遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
今回は伏線をばら撒く話なので、あまり面白くないかもしれません。
放課後となり、昼休み以上の解放感に包まれた生徒達。解放感からか服を脱ぐ生徒までいるとかいないとか。尚、脱いでいるのは単に暑いからとか着替えのためとかなので全く問題ない。
さてそんな中、少し手間取りながらも荷物を纏め周囲の物に触れながら教室を出るなり駆け足で階段を上る黒髪の少女がいた。
彼女は階段を上りきると『第二国語科準備室』の札が下がった教室の扉を開ける。
「・・・・・・ぁ」
そして、まだ誰もいないことに気付き、恥ずかしいやら悲しいやらで俯く。
「いらっしゃい、鈴♪ 今日も早いね」
と、唐突に鈴の頭に手が置かれる。普通ならばセクハラなどで訴えてもいい行為だが、鈴にそんなつもりは毛頭ないので大丈夫だろう。ちなみにセクハラとはセクシャルハラスメントの略である。
「先生」
「何ボーっと立ってるの♪ 早く入りなよ」
先生、と呼ばれた彼は鈴に声をかけるなり室内へ入る。鈴はその彼の袖を心の中で言い訳しながら摘み彼に続いて歩き教室の中央にある向かい合った机と椅子にたどり着くと名残惜しいながらも手を放し席に座る。
男性教師も同じように向かい側へ腰掛け、にこやかな雰囲気で口を開く。
「それの使い勝手、どう? どこか異常ない?」
それ、というのは鈴が使っている例のゴーグルのことだ。
このゴーグルは男性教師の知り合いが開発した物であり、まだ試作品。故に、被験者が必要であり、それが鈴、という訳だ。
「ぇと、はい。前の、よりも、つ、使いやすい、です」
普段とは異なる緊張によって途切れ途切れになってしまう言葉をなんとか繋ぎ、鈴は答える。
「そっか。なら良かった♪」
その後も「最近学校はどう?」「ぃ、いつも、通り、です」「いじめとか合ってない?」「大丈夫、です」「体育の単位とか取れてる?」「筆記、で、なん、とか」などといくつか世間話に花を咲かせる二人。世間話というか、親子か親戚のおじさんの方が近い。男性教師はまだそんな歳じゃないのだが、まあ叔父はあり得そうではある。
「あ、そうそう。どうだった? 紅蓮とのデュエル」
思い出したように拳を手の平に当てて訊く男性教師。わざとらしい上に胡散臭いが、鈴はそんなことを気にせず少し考えながら言葉を紡ぐ。
「ぇ、と。真っ直ぐな、子、だと、思い、ました」
そこまで言って、一つ呼気を入れて、続ける。
「【レッド・デーモン】を、凄、い、信じて、いて・・・・・・」
彼女は見えない目を確かに男性教師へ向けて、更に続ける。
「先生みたい、だ、だと思い、ます」
意表を突かれたような顔でその言葉を受け止め切れず回避してから一周し取りに行った男性教師は、さも意外そうに瞬きを数回する。尚、ここの文章の半分に意味はない。
「え、そう? オレあんな感じ?」
あまりの驚きにかつい口調が素のものに戻ってしまう男性教師。鈴はそれを指摘することなく返す。
「ぇ? えと、はい。先生、【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】、凄い、信頼してる、から・・・・・・ち、違う、の?」
こちらも素の口調で返してしまう辺りお互い似た者同士なのかもしれない。男性教師にはまだ鈴に教えていない趣味があったりするのだがそれは割愛。
ポカンと気の抜けた顔の男性教師に対し、黙っていることから何かしてしまったのだろうかとアワアワする鈴。男性教師は数十秒経ってから「そっか・・・・・・」と声を漏らす。
「せ、先、生?」
「? どうしたの?」
恐る恐る、といった様子の上目遣いで鈴が男性教師を呼ぶと、彼は何故そんな怖がられているのかわからず首を傾げる。
「ぉ、怒って、ない?」
「・・・・・・え? 何で怒るの?」
お互い、少し会話が噛み合っていないことに気付き、鈴は理由を言う。
「だって、先生、黙っちゃった、から・・・・・・」
自分が何かしたのではないかと思った。その鈴の言葉に、男性教師は彼女と会話する上でのことを思い出し、謝る。
「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事しててさ。鈴は何も悪くないよ♪」
「良かっ、た・・・・・・」と心底安堵する鈴を見て、男性教師は困ったように肩をすくめた。
鈴は自分に、少しばかり依存している節がある、と男性教師は思っている。
だから嫌われたくないのだろうし、学校でいる時は敬語なのだろうと。
まあ、それはただの勘違いなのだが。
しばらく雑談を続け、完全下校時刻まであと一時間、という頃。
「じゃあ、そろそろ始めようか♪」
「はい・・・・・・よろしく、お願い、します」
