東方逢魔幻譚 ~ Never Cross Phantasm. 作:時間ネコ
妖怪の山にスティングフィッシュオルフェノクが現れてから数時間。すでに日は昇り、幻想郷の四季を照らす朝日は等しく灰と紅葉を目立たせている。
そこに落とされた灰色の幕壁。オーロラカーテン状に落ちた光は揺らめき、そこに一つの波紋と人影を映し出した。
灰色の人影は
されど彼は本来、オルフェノクとして一度消滅を遂げた者である。それが三度目の生を受けて蘇り、時空を行き来するオーロラカーテンの力を得て再び現世に具現している。
「はぁ……ああ……!」
大型のアメリカンバイクをオーロラの中に置き去り、ゴーグルを外した男は秋の風を感じて歓喜の表情を浮かべた。そのまま薄ら笑いを湛えつつ、男は身に纏う茶色のロングコートのボタンを外して裸の地肌で風を受け止める。
コートを脱ぐことなく、前衣を開けた状態で─―裸身を露わにし、未だ肌寒いであろう秋の山の中腹においてなお、その表情は変わらず何を考えているか分からない不気味な笑顔のまま。
「…………」
高い山の崖の上に天狗下駄を乗せた鴉天狗──姫海棠はたては、ロングコートの男が灰色のオーロラから出てくる瞬間を見ていた。
その手に持った黒地に黄色の装飾が施された双眼鏡、本来は幻想郷にあるべきではないそのデバイスを覗くことで、はたてはオルフェノクの知覚など到底届きようのない遠距離から。
スマートブレインが開発した高精度の遠視デバイス──『カイザポインター』の望遠レンズを用いて、哨戒担当の白狼天狗が如き千里眼を得ている。
白狼天狗たちにはオルフェノクの記号は宿っていない。この遺伝子を有するのは、天狗組織の中でも『あの男』と接触できた者たち、はたて自身を含めた数人の鴉天狗だけ。
天魔の情報操作によって、この情報は組織全体には知れ渡っていない。はたての同僚たる文でさえ、このことについては聞いていないだろう。
カイザギアのツールの一つであるカイザポインターの遠視性能をもってすれば白狼天狗ほどの視力を持たない鴉天狗のはたてでも山の全域を観測できるが、それを可能とするのが双眼鏡という性質状、どうしても極めて狭い範囲でしか遠視の効果が及ばなかった。
それでも彼女が別世界からの来訪者、ロングコートの男の存在を捉えることができたのは決して偶然などではない。
姫海棠はたてには『念写をする程度の能力』が備わっている。自身が持つカメラに念を込めることで、そこにはない別の景色、別の時間、あるいは誰かが見た光景や写したものを自らのカメラに写真として撮影させることができるという能力だ。
はたては幻想郷に訪れる悪意を恐れて一度念写を試みた。そこに写ったのが、妖怪の山の遠い外れ──妖怪さえも通ることは少ないとされる場所に、灰色のオーロラと共に見慣れぬ外来人の男が現れる光景。
その情報をすでに手に入れていたからこそ、はたては見張る先の場所に男が現れるのを確認できた。天狗の領域は山の中枢、ほぼ中心と言っていい場所にあるため、ここからなら角度を変えるだけで山の如何なる場所にも目が届くのだ。
カイザポインターがなければ、それすらも白狼天狗に委ねざるを得なかっただろうが。
「…………!」
はたての視界──カイザポインターのレンズが映し出すのは、ロングコートの男が近くにいた白狼天狗を容赦なく襲う様。
侵入者と定義されたその男は、哨戒していた白狼天狗に見つかり戦闘になったのだろう。そこへ男は本性を現し、灰色のゾウを思わせる姿へと変貌した。オルフェノクの姿となった男に対して白狼天狗の青年は微かに怯むが、すぐに右手に構えた剣を振り上げる。
されど、その一撃はオルフェノクの装甲を破れず。鈍く散った火花と共に、ゾウのオルフェノクは朝日が照らした影の中に、生身の姿を青白い裸身と映して。目の前の白狼天狗にニヤリと笑みを浮かべてみせた。
オルフェノクが牙から突き出した灰色の触手はやはり天狗の飛翔に通ずる速度で撃ち放たれる。哀れにもその一撃を口の中に滑り込まされ、体内から心臓に到達した触手によって白狼天狗の男は呆気なく、自らの心臓をオルフェノクエネルギーによって焼き尽くされてしまった。
「……やってくれるじゃん……」
