遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
どんな反応をすべきだったんでしょうか。
週明けの月曜日。その日は妹が寝坊したために昼を学食で取ることにした紅蓮だったが、食堂に行って食券を買っていると一人の女子生徒に腕を掴まれ上目遣いとは言えないレベルで睨まれていた。何故だ。
「貴方が灰村紅蓮かしら?」
「人違いだと思うぜ。オレは佐藤太郎、夜は焼き肉っしょ」
「少し顔を貸しなさい」
面倒事の香りに紅蓮の繰り出した改心のごまかしは通用せず、そのまま女子生徒に首根っこを掴まれ引っ張られる。我々の業界ではご褒美です、などと嘯く暇もないほどの強引さだった。今回の話の導入も強引である。
「名乗りもしないで人を引きずるとはなあ・・・・・・デュエリストじゃなくてリアリストか?」
「あら、私を知らないの?
藤堂千歳。その名前は紅蓮も聞いている。強い生徒について聞き込みしていた際、耳にした名前だと気付き、記憶を掘り返していく。あくまで比喩であり、頭蓋をスコップでガリガリ削り掘るワケではないのだが想像しただけで痛くなってきたのでこの話はやめにする。
「確か短気で行動的、考えるよりも行動を起こす方が早い、まるで女子とは思えない暴走機関車、だったか?」
頭に浮かんだままに言葉を並べていくと、ズカズカ歩いていた千歳の足がピタリと止まる。
「へぇ? その話、誰から聞かされたのかしら。よければ教えてくれない?」
引きずってきた紅蓮の顔を覗き込むようにして怖い笑みで脅しかける彼女だが、紅蓮はまるで怯えた素振りを見せず、ただお手上げした。全体重を千歳に預けた状態なので、妙にシュールである。周囲の生徒からの自然が痛々しいが、もう紅蓮は諦めた。千歳はまるで気にしていない様子である。
「そう・・・・・・まあいいわ。着いたわよ」
紅蓮の襟首を離し、両手を腰に当てる千歳。頭からゴンッとフリークスな音を立てて落下した紅蓮は呻きながら立ち上がる。
「
「第三デュエル場よ。先生に許可は取ってあるわ」
そのままズンズン中へ入る千歳に、紅蓮は抵抗する気力もなく付き従う。
「あー、あともう一個あったな。アンタの印象」
「・・・・・・貴方ねぇ、先輩に敬語も使えないの?」
先程の痛みによってか千歳について聞いたことを思い出した紅蓮だったが、千歳はかなり苛立っているようで、若干目つきが怖い。というか、先輩だったのか。
「『無礼な奴にまで礼儀を尽くす必要はねぇ』。ある人の教えだ」
「ふうん、そう。それで、何を思い出したのかしら」
内容によってはその生徒を特定してサンドバックにしてやる。そんな殺意の滲む声だった。
「可愛い物好きで、部屋にはぬいぐるみが多数置いてある。あと、自らの行動について後で落ち込んでる、だったな」
引きずられた仕返し、というのも含めて、「意外と乙女なんですねぇ」と笑顔を向ける紅蓮と、羞恥によってか顔を赤くしプルプル小刻みに震える千歳。形成は逆転した模様だ。
「あ、アンタ、それをどこで・・・・・・!」
「さあ? さっき頭打ったから忘れちまった」
ニヤニヤと性格の悪い笑みを浮かべる紅蓮だったが、突如赤かった顔を真顔に戻して振動を止めた千歳に、やり過ぎたかと冷や汗を流す。
「・・・・・・あったま来たわ。デュエルで叩き潰してあげる!」
そう言って、デュエル場の反対側までズカズカ肩を怒らせながら歩いていく彼女の背中に、紅蓮はどうしたものかと頭を掻く。
この休日で妹とデッキの試運転はしたが、まだ調整中。このままデュエルとなると、少々心配ではある。
(まあ、腹括るしかないよな)
彼にとって、全てのデュエルが『デュエル甲子園』への糧であり、気を抜けるものではない。それに、『デュエル甲子園』でもアクシデントが起こる可能性は十分にあるのだ、その練習になると頭を前向きに切り替える。精神的な話なのでホラーのように首が不自然に回ったワケではない。
「準備はいいかしら」
「おう、いつでもいいぜ」
10メートルほど先でレモン色のディスクを構える千歳に紅蓮は応じるように真っ赤なディスクを展開、デッキをセットしカードを五枚引き抜く。
「「デュエルッ!」」
灰村紅蓮
LP8000
藤堂千歳
LP8000
ディスクが先攻を示したのは紅蓮。少し以前とは異なる手札を見つめ、一枚のカードを発動する。
「フィールド魔法、【竜の渓谷】を発動だ。手札一枚をコストに、デッキから【アブソルーター・ドラゴン】を墓地へ送るぜ」
デュエル場が竜達の飛び交うフィールドに変わると、【ジェット・シンクロン】が【アブソルーター・ドラゴン】に激突し谷底に墜落していく。
「【アブソルーター・ドラゴン】の効果発動、デッキから【ヴァレット】モンスター、【ヴァレット・シンクロン】を手札に加えるぜ」