男性教師は少し離れた場所に置いてあった厚い板のような物を運び、机の上に乗せる。
黒い板には白い線が交差しており、横に7マス、縦に5マスほど四角形が彩られていた。
「これが、こっち、で、これは・・・・・・」
鈴は例のゴーグルを取り出し、そこから出ているプラグを板に差し込む。
そう、これはテーブルデュエル用のプレイマット。それも視覚障害者向けの物で、鈴の持つゴーグルと連動してデュエルディスクを使わなくてもデュエルできるようにしたものだ。
「準備できた? それじゃ、やろうか♪」
「「デュエル」」
遊弋鈴
LP8000
男性教師
LP8000
プレイマット改めてプレイボードが先攻に選んだのは鈴。制圧寄りのデッキである彼女にとって、これは嬉しい。
「ゎ、私のターン。【螺旋のストライク・バースト】を発動して、デッキから、【オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン】を手札に加え、ます」
そのままライトペンデュラムゾーンにセットし、【オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン】をレフトペンデュラムゾーンにセッティング。セットとセッティングで使い分けたが特に理由はない。
オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン スケール8
オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン スケール0
「ペンデュラム、召喚。【オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン】、【EMオッドアイズ・ライトフェニックス】、【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】」
オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン ☆3 ペンデュラム 守備力600
EMオッドアイズ・ライトフェニックス ☆5 ペンデュラム 攻撃力2000
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 ペンデュラム 攻撃力2500
ソリッドビジョンがない故に描写がほとんどないデュエルだが、そんなこと気にせず鈴は展開を続ける。というか、気にすることができたら怖い。
「【オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン】と、【EMオッドアイズ・ライトフェニックス】をリンクマーカーに、セット、リンク召喚、です。ぇと、あった。【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】」
ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム link2 リンク 攻撃力1800
鈴がエクストラデッキをぎこちなく探し、目当ての【メタルフォーゼ】の皮を被ったペンデュラムデッキ用リンクモンスターをプレイボードに置く。今更だが『プレイボード』というネーミングに卑猥な要素は一切ない。ほとんど。多分。
「【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果で、デッキから【アストログラフ・マジシャン】をエクストラデッキに、加え、ます」
このカードは名前の部分が凹んでいるために探しやすかったのか、淀みなくサーチする鈴。しかしスリーブに入っているのでそんなことはない。
「その動き、やっぱり強いな♪」
「ぁ、えと、はい。そうです、ね」
男性教師は懐かしそうな視線を鈴の手元のカード達へ向けるが、彼女は理由がわからず戸惑うばかりである。
「【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果で、【オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン】を破壊し、ます。そ、それから・・・・・・」
「わかってるから、説明はいいよ♪」
どの順番で発動するべきかと少し混乱する鈴に、男性教師はまるで肉親であるかのような笑顔で待つ。この笑顔を他の生徒に向けることはないのだが、盲目の彼女はそれを知らない。
「は、い。【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果で【アストログラフ・マジシャン】を手札に加え、て、【オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン】の効果発動、です。デッキから【EMオッドアイズ・ディゾルヴァー】を特殊召喚、し、します」
