遊戯王 スプレッド・ストーリーズ 作:柏田 雪貴
即買いしました。
千歳とデュエルしてから、早一週間。その日、紅蓮のクラスは普段よりも賑わっていた。
紅蓮の耳に入ってきたのは、「転校生」「男子」「先生と話していた」「【エクリプス・ワイバーン】返して」といった単語だった。誰だ最後の。
「転校生が来るんだってさ。日直が職員室に行った時に見かけたらしいよ」
紅蓮が聞き耳を立てていることに気付いたのか、席の近い
「こんな時期にか? 珍しいな」
暦は五月。夏休み明けなどに転校、というのはよく聞く話だが、入学して1ヶ月した今のタイミング、というのはが少し妙だ。
(あの先生、また面倒なことしてるのか・・・・・・?)
千歳の一件でわかったことだが、あの男性教師はどうにも人が
「皆、おはよう♪ 多分もう知ってると思うけど、このクラスに転校生が来たよ」
SHRが始まると、男性教師が特に溜めを作るでもなく一人の男子生徒を教壇の前に立たせる。ドラムロールなどをしようとして校長に止められた話は秘密だ。
「・・・・・・
黒髪にやや低めの背丈、少し猫背気味の立ち姿。
どことなく黒猫を連想させる少年だった。
「えーと、彼は四月に入学予定だったんだけど、家の事情で引っ越しが遅れちゃったんだって。だから、正確には転校生、ってワケじゃないんだけど」
男性教師の説明に、ただ黙って動かない柊太。そんな彼を気遣ってか否か、生徒達から「しつもーん!」と声が上がり、そこからなし崩しで質問タイムに入る。
フェイバリットカードやらデュエルを始めた歳やらデュエル以外の趣味やらといった質問を一つずつ答えていく柊太だったが、それが一段落すると、逆に彼から質問を放った。
「質問なんだけど。このクラスに、『デュエル甲子園』に出るつもりの人って、いる?」
途中から興味を失って居眠りをしていた紅蓮に、全員の視線が集まる。それを敏感に感じ取ったのか、「んあ?」と声を漏らしながら紅蓮が目を覚ますと、転校生含めたクラス中が自分を見ている謎の状況。SAN値が削れそうだ。
「・・・・・・ふーん、まあいいや。僕は『デュエル甲子園』で優勝することを目指してこの学校に来ました。デュエルだったらいつでも大歓迎だよ」
最後に爽やかな笑みを残して、柊太は自分の席についた。
何故か、紅蓮のことを睨み付けながら。
ーーーーーーーーーー
転校生のことなどまるで気にせずいつものように授業を受けた紅蓮は、またも寝坊した妹に憤慨しながらカツカレーを頬張っていた。
デュエルスクールの学食は基本的に一般高校と同じような作りであり、カードの付録した『ドローパン』などの品物は売っていない。以前はあったらしいのだが、一時期カードだけ抜いてパンを捨てる、という行為が横行したために今はなくなってしまっている。
それはさて置き。ガツガツとカツカレーで胃を満たす彼の前の席に、一人の生徒が座った。
それだけならば別に気にしないのだが、どうやら彼は紅蓮が食事を終えるのを待っているらしい。何か食べることもなく、ジッと紅蓮を見ている。
「・・・・・・・・・・・・」
何だァ、テメェ? という視線を向けるが、目の前の青年は気にする様子もなく腕を組んでいる。なので紅蓮も気にせず食事を続けることにした。それでいいのか。
「・・・・・ふぅ、食った食った」
「君が灰村紅蓮君で合っているな?」
アレ、こんな展開前にもあったような気が。
「・・・・・・だとしたら、何だよ」
「私は風紀委員長の
クイッと赤渕の眼鏡を上げながらそう告げる五河。面倒なことになった、と腹を括る紅蓮だったが、フッと一つ笑った五河は眼鏡から手を離し力を抜く。
「・・・・・・冗談だ」
「冗談かよッ!?」
たった今自分が覚悟を決めたのはなんだったのか。シャレにならない、とはこういうことだろうか。違うか。
「個人的に、君とデュエルしたかったのでね。口実を用意しただけだ」
「いや、普通に『おい、デュエルしろよ』でいいだろ・・・・・・」
少し呆れたような妙な脱力感に襲われる紅蓮だったが、当の五河は驚いたようで少し目を見開く。
「・・・・・・それだけで良かったのか」
お茶目さんか。男子のお茶目属性とか一体誰得なんだ。
「まあ、細かいことはいいだろう。デュエル場へ向うぞ」
良かねーよ、という紅蓮のツッコミはスルーされた。
ーーーーーーーーーー
千歳のときとは異なり、彼らが使うのは第一デュエル場。食堂からはこちらの方が近いのだ。
数人の見学者、というか暇人が適当にたむろしているのだが、それを気にした様子もなく五河は紅蓮と距離を取って白いデュエルディスクを構える。紅蓮もようやく調整の済んだデッキをセットし、展開。
「「デュエルッ!」」
灰村紅蓮
LP8000
赤羽五河
LP8000
