遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
私用で書く暇がありませんでした。
鈴とのデュエルから三日後の木曜日。
寝坊しかけて妹に叩き起こされて寝不足気味な紅蓮は、うつらうつらしながら数学の授業を受けていた。
普段はそこそこ真面目に授業を受けているのだが、やはりドレッドルート算やコンマイ語の授業と比べて数学は彼の中で優先度が低いらしい。まあ、生粋のデュエル馬鹿、ということだろう。
だがしかし、居眠りなんてものを教師が許すはずもなく。
スカン、と出席簿がうつ伏せになっていた紅蓮の後頭部を叩く。
「・・・・・・
「お前が寝てるのが悪い。それともなんだ? 俺の授業はそんなにつまらないのか?」
呻くように声を漏らした紅蓮に対し、冷ややかな目線を向けるのは【戦士ダイ・グレファー】によく似た顔の男性教師。どう見ても体育会系だが、数学の教師である。
顔を上げた紅蓮の目が見たのは黒板に書かれた実数、有理数、無理数などをわかりやすく纏めた表。そして周りの生徒は全員起きている。そこから推察するにこの教師の授業は決してつまらなくはないのだろう。
だが、寝ぼけている彼はそこまで考えても、口から出す言葉にまでは頭が回らなかったらしい。
「寝ていたので、つまらないか面白いかわかりません」
「そうかそうか。灰村、お前後で補習な?」
教室に溢れる笑い声を耳にしながら、紅蓮は再び意識を手放した。
ーーーーーーーーーー
昼休みとなり、紅蓮はとある部活の部室へと出向いた。
この三日で彼はこの学校の強いデュエリストのことを訊いて回っていた。外見や態度などから
『遊戯部』の札の下がった扉をノックなしに開き、紅蓮は入室する。
中にはトランプ、オセロ、チェス、将棋、囲碁などの有名なゲーム盤や『プラ/シド危機一髪』、『カプセルモンスター』、『サウンド・ピエロ』などの誰が知っているのかわからないような玩具などが置いてあり、室内では4、5人の生徒がゲームを繰り広げていた。対人ゲームは基本一対一なので人数が5人だった場合は一人あぶれていることになる。4人であることを祈りたい。
紅蓮の入室に気付いた生徒の内の一人がゲームの手を止めて立ち上がり紅蓮に話しかける。これでもしただお花摘みに行くだけだったりしたら紅蓮は大恥なのだが、そんなことはなかった。
「いらっしゃい、君が灰村くんでいいのかな?」
「ああ。ってことは、アンタが
にこやかなスマイルで対応するその生徒が頷くと、紅蓮は「カハッ」と例の笑いを一つ。にこやかでないスマイルが逆にあるのかと訊きたいが、冷たい笑みなどがそれに該当するのだろうか。
「まったく、挑戦状なんて貰ったのは初めてだよ。しかも顔すら知らない生徒から」
茶髪の彼は呆れたように溜め息ともつかないものを零す。紅蓮はその態度に不服そうだが、異常な行動をとっているのは彼なので残当である。ちなみに残当というのは『残念だが当たり前』の略であり特に残念でもないためこの使い方は間違っている。
「悪かったな、他に思いつかなかったんだよ。アンタとデュエルする方法」
ばつが悪そうにする紅蓮を面白く思ったのか、クスクスと小さく笑った雪村はごめんごめんと謝りながら笑いを止めない。
「何なんだよ」
「いや、なんでもないよ。さ、デュエルするんでしょ? 早くしないと昼休み終わっちゃうよ」
怪訝そうに顔を顰める紅蓮だったが、つい三日前にそれで授業に遅れているので、言及せずにディスクを構える。
「おっと、ここでか・・・・・・」
「ダメだったか?」
場所を変えるつもりだった雪村は少し面食らったが、場所でデュエルの結果が変わるわけではない。乱数で多少変わる可能性もなくはないが、その話を持ち出すとこんがらがるので省く。省けてねえじゃねえか。
「それじゃ、始めよう」
「「デュエルッ!」」
華道雪村
LP8000
灰村紅蓮
LP8000
先攻となった雪村は手札の5枚を見てその笑みを濃くする。つまり彼は紅蓮が部室に入ったときからずっと笑みを浮かべておりずっとニヤニヤしている。少し変えるだけでこうもキモさが増すのか。
「魔法カード、【増援】を発動。デッキからレベル4以下の戦士族モンスターを手札に加える」
ということは戦士族デッキ、有名所だと【HERO】や【カオス・ソルジャー】、【六武衆】、最近強化された【聖騎士】などだろうかと当たりを付ける紅蓮だが、【終末の騎士】や【V・HEROヴァイオン】を初動とした
「サーチするのは【
現れたのは花札の松をモチーフにしたモンスター。ただの薄いオブジェかと思いきや戦士族だったらしい。まあ、
「【
つまりランダム制のあるドロー効果。専用デッキでなければ
「なら【エフェクト・ヴェーラー】の効果発動だ。手札から捨てて、そのモンスターの効果を無効にするぜ」
いつもの性別不詳っ子が【
「うーん、なら使いたくなかったけど【
使いたくなかった、というのが引っかかり紅蓮はデュエルディスクを操作して【
(
名称指定ターン1もないそのテキストに、紅蓮は少し驚く。