はたてはカイザポインターを下ろし、無慈悲な惨劇に唇を噛む。名も知らぬ男だったとはいえ、天狗である以上は同族だ。部署こそ違うものの、同じ組織の一員が惨たらしく殺された現実に心が苛まれる。
カイザポインターの接眼レンズから視線を外している以上、男の最期は見ていない。が、おそらくはオルフェノクの力に耐え切れず、灰化による死を遂げているだろう。
いくら鴉天狗が速度に優れた種とはいえ、あの距離では全力で飛んでも間に合わなかったのは明らかだ。それでも助けに行こうと動くことすらできなかったのは、自分が臆病者だったせいだと自分が自分を責め立ててくる。
せっかくカイザギアを手にしても、勇気が出せないのならば意味がない。これを使うと、あの霍青娥に言ったのは他ならぬ自分自身だというのに。
自分の判断が遅いせいで、すでに一人が犠牲になった。否、飛んだところで間に合わなかったのは分かっている。自分が向かったところで、きっと助けられなかったであろうことは頭で理解している。
それでも怖くて動こうとしなかったのは事実。だからこそはたては自分の迷いにどうしようもない苛立ちを覚えていた。迷っているうちに誰かが死ぬ。怖がっているうちに何もかもが失われていく。はたては、その恐怖を捻じ曲げて。オルフェノクへの──揺るぎない憎悪とした。
妖怪の山、天狗の領域。鴉天狗の一人として割り当てられた文の自室は、大天狗ほどではないもののそれなりの広さを持っている。妖怪の山の内部に切り拓かれた空間であるため、山の景観はそのままに広さだけが拡張されて備わっていた。
そこから一歩出れば変わらず妖怪の山が広がっている。といっても、妖術で捻じ曲げられた空間の中、妖怪の山の深奥地帯は天狗たちの庭――この場においては射命丸文の庭と言ってもいい。よほどのことがない限り、この付近に侵入者は現れないはずだ。
文は巧からファイズとオルフェノク以外についても詳しく訊いた。その話によると、乾巧は外の世界の『西暦2004年』の1月から来ているらしい。その時間のズレを考慮しても、やはり別世界からの外来人である可能性は高い。
巧にとっては幻想郷や妖怪といった未知の要素に加え、別の世界、別の時間などといった荒唐無稽な話が立て続けに舞い込んできているはず。
なるべく丁寧に説明したつもりだが、理解し納得するのは時間がかかるだろうという文の予想に反し、意外なほどすんなり理解してくれたのは彼の壮絶な経験が故だろうか。
「…………」
巧の思考の中にも死せる灰は残っている。あらかたのことは話したが、それでも自分があいつらと同じ──オルフェノクだなどと、そう簡単に話せるはずがない。
たとえ幼い頃に火事に遭い、今日に至るまでの人生のほとんどを人ならざる灰の身体をもって生きてきた身とはいえ。誰かを救うためにオルフェノクの力を使ったことを除けば、覚醒してからもずっとずっと『人間』として生きてきた。
自分がオルフェノクであるという事実を否定するために、手にしたファイズの力を使って、数々のオルフェノクを倒してきた。
人間のフリをして、ずっと自分や世界を騙して──そうやって罪を背負ってきた。
「……おい、なんだこりゃ」
巧はふと目についた紙の束──新聞紙らしきそれを手に取る。文はその言葉に文字を打つ手を止め、振り返った。
「ああ、それは私が書いた記事です。『
「名前なんてどうでもいい。それよりこの『仮面ライダーがオルフェノク退治』ってのはどういうことだ? まさかお前、こんなもんをばら撒くつもりかよ」
巧が気になったのは新聞記事の内容だ。そこには先日撮影されたと思われるファイズやオルフェノクの姿がはっきりと映っている。フラッシュを焚かれた気配など一切なかったにも関わらず、文のカメラは鮮明に闇夜の景色を切り取ったらしい。
一時的な見本用に一部だけ印刷された文々。新聞には、文の手によって綴られた文字がびっしりと並んでいる。
巧が話した詳しい情報はあまり記載されていないようだったが、ファイズやオルフェノクについてはしっかりとその詳細が書かれていた。
「こんなもんとは失礼ですね……私だって一応、この新聞に命を懸けてるんですから」
文は心外そうに唇を尖らせる。幻想郷の──妖怪の山の独自の技術であろう奇妙な機械、巧の知る世界におけるタイプライターにも似たそれを撫で、文は自慢げに言った。
