遊戯王 スプレッド・ストーリーズ   作:柏田 雪貴

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お久しぶりです、作者です。
私用で書く暇がありませんでした。


紅蓮:二話

 鈴とのデュエルから三日後の木曜日。

 

 寝坊しかけて妹に叩き起こされて寝不足気味な紅蓮は、うつらうつらしながら数学の授業を受けていた。

 普段はそこそこ真面目に授業を受けているのだが、やはりドレッドルート算やコンマイ語の授業と比べて数学は彼の中で優先度が低いらしい。まあ、生粋のデュエル馬鹿、ということだろう。

 

 だがしかし、居眠りなんてものを教師が許すはずもなく。

 スカン、と出席簿がうつ伏せになっていた紅蓮の後頭部を叩く。

 

「・・・・・・(いて)ぇ」

 

「お前が寝てるのが悪い。それともなんだ? 俺の授業はそんなにつまらないのか?」

 

 呻くように声を漏らした紅蓮に対し、冷ややかな目線を向けるのは【戦士ダイ・グレファー】によく似た顔の男性教師。どう見ても体育会系だが、数学の教師である。

 

 顔を上げた紅蓮の目が見たのは黒板に書かれた実数、有理数、無理数などをわかりやすく纏めた表。そして周りの生徒は全員起きている。そこから推察するにこの教師の授業は決してつまらなくはないのだろう。

 だが、寝ぼけている彼はそこまで考えても、口から出す言葉にまでは頭が回らなかったらしい。

 

「寝ていたので、つまらないか面白いかわかりません」

 

「そうかそうか。灰村、お前後で補習な?」

 

 教室に溢れる笑い声を耳にしながら、紅蓮は再び意識を手放した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 昼休みとなり、紅蓮はとある部活の部室へと出向いた。

 この三日で彼はこの学校の強いデュエリストのことを訊いて回っていた。外見や態度などから(なか)ばカツアゲかいじめの様だったことは言うまでもないが、デュエリストたる者、その程度では動じない。故に、特に問題になっていない。それでいいのか。

 

 『遊戯部』の札の下がった扉をノックなしに開き、紅蓮は入室する。

 

 中にはトランプ、オセロ、チェス、将棋、囲碁などの有名なゲーム盤や『プラ/シド危機一髪』、『カプセルモンスター』、『サウンド・ピエロ』などの誰が知っているのかわからないような玩具などが置いてあり、室内では4、5人の生徒がゲームを繰り広げていた。対人ゲームは基本一対一なので人数が5人だった場合は一人あぶれていることになる。4人であることを祈りたい。

 

 紅蓮の入室に気付いた生徒の内の一人がゲームの手を止めて立ち上がり紅蓮に話しかける。これでもしただお花摘みに行くだけだったりしたら紅蓮は大恥なのだが、そんなことはなかった。

 

「いらっしゃい、君が灰村くんでいいのかな?」

 

「ああ。ってことは、アンタが華道(かどう) 雪村(ゆきむら)でいいんだな?」

 

 にこやかなスマイルで対応するその生徒が頷くと、紅蓮は「カハッ」と例の笑いを一つ。にこやかでないスマイルが逆にあるのかと訊きたいが、冷たい笑みなどがそれに該当するのだろうか。

 

「まったく、挑戦状なんて貰ったのは初めてだよ。しかも顔すら知らない生徒から」

 

 茶髪の彼は呆れたように溜め息ともつかないものを零す。紅蓮はその態度に不服そうだが、異常な行動をとっているのは彼なので残当である。ちなみに残当というのは『残念だが当たり前』の略であり特に残念でもないためこの使い方は間違っている。

 

「悪かったな、他に思いつかなかったんだよ。アンタとデュエルする方法」

 

 ばつが悪そうにする紅蓮を面白く思ったのか、クスクスと小さく笑った雪村はごめんごめんと謝りながら笑いを止めない。

 

「何なんだよ」

 

「いや、なんでもないよ。さ、デュエルするんでしょ? 早くしないと昼休み終わっちゃうよ」

 

 怪訝そうに顔を顰める紅蓮だったが、つい三日前にそれで授業に遅れているので、言及せずにディスクを構える。

 

「おっと、ここでか・・・・・・」

 

「ダメだったか?」

 

 場所を変えるつもりだった雪村は少し面食らったが、場所でデュエルの結果が変わるわけではない。乱数で多少変わる可能性もなくはないが、その話を持ち出すとこんがらがるので省く。省けてねえじゃねえか。

 

「それじゃ、始めよう」

 

「「デュエルッ!」」

 

華道雪村

LP8000

 

灰村紅蓮

LP8000

 

 先攻となった雪村は手札の5枚を見てその笑みを濃くする。つまり彼は紅蓮が部室に入ったときからずっと笑みを浮かべておりずっとニヤニヤしている。少し変えるだけでこうもキモさが増すのか。

 

「魔法カード、【増援】を発動。デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える」

 