「デッキトップは【
【黒魔族のカーテン】と桜というミスマッチな組み合わせの花札がフィールドに浮かぶ。暗闇だったならホラー案件待ったなしだろう。
「次だ。【
【
「【
そうしてドローしたのは【
三体で並び、ガシャンガシャンと連結する【
「【
引いたカードは【
「んー、なら二番目以外全部デッキ下かな」
「そんなに悪いカードだったのか、コレ・・・・・・」
指示通りデッキをいじる紅蓮は、次に引くカードが何なのか、今から嫌になってくる。
「それじゃ行こうか。【
塵も積もれば山となるとは言うが、
「【
なるほど他と同じだなと紅蓮は一安心したが、『違ったら墓地へ送る』という言葉が続かないことに違和感を覚え単純なドロー効果だと気付く。
「そして、次のターンのドローフェイズをスキップする」
「だ、だよな。デメリットあるよな」
もしデメリットがなければ一時期界隈を賑わせた【No.60
「ははは、それはそうだよ。じゃあドロー」
紅蓮の反応が面白かったのか雪村は
「引いたのは【札再生】。【
現在雪村の手札は恐ろしいことに五枚。内三枚は【
「それじゃあ、はっちゃけようか! 【シンクロキャンセル】を発動!」
そのカードの発動に、観戦していた遊戯部の部員全員が歓声を上げた。
「うお、何だ!?」
「ここからは僕のステージだ! 【シンクロキャンセル】の効果で【
逆再生の容量で光の輪と光点に分解され、三枚の花札へと戻る。身体の仕組みはどうなっているのだろうか。モンスターなので常識が通じないのは常識であった。常識とは。
はっちゃける、と雪村は言っていたがこれのどこがはっちゃけてがいるのだろうか。紅蓮の疑問は尤もだが、【
「特殊召喚された【
「ッ、そういうことか!」
ふふふ、と笑う雪村の言葉で状況を理解した紅蓮は声を上げる。
【
「ドロー! 【
【ボアソルジャー】の描かれた花札が現れる。アンデットのようにスキャンすれば動き出すかと思ったが、それはアンデット違いだ。
「【
「モンスター除去もあるのかよ」
手札を増やすだけでなく、除去も行う優秀な【
「ドロー! 引いたのは【
盤面にモンスターが増えているにも関わらず、雪村の手札は増えて六枚。普通のデッキからすれば異常である。
とは言え、これは紅蓮のデッキ構成によるものも大きい。彼のデッキは【レッド・デーモン】を出すことを重視しているので、手札誘発は【エフェクト・ヴェーラー】や【緊急テレポート】で出せる【幽鬼うさぎ】のみである。【灰流うらら】を入れたい所だが、残念なことに枠が足りない。
要するに、手札誘発を入れてないのが悪い。これぞ現代遊戯王。
「【
まだ二度しか見ていないはずなのに感じるこの拒否感はなんだろうか。【原子生命態ニビル】は一目で拒否感を覚えたのでそれよりマシではあるが。
「効果発動、一枚ドロー! 引いたのは【
紅蓮は【
「そして【札再生】を発動、墓地の【
「
【鳳凰】の描かれた花札や召喚条件を無視したことよりも、彼の関心はそこにあった。【オネスト】の様に戦闘相手の攻撃力を得る効果ではないにしろ、厄介ではある。
まあ、戦闘時の効果なので【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】や【琰魔竜レッド・デーモン】などで破壊すればいいのだが。
「【
止めたいのは山々だが、前述の通り紅蓮に止める手段はない。
「ドロー! 引いたのは【花積み】、残念ながら墓地送りだね」
ドローを失敗したことに少しホッとする紅蓮。外野は残念そうにテンションを下げているが、紅蓮ならすればこれ以上モンスターを増やされるのは御免である。
「まだだよ。フィールドにレベル7以下【
花魁の後ろで三枚合体する【
「【
「マジか・・・・・・」
つまり、一枚を除いて公開されていた手札が入れ替えられるということだ。デュエルモンスターズにおいて手札の公開というのは次にどう動くかを晒すようなものなので、それを行う【
「手札の【
展開に手札を使って、残りは五枚。それでも盤面には四体のモンスターがおり、とても先攻とは思えない。まあ運が悪ければ【
「じゃあ仕上げだ。【
三枚の花札を花魁が取り込み、傘を構えた司祭のようなモンスターへと転じる。武器が傘にも関わらず攻撃力が【青眼の白龍】並なのだから意味がわからない。
「僕はこれでターンエンド。さあ、君のターンだ」
華道雪村
LP8000 手札5
□□□□□
□□□□□
雨 □
□□□□□
□□□□□
灰村紅蓮
LP8000 手札4
雨:
紅蓮は後攻なのに自分の方が手札が少ないこの状況に頭を痛めながらカードを引く。
「オレのターン、ドロー」
「相手がドローフェイズにドローしたことで、【
【
灰村紅蓮
LP8000→6500
傘で1500ダメージということはつまり本体の攻撃力は1500ということで傘と本体のどちらが本体だかわからなくなりそうである。
「
自身にダメージを与えたモンスターのテキストをディスクで読みながら、紅蓮は頭を回転させる。
【