命を懸ける――巧はそれを聞いて、少しだけ表情を曇らせる。
ある者は美容師になるために。ある者は世界中の洗濯物を清めるために。またある者は立派なミュージシャンになるために。それらすべての理想は、彼らに『死んでもいい』とまで言わしめた灰色の『呪い』だ。
巧は最初、それがまったく理解できなかった。自分には見えないものを見つめ、その輝きに向かって走っていく彼らの姿に、どこか寂しさを覚えてしまっていた。
だが、今なら少しだけ分かる気がする。
かつての自分にはなかったもの。旅を経た今の自分なら、きっと誇れるもの。
「常に真実を書いて、幻想郷中にすべてを知らしめる。だからこそ、情報はスピードが命なんです。飛翔においても情報においても、このジャーナリズム──
文の言葉には天狗としての、新聞記者としての
天狗の新聞はそのほとんどが個人で取材から起稿までが行われている。文が発行する文々。新聞も例外ではない。その購買者は多くが同族の天狗たちであり、その在り方はある者に学級新聞などと
それでも文は天狗組織の中でも珍しい、主に人里に関することや幻想郷そのものに関する記事を書いていた。文の新聞はゴシップ的な面もあるものの、それを知ろうとしている者に真実を、正確な情報を伝えたいという
故に、文は裏の取れないような不確かな情報は新聞記事にはしない。真実でさえあれば自作自演のネタを記事にすることも多少はあるのだが──
此度の異変については発生から起稿まで間が開いてしまった。すでに多くの新聞が取り上げていることだろう。ならば、文は文しか知り得ぬ
灰の怪物、オルフェノク。紅き光を纏う戦士、ファイズ。それらはおそらく外の世界から幻想入りを果たした外来の存在であることは間違いない。
未知の怪物に怯える人間や妖怪たちに、少しでも光を届けることができたら。この紅き光が闇を切り裂いてくれるなら。
「……それが、お前の『夢』なのか?」
巧はやや遠慮がちに、そのつもりで素朴に、文が語った信念を問う。
それはかつて自分が憧れたもの。やがて灰と共に辿り着いた道。そして、いつの日か叶えたいと望む、未来への旅路。
共に旅をした美容師見習いの少女曰く『夢を持つと、ときどきすっごく切なくて、ときどきすっごく熱くなる』――らしい。その言葉の意味も、今の巧ならばいつか分かる日が来るだろう。
「夢……と言うとなんだか青臭い感じが拭えませんが、まぁ、そんなもんです。それに、どこが悪いんです? この記事、今まで書いたものの中でも指折りの名作ですよ?」
文はつまらなそうに文句を垂れながら巧の手から自作の新聞を奪い取る。モノクロの写真ではフォトンブラッドの色は分からないが、実際にその光景を目にした文と巧の目にはファイズの紅い輝きがしっかりと焼きついている。
オルフェノクの方は──元より灰色のためか写真でも本物とまったく変わりない。死色の怪物たちは紙面上においても、変わらず灰色の姿で無彩色の光に身を焼かれていた。
「全部だ全部。ベルトのことがバレんだろうが。だいたいなんだ、この──
「いいじゃないですか。仮面ライダー『ファイズ』。かっこいいと思いますけどねぇ」
丁寧に新聞を畳みながら文が呟く。この場においては文しか知り得ぬ『仮面ライダー』という単語を、彼女はその情報通りに仮面の戦士と定義した。その定義では、乾巧が変じたファイズなる存在も当てはまる。
写真の中で戦うファイズの姿から正面に座る巧の顔へと視線を移しつつ、文は頭の中で巧とファイズの面影を重ねてイメージした。
巧は視線を逸らし、傍に置いたファイズギアのケースを見る。何度か敵の手に――否、元の場所に戻ったこともあるファイズのベルト。その度にファイズは
オルフェノクたちにとって、人間として生きようとするオルフェノクは邪魔な異分子でしかない。王を守るために作られた三本のベルトは、オルフェノクの種の本能に抗うオルフェノクを排除するためにも用いられた。
その光景を見た巧は確信している。自分とてオルフェノクだ。彼らとは真逆の意図、人間を襲うオルフェノクが相手とはいえ、同族たるオルフェノクをファイズの力をもって倒していることに変わりはない。それでも、
「……あんま知られたくないんだよ。特に、ベルトを狙う連中にはな」
巧から聞いた話の中には、巧が敵対する