 ということは戦士族デッキ、有名所だと【HERO】や【カオス・ソルジャー】、【六武衆】、最近強化された【聖騎士】などだろうかと当たりを付ける紅蓮だが、【終末の騎士】や【V・HEROヴァイオン】を初動としたソリティアデッキ(独りよがりのエンタメ)などもあり得るのでここまでの考察はほぼ無駄である。

 

「サーチするのは【花札衛(カーディアン)-松-】。そのまま通常召喚するよ」

 

花札衛(カーディアン)-松- ☆1 攻撃力100

 

 現れたのは花札の松をモチーフにしたモンスター。ただの薄いオブジェかと思いきや戦士族だったらしい。まあ、『竜』や『ドラゴン』と(ファイアウォール・ドラゴン)名前に付いているのに(虚空海竜リヴァイエール)ドラゴン族でも海竜族(機械竜パワー・ツール)でも幻竜族でもない(合神竜ティマイオス)モンスター(黒曜岩竜)もいるので、デュエルモンスターズの種族は当てにならないのかもしれない。具体例(ルビ)が多いな。

 

「【花札衛(カーディアン)-松-】の効果、カードを一枚ドローして公開する。それが【花札衛(カーディアン)】以外だったら墓地へ送る」

 

 つまりランダム制のあるドロー効果。専用デッキでなければ(おおよ)そ成功しないであろう効果に、紅蓮は雪村のデッキが【花札衛(カーディアン)】だと察する。むしろこれでわからなかったら莫迦(バカ)である。

 

「なら【エフェクト・ヴェーラー】の効果発動だ。手札から捨てて、そのモンスターの効果を無効にするぜ」

 

 いつもの性別不詳っ子が【花札衛(カーディアン)-松】の周りを飛び回り、トンボ取りよろしく目を回させる。【花札衛(カーディアン)】モンスター達のどこに目があるんだろうか。

 

「うーん、なら使いたくなかったけど【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】の効果発動。カードをドローして公開し、それが【花札衛(カーディアン)】だったらこのカードを特殊召喚する。違った場合はどちらも墓地に行くよ」

 

 使いたくなかった、というのが引っかかり紅蓮はデュエルディスクを操作して【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】の効果を確認する。

 

花札衛(カーディアン)の攻撃力を1000上げる効果もあるのか・・・・・・)

 

 名称指定ターン1もないそのテキストに、紅蓮は少し驚く。

 

「デッキトップは【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】、特殊召喚だ」

 

花札衛(カーディアン)-桜に幕- ☆3 特殊召喚 攻撃力2000

 

 【黒魔族のカーテン】と桜というミスマッチな組み合わせの花札がフィールドに浮かぶ。暗闇だったならホラー案件待ったなしだろう。

 

「次だ。【花札衛(カーディアン)-松-】をリリースして【花札衛(カーディアン)-松に鶴-】!」

 

花札衛(カーディアン)-松に鶴- ☆1 攻撃力2000

 

 【花札衛(カーディアン)-松-】に【クレーン・クレーン】が落書きされただけにしか見えない紅蓮は、攻撃力が二十倍にもなっていることが不思議でたまらない。みすゞ。

 

「【花札衛(カーディアン)-松に鶴-】の効果。カードをドローして公開し、【花札衛《カーディアン》】だったら特殊召喚できる。違ったら墓地へ送る」

 

 そうしてドローしたのは【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】。特殊召喚される。

 

花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶- ☆6 チューナー 守備力1000

 

  三体で並び、ガシャンガシャンと連結する【花札衛(カーディアン)】達。その姿はさながら、とここまで書いたが特に比喩を思いつかなかったのでそのまま放置する。おい。

 

「【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】の効果、一枚ドローして公開し、【花札衛(カーディアン)】だったら相手のデッキトップ三枚を確認し、デッキの上か下に置く。違ったら墓地へ送る。ドロー!」

 

 引いたカードは【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】。効果が適用され、デュエルディスクが紅蓮のデッキを読み取り、データを雪村の元へと送る。

 

「んー、なら二番目以外全部デッキ下かな」

 

「そんなに悪いカードだったのか、コレ・・・・・・」

 

 指示通りデッキをいじる紅蓮は、次に引くカードが何なのか、今から嫌になってくる。

 

「それじゃ行こうか。【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】はシンクロ素材となる時、全てのモンスターをレベル2として扱うことができる。【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】で【花札衛(カーディアン)-松-】【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】をチューニング! シンクロ召喚、レベル6【花札衛(カーディアン)-月花見-】!」

 

花札衛(カーディアン)-月花見- ☆6 シンクロ チューナー 守備力2000

 

 塵も積もれば山となるとは言うが、真逆(まさか)花札が集まって花魁になるとは思っていなかった紅蓮。驚き桃の木山椒の木である。死語か。

 

「【花札衛(カーディアン)-月花見-】の効果。カードを一枚ドローして公開する。それが【花札衛(カーディアン)】だったら特殊召喚できる」

 

 なるほど他と同じだなと紅蓮は一安心したが、『違ったら墓地へ送る』という言葉が続かないことに違和感を覚え単純なドロー効果だと気付く。

 