かくして始まった両者のデュエル。先攻は紅蓮選手!と謎のテンションでお送りします。
「【レッド・リゾネーター】を通常召喚、効果で手札から【ジェット・シンクロン】を特殊召喚するぜ」
レッド・リゾネーター ☆2 チューナー 攻撃力600
ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0
結局、【レッド・リゾネーター】はまた紅蓮のデッキに入っている。【ヴァレット】のレベル4と共に展開できるので相性がいいのだ。
「フィールドに攻撃力1500以下の悪魔族チューナーがいることで、【風来王ワイルド・ワインド】は特殊召喚できる」
風来王ワイルド・ワインド ☆4 守備力1300
この方法で特殊召喚した場合、ターン終了時までシンクロ召喚しかできなくなるが、紅蓮のデッキには何ら影響ない。だってエクストラデッキは
「【レッド・リゾネーター】で【風来王ワイルド・ワインド】をチューニング! 来い魂の種火【レッド・ライジング・ドラゴン】!」
レッド・ライジング・ドラゴン ☆6 シンクロ 攻撃力2100
現れた炎の竜に五河は「ほう」と眼鏡を持ち上げながら感嘆符。
「そのルートで来たか。しかし私に止める手立てはない、存分に動くといい」
「いや、言われなくてもそうするけどよ・・・・・・」
少し調子が狂う。紅蓮はその言葉がブラフの可能性も考えつつ、更に展開する。
「【レッド・ライジング・ドラゴン】の効果で【レッド・リゾネーター】を特殊召喚し効果! ライフを回復するぜ」
灰村紅蓮
LP8000→10100
1万の大台に乗ったライフだが、【アロマ】などからすればまだまだである。何を張り合っているのか。
「次ッ【レッド・リゾネーター】で【レッド・ライジング・ドラゴン】をチューニング! 燃えろオレの魂【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
いつも通り傷付いた紅蓮魔竜が燃え上が。最近素レモンを見ないのだがそれは大人の事情である。弱いとか言ってはいけない。
「更に【ヴァレット・シンクロン】で【レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト】をチューニング! 深炎より来たれオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】!」
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 攻撃力3200
以前とあまり変わらない展開方法だが、手札が良ければ二枚でアビスまで行けるのが今の紅蓮のデッキだ。いつお披露目できるかわからないが。
「このままターン終了だぜ」
灰村紅蓮
LP10100 手札2
□□□□□
□□□□□
ア □
□□□□□
□□□□□
赤羽五河
LP8000 手札5
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
■:伏せカード
「では私のターン」
引いたカードを手札に加えると、五河はまた右手で眼鏡に触れる。
「3連続シンクロ召喚、見事だった・・・・・・故に、私も全力で応えよう」
別に相手がモンスターもカードも出さずにエンドしようが全力を出す彼だが、眼鏡に触れているのと同様タダの格好付けである。
「私は【DD魔導賢者ケプラー】を通常召喚。そして効果発動!」
DD魔導賢者ケプラー ☆1 ペンデュラム 攻撃力0
このカードから察するに五河のデッキは【DD】、ならばこの初動は止めて損はないだろう。【DDラミア】を握っていた場合、サーチした【契約書】を無効にしても特殊召喚されてしまう。
「【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果発動だ。それを無効にする」
「ふむ、堅実な手だな。だがそれだけで止まるほどヤワではない。手札の【DDスワラル・スライム】の効果、手札の【DDゴースト】と共に融合召喚を行う!」
五河の背後にスライムとクリスタルが浮かび、混じり合う。どちらも見た目はお世辞にも良いとは言えないので転生先としては最悪だろう。そしてそれが混じり合ったのだから出てくるモンスターもグロテスク極まりないに違いない。
「融合召喚! 生誕せよ【DDD烈火王テムジン】!」
DDD烈火王テムジン ☆6 融合 攻撃力2000
先程の前振りを全否定するように剣と盾を構え格好良く見せる烈火の王。【覇王烈龍オッドアイズ・レイジング・ドラゴン】も烈火の王なので親戚かもしれない。アホか。
【DDゴースト】の効果で二枚目の【DDスワラル・スライム】を墓地に送った後、五河は右手を正面に翳す。