三本のベルト、ライダーズギアを開発した巨大複合企業――スマートブレイン。
スマートブレインは巧の記憶においてはすでに倒産しているはず。しかし、現にこの場所でファイズに変身できる以上、スマートブレインが保有する人工衛星は今も稼働状態を維持しているということだ。
それに加えて明確にベルトを──ファイズギアを狙ってきたオルフェノクがいるとなれば、やはり間違いなくスマートブレインからベルトの奪還を命じられているだろう。
王を守るためのベルトが王に敵対する者の手にあるというのは、スマートブレインにとっても望ましいことではない。
かつての戦いにおいても、スマートブレイン前社長たるオルフェノクの男、巧と共に旅をした少女の義父である男が奪ったベルトを、当時の現社長代理であったオルフェノクの男は何度も取り戻そうとした。
旅立ちの夜に出会ったスティングフィッシュオルフェノクが蘇った以上、すでに一度倒したオルフェノクであろうと再び現れる可能性も否定できない。
すなわち、一度倒産したはずのスマートブレイン社も組織の幹部を揃えて復活している可能性が高いということ。三本のベルトのうち一つしか手元にないというのは心許ないが、少なくとも立ち向かうべきは一度倒した相手だ。巧にとっては恐れる相手ではないはず。
それに、いざとなれば。巧はファイズギアを失っても──戦う手段がないわけではない。
「確か……スマートブレインと言いましたか。未だ実態が不鮮明な組織ですが……」
文は巧から聞いた情報をまとめた手帳に視線を落とす。常に持ち歩いている文花帖は写真やメモがびっしりと書き込まれているが、同じくびっしりと張られたいくつもの
「この特ダネ情報を記事にできないというのは惜しいですねぇ……」
ちらりと巧の顔を見て、文は口惜しそうに溜息をついた。露骨にぶつけられた視線の意味を実感し、巧はいたたまれなくなったように少し迷惑そうな顔で視線を逸らす。
「……アイロンがけぐらいならできる」
ファイズについてのことを記事にしない代わりに、巧は自分にできることを示した。かつて元の世界――『ファイズの世界』で生きていた際、世話になったクリーニング店で培った技術は、オルフェノクとしての消滅を迎えてなお──この身に備わっている。
文の陰湿で嫌味な視線は、巧に共に戦った男の顔を思い出させた。お世辞にも性格が良いとは言えない男だったが、彼が抱くオルフェノクへの
巧が迷って戦えないときもあの男はオルフェノクと戦い続けてくれた。そんな彼がオルフェノクに殺されたのは、自分の迷いのせいではないだろうか。
巧は人間として最期まで戦い抜いて、オルフェノクの王を打ち倒した。
――それでも不意に思う。純粋な人間である彼が死んで、オルフェノクである自分が生き残ってしまったのは正しかったのだろうか──と。
無論、あの戦いに悔いなどは残してはいない。二度目の人生をオルフェノクとして散った過去も間違いなく事実として存在している。巧が生き残ったことも事実だが、厳密にはその後オルフェノクとして灰化を遂げ、どういうわけか再びこの世界に『蘇ってしまった』だけだ。
「…………」
巧は王との最後の決戦を思い出す。優しく純粋すぎたが再び理想を求めた男、弱く臆病ながら戦う覚悟を決めた男。
三本のベルトは巧を含めた三人の男たちに託された。それら王を守るためのベルトは、その力を束ねてオルフェノクの王を倒した。が、その後すぐに決戦の地である地下施設が崩落を始め脱出を急いだため、王の死――完全なる灰化を見届けることはできなかった。
もし巧が倒したはずのオルフェノクが蘇り、スマートブレインも復興しているとしたら。完全な消滅を見届けることができなかったオルフェノクの王が関わっているのではないか─―
険しい顔で深く考え込む巧を見て、文はその様子を訝しむ。ファイズやオルフェノクについての情報は得ることができたが、思えば巧本人についての情報はほとんど得られていない。語りたくない理由でもあるのか、単にその性格が故か。
その直後、部屋の丸窓越しに小さな影が映った。文はそれを見逃さず、手にした文花帖を再び懐へ戻す。ばさばさと羽音を鳴らしながら窓の縁に降り立った一羽のカラスの鳴き声に耳を傾けると、文は表情を変えた。