「なるほど、【ヴァレット】軸のデッキのようね」
そうでもないのだが、相手が勘違いしてくれるならば情報アドバンテージを得られる。なので紅蓮は特に反応しなかった。無視かしら、と千歳の怒りが【レベルアップ!】した事に幸か不幸か彼は気付かなかった。多分幸のハズ。
「そのまま【ヴァレット・シンクロン】を通常召喚、効果で墓地の【アブソルーター・ドラゴン】を特殊召喚するぜ」
ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力0
アブソルーター・ドラゴン ☆7 守備力2800
先日【アンデット・ワールド】にメタられたにも関わらず【ヴァレット・シンクロン】を使う紅蓮。デッキ内の手札誘発と汎用カードを増やすために【レッド・ライジング・ドラゴン】なしの展開ルートに絞ったのが今の彼のデッキとなっている。
「【アブソルーター・ドラゴン】に【ヴァレット・シンクロン】をチューニング、シンクロ召喚! 燃えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
火の粉を撒き散らしながら吠える傷付いた紅蓮魔竜。隻腕ならぬ隻角がチャームポイント。ちなみに隻角は造語なのでテストなどに使ってもペケを頂くだけである。
「更に、手札一枚をコストに墓地の【ジェット・シンクロン】の効果発動! 特殊召喚するぜ」
ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力500
谷底から自前のジェットで上がってきた【ジェット・シンクロン】。きっと
「【レッド・デーモン】とレベル1チューナー、ね。ということはアビスかしら?」
「ご明察だぜ、シンクロ召喚! 深炎より来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
閻魔の力を得た紅蓮魔竜が更に深炎を燃やした姿だが深炎とはなんだろうか。
ここから更に展開できる紅蓮だが、先攻でこれ以上モンスターを並べてもあまりメリットはない。
「カードを伏せてターン終了だ」
灰村紅蓮
LP8000 手札1
□□■□□
□□□□□竜
ア □
□□□□□
□□□□□
藤堂千歳
LP8000 手札5
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
竜:竜の渓谷
■:伏せカード
「私のターン、ドロー。あら、いいじゃない。【強欲で貪欲な壺】を発動するわ」
「問題ない、通しだ」
【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果は使われなかったため二枚ドロー。除外された十枚を確認したものの特に表情は変わらない。
「エクストラモンスターゾーンにモンスターが存在することで、【
迅雷と共に現れたのは機皇帝涙目な性能をした機巧蹄。それっておかしくないかな? 答えてみろ
「そのカードは・・・・・・!」
「知っているのなら早いわね。【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を対象に効果発動よ」
「アビスの効果発動だ!」
【
「ならもう妨害はないわね。エクストラデッキからカードを五枚除外して、【
こちらは手札、フィールド、エクストラデッキから五枚以上のカードを除外することで特殊召喚できるモンスター。そして戦闘する相手を裏側で除外できるというこれまた強力なモンスターである。
「さぁて、バトルフェイズに入ろうかしら」
「メインフェイズ終了時に【エフェクト・ヴェーラー】を発動だ! 【
性別不詳っ子が口裂け悪魔の気を逸らし、無力化する。攻撃力0なのにここまでの活躍をするのだから素晴らしいと思う。何故海外でイラスト違いが出なかったのか甚だ疑問である。
「なら巻き戻ってメインフェイズね。カードをセット、これでターン終了よ」
「エンドフェイズ、【のどかな埋葬】を発動するぜ。デッキから【アークブレイブ・ドラゴン】を墓地へ送る」
自分のターンにも関わらず動きまくる紅蓮に不快感を覚えながら、千歳のターンが終わる。
灰村紅蓮
LP8000 手札0
□□□□□
□□□□□竜
ア □
□□機□百
□□□□□
藤堂千歳
LP8000 手札5
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
機:
百:
竜:竜の渓谷
「オレのターン・・・・・・」
あれだけ妨害してもまだ手札が五枚ある千歳と、手札がなくなった自分の状況に冷や汗を流しながら、紅蓮はカードを引く。