対象にならない効果はまだしも、破壊されない効果は大変マズい。【レッド・デーモン】は相手モンスターを破壊しながら自身で攻撃するテーマ。その上、【
(戦闘で、実質攻撃力5000を倒す、か・・・・・・)
【セイヴァー・デモン・ドラゴン】では超えられない。残念ながら対象を取る効果であるため、【
【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】もダメだ。フィールドでの効果を無効にした所で、【
(なら、久しぶりに出番だな)
その為の前準備が必要だ。だが、それを惜しむ紅蓮ではない。
「【サイキック・リフレクター】を召喚、効果でデッキから【バスター・ビースト】を手札に加える」
サイキック・リフレクター ☆1 チューナー 守備力0
呼び出されたのはいつもの
「【サイキック・リフレクター】の効果で手札の【バスター・モード】を見せびらかして墓地の【バスター・ビースト】を特殊召喚!」
「これ、見なければ特殊召喚できないのかな?」
「ならオレも【
「【バスター・モード】だね、確認したよ」
バスター・ビースト ☆4→7 守備力1200
流れるようなボケは冷ややかな紅蓮の言葉によって切り捨てられた。
「【サイキック・リフレクター】で【バスター・ビースト】をチューニング! 吠えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
紅蓮の炎と共にフィールドに降り立つ赤い悪魔。素レモンなのは効果を使わないからである。
「カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」
華道雪村
LP8000 手札5
□□□□□
□□□□□
雨 レ
□□□□□
□□■□■
灰村紅蓮
LP6500 手札3
雨:
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン
■:伏せカード
「なら僕のターン、ドローフェイズはスキップされる」
【
攻撃表示の【レッド・デーモンズ・ドラゴン】を見ながら、雪村は紅蓮の狙いが何なのか考える。
(【レッド・デーモンズ・ドラゴン】の攻撃力は3000、【
【
(どう考えても、【
このままターンを終えても問題ないが、【レッド・デーモンズ・ドラゴン】から【魔王超龍 ベエルゼウス】でも出てきたら面倒だ。だが召喚権を使わずにターンを終えた所を見るに、恐らく事故だろう。
ならば。
「僕は何もせずターンエンドだ」
華道雪村
LP8000 手札5
□□□□□
□□□□□
雨 レ
□□□□□
□□■□■
灰村紅蓮
LP6500 手札3
雨:
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン
■:伏せカード
紅蓮は【レッド・デーモンズ・ドラゴン】を破壊されなかったことに安堵しながら、カードを引く。
「オレのターン、ドロー!」
「【
灰村紅蓮
LP6500→5000
また針的なサムシングによってライフを減らされるが、そんなことは気にせず今引いたカードを発動する。
「【強欲で貪欲な壺】! デッキトップ十枚を除外して二枚ドロー!」
新たに手札を得ると、紅蓮は「カハッ」と乾いた笑い声のようなものを零す。
「いよっしゃ来たァ! 【シンクローン・リゾネーター】と【クリエイト・リゾネーター】を特殊召喚!」
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
クリエイト・リゾネーター ☆3 チューナー 守備力600
現れたのは二体の調律魔。【レッド・デーモンズ・ドラゴン】の周囲を旋回し、炎のリングに姿を変える。
「行くぜ! 【シンクローン・リゾネーター】と【クリエイト・リゾネーター】で、【レッド・デーモンズ・ドラゴン】をダブルチューニング!」
脳内がアドレナリンで溢れ、紅蓮のテンションは最高潮に達する。
「シンクロ召喚! 燃えろ、燃えろ、燃えろ! 熱く、激しく、
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン ☆12 シンクロ 攻撃力3500
4つの炎の輪を取り込み、
「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の攻撃力は、オレの墓地のチューナーの数だけアップする! 墓地にチューナーは四体、よって2000アップ!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力3500→5500
【エフェクト・ヴェーラー】【サイキック・リフレクター】【シンクローン・リゾネーター】【クリエイト・リゾネーター】の力を炎に宿し、【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】は力を増す。
「攻撃力、5500・・・・・・」
最近は
「バトルだ、【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】で【