「更に私は【DD魔導賢者ケプラー】と【DDD烈火王テムジン】をリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン! リンク召喚、生誕せよ【DDD深淵王ビルガメス】!」
DDD深淵王ビルガメス link2 リンク 攻撃力1800
多数の武器を背負った王。彼(性別はわからないが、便宜上彼とする)のモチーフはかの英雄王ギルガメッシュなのでそれ相応の効果を持っている。何故か攻撃力が貧弱だが。
「【DDD深淵王ビルガメス】の効果発動! リンク召喚に成功した場合、デッキから【DD】ペンデュラムモンスター二体をペンデュラムスケールにセットし、1000ダメージを受ける。私は【DDD魔導賢者ニュートン】と【DDD壊薙王アビス・ラグナロク】をペンデュラムスケールにセッティング!」
DDD魔導賢者ニュートン スケール10
DDD壊薙王アビス・ラグナロク スケール5
赤羽五河
LP8000→7000
ビルガメスが鎖で天空の穴から無理矢理二体を引っ張り出した、光の柱に閉じ込める。攻撃力は低いのに傍若無人である。
「なるほど、ペンデュラムも使うのか」
「ああ。だがその前に、私がダメージを受けたことで手札の【DDオルトロス】の効果発動。自身を特殊召喚する」
DDオルトロス ☆4 ペンデュラム チューナー 守備力1800
ペンデュラムチューナーにして特殊召喚効果を持つという便利なモンスター。弟に負けた上デッキに入ってすらいないケルベロスは泣いていい。
「更に、私が【DD】を特殊召喚したことで【DDD壊薙王アビス・ラグナロク】の効果発動! 墓地の【DD】モンスターを特殊召喚し1000ダメージを受け、このターン相手に与える戦闘ダメージを半分にする」
「随分とデメリット多いな・・・・・・」
「【DDD神託王ダルク】を蘇生すればダメージは回復になるため、一概にそうとは言えないだろう。私のデッキには入っていないので全てデメリットのままだが」
展開の代償が大きい、と呆れる紅蓮だったが、五河が真顔のまま冗談とも本気ともつかないセリフを言うので反応に困った。
DDD烈火王テムジン ☆6 融合 攻撃力2000
赤羽五河
LP7000→6000
「ペンデュラム召喚、レベル6【DDプラウド・オーガ】!」
DDプラウド・オーガ ☆6 ペンデュラム 攻撃力2300
揺れる振り子の力によって出現する悪魔の鬼。振り子を見ていたせいなのか若干酔っている。
「【DDD烈火王テムジン】の効果発動。【DD】が特殊召喚されたことで、墓地から更に【DD】を特殊召喚する。蘇れ【DDゴースト】」
DDゴースト ☆2 チューナー 守備力300
橙色のクリスタルの中に猫の影。どの辺がゴーストなのかわかりかねる。
「ゴーストってパーカーとかじゃないんだな」
「オレンジと黒だ、同じようなものだろう」
そういうものか、と納得と疑問が半々の紅蓮だが、それよりもこの手の話題が通じたことが驚きである。
「・・・・・・アンタ、特撮とか見るんだな」
「毎週欠かさずに見ている。・・・・・・話が逸れたな。続けるぞ。
私は【DDゴースト】で【DDD烈火王テムジン】をチューニング! シンクロ召喚、生誕せよ【DDD呪血王サイフリート】!」
DDD呪血王サイフリート ☆8 シンクロ 攻撃力2800
こちらのモチーフはジークフリート。呪われた血、というのは邪竜ファブニールの血を浴びたためだろうか。勉強になる。
「更に【DDオルトロス】で【DDプラウド・オーガ】をチューニング! シンクロ召喚、生誕せよ【DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー】!」
DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー ☆10 シンクロ 攻撃力3000
風と大剣と共に現れるアレクサンダー。疾風なのはモチーフよりもどちらかと言えば【サンダー】の名前からかもしれない。
「エグゼクティブ・アレクサンダーは場に【DDD】が三体以上いる時、攻撃力が3000アップする。よって、攻撃力は6000!」
DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力3000→6000
大剣に仲間の力を宿し、更に【巨大化】させる。
「バトルだ。アレクサンダーでレッド・デーモン・アビスに攻撃!」
アレクサンダーが剣でアビスを斬り裂くが、大剣はそのまま手を離れて紅蓮の真横に突き刺さった。
灰村紅蓮
LP10100→8700
「・・・・・・何だ、今の演出」
「アビス・ラグナロクのダメージ半減効果の影響か・・・・・・?」