「スタンバイフェイズ、墓地の【アークブレイブ・ドラゴン】の効果が発動するぜ。墓地から【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】を特殊召喚する。蘇れオレの魂!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
【のどかな埋葬】の効果で墓地へ送ったカードはそのターン効果を発動できないが、【アークブレイブ・ドラゴン】の効果が発動するのは次のスタンバイフェイズ。素晴らしく噛み合っている。
「【竜の渓谷】の効果、手札一枚をコストにデッキから【アブソルーター・ドラゴン】を墓地へ送るぜ。効果で【ヴァレット・シンクロン】を手札に加える」
【竜の渓谷】で毎ターン【ヴァレット・シンクロン】をサーチできるのはいい動きだが、手札コストが辛いな、と紅蓮は感じる。
「【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】の効果発動、攻撃力3000以下のモンスターは全員破壊だ!」
右腕の傷跡から炎が溢れ、千歳のフィールドのモンスター達を飲み込む。若干アビスにも飛び火しているが、火傷程度である。
藤堂千歳
LP8000→7000
「ッ、なら手札の【隻極の破械神】の効果発動よ! 自分のカードが破壊された時、特殊召喚できる!」
隻極の破械神 ☆8 守備力1500
タダではやられない、と千歳は新たなモンスターを場に出す。
「【隻極の破械神】の効果発動、手札一枚をコストに、相手フィールドのカード一枚を破壊するわ!」
「【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果発動だ、それを無効にするぜ!」
紫髪の鬼が紫電を纏った腕を振るうが、琰魔竜の炎に相殺される。
「さーて、もう妨害はねぇだろ。【ヴァレット・シンクロン】を召喚し、効果で【アブソルーター・ドラゴン】を特殊召喚ッ!」
ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力0
アブソルーター・ドラゴン ☆7 守備力2800
紅蓮が手を正面にかざすと、【ヴァレット・シンクロン】が光のリングへと姿を変える。
「【ヴァレット・シンクロン】で【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】をチューニング! 悪魔を焼けオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】!」
琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル ☆10 シンクロ 攻撃力3500
黒みがかった炎と共に現れる悪魔の竜。一瞬【闇の侯爵ベリアル】が燃やされるのが見えたが気のせいだろう。
「【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】の効果発動、【アブソルーター・ドラゴン】をリリースし、墓地から【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を特殊召喚する!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
並んだ三体の【レッド・デーモン】。約1名場違いかもしれないがそこはご愛嬌である。
「バトル、【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】で攻撃!」
傷付いた拳と紫電を纏った拳とがぶつかり合い、炎によって紫電が掻き消される。
「次だ、【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】でダイレクトアタック!」
「まだよ! 墓地の【
更にデッキが削られ、いくつもの首を持った蛇が千歳を守るべく立ちはだかる。
「しゃらくせえ、攻撃続行!」
しかしそれを粉☆砕する琰魔竜。コイツ本当に主人公か。
「【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】、ダイレクトアタックだ!」
「流石にもう止められないわね・・・・・・」
アビスの吐いた炎が千歳の身体を焼く。勿論安心安全なソリッドビジョンなので実際には怪我一つしておりません。ご安心を。
藤堂千歳
LP7000→3800
【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果で【ヴァレット・シンクロン】が特殊召喚される。これなら【レッド・リゾネーター】を入れてもいいかもしれないと思う紅蓮だった。