用件を伝えたカラスは翼を広げ、窓の向こうへ飛び去っていく。去り際に一際高く上げられたカラスの鳴き声は容赦なく行動を急かすような切羽詰まった様子が感じられた。
「……乾さん、どうやらまた
顔だけで振り返り、巧に伝達の内容を告げる。別の鴉天狗から伝えられた通達には明確にオルフェノクとの交戦を命じる意図があった。
まさか、妖怪の山の天狗たちはオルフェノクの存在を知っているのか? 天狗組織全体に知れ渡っていない情報だとしても、一部の上層部はその情報を隠し持っていてもおかしくない。文は独自の調査で組織から『仮面ライダー』に関する情報を得ていたが、彼らはまだ何かを隠している可能性が高い――
カラスが伝えた座標はここからそう遠い場所ではない。これ以上の犠牲者を出す前に該当地点へ辿り着くことはできる。それも、鴉天狗としてのスピードに頼る必要もなく。
巧は先日から──文と出会う前から負っていた傷がまだ残っており、服の下に巻かれた包帯は血が滲んでいる。さほど深い傷でもないだろうが、この傷で前線に出られれば貴重な情報源である彼を失ってしまいかねない。
だが、取材の基本は前に出ることだ。文の同僚として親しい──あるいは
「怪我人に無理をさせるわけにもいきませんが……」
「こんな傷、どうってことねえよ」
「そう言ってくれると思ってましたよ」
文は巧の返答にニヤリと笑い、巧と共に扉の先へ向かう。カラスから伝えられた座標は妖怪の山の中腹、天狗の領域からそう遠くない場所だ。
日課として山を巡回していた際にもよく通った覚えのある道。もし仮に巧が迷ったとしてもこの周辺ならば人間の気配を辿れる。無論、そんなことにならないようにしっかりと目を光らせておくつもりだが。
最悪の場合があっても彼ならばファイズとして戦える。ただの外来人以上の戦力を持ち、自分で戦えることは先日のスティングフィッシュオルフェノク戦で確認している。
ファイズとしての力をどれだけ信用していいか分からないが──少なくとも先日現れたオルフェノク程度であれば、トドメの一撃を迷う程度の余裕はあるようだ。
巧の手にはファイズギアを収納したケース。これは巧にとって、人間として、ファイズとして戦うための証。
決して忘れることなく手に取って、巧はアタッシュケースに込めた信念と共に文の自室を飛び出した。向かう先はこの妖怪の山にて再びオルフェノクが確認されたという場所である。
山の道を抜け、文と巧は多少開けた場所に出る。巨大な滝が激しく流れ落ちるこの場所は変わらず彼ら妖怪たちの領域ではあるが、特殊な妖術などは施されてはいないただの山。誤って人間が踏み入ることもあるし、夜になれば妖怪の動きも活発になる。
ここは妖怪の山の中腹部、飛沫舞い散る『九天の滝』と呼ばれる場所。落ちる水は山を下っていき、川となって霧の湖へと流れていく。
周辺は天狗組織の防衛と哨戒を担当とする白狼天狗たちによって守られているため、侵入者はほとんどいない。稀に白狼天狗の警告を無視し、さらに白狼天狗を無力化して乗り込んでくる者もいるが、それは例外中の例外だ。
此度の異変においても一部の白狼天狗はオルフェノクによって灰化されてしまったのだろうか。侵入者とはいえ山の上の神社を調査しに来ただけだった博麗の巫女や普通の魔法使いとは比べ物にならないほど厄介な相手も、彼らとの戦闘に慣れた乾巧──ファイズがいれば心強い。
「……ぐうっ……ッ!」
そんな中、白狼天狗の少女がゾウのオルフェノクを相手に戦っていた。大きな深手こそ負っていないが、全身は戦闘によってボロボロになってしまっている。
白と黒の天狗装束に身を包み、一部にあしらわれた赤色は妖怪の山を染める紅葉の色に通ずるものを感じさせる。短く整えた白髪には狼というよりはどこか犬のそれじみた獣耳が突き出しており、豊かな尻尾は髪と同様に白く染まっていた。
右手に構えた長剣と左手に持つ紅葉模様の盾を駆使しながら、妖怪の山に侵入したオルフェノクと交戦しているのは山中哨戒担当の下っ端白狼天狗――
この遠視能力のおかげで広い妖怪の山において哨戒中に侵入者を発見できた。侵入者である以上は山の外から入ってきたことは間違いないのだが、外部を担当していた同僚の白狼天狗はこの存在に気づくことができなかったのだろうか?
