 熱き魂に鎧を纏え【ギガンテック・ファイター/バスター】!」

 

ギガンテック・ファイター/バスター ☆10 攻撃力3300→3800

 

 焔の墓地には現在戦士族が六体。紅蓮のモンスターの攻撃力は600下がることになる。

 

「/バスターの効果でデッキから【天融星-カイキ】と【焔聖騎士-ローラン】を墓地へ送って、カイキの効果! 自分フィールドに攻撃力が変化したレベル5以上の戦士族がいることで特殊召喚! 更に効果発動、ライフ500を払って融合できる! 俺は【豪炎の剣士】とカイキで融合! 【鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード】!」

 

士道焔

LP8000→7500

 

鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード ☆8 融合 攻撃力2700

 

 現れたのはOCG化まで長い年月のかかったモンスター。あの頃は確か【冥府の使者ゴーズ】が出たのだったか、懐かしい。某ゲームとは関係ない、はずだ。

 

「手札が多くて邪魔だな!? 【クリムゾン・リゾネーター】を特殊召喚、【風来王ワイルド・ワインド】を更に特殊召喚。更に通常召喚【レッド・リゾネーター】、効果で手札から【ヴァレット・トレーサー】を特殊召喚だ」

 

 連続して展開されるモンスター達。焔の手札には誘発の類はないらしく、動きを見せない。

 

「(【灰流うらら】を引いたのが遅かったかクソッタレ。今思えば/バスターにでも使っておくべきだったな)

トレーサーでワイルド・ワインドをチューニング、燃えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000→2100

 

 燃え上がるは紅蓮の相棒にしてエース。だがそれも青い鎧の戦士が発する重圧により力を削がれる。

 

「【レッド・リゾネーター】でスカーライトをチューニング、悪魔を焼けオレの魂! 【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】! クリムゾンの効果発動、デッキから【シンクローン・リゾネーター】【クリエイト・リゾネーター】を特殊召喚ッ! 【復活の福音】で蘇れオレの魂(スカーライト)! スカーライトにクリエイト、シンクローンをダブルチューニング、紅に染めろオレの魂【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】!」

 

スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン ☆12 シンクロ 攻撃力3500→5500→4600

 

 連続して展開されるモンスター。真紅の竜が君臨し、戦士の重圧を受けながらもそれ以上の力を宿す。

 

(これで/バスターは突破できる。だが・・・・・・)

 

 チラリと目を向けるのはギルティギア・フリード。戦闘の際自身の攻撃力を上げる効果を持ち、更に効果対象にされた場合にそれを無効にしカード一枚を破壊する効果を持つ。【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】を/バスターにぶつける以上、そちらを破壊するのは少々手間だ。

 

(しかも【/バスター】は破壊されるとシンクロ体を特殊召喚する効果を持つ・・・・・・クソ、面倒だ。)

 

 (いにしえ)のカード故に時・発動する(タイミングを逃す)効果だが、紅蓮は戦闘で破壊しようとしているため関係ない。

 【琰魔竜レッド・デーモン】で全員破壊しても良かったが、その場合【ギガンテック・ファイター】が残り、琰魔竜の攻撃力では足りなくなってしまう。

 

 だから、展開して物理で殴る。それが紅蓮の出した答えだ。

 

「【クイック・リボルブ】! デッキから【マグナヴァレット・ドラゴン】を特殊召喚し、クリムゾンとシンクロ! 来い魂の種火【レッド・ライジング・ドラゴン】! 効果で墓地の【レッド・リゾネーター】を特殊召喚!」

 

 【レッド・リゾネーター】によって【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の炎の一部が紅蓮に運ばれ、(ゴキブリによって)受けた傷を癒やす。

 

灰村紅蓮

LP8000→12600

 

 怒涛の展開。手札を与えてしまったのだから当然だが、焔は薄っすらと冷や汗を浮かべていた。

 【増殖するG】を使われても止まらないのが焔の基本スタイルだ。【イグナイト】は決して強いテーマではない。故に、中途半端な盤面ではあっさり返されてそのまま負けてしまうのだ。そのため、展開しきってしまうことが多い。

 それに、焔は止まるわけにはいかなかった。

 

「ライジングに【レッド・リゾネーター】をチューニング爆ぜろオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン】! 更に【レッド・ノヴァ】を手札から特殊召喚してチューニング、深炎より来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】

 

琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200→2100

 

 ここまでで使った手札は約半分の七枚。これ以上はリソースなどの関係上展開しない方がいいな、と紅蓮は並んだ二体の戦士を睨んだ。

 