灰村紅蓮
LP8000 手札0
□□□□□
レ□ア□ヴ竜
ベ □
□□□□□
□□□□□
藤堂千歳
LP3800 手札3
ベ:琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト
ヴ:ヴァレット・シンクロン
竜:竜の渓谷
「ッ、私の、ターン」
三枚ある手札に、打開策はない。
千歳はカードを引き、それを恐る恐る確認すると、一瞬驚いてからすぐ勝ち気な表情になった。
「【ダイナレスラー・パンクラトプス】を特殊召喚!」
「ッ!? マジかよ」
ダイナレスラー・パンクラトプス ☆7 攻撃力2600
自身のモンスターが相手より少ない場合に特殊召喚でき、フィールドの【ダイナレスラー】をリリースすることで相手のカードをフリーチェーンで破壊するというパワーカード。リリースして発動のため【エフェクト・ヴェーラー】【スキルドレイン】では止められず、【次元の裂け目】【マクロコスモス】下でも発動できるという優れもの。まるで販促活動のような解説である。
「【ダイナレスラー・パンクラトプス】の効果は知っているわよね? リリースして効果発動、【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を破壊よ!」
パンクラトプスが自爆特攻し、プロレスなぞ関係なく【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を巻き込んで爆発。何故残り二体の【レッド・デーモン】が生き残ったのかと言えば、かなり早い段階から離れていたからである。この人でなし、と思ったがドラゴンなので元から人外であった。
「前のターンと同じ条件で【
再び登場する鹿っぽい機械。きっと魔法カードの効果を受けにくいモンスターなのだろう。だからいつのルールだ。
「効果発動よ! その、えーと、・・・・・・」
「・・・・・・
「そう、その【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】を装備するわ」
どうやら『琰魔竜』が読めなかったらしい千歳に紅蓮が助け舟を出すと、顔を赤く染めながら千歳は何事もなかったかのように宣言した。先程まで読めていたので、ド忘れしたらしい。
「クッ、カハハッ」
「・・・・・・何よ」
紅蓮が例の下手な笑いをすると、怒ったようで千歳が睨んでくる。おお怖い怖い、と紅蓮は笑いを収めた。
「だが、そのモンスターじゃオレの【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】は倒せないぜ?」
「ええ、そうね。だからこうするわ。私は装備した【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】を除外して【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を特殊召喚!」
ゴッドフェニックス・ギア・フリード ☆9 攻撃力3000
現れたのはストラクのヤベー奴こと【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】。デュアル要素を捨てた分更に強くなった【フェニックス・ギア・フリード】だ。【ゴッドフェニックス】と名の付く【ギア・フリード】とは、何とも胸熱である。
「バトルよ。【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】で【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】を攻撃するわ! そして効果発動!」
不死鳥の焔が紅蓮の炎を飲み込み、自身に取り込む。
ゴッドフェニックス・ギア・フリード 攻撃力3000→3500
「チッ、面倒な効果を・・・・・・」
「うるさいわね、【
鹿さんの蹄に踏まれ、隅っこで影を薄くしていた弾丸竜が潰れる。
「これでターン終了よ」
灰村紅蓮
LP8000 手札0
□□□□□
□□□□□竜
□ □
□ゴ機□□
レ□□□□
藤堂千歳
LP3800
機:
ゴ:ゴッドフェニックス・ギア・フリード
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(装備:ゴッドフェニックス・ギア・フリード)
竜:竜の渓谷
「オレのターン、ドロー」
引いたカードは【復活の福音】。しかしこれ一枚ではどうにもできない。
さて墓地に何かなかったかと確認してみると、意外なことにあった。
「墓地の【
「貴方、そのカードの存在忘れてたでしょ」