ソリッドビジョンとはいえ流石の紅蓮も冷や汗ダラダラである。アレクサンダーは手刀を切りながら大剣を回収して五河のフィールドに戻っていった。
「次だ。サイフリートでダイレクトアタック」
「すげー受けたくないけど受ける」
アレクサンダーが
が、案の定振り下ろした瞬間にすっぽ抜けて紅蓮の顔横2cmを通過していった。
灰村紅蓮
LP8700→7300
「普通に攻撃受けるよりも怖ぇんだけど」
「知らん。そんなことは私の管轄外だ」
若干震えた声で訴える紅蓮を真顔で切り捨てる五河。紅蓮は後でKCに訴えようと固く誓った。デュエルが終わる頃には忘れている可能性が高いため緩く誓ったの方が適切だろうか。
「ビルガメスでダイレクトアタック」
「エヌマ・エリシュとか食らいたくないんだけどな・・・・・・」
期待に応えるためか、例の乖離剣を構えるビルガメス。しかしダメージ半減効果の影響か上手く扱えず、仕方なく鎖で攻撃した。
灰村紅蓮
LP7300→6400
ようやく普通の攻撃であることにホッとする紅蓮。直撃した方が精神ダメージは少ないようだ。
「ターン終了だ」
灰村紅蓮
LP6400 手札2
□□□□□
□□□□□
□ 深
□□疾□呪
□□□□壊
赤羽五河
LP6000 手札1
深:DDD深淵王ビルガメス
疾:DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー
呪:DDD呪血王サイフリート
壊:DDD壊薙王アビス・ラグナロク
さて、これだけ攻撃を食らっているが、意外とライフ差は小さい。というか、五河の方がライフが少ない。
【DD】ではよくあることだが、効果ダメージで自滅する恐れがあるのである。故に短期決戦か先程言ったように【DDD神託王ダルク】を入れるのだが、五河は前者のようだ。
「オレのターン、ドロー!」
手札は三枚。だが、この状況を突破する
「【竜の霊廟】を発動するが。どうする?」
「【DDD呪血王サイフリート】の効果発動。そのカードの効果を無効にする」
即答であった。恐らく【アブソルーター・ドラゴン】から【ヴァレット・シンクロン】をサーチすることを読んだのだろう。
その反応に、紅蓮は口の端を釣り上げる。
「カハッ、コッチが本命だぜ【復活の福音】ッ! 蘇れオレの魂!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 攻撃力3000
蘇る傷付いた紅い竜。常時傷付いているならそれはもう傷ではないんじゃないかと今気付いた。”傷”と”気付いた”がかかっているダジャレだとかそんなことはない。
「スカーライトの効果発動だ、吹き飛べッ!」
まずビルガメスに殴りかかり、AUOが地に伏せたのと同時にサイフリートを尻尾で打ち飛ばす。普段は右拳で地面を殴るだけなのだが、今日はアクティブである。
赤羽五河
LP6000→5000
「破壊された【DDD深淵王ビルガメス】の効果発動、エクストラデッキから【DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク】を特殊召喚する!」
DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク ☆10 融合 守備力3000
ビルガメスが最期の抵抗で天空の穴から鎖を使って新たな英雄を呼び出す。これが英霊召喚か。
「更に【DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー】の効果発動! 【DD】が特殊召喚されたことで、墓地の【DDD烈火王テムジン】を特殊召喚する!」
DDD烈火王テムジン ☆6 融合 守備力1500
蘇る肉壁にして過労死枠。英雄を肉壁扱いとは何たる不敬か。
「・・・・・・何でさっきのターン使わなかったんだ?」
「ふむ。忘れていただけなのだが結果的にライフを守れたので
それを声に出さなければまだ格好が付いたのだが、色々台無しである。
仮に出していたとしても攻撃力は2000しかなくダメージは与えられてはいたが殴り返されるため心許ない。そして壁にするにしても墓地に回収できる【契約書】カードもないので本当に壁にしかなっていなかっただろう。
「だが、これで場の【DDD】はまた三体になった。アレクサンダーの攻撃力は6000のままだ」
【琰魔竜レッド・デーモン】だったならアレクサンダーごと破壊できていたのだが、こればかりはどうにもならない。
「しかし、面倒だな・・・・・・」
【DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク】は戦闘を行う時に自身の【DD】か【契約書】をバウンスすることで戦闘相手以外の相手モンスターを装備し、その攻撃力を得る効果がある。これは相手からの戦闘でも発動するため、スカーライトの横に並べると装備されてしまう。そして、スカーライトでは攻撃力が足りない。