EMオッドアイズ・ディゾルヴァー ☆8 ペンデュラム 守備力2600
今回は周りがドラゴンだけ、ということもなくぼっちではない【EMオッドアイズ・ディゾルヴァー】だが、ソリッドビジョンがない故それに気付くことはないだろう。悲しいことだ。嘘だが。
「【アストログラフ・マジシャン】の効果で、特殊召喚、して、デッキから【オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン】を手札に加え、ます」
買うと付録で漫画が付いてきそうなカードをデッキから手元に置き、危なっかしくシャッフルしてから次の処理に入る。
「【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】の効果、一枚、ドロー、します」
一連の処理が終わり、よくできましたーと頭を撫でたい衝動に駆られる男性教師。しかし学校でやってはセクハラで訴えられかねないのでこらえる。学校外ならいいのか。
「【EMオッドアイズ・ディゾルヴァー】の効果で、【アストログラフ・マジシャン】と融合し、ます。融合、召喚、【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】」
オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 融合 ☆7 守備力3000
【オッドアイズ】モンスター+ペンデュラムモンスターという緩い縛りで融合できる
「ターン、エンド、です」
遊弋鈴
LP8000 手札1
ア□□□フ
□ペボ□□
□ エ
□□□□□
□□□□□
男性教師
LP8000 手札5
エ:ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム
ボ:オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン
ペ:オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
フ:オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン
ア:オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン
視界の【オッドアイズ】率の高さに若干「うへぇ」となりながら男性教師はカードに引く。
「【輝光竜セイファート】を召喚して効果発動♪」
「だ、ダメ、です! 【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】の効果、発動」
【オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン】をデッキに戻す鈴と出したカードをすぐさま墓地へ置く男性教師。男女二人が密室ですることが
「じゃ、【帝王の烈旋】を発動するよ♪ 効果で【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】をリリース、アドバンス召喚【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】」
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】を踏み台に正当進化を遂げる赤龍。進化に当たり寝返ったように感じるが気のせいだろう。
「【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】の効果で、【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】を破壊だ」
ソリッドビジョンがあれば【オッドアイズ】同士の
遊弋鈴
LP8000→5500
「っ、【オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン】の、効果を発動、します! 墓地から【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】を特殊召喚、です」
オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン ☆7 守備力3000
軽快なSEと共にライフが減少するのに構わず鈴は効果を使う。
「効果で、【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を手札に戻、します」