ノーコメント、と返してカードを引く。ノーコメントというコメントをしているのだから矛盾しているのではないかと論争が始まったのだがどうでもいい。
「【竜の渓谷】の効果発動だ。手札一枚をコストにデッキから【アブソルーター・ドラゴン】を墓地へ送る。後は一緒だ」
効果によって【ヴァレット・シンクロン】が手札に加わり、そのまま召喚される。
ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力0
「【ヴァレット・シンクロン】の効果発動」
「【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】の効果発動よ。装備カードを墓地へ送って、その発動を無効にして破壊するわ」
破壊までとは容赦がない。そんな紅蓮の視線を受けても千歳は全く気にしていないようで、デュエルの進行を促す高圧的な目で睨まれるだけだった。
「【復活の福音】発動だ。蘇れオレの魂!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
三度蘇る紅蓮魔竜。こちらの方が
「【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】の、効果発動!」
愚直に、莫迦の一つ覚えのように。
紅蓮は
藤堂千歳
LP3800→2800
「バトルだ、【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」
「【
またも立ちはだかる蛇の壁。鬱陶しい、と傷跡のある腕で一閃された。
「決めきれねぇ・・・・・・ターン終了だ」
灰村紅蓮
LP8000 手札0
□□□□□
□□レ□□竜
□ □
□□□□□
□□□□□
藤堂千歳
LP2800 手札1
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト
竜:竜の渓谷
千歳のデッキは残り五枚。【
「私のターン、ドロー」
だが、そんなことはどうでもよかった。既に、手札に切り札は来ているのだから。
「まずは【ダイナレスラー・パンクラトプス】を特殊召喚、そして―――」
一番最初から握っていたカードを、ディスクに置く。
「【紅蓮魔獣ダ・イーザ】を通常召喚よ」
紅蓮魔獣ダ・イーザ ☆3 攻撃力?→10800
紅蓮、と名のつくモンスターであるが故に、紅蓮も知っている。いや、デュエリストの大半が知っているであろうモンスター。
「なるほどな・・・・・・それを握ってたのか」
「ええ。ギリギリ決めきれないから、前のターンは出さなかったけど」
確かにそうだが、出しておいても良かったのではないか。紅蓮のそんな思いは、墓地にいる【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を思い出したことで納得に変わる。
効果を無効にされでしまったら、【紅蓮魔獣ダ・イーザ】は攻撃力0、確かに決めきれない状況で出すのは心許ない。
「まあ、もうどうでもいいわね。【紅蓮魔獣ダ・イーザ】で攻撃!」
紅蓮、と名の付く竜と獣とが衝突する。【レッド・デーモン】は紅蓮と付いていないが、それを言うのは野暮だ。
灰村紅蓮
LP8000→200
「これで終わりよ! 【ダイナレスラー・パンクラトプス】で―――」
「オレのモンスターが破壊された、ことでッ」
妖醒龍ラルバウール ☆1 守備力0
【破滅竜ガンドラX】をサーチするのにもよく使われた、小型竜。【竜の渓谷】のコストにされていたのだが、まさかの登場である。
「・・・・・・そのモンスター、サーチ以外にも効果があったのね」
「オレもさっき気付いた」
何とも締まらないセリフに、軽くため息を吐く千歳。
「やっぱ、貴方もダメね。鈴を傷付けそうだわ」
「・・・・・・? 何で今その名前が出てくるんだ?」
パンクラトプスが妖醒龍を蹴っ飛ばすのを視界に入れながら、紅蓮は訊く。【妖醒龍ラルバウール】は泣いていい。
「あら? 言ってなかったっけ? 私、あの子と親友なの。貴方とデュエルしてから、あの子妙にダルそうだったから、問い詰めようと思っ、て・・・・・・」
そこまで言って、千歳はようやく紅蓮にデュエルを仕掛けた理由を思い出した。
「あー! そうよ、貴方! 鈴に何したの? あの子、先週ずっと辛そうにしてたわよ!?」
話に付いていけてない紅蓮に詰め寄る千歳。ついさっきまで忘れていたのに親友を名乗れるのだろうか、と無駄なことが紅蓮の頭を
「い、いや、オレは何もしてない、はずだ! アイツとはただデュエルしただけ・・・・・・」
「それだけであんな辛そうにするワケないでしょうが! あの日、変わったことなんて、それこそ貴方とのデュエル以外になかったのよ!?」