「バトルだ。【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】で【ギガンテック・ファイター/バスター】を攻撃! 攻撃力は1000上がって5600だ!」

 

「上等、受けるぜ!」

 

 /バスターにスカーレッドが殴りかかり、その一撃であっさりと青い鎧が吹き飛ぶ。その装甲の一部が焔に降りかかりダメージ。

 

士道焔

LP8000→5700

 

「破壊された/バスターの効果発動だ! 蘇れ【ギガンテック・ファイター】!」

 

ギガンテック・ファイター ☆8 シンクロ 攻撃力2800→3800

 

 鎧が外れ、身軽になった戦士はクイクイと残るドラゴン達を挑発する。

 

「アビスの効果発動だ。ギガンテック・ファイターの効果をターン終了時まで無効にするぜ」

 

 挑発を受けたアビスが炎の渦で戦士を拘束しその力を封じる。

 

「なっ、しまった!?」

 

「バトル続行、アビスでギガンテック・ファイターを攻撃だ!」

 

 炎の檻の中で逃げ場を探すファイターをアビスが檻ごと蹴っ飛ばし、腕の刃でなぎ払う。

 

士道焔

LP5700→5300

 

「ラスト、ベリアルでギルティギア・フリードを攻撃! 相討ちしてやるよ!」

 

 ニヤリと頬を歪める紅蓮の墓地には【復活の福音】がある。ギルティギアの攻撃力は上昇しても3500、モンスターを全滅させられる。

 

「かかったな! 手札の【焔聖騎士-ローラン】の効果発動! ギルティギア・フリードを対象に、このカードを攻撃力500アップの装備カードとして装備する!」

 

 本来、ギルティギア・フリードで無効にして相手のカードを破壊するコンボだが、そうはせずに迎撃のために使った。

 ギルティギア・フリードの剣に焔が宿り、悪魔竜へと振り上げる。

 

鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード 攻撃力2700→3200→4000

 

「クソ、【復活の福音】で破壊から守るぜ・・・・・・」

 

 騎士の振るった剣は悪魔竜に打ち勝ったが、その命を刈り取る手前で障壁に阻まれた。惜しい。もうちょい頑張れ。

 

 紅蓮が渋い顔でカードを二枚伏せ、ターンを終えようとして。

 

「エンドフェイズ、ローランの効果でデッキから【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を手札に加えるぜ!」

 

「・・・・・・やっぱ入ってるよな」

 

 改めて、ターンを終えた。

 

 

士道焔

LP5300 手札2

 

□□■焔□

□□□鋼□

 □ □

□アスベ□

■□□□■

 

灰村紅蓮

LP7500 手札6

 

鋼:鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード

焔:焔聖騎士-ローラン(装備:鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード)

ス:スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン

ベ:琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル

ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス

■:伏せカード

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 これで焔の手札は三枚。内二枚はわかっているが、気を抜いていい理由にはならない。

 

「墓地の【聖剣カリバーン】を除外して、【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を特殊召喚! 更に【焔聖騎士-リナルド】を特殊召喚! 効果で墓地の【焔聖騎士-ローラン】を手札に戻す!」

 

ゴッドフェニックス・ギア・フリード ☆9 攻撃力3000

 

焔聖騎士-リナルド ☆1 チューナー 守備力200

 

 爆焔から焔騎士が現れ、付き従うようにシャルルマーニュ十二勇士が一人、リナルドが並ぶ。

 

「ローランをギルティギア・フリードを対象に発動、そしてギルティギア・フリードの効果! カリバーンを無効にして、フィールドのカードを選んで破壊する!」

 

「チッ、アビスの効果発動! 対象はギルティギア、ソイツの効果を無効にする!」

 

「チェーンしてゴッドフェニックスの効果発動! ローランを墓地へ送って、それを無効にして破壊だ!」

 

 激しいチェーン合戦の末、焔騎士の焔によって深淵の竜が破壊され、魔導騎士によって悪魔竜が再び討たれる。チェーン4程度で激しいなどと言っていては、チェーン8まで行った時にはどうなるのか。きっとべらぼうに激しいのだろう。アホか。

 

「バトル、ゴッドフェニックスでスカーレッド・ノヴァに攻撃!」

 

「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの効果発動! 自身を除外して、攻撃を無効化する!」

 

 真紅の炎すら取り込もうとする焔騎士から逃れるスカーレッド。だが、まだ攻撃は残っている。

 

「ギルティギア・フリードは、フィールドのモンスターのみを素材としていれば二回攻撃ができるぜ! 攻撃だ!」

 

「速攻魔法、【クイック・リボルブ】! デッキから【アネスヴァレット・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