「そして、次のターンのドローフェイズをスキップする」

 

「だ、だよな。デメリットあるよな」

 

 もしデメリットがなければ一時期界隈を賑わせた【No.60 刻不知(ときしらず)のデュガレス】の様に紅蓮も知っていただろう。非チューナーを二体要求するとは言え、デメリットなしのドロー効果は破格である。

 

「ははは、それはそうだよ。じゃあドロー」

 

 紅蓮の反応が面白かったのか雪村は一頻(ひとしき)り笑うと、カードを引く。

 

「引いたのは【札再生】。【花札衛(カーディアン)】じゃないからそのまま手札に加えるよ」

 

 現在雪村の手札は恐ろしいことに五枚。内三枚は【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】と【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】【札再生】と解っているため、警戒するべきカードは残りの二枚である。

 

「それじゃあ、はっちゃけようか! 【シンクロキャンセル】を発動!」

 

 そのカードの発動に、観戦していた遊戯部の部員全員が歓声を上げた。

 

「うお、何だ!?」

 

「ここからは僕のステージだ! 【シンクロキャンセル】の効果で【花札衛(カーディアン)-月花見-】のシンクロを解除する!」

 

 逆再生の容量で光の輪と光点に分解され、三枚の花札へと戻る。身体の仕組みはどうなっているのだろうか。モンスターなので常識が通じないのは常識であった。常識とは。

 

花札衛(カーディアン)-松に鶴- ☆1 攻撃力2000

 

花札衛(カーディアン)-桜に幕- ☆3 攻撃力2000

 

花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶- ☆6 チューナー 守備力1000

 

 はっちゃける、と雪村は言っていたがこれのどこがはっちゃけてがいるのだろうか。紅蓮の疑問は尤もだが、【花札衛(カーディアン)】モンスター達のテキストを読み直せば意味がわかるだろう。

 

「特殊召喚された【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】と【花札衛(カーディアン)-松に鶴-】の効果を発動! もう解るよね?」

 

「ッ、そういうことか!」

 

 ふふふ、と笑う雪村の言葉で状況を理解した紅蓮は声を上げる。

 

 【花札衛(カーディアン)】モンスターの効果によって更にドローでき、展開もできる。その上、もう一度【花札衛(カーディアン)-月花見-】をシンクロ召喚し効果を使うことも可能なのだ。『次のターンのドローフェイズをスキップする』というデメリットも、重複してしまえばそこまで気にならない。

 

「ドロー! 【花札衛(カーディアン)-芒-】! 君のデッキトップを確認、一番上以外デッキ下! 更にドロー! 引いたのは【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】! 効果で特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-萩に猪- ☆7 守備力1000

 

 【ボアソルジャー】の描かれた花札が現れる。アンデットのようにスキャンすれば動き出すかと思ったが、それはアンデット違いだ。

 

「【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】の効果発動! ドローして公開し、それが【花札衛(カーディアン)】だったら手札に加えて相手モンスター一体を破壊する。違ったら墓地へ送る」

 

「モンスター除去もあるのかよ」

 

 手札を増やすだけでなく、除去も行う優秀な【花札衛(カーディアン)】である。まだ姿を見せていないが【花札衛(カーディアン)-紅葉に鹿-】という魔法・罠除去もいるため、ドローに成功さえすれば【花札衛(カーディアン)】はかなり強いのだ。

 

「ドロー! 引いたのは【花札衛(カーディアン)-柳-】、手札に加える」

 

 盤面にモンスターが増えているにも関わらず、雪村の手札は増えて六枚。普通のデッキからすれば異常である。

 とは言え、これは紅蓮のデッキ構成によるものも大きい。彼のデッキは【レッド・デーモン】を出すことを重視しているので、手札誘発は【エフェクト・ヴェーラー】や【緊急テレポート】で出せる【幽鬼うさぎ】のみである。【灰流うらら】を入れたい所だが、残念なことに枠が足りない。

 要するに、手札誘発を入れてないのが悪い。これぞ現代遊戯王。

 

「【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】で【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】【花札衛(カーディアン)-松に鶴-】を再度チューニング! シンクロ召喚【花札衛(カーディアン)-月花見-】!」

 

花札衛(カーディアン)-月花見- ☆6 シンクロ チューナー 守備力2000

 

 まだ二度しか見ていないはずなのに感じるこの拒否感はなんだろうか。【原子生命態ニビル】は一目で拒否感を覚えたのでそれよりマシではあるが。

 

「効果発動、一枚ドロー! 引いたのは【花札衛(カーディアン)-桐-】、手札に加える」

 

 紅蓮は【花札衛(カーディアン)-五光-】しか知らなかったために侮っていたが、ブン回った【花札衛(カーディアン)】はこうも動くものなのか。雪村は先攻にも関わらず、もう手札は七枚である。

 

「そして【札再生】を発動、墓地の【花札衛(カーディアン)】一枚を手札に戻し、手札から【花札衛(カーディアン)】モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる。僕は【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を手札に戻して【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】を特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰- ☆12 攻撃力2000