いくら自分が下っ端とはいえ侵入を阻止できなかったのなら次の領域の防衛を求む報告があるはず。報告されていない以上、この侵入者の発見には自分の眼に頼るしかなかった。
「…………っ!!」
無意識に戦闘を忌避していたためか、外敵を前にして余計なことを考えてしまっていた自分に気づく。これほどの相手を前に、そんな隙は決定的な不覚に繋がる。
咄嗟に盾を掲げるが、判断の遅れを悔いる暇もなく。鴉天狗の飛翔に通ずるスピードで突き伸ばされた灰色の触手は一直線に椛の顔を目指し、突き進んだ。
――しかし。椛が瞬く間もなくそれは阻まれる。同じく音速で放たれた疾風の光弾が触手を貫き、その軌道を弾き捻じ曲げることで椛を触手の一撃から救ったのだ。
一瞬のことに混乱する椛。白狼天狗である彼女は鴉天狗ほどの圧倒的なスピードを持たない。その代わりに優れた感覚を持っており、その能力が故に彼女ら白狼天狗は妖怪の山の哨戒任務を請け負っている。
椛が認識できた速度は音を超えたという一点だけだった。彼女が不満そうに眉間をひそめてみせたのは、それだけの速度には一人しか心当たりがなかったこと。加えてはらりと舞い落ちた漆黒の羽根の艶やかな輝きが、自身の知る『上司』の来訪を告げていたからだった。
「ずいぶんと調子が良さそうね。普段から河童たちと将棋に興じているおかげかしら?」
文は椛の正面に舞い降り、背中越しに顔を向けて椛に皮肉を投げかける。鴉の如き視線に返す狼の如き視線には、個人への不信感と組織への忠誠心が混在している。
「射命丸様……また大天狗様のご命令ですか?」
不満そうに問う椛。ただの外来人と見て油断していたこともあったが、目の前のオルフェノクは自分一人の実力では退けられないと認めざるを得なかった。
「さぁ、どうでしょうね。とりあえず、あなたはおとなしく持ち場に戻ってなさい」
「……了解しました」
椛は文の言葉に目を伏せると、再び顔を上げて答える。その目には微かな迷いもない、組織への忠誠心だけが確かに込められているようだ。
その真っ直ぐな瞳は、文の心に鋭く冴える牙を突き立ててくる。黒い羽根で覆い尽くした本心を穿つように、椛の実直な剣が文の中の暗闇を暴くかのように輝いている。文はその真っ白な素直さが、どうも好きになれなかった。
それは椛とて同じだろう。彼女が文を見る目は、隠し切れない侮蔑の念が見て取れた。本心を隠しながら組織に従って生きているのは、白狼天狗の彼女も同じことだ。
椛は組織の一員として協調性を重んじる。そんな彼女は個人的な理由で上司を嫌うことを良しとせず、任務に支障をきたすことを避けようとしている。
組織に属するということは自分の意思だけでは動けなくなるということ。文とてそれは重々承知している。だからこそ、鴉天狗は柔軟に。組織の命令を緩やかに解釈して風と共に幻想郷の眼となり翼と成れるのだ。
文と同じ天狗の一本歯下駄をもって、椛は軽やかに大地を蹴る。天狗らしい身のこなしで山の木々へと飛び移っていき、椛は去り際に巧を見た。
上司である文と共に行動している外来人。その存在に椛が不信感を覚えるのも当然だ。だが、それ以上に椛は巧に対して明らかな『何か』を感じ取っていた。確証こそ取れないが、椛の優れた知覚が感じ取ったそれは、彼女に一抹の不安を覚えさせるに十分なものである。
「…………?」
気のせいかもしれないが──椛は白狼天狗として備える優れた嗅覚でそれを感じ取った。文と一緒にいる男から、かのゾウに似た灰色の怪物と同じ匂いがしたことを。
外来人であるのなら匂いが似通うのも必然か、と深く考えず、椛は鴉天狗には及ばないながらも天狗としては相応のスピードで山を駆ける。椛は文の性格を知っているため、取材のためとあらば外来人にまで接触するだろうことを理解しているのだ。