 【我が身を盾に】と小柄な弾丸竜が紅蓮を守るいうに現れる(に壁にされる)が、呆気なく切り裂かれ、そのまま追撃を受けた。

 

灰村紅蓮

LP7500→4800

 

 ライフが逆転する。一見有利に見えた紅蓮だが、焔のタクティクスに押され始めていた。

 

「どうだ、灰村! 俺も、弱くないだろ!」

 

 対岸で叫ぶ焔に、そうだな、と苦い顔で返す。

 

「強ぇーよ、ビックリだ。先輩にも負けないくらい強い」

 

 紅蓮は薄々感じ取っていた。焔が自分に対してどう思っているのか。

 

「俺の戦術、一年の間では結構有名なんだぜ? でも、お前は知らなかっただろ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 どこか棘のある言葉に、紅蓮は苦笑と共に頷く。

 

「ああ、そうだな。一年にも強い奴はいるよな、そりゃ」

 

 先輩と、格上と戦うことばかりに気を取られて、もっと身近な連中を蔑ろにしていた。

 

「士道。放課後にでも、この学年で強い奴を教えてくれよ」

 

「! ああ、もちろんだ!」

 

 互いの顔に浮かぶのは、好戦的な笑み。一方はどこか下手クソで、一方は年相応の晴れ晴れとしたもの。

 

「メインフェイズ2、【ペンデュラム・パラドックス】発動だ。【イグナイト・デリンジャー】と【イグナイト・マスケット】を手札に戻してエンドフェイズ、ローランの効果で―――」

 

「悪いが【灰流うらら】だ。それ(人間関係)これ(デュエル)は別だろ?」

 

 笑みを増した紅蓮に、どこか腑に落ちない顔の焔。フィールドに【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】が帰還し、焔のターンは終わる。

 

 

士道焔

LP5300 手札3

 

□□■□□

□□ゴ鋼□

 □ □

□□ス□□

■□□□□

 

灰村紅蓮

LP4800 手札5

 

ゴ:ゴッドフェニックス・ギア・フリード

鋼:鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリード

ス:スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン

■:伏せカード

 

 

 紅蓮のターン。彼は1ターン目からずっと伏せられているカードへ目を向ける。

 

(何のカードだ? デッキ的には【イグナイト・リロード】【イグナイト・ユナイト】【イグナイト・バースト】・・・・・・いや、流石に違うか)

 

 だとすれば汎用カード、【リビングデッドの呼び声】や【戦線復帰】辺りだろうと推測し、それ以上は思考を打ち切る。

 

「ドローカード! ・・・・・・さて、どうするか」

 

 勢いよくカードを引いたものの、どう動くべきか。フリーチェーンでカードを対象に取らず破壊される、もしくはモンスターの効果を無効にされる。そして伏せカード。

 

 数秒熟考して、紅蓮は一つの答えに辿り着いた。

 

『取りあえず 殴ってみれば いいじゃない』

 

 季語は後で考える。

 

「考えるのはもうやめた! バトル、【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】で【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】に攻撃!」

 

「真正面から来た!? クットラップ発動、【アームズ・コール】! デッキから【月鏡の盾】をゴッドフェニックスに装備するぜ!」

 

「ゲッ!?」

 

 【アームズ・コール】の効果はデッキから装備カードを自分フィールドのモンスターに装備する、というもの。そして【月鏡の盾】の効果は。

 

ゴッドフェニックス・ギア・フリード 攻撃力3000→7100

 

 墓地にチューナーが増えたことで力を増していたスカーレッドの姿がゴッドフェニックスの手にした盾に映り、自らの虚像へと向けた真紅の竜の攻撃は、自身へとそのまま跳ね返ってきた。

 

灰村紅蓮

LP4800→4700

 

 カハッ、と下手に笑って、紅蓮はメインフェイズ2に入る。

 

「【竜の霊廟】を発動、デッキから【アブソルーター・ドラゴン】を墓地へ送りアブソルーターの効果、【ヴァレット・シンクロン】を手札に加え通常召喚ッ! 効果でアブソルーターを特殊召喚しシンクロ、吠えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン】!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 フィールドに紅蓮魔竜が降り立った瞬間、魔導騎士の剣に再び焔が宿る。

 

「手札の【焔聖騎士-ローラン】の効果を、ギルティギア・フリードを対象に発動! チェーンしてギルティギア・フリードの効果発動だ! 何のつもりか知らないけど、止めさせてもらうぜ!」

 

 そのまま焔剣が紅蓮魔竜を切り裂き、わずか数秒で退場する。【レッド・デーモン】で即落ち二コマとか誰得だろうか。普通に需要がありそうで怖い。

 