 

パンプ効果持ち(【花札衛-桜に幕-】)が手札に二枚かよ・・・・・・!」

 

 【鳳凰】の描かれた花札や召喚条件を無視したことよりも、彼の関心はそこにあった。【オネスト】の様に戦闘相手の攻撃力を得る効果ではないにしろ、厄介ではある。

 まあ、戦闘時の効果なので【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】や【琰魔竜レッド・デーモン】などで破壊すればいいのだが。

 

「【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】の効果! 一枚ドローして、それが【花札衛(カーディアン)】なら特殊召喚できる。違ったら墓地へ送る」

 

 止めたいのは山々だが、前述の通り紅蓮に止める手段はない。

 

「ドロー! 引いたのは【花積み】、残念ながら墓地送りだね」

 

 ドローを失敗したことに少しホッとする紅蓮。外野は残念そうにテンションを下げているが、紅蓮ならすればこれ以上モンスターを増やされるのは御免である。

 

「まだだよ。フィールドにレベル7以下【花札衛(カーディアン)】がいることで手札から【花札衛(カーディアン)-芒-】を特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-芒- ☆8 守備力100

 

 花魁の後ろで三枚合体する【花札衛(カーディアン)】達。合体と言ってもただくっついているだけでそんな効果や召喚方法はない。

 

「【花札衛(カーディアン)-芒-】の効果、手札の【花札衛(カーディアン)】を好きな枚数デッキに戻して、その枚数分ドローする」

 

「マジか・・・・・・」

 

 つまり、一枚を除いて公開されていた手札が入れ替えられるということだ。デュエルモンスターズにおいて手札の公開というのは次にどう動くかを晒すようなものなので、それを行う【花札衛(カーディアン)】の欠点を補うカードだと言える。

 

「手札の【花札衛(カーディアン)-桐-】と【花札衛(カーディアン)-柳-】をデッキに戻して二枚ドロー!」

 

 展開に手札を使って、残りは五枚。それでも盤面には四体のモンスターがおり、とても先攻とは思えない。まあ運が悪ければ【花札衛(カーディアン)】モンスターのドローを成功できずにモンスター二体手札0でターンエンド、というのも十分にあり得たので、全てのデュエルでこれができるワケではない。

 

「じゃあ仕上げだ。【花札衛(カーディアン)-月花見-】で【花札衛(カーディアン)-桐に鳳凰-】【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】【花札衛(カーディアン)-芒-】をチューニング! シンクロ召喚【花札衛(カーディアン)-雨四光-】!」

 

花札衛(カーディアン)-雨四光- ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 三枚の花札を花魁が取り込み、傘を構えた司祭のようなモンスターへと転じる。武器が傘にも関わらず攻撃力が【青眼の白龍】並なのだから意味がわからない。

 

「僕はこれでターンエンド。さあ、君のターンだ」

 

 

華道雪村

LP8000 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 雨 □

□□□□□

□□□□□

 

灰村紅蓮

LP8000 手札4

 

雨:花札衛(カーディアン)-雨四光-

 

 

 紅蓮は後攻なのに自分の方が手札が少ないこの状況に頭を痛めながらカードを引く。

 

「オレのターン、ドロー」

 

「相手がドローフェイズにドローしたことで、【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の効果発動! 相手に1500ダメージを与える!」

 

 【花札衛(カーディアン)-雨四光-】が傘を回すと針の様な物が射出され、紅蓮にダメージを与える。

 

灰村紅蓮

LP8000→6500

 

 傘で1500ダメージということはつまり本体の攻撃力は1500ということで傘と本体のどちらが本体だかわからなくなりそうである。

 

()ってえな」

 

 自身にダメージを与えたモンスターのテキストをディスクで読みながら、紅蓮は頭を回転させる。

 

 【花札衛(カーディアン)-雨四光-】がいる限り、【花札衛(カーディアン)】は効果対象にならず、【花札衛(カーディアン)】以外の効果を受けない。

 対象にならない効果はまだしも、破壊されない効果は大変マズい。【レッド・デーモン】は相手モンスターを破壊しながら自身で攻撃するテーマ。その上、【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】は【花札衛(カーディアン)】が戦闘する際に攻撃力を1000アップする効果がある。

 

(戦闘で、実質攻撃力5000を倒す、か・・・・・・)

 

 【セイヴァー・デモン・ドラゴン】では超えられない。残念ながら対象を取る効果であるため、【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の攻撃力を吸収することができない。

 【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】もダメだ。フィールドでの効果を無効にした所で、【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】は手札で発動する。

 

(なら、久しぶりに出番だな)

 

 その為の前準備が必要だ。だが、それを惜しむ紅蓮ではない。

 

「【サイキック・リフレクター】を召喚、効果でデッキから【バスター・ビースト】を手札に加える」

 

サイキック・リフレクター ☆1 チューナー 守備力0

 