「これは困った。という訳で【暗黒竜コラプサーペント】を特殊召喚♪」
暗黒竜コラプサーペント ☆4 攻撃力1800
手札に戻った【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を気にせず【輝光竜セイファート】を除外して新たな龍を呼び出す男性教師。エースモンスターがやられたのだからもう少し悲しんでもいいかもしれないが成人男性の悲しむ姿なんて誰も得しないので悲しまなくていい。
「【暗黒竜コラプサーペント】でリンク召喚、【守護竜ピスティ】」
守護竜ピスティ link1 攻撃力1000
規制のかかりそうな【守護竜】の一枚だが別にこのカードではなく【ストライカー・ドラゴン】等でも変わらない。
「【暗黒竜コラプサーペント】の効果で【輝白竜ワイバースター】を手札に加えて、そのまま特殊召喚♪」
輝白竜ワイバースター ☆4 攻撃力1700
除外される【暗黒竜コラプサーペント】。ゲームから取り除くカードは全て盤外へ置かれるので帰る時などに忘れそうである。教師なのだからそんなヘマはしないと思うが彼に限ってはあり
「【
オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000
バウンスされてから1ターンも経たずに舞い戻る赤龍。効果で狙うのは同じく【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】。このカードの無効効果は名称を指定した1ターンに一度の効果であるため、使うことはできない。
遊弋鈴
LP5500→3000
戦闘を介さずにライフを半分以上削られた事実に鈴は驚愕と焦りを覚える。が、抵抗する手立てもないためどうしようもない。
「バトル、【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】で【ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム】を攻撃♪」
遊弋鈴
LP3000→1800
ライフはかなり少ないが残った。これで、次のターンに【オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン】を出せれば、まだ勝機はある。鈴のその考えは、しかし男性教師の言葉によって打ち消される。
「【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】の効果発動♪ 戦闘で相手モンスターを破壊したから、手札か墓地からレベル5以上のモンスターを特殊召喚できるよ」
「・・・・・・ぁ」
嵐征竜-テンペスト ☆7 攻撃力2400
影が薄いためすっかり忘れていた効果。それにより男性教師の最後の手札が場に置かれる。
「じゃ、ダイレクト・アタックだ」
遊弋鈴
LP1800→0
ワンターンキル。男性教師の手札が良かったのもあるが、【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】の効果が裏目に出てしまった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・えーと、鈴? 鈴さん?」
呆然としてしまって声も発さない鈴、それに対して何も言わない彼女に怒らせてしまったかとビビる教師。表情が読み取れない、ということによる弊害が起きていた。
「ぁ、ごめん、なさい。ちょっと、ボーっと、して、て」
「なら良かった。・・・・・・まだ時間はあるけど、そろそろ帰ろうか」
男性教師の声に我に返った鈴が謝罪すると、男性教師は気にしないでいいとでも言うようにヒラヒラと手を振りながらプレイボードを片付けようとする。
「ぁ・・・・・・」
鈴はまだ彼といたい思いからか声を漏らすが、男性教師の耳には入らなかった様で自身のカードを纏め始めていた。
鈴もまたカードを集めてデッキケースに仕舞うと、それを見て男性教師がプレイボードを棚に立てかける。
「ん? あ、そうだ。そう言えばコレ、試してって言われてたっけ」
棚の近くに置いてあった紙袋に気付き、それを手に取って中身を確認した男性教師は思い出したように呟く。
「先生、そ、れは?」
音で何かを見つけたのは把握している鈴だが、それが何なのかはわからないために尋ねる。
「新型のゴーグル・・・・・・昨日届いて、忘れてたみたい」
試してみる? と紙袋からソレを取りだし訊く彼に、鈴は考える。
自分の使うゴーグルの新型ならば被験者たる自分は着けるべきなのだろう。しかし使うか訊くということは、急ぎではなさそうだ。だが、それよりも、彼と一緒にいる時間が少しでも増えるのであれば―――
「使、い、ます」