巧と椛の目が合う。その視線は狼の如く鋭い。にも関わらず、瞳の奥に優しさを隠し持っていることがなぜか伝わってきた。
すぐさま椛から目を離した巧は文が牽制していたオルフェノクに向き直る。椛は銀色のアタッシュケースをその手に構え持った巧の姿を横目に、個人的な感情で戦闘に参加したい気持ちを抑えながら。自分が今するべきことを──上司たる大天狗への報告を優先するのだった。
―――
文は椛を背中で見送りながら、目の前の怪物を警戒する。正面から対峙しているのはゾウの特質を備えた『エレファントオルフェノク』だ。側頭部から伸びたゾウの鼻は強靭な角と垂れ下がっており、口元からは鋭い象牙が剥き出しに生えている。
その全身に纏う装甲もゾウを思わせる重厚な皮膚が変化し鎧となったもの。オルフェノクとして進化した鎧は、戦車の装甲にも匹敵する。
だが、巧はまたしても既視感が拭えないでいた。スティングフィッシュオルフェノクと同様、このオルフェノクもかつての戦いで一度は引導を渡しているからだ。
「はぁぁ……ああッ!」
鈍重そうな見た目に反し、エレファントオルフェノクは大地を駆けて突っ込んでくる。巧に変身の隙を与えようと文が弾幕を放つが、怪物の重厚な装甲には微かな妖力で構成された弾幕など注意を引くだけの効果ももたらしてはくれそうにない。
エレファントオルフェノクはそのまま山の崖に激突し、大地を揺るがす。それでも難なく振り向くと、視線の先の巧──彼が手に持つファイズギアを目掛けて側頭部に生える角の先を。使徒再生のための攻撃としても用いられる灰色の触手と成し、真っ直ぐに突き伸ばしてきた。
「…………っ!」
ただの人間には視認すら難しい速度。されど、巧とて少なくとも一度は死を超えている。本能的な反射神経で辛うじて身を
しかし本性を隠したままの今の姿では身体能力は人間と変わらず。たとえ死を超えて覚醒したところで、この姿のままでは常人より死ににくい程度でしかない。もっとも、一部のオルフェノクは生身でもその力を行使できるらしいが──
咄嗟に岩場の陰に隠れて続く触手の一撃をやり過ごす。アタッシュケースを開こうとその場にしゃがみ込むが、巧は背後からの気配に気づいてすぐに立ち上がった。
触手による攻撃を諦めて自ら突進してきたエレファントオルフェノクの体躯が小さな崖を粉砕し、その衝撃をもって巧の身体を吹き飛ばす。突進の直撃を受けたわけではなかったが、遮蔽物を破壊するほどの力は怪我を負った巧の身には少しだけ堪えた。
手にしたアタッシュケースもその衝撃で吹き飛ばされてしまったのだろう。さっきまで保持していたはずなのに巧の近くにはない。周囲を見回してみると、厄介なことにエレファントオルフェノクのすぐ近くの場所に吹き飛ばされたアタッシュケースが落ちているではないか。
「ちっ……!」
この身体では奴より先に取り戻すことはできない。だが、あるいは
しかし、巧はそれを拒んだ。人間として、ファイズとして戦うと決めたから。もう一度あの姿に至って戦うことを心のどこかで忌避しているのだ。
もう迷わないと決めた。そのはずだ。そう自分に言い聞かせて、巧は恐れを押し殺して自らの中にある灰の細胞を目覚めさせようとする――が、その行動は完遂されなかった。
目の前で炸裂した妖気の風が、エレファントオルフェノクの装甲を切り裂いたからだ。
「乾さん! 無事ですか?」
文の問いに気づき、巧は狼狽しつつも小さく答える。オルフェノクがケースを手にしていないのは、文が渾身の力で放った弾幕がようやくオルフェノクにまともなダメージを与えることができたからだった。
鴉天狗のスピードで駆け抜け、文は怪物より先にアタッシュケースを手に取る。