ええーそんなこと言われても、と紅蓮はどうにもできない。心当たりもないのに責められているのだから、ただ言われるがままである。
「というか、何でオレとアイツがデュエルしたこと知ってるんだよ? 先生くらいしか見てなかったハズだけど・・・・・・」
「その先生に聞いたからよ。あの日鈴に変わったことなかったか、って聞いたら、貴方とデュエルした、って」
話を逸らそうと紅蓮は足掻くが、失敗。あの男性教師め余計なことしやがって、と紅蓮は心の中で呪う。
「あーもう、イライラする! 取り敢えず、デュエル続行よ! 話は終わってからだわ!」
まあもう後は貴方が負けるだけでしょうけど、と勝ち誇った顔で見下してくる千歳に、紅蓮は面倒だ、とため息を零す。
「オレのターン、ドロー」
あ、勝てるかもしれない。
「貪欲な壺を発動! 墓地の【アブソルーター・ドラゴン】三枚と【ヴァレット・シンクロン】二枚をデッキに戻して、二枚ドロー!」
「ならそれにチェーンして【ダイナレスラー・パンクラトプス】の効果発動よ! リリースして【竜の渓谷】を破壊するわ!」
墓地には【復活の福音】があるため、【レッド・デーモン】等を特殊召喚されてからでは遅い。怒り心頭でもその程度の思考はできるのがデュエリストというものだ。
「なるほど、ならこのドロー次第だな・・・・・・ドロー!」
ドローした一枚目は【
「・・・・・・【竜の霊廟】、発動! デッキから【アブソルーター・ドラゴン】を墓地へ送る!」
「嘘っ!? このタイミングで!?」
イカサマだわ、と言おうとして、それは余りに失礼だと気付く。そして、正気に戻った頭に蘇るついさっきまでの自分―――
「【ヴァレット・シンクロン】を通常召喚、効果で【アブソルーター・ドラゴン】を特殊召喚し、シンクロ召喚! 爆ぜろオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン】!」
琰魔竜レッド・デーモン ☆8 シンクロ 攻撃力3000
王の炎が【紅蓮魔獣ダ・イーザ】を燃やしたのと、千歳が自己嫌悪に陥ったのが同じタイミングだった。
藤堂千歳
LP2800→0
そして、現在千歳は体育座りでデュエル場の地面に『の』の字を書いている。
「はぁ〜またやっちゃった・・・・・・私ってホント、何でこう・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
その気弱さたるや、紅蓮が唖然として何も言えなくなるほどである。
「・・・・・・ぁ、千歳ちゃん、と、灰村、く、ん?」
つい先週聞いた覚えのある声に紅蓮が振り返ると、デュエル場の入口にはやはり小柄で、しかし真っ直ぐに背筋の伸びた少女がいた。
「ああ、アンタか。アイツ、どうにかしてくれないか? さっきからあんな感じで・・・・・・」
何の躊躇もなくヘルプを要請する紅蓮。十五年以上生きている彼だが、女性関係についてはサッパリである。
「ぇ、と、はい。・・・・・・千歳、ちゃん? どうした、の?」
「・・・・・・ああ、鈴? ごめんなさい、私、また一人で勝手に突っ走っちゃって・・・・・・」
二人の様子から、恐らくもう大丈夫だろう、と不安要素を見ないことにしながら教室に戻った紅蓮。
結局、昼食は取れなかった。
さて、どうして千歳がそんな勘違いをしたのかと言えば。
彼女が男性教師に「変わったことがあったか?」と聞いたためである。
もし「鈴の体調が悪そうだが、何か知らないか?」と聞いた場合、男性教師は新型のゴーグルのことを話し、自分のせいだと言っただろう。
・・・・・・という意思疎通ができたのが、その日の放課後の出来事。
「・・・・・・紛らわしいのよ!」
「へぶらっ!?」
「ぉ、落ち着、いて、千歳ちゃん・・・・・・」
千歳も悪いのだが、紅蓮にとっては何もしていないのに昼食を食べ損ねた、ということであり。
「先生。後でブルーアイズマウンテン、奢ってくれるよな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
簡単なキャラ紹介⑤
藤堂千歳
デュエルスクール クスィーゼ校 二年
鈴の親友で、彼女のことをとても大切に思っている。
デッキはご覧の通りのパワーカードデッキ。「わかりやすく強い」カードを使うことで自分の強さをアピールし、鈴がいじめられたりすることがないように振る舞っている(少なくとも本人はそのつもり)。
黒髪で肩まであるツーサイドアップ、そして控えめな胸部装甲。身長は160cmほどで、女子としては平均レベル。体重は(この先の文章は赤くなっていて読めない)
部活動は一応家庭部。というのも、鈴にお菓子を作ってあげたいために入部したのだが、失敗ばかりで一度もその目的は果たされていない。