(・・・・・・・・・・・・なら、こうするか)
手札は一枚しかないので、やることは殆ど決まっていたのだが。
「【ヴァレット・シンクロン】を通常召喚して効果発動だ。墓地から【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を特殊召喚!」
ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力0
琰魔竜レッド・デーモン・アビス ☆9 シンクロ 守備力2500
【DD】の過労死がテムジンなら、【レッド・デーモン】の過労死はアビスだろうか。
「ここでアビスを蘇生させた、ということは、更に上か」
「そういうこった、【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】に【ヴァレット・シンクロン】をチューニング! 悪魔を焼けオレの魂【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】!」
琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル ☆10 シンクロ 攻撃力3500
獄炎を纏い、更なる進化を遂げた琰魔竜。まだ第三形態のため、
「ベリアルの効果でスカーライトをリリース! アビスを蘇生するぜ!」
ベリアルが自身の炎でスカーライトを包み込む。炎が消えて姿が見えるようにかると、スカーライトはアビスに変わっていた。全員同一人物(竜)と考えれば、衣装替え感覚なのかもしれない。
「バトルフェイズ、アビスでカエサルに攻撃! そしてアビスの効果発! カエサルの効果を無効にする!」
アビスが効果も発動させないままの拳による乱打でノックアウトする。
「場の【DDD】の数が減ったことでアレクサンダーの攻撃力は元に戻る」
DDD疾風大王エグゼクティブ・ アレクサンダー 攻撃力6000→3000
仲間が減って心細くなったのか小さくなった剣を下ろし孤独に佇むアレクサンダー。だが剣が軽くなったことでその顔は表情がないはずだがどこか晴れ晴れとした雰囲気が漂っていた。横にいるテムジンは複雑そうである。
「次だッベリアルでアレクサンダーを攻撃!」
「迎え撃てアレクサンダー」
主の言葉をボーッとしていて聞いていなかったのかアビスの拳をモロに顔で受け場外まで吹き飛ぶ征服王。
赤羽五河
LP5000→4500
「ベリアルが戦闘ダメージを与えたことで、墓地の【ヴァレット・シンクロン】とデッキの【シンクローン・リゾネーター】を特殊召喚するぜ」
ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0
シンクローン・リゾネーター ☆1 チューナー 守備力100
―――このままチューナー達を壁にしてもいいが、3500打点を棒立ちさせるのは心許ないな。リクルート効果を持つカラミティを立てた方がいいか。
「メイン2、【琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル】に【シンクローン・リゾネーター】と【ヴァレット・シンクロン】をダブルチューニング! 惨禍と化せオレの魂【琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ】!」
琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ ☆12 シンクロ 攻撃力4000
二体のチューナーが炎のリングへと姿を変えベリアルが光点となって更に進化。腕も増えて最終形態である。
「これでターンエンドだ」
灰村紅蓮
LP6400 手札0
□□□□□
□□ア□□
カ □
□□□烈□
□□□□壊
赤羽五河
LP4500 手札1
カ:琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
烈:DDD烈火王テムジン
壊:DDD壊薙王アビス・ラグナロク
差の開いたライフと【DDD烈火王テムジン】のみになったモンスター。残っているだけマシというものだろうか。
「私のターン、ドロー」
引いたカードは【増殖するG】。来るのが余りに遅かったが、元々あった手札で十分展開できる。
「私は墓地の【DDスワラル・スライム】の効果発動。墓地のこのカードを除外し、手札の【DD】を特殊召喚する。出でよ【DDD運命王ゼロ・ラプラス】!」
DDD運命王ゼロ・ラプラス ☆10 ペンデュラム 攻撃力?