 呼び出されたのはいつもの展開の要(過労死枠)。紅蓮は【バスター・ビースト】の効果を発動し、デッキから【バスター・モード】を手札に加える。

 

「【サイキック・リフレクター】の効果で手札の【バスター・モード】を見せびらかして墓地の【バスター・ビースト】を特殊召喚!」

 

「これ、見なければ特殊召喚できないのかな?」

 

「ならオレも【花札衛(カーディアン)】でドローしたカードを見ない」

 

「【バスター・モード】だね、確認したよ」

 

バスター・ビースト ☆4→7 守備力1200

 

 流れるようなボケは冷ややかな紅蓮の言葉によって切り捨てられた。

 

「【サイキック・リフレクター】で【バスター・ビースト】をチューニング! 吠えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン】!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 紅蓮の炎と共にフィールドに降り立つ赤い悪魔。素レモンなのは効果を使わないからである。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

華道雪村

LP8000 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 雨 レ

□□□□□

□□■□■

 

灰村紅蓮

LP6500 手札3

 

雨:花札衛(カーディアン)-雨四光-

レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン

■:伏せカード

 

 

「なら僕のターン、ドローフェイズはスキップされる」

 

 【花札衛(カーディアン)-雨四光-】には相手エンドフェイズに次のドローフェイズをスキップするか自身の効果を相手スタンバイフェイズまで無効にする効果があるが、当然前者なので省いた。

 

 攻撃表示の【レッド・デーモンズ・ドラゴン】を見ながら、雪村は紅蓮の狙いが何なのか考える。

 

(【レッド・デーモンズ・ドラゴン】の攻撃力は3000、【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を使わないと倒せない)

 

 【花札衛(カーディアン)-五光-】を出せれば【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を使わずに倒せるが、それでは【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の効果ダメージを与えられない。

 

(どう考えても、【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を使わせるのが目的、だよね)

 

 このままターンを終えても問題ないが、【レッド・デーモンズ・ドラゴン】から【魔王超龍 ベエルゼウス】でも出てきたら面倒だ。だが召喚権を使わずにターンを終えた所を見るに、恐らく事故だろう。

 

 ならば。

 

「僕は何もせずターンエンドだ」

 

 

華道雪村

LP8000 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 雨 レ

□□□□□

□□■□■

 

灰村紅蓮

LP6500 手札3

 

雨:花札衛(カーディアン)-雨四光-

レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン

■:伏せカード

 

 

 紅蓮は【レッド・デーモンズ・ドラゴン】を破壊されなかったことに安堵しながら、カードを引く。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

「【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の効果発動!」

 

灰村紅蓮

LP6500→5000

 

 また針的なサムシングによってライフを減らされるが、そんなことは気にせず今引いたカードを発動する。

 

「【強欲で貪欲な壺】! デッキトップ十枚を除外して二枚ドロー!」

 

 新たに手札を得ると、紅蓮は「カハッ」と乾いた笑い声のようなものを零す。

 

「いよっしゃ来たァ! 【シンクローン・リゾネーター】と【クリエイト・リゾネーター】を特殊召喚!」

 

シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100

 

クリエイト・リゾネーター ☆3 チューナー 守備力600

 

 現れたのは二体の調律魔。【レッド・デーモンズ・ドラゴン】の周囲を旋回し、炎のリングに姿を変える。

 

「行くぜ! 【シンクローン・リゾネーター】と【クリエイト・リゾネーター】で、【レッド・デーモンズ・ドラゴン】をダブルチューニング!」

 

 脳内がアドレナリンで溢れ、紅蓮のテンションは最高潮に達する。

 

「シンクロ召喚! 燃えろ、燃えろ、燃えろ! 熱く、激しく、(くれない)に染め上げろ! オレの魂! 【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】!!」

 

スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン ☆12 シンクロ 攻撃力3500

 

 4つの炎の輪を取り込み、(あか)い炎を撒き散らしながら紅蓮魔竜は天に力強く咆哮する。紅なのか紅蓮なのかハッキリして欲しい所だ。

 

「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の攻撃力は、オレの墓地のチューナーの数だけアップする! 墓地にチューナーは四体、よって2000アップ!」

 

スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力3500→5500

 

 【エフェクト・ヴェーラー】【サイキック・リフレクター】【シンクローン・リゾネーター】【クリエイト・リゾネーター】の力を炎に宿し、【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】は力を増す。

 

「攻撃力、5500・・・・・・」

 

 最近はインフレ(ダークフルード)のせいで攻撃力の感覚が麻痺している方も多いが、十分に高い攻撃力である。というかあっちがおかしい。

 

「バトルだ、【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】で【花札衛(カーディアン)-雨四光-】を攻撃!」

 

 火球を作り出し、それを殴って【花札衛(カーディアン)-雨四光-】にバーニングソウル。傘もろとも粉☆砕した。

 

華道雪村

LP8000→5500

 

 一気にライフを削られ、小さく声を漏らす雪村。

 

(【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を使わなかった? 次の展開札を確保するためか)

 