「【死者蘇生】発動! 蘇れ【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】! そのまま効果発動だ!」

 

「うお、マジかッ!?」

 

 スカーライトがこれまでの鬱憤を晴らすようにギルティギアへ右腕を振り抜き、背後から盾で殴ってきたゴッドフェニックスの攻撃を回避し無言の腹パン(『彼女は瑠璃ではない』)。リナルドは何もしていないのに巻き込まれた。

 

士道焔

LP5300→3800→3300

 

 【月鏡の盾】の強制効果でデッキボトムに送る焔。

 

 フィールドを焼け野原にした紅蓮も、これ以上は動けないのか何もしない。

 

「カードを伏せて、ターンエンドだ」

 

 

士道焔

LP3300 手札3

 

□□□□□

□□□□□

 □ □

□□レ□□

■■□□□

 

灰村紅蓮

LP4700 手札3

 

レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト

■:伏せカード

 

 

 ライフは再び逆転し、手札枚数は同じ。だが更地になった焔のフィールドと攻撃力3000がいる紅蓮とでは、どちらが不利かはよくわかるだろう。

 

「俺のターン! よし、【イグナイト・マスケット】と【イグナイト・デリンジャー】でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 スケールは2と7。レベル3~6のモンスターが同時に召喚可能。

 

「ペンデュラム召喚! 【イグナイト・ウージー】! エクストラデッキから【イグナイト・キャリバー】!」

 

イグナイト・ウージー ☆6 ペンデュラム 守備力2700

 

イグナイト・キャリバー ☆6 ペンデュラム 守備力2200

 

 登場したのは特攻隊長と【イグナイト・デリンジャー】のお目付役兼親衛隊長。しかし現在重要なのはどちらもレベル6であること。

 

「ウージーとキャリバーでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 【甲虫装機(インゼクター)エクサビートル】!」

 

甲虫装機(インゼクター)エクサビートル ★6 エクシーズ 攻撃力1000

 

 【甲虫装機(インゼクター)】。そのテーマ名に一部の生徒が卒倒し一部の生徒が大興奮し一部の紅蓮は「HA☆GA!?」と驚愕した。一部の紅蓮とはなんとぞや。二部の紅蓮がいるのかもしれない。

 

「エクサビートルの効果で、墓地の【ギガンテック・ファイター/バスター】を装備して、その攻撃力の半分だけステータスが上がるぜ!」

 

 だが本題はそこではない。

 

「確かエクサビートルの効果は・・・・・・」

 

「オーバーレイユニットを一つ使って、お互いのフィールドの表のカード一枚ずつを対象に、墓地へ送る!」

 

 無論対象はスカーライトとエクサビートル。だがただでやられるほど紅蓮は甘くない。

 

「リバースカード、【シンクロコール】! 墓地から【シンクローン・リゾネーター】を特殊召喚し、スカーライトにチューニング! シンクロ召喚、深炎より来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」

 

琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200

 

 そしてエクサビートルは墓地へ送られ、装備されていた/バスターは()()()()()

 

「破壊された【ギガンテック・ファイター/バスター】の効果発動! 復活だ【ギガンテック・ファイター】!」

 

ギガンテック・ファイター ☆8 攻撃力2800→3400

 

 二度あることは三度ある。それを体現するかのように復活した戦士はボクシングの構えを作ってアビスへの戦意を示す。

 

「バトルフェイズ! 【ギガンテック・ファイター】でアビスを攻撃!」

 

「アビスの効果発動、だが・・・・・・」

 

 焔の手札には()()がある。

 

「手札の【焔聖騎士-ローラン】の効果発動! ギガンテックに装備する!」

 

ギガンテック・ファイター 攻撃力3400→2800→3300

 

 上昇値はわずか500、だがそれでも届く。

 

 同胞の仇討ちだと言わんばかりに、戦士の拳が深淵竜を貫いた。

 

灰村紅蓮

LP4700→4600

 

 わずかながら削られるライフ。だが紅蓮の笑みは崩れず、その濃さを増すばかりだ。

 

「ターンエンドだぜ」

 

 

士道焔

LP3300 手札0

 

□□焔□□

□□ギ□□

 □ □

□□□□□

■□□□□

 

灰村紅蓮

LP4600 手札3

 

ギ:ギガンテック・ファイター

焔:焔聖騎士-ローラン(装備:ギガンテック・ファイター)

■:伏せカード

 

 

 アビスの効果が切れ、【ギガンテック・ファイター】の攻撃力は3900まで上昇した。

 