複数の生物の骨が組み合わさった異形の悪魔が君臨する。効果無効に弱いため【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】を警戒し出していなかったが、今思えばプレイミスかもしれない。
「【DD】が特殊召喚されたことで、【DDD烈火王テムジン】の効果と【DDD壊薙王アビス・ラグナロク】の効果がトリガーするが、どうする?」
「【琰魔竜レッド・デーモン・アビス】の効果で、テムジンの効果を無効にするぜ」
逆順処理によってアビス・ラグナロクの効果が解決され、墓地のアレクサンダーを特殊召喚。カエサル・ラグナロクは蘇生制限を満たしていないため永眠状態である。
赤羽五河
LP4500→3500
DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー ☆10 シンクロ 攻撃力3000→6000
アビス・ラグナロクの効果が適用されたことからまたあの心臓に悪い攻撃が来るのかと紅蓮は戦慄する。下手なお化け屋敷よりも怖いのである。【ゴーストリック】の皆さんに謝るべきかと思ったがアレは可愛い系統なので問題ないと判断した。効果は全然可愛くないが。
―――【DDD烈火王テムジン】で【レッド・リゾネーター】は破壊できるが・・・・・・このライフではな。
殴り返されることを警戒し、そのままバトルフェイズに入る。
「ゼロ・ラプラスでカラミティを攻撃! ラプラスの効果! このカードの攻撃力は、戦闘する相手モンスターの元々の攻撃力の倍になる!」
DDD運命王ゼロ・ラプラス 攻撃力?→8000
カラミティに組み付き、骨の計量器でその攻撃力を図りとって倍にするラプラス。モチーフであるラプラスの悪魔の影響か。
「攻撃力8000とか、ムチャクチャだな!?」
「戦闘ダメージは半分だ、大した数字ではない」
そのままラプラスが骨の口らしきものでカラミティを飲み込み、咀嚼。ホラー映画も真っ青なほどである。
灰村紅蓮
LP6400→4400
「カラミティの効果発動! 墓地のスカーライトを特殊召喚する!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 シンクロ 守備力2500
ラプラスの口から這い出てくるスカーライト。涎などが付いていないのは骨だからだろうか。
「なるほど・・・・・・」
―――これで、私の敗北はほぼほぼ決まった訳だ。
「アレクサンダーでスカーライトを攻撃!」
「墓地の【復活の福音】の効果で、破壊されないせ!」
「だがダメージは受けてもらう!」
アレクサンダーがアビスを斬り裂き、その衝撃波が紅蓮に飛ぶ。剣が飛んでくることはなかったので一安心した紅蓮だが、胸を撫でおろした直後に顔の横を何かが横切った。時間差とは卑怯である。
灰村紅蓮
LP4400→3000
「私はこれでターンエンド」
灰村紅蓮
LP3000 手札0
□□□□□
□□アレ□
□ □
□疾運烈□
□□□□壊
赤羽五河
LP3500 手札1
ア:琰魔竜レッド・デーモン・アビス
レ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト
疾:DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー
運:DDD運命王ゼロ・ラプラス
烈:DDD烈火王テムジン
壊:DDD壊薙王アビス・ラグナロク
「オレのターン、スカーライトの効果発動!」