 【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を含め、【花札衛(カーディアン)】モンスターは名称指定ターン1が付いていない。そのため、【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】の効果を2回使って大量展開することもできるのだ。無論、成功すればの話だが。

 

「ターンエンドだ」

 

 

華道雪村

LP5500 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 □ ス

□□□□□

□□■□■

 

灰村紅蓮

LP5000 手札3

 

ス:スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン

■:伏せカード

 

 

 エンドフェイズを迎える前に【花札衛(カーディアン)-雨四光-】が破壊されているため、このターン雪村はドローすることができる。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 これで手札は六枚。内二枚は【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】だが、それだけでも十分な初動である。

 

「魔法カード【超こいこい】を発動! まだまだはっちゃけるよ!」

 

 そのカードの発動に、部員達が更に盛り上がる。

 【超こいこい】はカードを三枚ドローし、その中の【花札衛(カーディアン)】を全て特殊召喚できるカード。しかし、特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、レベルも2になる。その上、【花札衛(カーディアン)】以外のカードは裏側で除外されその枚数×1000ライフを失う、正にギャンブルカードだ。

 

「それじゃあ、ドローの時間だ! ドロー! 引いたのは【花札衛(カーディアン)-桐-】、特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-桐- ☆12→2 守備力100

 

「二枚目、ドロー! 【花札衛(カーディアン)-紅葉に鹿-】! 特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-紅葉に鹿- ☆10→2 守備力1000

 

「三枚目、ドロー! ・・・・・・【花合わせ】、裏側で除外する」

 

華道雪村

LP5500→4500

 

 急に少し冷めてしまった雪村と部員達。気を取り直して、雪村は墓地からカードを探す。

 

「あ、あった。【花積み】の効果発動! 除外することで、墓地の【花札衛(カーディアン)】モンスターを手札に加えるよ」

 

「・・・・・・あ」

 

 1ターン目のことを思い出し、紅蓮は冷や汗を流す。

 

「回収するのは【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】。そのまま【花札衛(カーディアン)-桐-】をリリースして特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-萩に猪- ☆7 守備力1000

 

 効果はドローに成功すれば相手モンスターを破壊する効果。どこまで行ってもギャンブルである。

 

「ドロー! 引いたのは【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】! 【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】を破壊!」

 

「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】は相手の効果で破壊されない!」

 

「あ、そうなの」

 

 花札に殴打される【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】。破壊されないとは言え、なんともシュールだ。

 

「【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】の効果! 一枚ドローして、それが【花札衛(カーディアン)】なら自身を特殊召喚できる! ドロー!」

 

 本日何度目かわからない効果ドロー。数えてみれば十六回目くらいだった。

 

「引いたのは【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】! 特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-桜に幕- ☆3 守備力2000

 

 雪村はドローした【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】を【花札衛(カーディアン)-紅葉に鹿-】をリリースして特殊召喚する。

 

花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶- ☆6 守備力1000

 

 特殊召喚されたのはチューナーにして【魔王ディアボロス】よろしくデッキトップをチラ見する【花札衛(カーディアン)】。あれが【漆黒の魔王ディアボロス】に魔改造されたのだから驚きである。

 

「【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】の効果! ドロー! ・・・・・・引いたのは【札再生】、墓地へ送られる」

 

 本日何度目かわからない効果ドロー。数えてみれば十六回目くらいだった。

 デッキトップを操作されなかったことに安心する紅蓮だったが、雪村はまだ終わらないと効果を発動する。

 

「【札再生】の効果! デッキ上五枚を確認し、魔法・罠を一枚手札に加えて残りをデッキトップに戻す!」

 

 つまり、デッキトップ操作(イカサマ)と手札補充である。ギャンブルに失敗したと言うのに、ただでは転ばないとはこういうことだろうか。違う。

 

「僕は【花合わせ】を手札に加えるよ。そして【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】で【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】をチューニング! シンクロ召喚、【花札衛(カーディアン)-月花見-】!」

 

花札衛(カーディアン)-月花見- ☆6 シンクロ チューナー 守備力2000

 

 再び現れる花魁。三度目のその姿はもう見慣れたものである。嘘だ。紅蓮はうんざりした顔であり、部員達は盛り上がっている。

 

「もっとはっちゃけようか! 【花札衛(カーディアン)-月花見-】の効果、ドロー! 引いたのは【シンクロ・キャンセル】、そのまま発動!」

 

 【札再生】(イカサマ)によって確定していたドローカード。そこからの展開を想像できた紅蓮は諦めの境地に立った。

 

花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶- ☆6 チューナー 守備力1000

 

花札衛(カーディアン)-萩に猪- ☆7 守備力1000

 

花札衛(カーディアン)-桜に幕- ☆3 守備力2000

 

 並んだ【花札衛(カーディアン)】達は迫ってくる壁である。ご家庭の壁にこんな絵柄があったなら驚きだが。

 

「【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】と【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】の効果発動! ドロー! 【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】! 更にドロー! 【花札衛(カーディアン)-柳に小野道風-】!」