火球を作り出し、それを殴って【
華道雪村
LP8000→5500
一気にライフを削られ、小さく声を漏らす雪村。
(【
【
「ターンエンドだ」
華道雪村
LP5500 手札5
□□□□□
□□□□□
□ ス
□□□□□
□□■□■
灰村紅蓮
LP5000 手札3
ス:スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン
■:伏せカード
エンドフェイズを迎える前に【
「僕のターン、ドロー!」
これで手札は六枚。内二枚は【
「魔法カード【超こいこい】を発動! まだまだはっちゃけるよ!」
そのカードの発動に、部員達が更に盛り上がる。
【超こいこい】はカードを三枚ドローし、その中の【
「それじゃあ、ドローの時間だ! ドロー! 引いたのは【
「二枚目、ドロー! 【
「三枚目、ドロー! ・・・・・・【花合わせ】、裏側で除外する」
華道雪村
LP5500→4500
急に少し冷めてしまった雪村と部員達。気を取り直して、雪村は墓地からカードを探す。
「あ、あった。【花積み】の効果発動! 除外することで、墓地の【
「・・・・・・あ」
1ターン目のことを思い出し、紅蓮は冷や汗を流す。
「回収するのは【
効果はドローに成功すれば相手モンスターを破壊する効果。どこまで行ってもギャンブルである。
「ドロー! 引いたのは【
「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】は相手の効果で破壊されない!」
「あ、そうなの」
花札に殴打される【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】。破壊されないとは言え、なんともシュールだ。
「【
本日何度目かわからない効果ドロー。数えてみれば十六回目くらいだった。
「引いたのは【
雪村はドローした【
特殊召喚されたのはチューナーにして【魔王ディアボロス】よろしくデッキトップをチラ見する【
「【
本日何度目かわからない効果ドロー。数えてみれば十六回目くらいだった。
デッキトップを操作されなかったことに安心する紅蓮だったが、雪村はまだ終わらないと効果を発動する。
「【札再生】の効果! デッキ上五枚を確認し、魔法・罠を一枚手札に加えて残りをデッキトップに戻す!」
つまり、
「僕は【花合わせ】を手札に加えるよ。そして【
再び現れる花魁。三度目のその姿はもう見慣れたものである。嘘だ。紅蓮はうんざりした顔であり、部員達は盛り上がっている。
「もっとはっちゃけようか! 【
並んだ【
「【
【
「場にレベル10以下の【
五体並んだ【
「【
またドローかと紅蓮は辟易とするが、部員達のテンションは上がる一方である。
「それじゃあ行こうか! 【
【
「シンクロ召喚! レベル10【
全ての【
「バトルだ、【
「【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の効果、攻撃宣言時に自身を除外して、攻撃を無効にする!」
「無駄だよ! 【
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力5500→3500
除外へ逃げようとする【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】を【
灰村紅蓮
LP5000→1500
大きく差のついた二人のライフに観客の部員達は更にテンションを上げる。彼らはテンションのリミッターが天元突破しているのかもしれない。
「ターンエンド。ふう、だいぶ削ったね」
額の汗を拭う動作をしながら雪村はターンを終える。
華道雪村
LP4500 手札5
□□□□□
□□□□□
五 □
□□□□□
□□■□■
灰村紅蓮
LP1500 手札3
五:
■:伏せカード
切り札の応酬によってかなり削られた紅蓮のライフポイント。そして恐ろしいまでに多い文字数。これも全て【
「オレのターン、ドロー! 【ワン・フォー・ワン】を発動、手札一枚をコストにデッキからレベル1モンスターを特殊召喚できる!」
「【
コストのみを受け取り発動しない【ワン・フォー・ワン】。これが詐欺の手口である。否定し切れないのが何とも心苦しい。
「よし、使ったな? 【リビングデッドの呼び声】を発動、蘇れオレの魂!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
【ワン・フォー・ワン】通していてもいなくても、結果は同じ。
「【金華猫】を通常召喚、効果で墓地から【救世竜セイヴァー・ドラゴン】を特殊召喚!」
金華猫 ☆1 スピリット 攻撃力400
救世竜セイヴァー・ドラゴン ☆1 チューナー 守備力0
鴉が謳い、黒猫がニャンと啼くと、救世するべく小竜が召喚された。おい待てどこから来た鴉。
「行くぜ、【救世竜セイヴァー・ドラゴン】で【金華猫】と【レッド・デーモンズ・ドラゴン】をチューニング!