飛翔しテムジンをブレスで焼き尽くすと、スカーライトはラプラスの口に右腕を突っ込み炎を出すことで内側からファイアーすると骨と骨の間から炎が吹き出しそういう儀式であるかのように見える。先程飲み込まれたことへの意趣返しだろうが、火葬っぽくてあまりよろしくない。
赤羽五河
LP3500→2500
「スカーライトを攻撃表示に変更してバトルッ! アビスでアレクサンダーを攻撃!」
アビスが腕のブレードでアレクサンダーの剣を引っ掛けて遠くへ飛ばし、抵抗できなくなった所に真正面からブレスを叩きつける。
赤羽五河
LP2500→2300
「スカーライトでダイレクトアタック! これで終わりだ!」
(嫌がらせに手札の【増殖するG】でも使って・・・・・・やめておくか)
後輩に嫌な先輩だと思われたくなかった五河はそのまま両手を広げてスカーライトのブレスを受ける。ソリッドビジョンでなかったならば爆発した頭と焦げて黒っぽくなった姿が見られたかもしれないが残念だ。
赤羽五河
LP2300→0
デュエルが終了したことで消えていくソリッドビジョン。紅蓮は最後に引いた【
「ふむ、やはりライフコストが辛いな。先攻を取れていれば・・・・・・」
眼鏡ではなく顎に手を当て、ブツブツと考察タイムに入る五河。紅蓮はデュエルディスクで時間を確認し、まだ意外と余裕があったのでのんびり教室に戻ることにした。
ーーーーーーーーーー
放課後。他の生徒が部活や帰宅に勤しむ中、廊下を歩く教師と生徒がいた。
「・・・・・・で、ここが第二講義室。数学の時とかに使うと思うから、覚えておいて♪」
一人は紅蓮のクラスを担任している男性教師。もう一人は転校生である柊太だ。
「次に、ここがコンピューター室。学校のサーバーに残ってるデュエルを閲覧したり、CGを作ったりとか、自由に使えるよ♪ たまに担当の先生の出張開いてなかったりするんだけどね」
「はあ、なるほど」
柊太が軽く中を覗いてみると、そこには赤っぽい黒髪があった。
「あの人・・・・・・灰村、でしたっけ? は、何をしてるんです?」
「んー、デュエルの閲覧みたいだね。多分、自分のデュエルを見返してるんじゃないかな?」
ただの素朴な疑問だったが、柊太は紅蓮が反省などをしていることを意外に思った。
彼は、紅蓮をただの口だけの男だと思っていた。デュエルの講義こそ起きているが、それ以外は寝てばかりだったし、クラスの面々に聞いた話ではエクストラデッキにシンクロモンスターしか入れていないと言う。それで『デュエル甲子園』に出ようだなんて、よく言えたものだと思った。
「・・・・・・先生、灰村のこと、どう思いまか?」
「? そうだね・・・・・・面白い生徒、かな? あんなデッキでデュエル甲子園優勝を目指してるっていうし、先輩によく挑んでるし」
優勝を目指している。ならば自分と同じだ。しかし、彼と別のチームになった場合、彼は敵となる。
(・・・・・・今度、彼とデュエルしてみよう。そうすれば、何かわかるかもしれない)
腰のデッキケースに触れながら、柊太は決意した。
簡単なキャラ紹介⑥
赤羽五河
デュエルスクール クスィーゼ校 三年
風紀委員長にして【DD】使い。表情筋を動かすことが滅多になく、ずっと真顔である。しかしどこか天然であり、真顔のまま冗談などを発したりするので周囲からは少し浮いている。
今回、紅蓮とデュエルしたのは友人である雪村から彼のことを聞いたため。好印象を与えようと初対面で冗談を言っていたが、失敗している。そしてその自覚がないので直らない。
身長は180と高く、相手に威圧感を与えてしまっている。これもわかりにくい冗談に拍車をかけている。赤渕眼鏡は殆ど度が入っておらず、そこまで目が悪いワケではない。
名前は某社長と火星の王から。つまり中の人ネタである。