 

 【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】の効果によって紅蓮のデッキトップが三枚とも底に沈む。これでデッキボトム七枚を雪村は把握していることとなり紅蓮のデッキが一周した暁には次にドローするカードを全て言い当てるという嫌がらせができるであろう。と思ったが何度かシャッフルしているので下三枚のみである。そしてデッキが一周する頃には忘れている可能性が高いのでどちらにせよそんな嫌がらせは難易度ルナティックである。

 

「場にレベル10以下の【花札衛(カーディアン)】が存在しているので【花札衛(カーディアン)-柳-】を、レベル7以下も存在しているので【花札衛(カーディアン)-芒-】を特殊召喚!」

 

花札衛(カーディアン)-柳- ☆11 守備力100

 

花札衛(カーディアン)-芒- ☆8 守備力100

 

 五体並んだ【花札衛(カーディアン)】達。正しく圧巻の壁である。注意したいのだが圧巻の壁であってアッカンベーではない。よく似ているので間違える可能性が高い。

 

「【花札衛(カーディアン)-柳-】の効果、墓地の【花札衛(カーディアン)】をデッキに戻して一枚ドローする。【花札衛(カーディアン)-桐-】を戻してドロー!」

 

 またドローかと紅蓮は辟易とするが、部員達のテンションは上がる一方である。

 

「それじゃあ行こうか! 【花札衛(カーディアン)-牡丹に蝶-】で【花札衛(カーディアン)-芒-】【花札衛(カーディアン)-柳-】【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】【花札衛(カーディアン)-萩に猪-】をチューニング!」

 

 【花札衛(カーディアン)】達が連結されたままリングと星へと姿を変える。こちらも中々シュールだ。今日はシュールの特売日だろうか。ストレイミングであったなら尚更シュールだっだろう。シュールがゲシュタルト崩壊である。

 

「シンクロ召喚! レベル10【花札衛(カーディアン)-五光-】!」

 

花札衛(カーディアン)-五光- ☆10 シンクロ 攻撃力5000

 

 全ての【花札衛(カーディアン)】が吹き荒れる演出と共に【花札衛(カーディアン)】のエースモンスターが登場する。【花札衛(カーディアン)-雨四光-】のウィキに『名実ともに【花札衛(カーディアン)】のエースというべきカードである。』と書かれていることを指摘してはいけない。

 

「バトルだ、【花札衛(カーディアン)-五光-】で【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】を攻撃!」

 

「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の効果、攻撃宣言時に自身を除外して、攻撃を無効にする!」

 

「無駄だよ! 【花札衛(カーディアン)-五光-】の効果、【花札衛(カーディアン)】と戦闘する相手モンスターの効果は、バトルフェイズ中無効化される! そして手札から【花札衛(カーディアン)-桜に幕-】を二枚捨てて、【花札衛(カーディアン)-五光-】の攻撃力をアップする!」

 

スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力5500→3500

 

花札衛(カーディアン)-五光- 攻撃力5000→6000→7000

 

 除外へ逃げようとする【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】を【花札衛(カーディアン)】達が邪魔し、【花札衛(カーディアン)-五光-】がその刀でもって花札ごと紅蓮魔竜を叩き斬る。

 

灰村紅蓮

LP5000→1500

 

 大きく差のついた二人のライフに観客の部員達は更にテンションを上げる。彼らはテンションのリミッターが天元突破しているのかもしれない。

 

「ターンエンド。ふう、だいぶ削ったね」

 

 額の汗を拭う動作をしながら雪村はターンを終える。

 

 

華道雪村

LP4500 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 五 □

□□□□□

□□■□■

 

灰村紅蓮

LP1500 手札3

 

五:花札衛(カーディアン)-五光-

■:伏せカード

 

 

 切り札の応酬によってかなり削られた紅蓮のライフポイント。そして恐ろしいまでに多い文字数。これも全て【花札衛(カーディアン)】というテーマと脱線のせいだ。

 

「オレのターン、ドロー! 【ワン・フォー・ワン】を発動、手札一枚をコストにデッキからレベル1モンスターを特殊召喚できる!」

 

「【花札衛(カーディアン)-五光-】の効果発動、1ターンに一度、相手が魔法・罠を発動した時にそれを無効化できる!」

 

 コストのみを受け取り発動しない【ワン・フォー・ワン】。これが詐欺の手口である。否定し切れないのが何とも心苦しい。

 

「よし、使ったな? 【リビングデッドの呼び声】を発動、蘇れオレの魂!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 【ワン・フォー・ワン】通していてもいなくても、結果は同じ。紅蓮の魂(レッド・デーモン)が蘇り、そして最初のターンでデッキトップに置かれたカードがコストになっていた。

 

「【金華猫】を通常召喚、効果で墓地から【救世竜セイヴァー・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

金華猫 ☆1 スピリット 攻撃力400

 

救世竜セイヴァー・ドラゴン ☆1 チューナー 守備力0

 

 鴉が謳い、黒猫がニャンと啼くと、救世するべく小竜が召喚された。おい待てどこから来た鴉。

 