セイヴァー・デモン・ドラゴン ☆10 シンクロ 攻撃力4000
救世竜の力と余計な黒猫の力を取り込み、紅蓮魔竜は救世主となる。AGEかな。
「【セイヴァー・デモン・ドラゴン】の効果発動! 相手モンスター一体を対象に、効果を無効にしてその攻撃力を得る!」
セイヴァー・デモン・ドラゴン 攻撃力4000→9000
紅の水晶に閉じ込められ、何かの見世物の如く絵になるオブジェとなる【
「バトル、【セイヴァー・デモン・ドラゴン】で【
「っ、ライフで受ける!」
雪村は
華道雪村
LP4500→500
鉄壁に入ったライフだが、ここからどうなるのかを、雪村はもう悟っている。
「【
「エンドフェイズ、【セイヴァー・デモン・ドラゴン】はエクストラデッキに戻る」
レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
華道雪村
LP500 手札5
□□□□□
□□□□□
雨 レ
□□□□□
□□リ□■
灰村紅蓮
LP1500 手札1
雨:
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン
リ:リビングデッドの呼び声
■:伏せカード
手札を殆ど使い果たした紅蓮。追い込んだ様で、実はもう勝敗は決していたりする。
「僕のターン。ターンエンド」
ドローフェイズは【
そして、紅蓮のターン。
「・・・・・・ッ、あー、負けかぁ」
カードを引き、【
灰村紅蓮
LP1500→0
つまらない幕引きに不服そうな雪村と、普段あまり使わない部類の
「んー、まあそこそこ面白かったしいっか。じゃあ皆、かいさーん!」
腕時計で時間を確認し、部員達に声をかける雪村。紅蓮も部室の時計を探して見ると、かなりマズい時間だった。例によって予鈴は仕事をしていない。
「げっ、何やってんだよ予鈴!」
急いで部室 を出て教室へ走る紅蓮。
時間的にはぎりぎり間に合う瀬戸際だったが、走ったことによって教師に注意された紅蓮は、結局授業に遅れたとか。
ーーーーーーーーーー
五時間目の『不動性ソリティア理論』と六時間目有名なデュエル学者が考察した『ヴァイ論』についての講義をしっかりと聞いた紅蓮は、帰り道を一人で歩く。
(負けちまったな、今日・・・・・・)
授業などのデュエルで同学年に負けたことはない。だが、やはり年上相手だと勝率が悪い。
(これじゃあダメだな。もっと鍛えねえと)
『デュエル甲子園』に出場するのに学年は問わない。つまり、上級生とのデュエルは頻繁に起こるということだ。
まだ強さが足りない。この学校の上級生にも勝てる様にならなければ、デュエル甲子園での優勝などできない。
パン、と軽く頬を張ると、紅蓮は少し沈んでいた気持ちを切り替える。
まだ時間はある。デュエル甲子園の開催は二学期だ、ならばそれまでに己を磨けばいい。
(まずはデッキを見直す所からだな。それから、他のテーマとかも知っておいた方がいいだろうし)
やることは決まった。なら後は行動するだけだ。
紅蓮は心持ちを新たに、少し寄り道してから帰ることにした。
簡単なキャラ紹介③
華道雪村
デュエルスクール クスィーゼ校 三年
遊戯部部長にして面白いことが大好きであり、逆につまらないことを嫌う。【
茶髪にピアスとどことなくチャラい見た目だが別に陽キャというワケではなく、何となくそうしているだけである。そして多分今回以降あまり出番はない。