 紅蓮が思い付く勝ち筋はいくつかあるが、手っ取り早いのが一つ。このドローは激しく重いぜ、というヤツだ。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 カン☆コン! となればよかったのだが、彼の望んでいたカードではない。

 

(あれ、そういえばこの伏せカードって何だったっけ・・・・・・)

 

 多過ぎる手札(とゴキブリ)に酔っていたためあまり記憶にないそのカードをポチポチとディスクを操作し確認すると、それは新しく入れた(トラップ)カードだった。

 

「・・・・・・マジか」

 

 はあ、と己の迂闊さに溜め息が出る。怪訝そうにこちらを見る焔を手で制して、余った左手を頭に乗せた。

 

「【ヴァレット・シンクロン】を召喚し効果、墓地から【琰魔竜レッド・デーモン】を特殊召喚。更に【クリエイト・リゾネーター】を特殊召喚し、ヴァレットとクリエイトでダブルチューニング!」

 

 調律魔と弾丸竜が三つと一つ、計4つの炎輪となって琰魔竜を包み込む。

 

「惨禍と化せオレの魂【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】!」

 

 球体となった炎が爆ぜると、そこには腕が増え身体も大柄担った(メガシンカした)琰魔竜が。一瞬炎が遺伝子の二重螺旋のようになったのは見間違いだろうか。

 

「リバースカード、【スカーレッド・レイン】! フィールドのレベルが一番高いモンスター以外のモンスターを全て除外するぜ」

 

「なッ!」

 

 真紅の炎を身に纏った惨禍の竜が、その灼熱を空へ打ち上げ雨として降らせる。

 

 焔の戦士は、その雨に焼かれて黒こげになった。上手に焼けました!

 

「バトルだ! カラミティでダイレクトアタック!」

 

「くっ・・・・・・俺の負けだー!」

 

士道焔

LP3300→0

 

 デュエルが終わり、緊張がほどけた紅蓮が真っ先に感じたのは、羞恥心だった。

 

(あ~やらかした! この前宮津に大口叩いて説教したっつーのに、オレが周り見えてなかったとか、笑い物だ! しかも伏せカード忘れるとかアホ過ぎることやらかしたし!)

 

 頭を抱えてその場にうずくまりたい衝動を抑え、改めて焔の方を向く。彼はこちらに歩いてきた所だった。

 

「今回は負けちまったけど、次はゼッテー勝つからな」

 

「ああ、楽しみにしてるぜ。次もオレが勝つけどな」

 

 差し出された手を握りながらも、そこは譲らなかった。

 

「なんだと!? 次は俺が勝つっっつーの!」

 

「カハッ、寝言は寝て言うものだぜ士道?」

 

 ギュッとお互いの手に力が籠もる。至近距離で睨み合う二人に、呆れたように男性教師が声をかけた。

 

「はいはいそこまでー! ただでさえ長いデュエルで時間使ってるんだから、早くどきなよ♪」

 

 男性教師の声に、正気に戻った二人。とりあえず、観客席に戻ることにした。

 

(ふむ。中々いいですね、あの二人)

 

 そう義手で顎をさするのは後藤校長。彼は鋭い目つきで二人の背中を見る。

 

(灰村くんはデュエルセンスが高く、まだ磨き足りないにしても才能がある。士道くんは自分の実力がよくわかっていて、できることを最大限にやっている)

 

 さて、話が逸れるが、『デュエル甲子園』出場選手は夏休み期間などに補習(特訓)を行うのだが。その担当は、毎年後藤校長が自ら務めている。

 

「フフフ・・・・・・クフフフフ・・・・・・」

 

 顎から口元に移した義手の間から漏れる笑い声。周囲の先生方は悟られない程度に全力でドン引いていた。




簡単なキャラクター紹介⑫

士道焔
デュエルスクール クスィーゼ校 一年
【イグナイト】を使う熱血少年。しかし自分の実力などは自覚しており、ただの熱血ではなく冷静な熱血である。近年稀に見るわかりやすい矛盾。
新ルールで使いづらいどころか死体同然になった【イグナイト】を使い続け、戦士族のストラクチャーデッキでようやく実力を取り戻した。そのため紅蓮には近しいものを感じていたが彼が先輩とばかりデュエルしているため関わりを持っていなかった。
外見は赤いメッシュの入った黒髪に平均的な身長と軽めな体重。もうコイツがしゅじんこうでいいんじゃないだろうかと言いたくなるほど主人公っぽいキャラである。

また1ヶ月ほど空いてしまいました。実験とか研修とか期末考査とかで忙しかったんです。
春休み万歳!

追記:終盤の【シンクロコール】を【スカーレッド・レイン】に変更しました。
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