「行くぜ、【救世竜セイヴァー・ドラゴン】で【金華猫】と【レッド・デーモンズ・ドラゴン】をチューニング! 救世(ぐぜ)を成せオレの魂【セイヴァー・デモン・ドラゴン】!」

 

セイヴァー・デモン・ドラゴン ☆10 シンクロ 攻撃力4000

 

 救世竜の力と余計な黒猫の力を取り込み、紅蓮魔竜は救世主となる。AGEかな。

 

「【セイヴァー・デモン・ドラゴン】の効果発動! 相手モンスター一体を対象に、効果を無効にしてその攻撃力を得る!」

 

セイヴァー・デモン・ドラゴン 攻撃力4000→9000

 

 紅の水晶に閉じ込められ、何かの見世物の如く絵になるオブジェとなる【花札衛(カーディアン)-五光-】。水晶の中では呼吸はできないはずだが少し穴でも空いているのだろうか。もし空いているとしたら色々と台無しである。

 

「バトル、【セイヴァー・デモン・ドラゴン】で【花札衛(カーディアン)-五光-】に攻撃!」

 

「っ、ライフで受ける!」

 

 雪村は赤シンボル(水晶となった【花札衛-五光-】)で攻撃を受けた。いつからこの小説はバトスピになったのだろうか。

 

華道雪村

LP4500→500

 

 鉄壁に入ったライフだが、ここからどうなるのかを、雪村はもう悟っている。

 

「【花札衛(カーディアン)-五光-】が場を離れたことで、エクストラデッキから自身以外【花札衛(カーディアン)】シンクロモンスターを特殊召喚できる」

 

花札衛(カーディアン)-雨四光- ☆8 シンクロ 守備力3000

 

「エンドフェイズ、【セイヴァー・デモン・ドラゴン】はエクストラデッキに戻る」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 

華道雪村

LP500 手札5

 

□□□□□

□□□□□

 雨 レ

□□□□□

□□リ□■

 

灰村紅蓮

LP1500 手札1

 

雨:花札衛(カーディアン)-雨四光-

レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン

リ:リビングデッドの呼び声

■:伏せカード

 

 

 手札を殆ど使い果たした紅蓮。追い込んだ様で、実はもう勝敗は決していたりする。

 

「僕のターン。ターンエンド」

 

 ドローフェイズは【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の効果で放棄している。

 そして、紅蓮のターン。

 

「・・・・・・ッ、あー、負けかぁ」

 

 カードを引き、【花札衛(カーディアン)-雨四光-】の効果ダメージを受ける。

 

灰村紅蓮

LP1500→0

 

 つまらない幕引きに不服そうな雪村と、普段あまり使わない部類の(【レッド・デーモン】)を出せて少し満足気な紅蓮。デュエルの結果とは対照的である。

 

「んー、まあそこそこ面白かったしいっか。じゃあ皆、かいさーん!」

 

 腕時計で時間を確認し、部員達に声をかける雪村。紅蓮も部室の時計を探して見ると、かなりマズい時間だった。例によって予鈴は仕事をしていない。

 

「げっ、何やってんだよ予鈴!」

 

 急いで部室 を出て教室へ走る紅蓮。

 

 時間的にはぎりぎり間に合う瀬戸際だったが、走ったことによって教師に注意された紅蓮は、結局授業に遅れたとか。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 五時間目の『不動性ソリティア理論』と六時間目有名なデュエル学者が考察した『ヴァイ論』についての講義をしっかりと聞いた紅蓮は、帰り道を一人で歩く。

 

(負けちまったな、今日・・・・・・)

 

 授業などのデュエルで同学年に負けたことはない。だが、やはり年上相手だと勝率が悪い。

 

(これじゃあダメだな。もっと鍛えねえと)

 

 『デュエル甲子園』に出場するのに学年は問わない。つまり、上級生とのデュエルは頻繁に起こるということだ。

 

 まだ強さが足りない。この学校の上級生にも勝てる様にならなければ、デュエル甲子園での優勝などできない。

 

 パン、と軽く頬を張ると、紅蓮は少し沈んでいた気持ちを切り替える。

 

 まだ時間はある。デュエル甲子園の開催は二学期だ、ならばそれまでに己を磨けばいい。

 

(まずはデッキを見直す所からだな。それから、他のテーマとかも知っておいた方がいいだろうし)

 

 やることは決まった。なら後は行動するだけだ。

 

 紅蓮は心持ちを新たに、少し寄り道してから帰ることにした。




簡単なキャラ紹介③

華道雪村
デュエルスクール クスィーゼ校 三年
遊戯部部長にして面白いことが大好きであり、逆につまらないことを嫌う。【花札衛(カーディアン)】を使うのはデッキ構築もデュエルも面白いからである。つまりは頭のネジを数本失っている。
茶髪にピアスとどことなくチャラい見た目だが別に陽キャというワケではなく、何となくそうしているだけである。そして多分今回以降あまり出番はない。
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