頷いた彼女に男性教師はソレを手渡しながら「気を付けてね」と念押しするように言う。
「今までとはかなり違うらしいから。気持ち悪くなったりしたら、すぐ言って」
彼に似つかわしくない真剣な、声に、鈴は疑問を覚えながらもソレを着ける。
鈴の持っている物よりも重く大きいソレを取り付け、コードをデュエルディスクに接続する。
「えーと、何々? 『電源を入れて、カードをモンスターカードゾーンに置いてください』、だってさ」
取扱説明書を読んでいるらしい男性教師の言うままに操作し、先程仕舞ったカードの内一枚をおもむろに取り出すと、ディスクに置く。
「・・・・・・ぅ、あ、え?」
視界、と言うべきか、脳裏に映る
しかし、近くに表示された名前は、読むことができる。
「ぉ、【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】・・・・・・?」
そこまで読み上げて、鈴は自分の足が急になくなったような感覚に襲われる。
「鈴!?」
背中に何かが回される感覚。右手にある衣類の感触。どうやら自分は倒れたらしい、と鈴は朧気に理解する。
どうやら男性教師が支えてくれているらしい。見えていた赤龍も消えている。
「やっぱり、負担が大きいのか・・・・・・ケガとかない?」
顔のすぐ近くから聞こえる男性教師の声に、抱きかかえられていることに気付いた鈴。自覚できるほど熱くなっていく頬を見られないように男性教師のいる方向とは逆へ顔を向け、頷く。きっと耳まで真っ赤になっているだろう。実際はゴーグルと前髪のせいでよく見えていないのだが、冷静ではない今の鈴はそこまで考えられない。
「ぁ、あの、もう、立て、」
「へ? あ、ゴメン、鈴!」
取り敢えずこの状況をなんとかしようと鈴が立とうとすると、男性教師は彼女を気遣いながら手を離す。それを残念に思うこの気持ちは抑えられないものかと鈴は自分を恥じたが、それが男性教師に伝わる訳もない。
「・・・・・・じゃ、帰ろうか」
「ぁ、はい・・・・・・さ、さよなら、先生」
ゴーグルを返し、そのまま部屋を出る鈴。
それを見送ってから、男性教師は荷物を纏め始めた。
ーーーーーーーーーー
『クスィーゼ』の郊外にある、少し古い
シャツの上から白衣を着たその男の他に客はおらず、彼とマスターの店内には哀愁が漂っている。
白衣の男がグラスをカウンターに置いたところで、バーの扉が開かれる。
「いやー、ゴメンゴメン♪ 帰ろうとしたら主任に捕まって残業してた」
入るなり白衣の男の隣に座る黒髪の青年。彼がマスターに白衣の男の飲んでいるものと同じものを
「久し振りだな、こうして顔を合わせるの」
「そうだな。ずっとチャットとかだったし」
過去を懐かしむ様子の二人。顔の合わせる、と言っているが、お互い見ているのはカウンターの奥に並んだ無数の酒類なので顔を合わせてはいなかったりする。
「アレ、どうだ? ちゃんと作動したか?」
「ああ、動いたけど、負担が強いみたいだから、あのままは難しそう」
アレ、という指示語だけで何のことか察したらしい青年が苦笑しながら答えると、彼の前にグラスが置かれる。
「まあ、そうだろうな。それに、コストもバカにならねぇし、アレを商売に使う気はねぇよ」
グラスを傾けワインを煽る彼に、白衣の男は特に表情を変化させない。
「・・・・・・プハッ。そっか。なら今までのを売るの?」
「ああ。量産の目処が立ったから、来年には発売できるだろうな」
とはいえ、店頭販売はできねぇが、と続ける彼に、男性教師はからかうような口調で言う。
「変わったねえ、君。二十年くらい前の君に見せてあげたいくらい♪」
ニヤニヤと口元を笑みで染める青年に、白衣の男は横目でジト目という器用なことをして、目線を前に戻す。
「別に構わねぇよ。前は前、今は今だ。以前の俺を悔いたことはねぇし、今の俺を恥じることもねぇ」
そう断言する彼に、青年は眩しそうに目を細めながら呟く。
「そういうところは変わらないなぁ♪」
まあな、と返す彼にまた苦笑を作りながら、彼はグラスを傾ける。
この後、青年が財布を忘れていたことが発覚し、白衣の男に罵られながら金を借りたそうな。
簡単なキャラ紹介②
遊弋鈴
デュエルスクール クスィーゼ校 二年
【オッドアイズ】のカード群を主軸にデュエルする盲目の少女。
目が不自由な人でもデュエルができることを目的として作られているデュエルディスクの試作品、その被験者。ついでにデュエルディスクも小柄な彼女に合わせて軽い物になっている。
目を隠すほど長い前髪と、腰まである長い黒髪が特徴的。髪とは真逆で身長は150cmほど、体重は(この文章は螺旋のストライクバーストされました)。要は合法ロリ。触れれば壊れそう、という言葉が似合うだろうか。
ロリコン疑惑のかかる男性教師とは過去に何かあったらしく、その伝手でデュエルディスクを入手したとか。