やや気だるげに溜息をついたエレファントオルフェノクは文が抱えたアタッシュケースを見ながら、落ちた陽光に生じた影の中に青白い裸身の姿を映し出した。
「そのベルト、ちょうだい」
「……やっぱり狙いはこれですか」
両手でしっかりとケースを保持しつつ、文はエレファントオルフェノクに向き直る。
ゾウを思わせる怪物の長い鼻。側頭部の双角とは別に顔面にも備わったそれは紛れもなくゾウの特質を備えたものだが──
その高く長い鼻は天狗の種族である『
「…………」
銀色のアタッシュケースを手に、文は刹那の思考を馳せる。これを巧に渡したいのだが、素直に投げれば自分と巧の間に立つオルフェノクに奪われてしまうだろう。
ゆっくりと近づいてくるエレファントオルフェノクに文は再び風の刃を放つが、妖力を練る隙が足りず効果的なダメージになっていない。
それならば──と。上手くいく保障などはない。文は手にしたアタッシュケースを開き、中からファイズドライバーを取り出した。不慣れな手つきながらもデバイスを取りつけつつ、自らの腰に叩きつけるようにしてファイズドライバーを巻きつける。
ベルトの中に循環する赤い光が、まるで血の流れのように。紛れもない力として、その熱が身体に伝わってくる。文はなぜかその感覚がどうにも恐ろしいもののように思えた。
「おい! 何する気だ!!」
「大丈夫です! 使い方は見て覚えてますので!」
オルフェノクから目を背けることなく、文はファイズフォンを右手で開く。大まかな流れは見ていたものの、細かい動作まではあまり覚えていなかったが──
アタッシュケースの内側に書かれた記号の様子や、ファイズフォンが示す感覚的なデータが基本的な使い方を丁寧に教えてくれていた。
焦らずコードを入力する。表示が示す通りに『555』のキーを入力し、ENTERを押す。
『Standing by』
ファイズフォンが告げる認識音を聞き、文は一つの可能性に賭けていた。
巧の話ではこのベルト、ファイズギアなる力はオルフェノクの王を守るために作られたオルフェノクのためのベルトなのだという。
オルフェノクの王を守るためのライダーズギア。その力が、オルフェノクと敵対する者の手に渡ったらどうするか? オルフェノクはそれを考えられないほど愚かではないはず。とすれば、スマートブレインなる組織は、ベルトに何らかの制限をかけているのではないか──
文はファイズフォンを閉じ、真剣な顔で思考を続ける。オルフェノクを警戒しつつ、もしも『オルフェノクではない者』がベルトを使えばどうなるのかを実験する。
ただの外来人であろう乾巧が変身できるなら、天狗である自分も問題なく変身することはできるのだろうが──
長年を生きた直感によるものだろうか。文はどうしてもそれをそのまま飲み込めなかった。それを確かめるために、文は自分の身体をもって真実を求める。
この黒き翼は闇と共に。ファイズが赤い光をもって闇を切り裂くのなら。鴉天狗である自分は闇をもって闇の中の真実を手繰り寄せればいい。
待っているだけでは真実は見つけられないのだ。真実を知るには、自らの
「よせ!!」
「……変身っ!」
巧の静止を振り払い、文は覚悟の言葉を呟く。振り下ろされたファイズフォンが、ファイズドライバーのコネクターに接続され、そのまま水平になるように倒されるが──
『Error』
「……っ!? きゃあっ!!」
ファイズドライバーから音声が響き、紅い閃光が
その衝撃で文は後方の断崖に背中をぶつけ、身体に響いた痛みに顔を歪める。ガチャリと鈍い音を立てながら飛んでいったファイズドライバーに視線を馳せる余裕すらも見出せない。
「ぐっ……う……!」
咄嗟に翼を展開していたおかげで衝撃を和らげることはできた。それでも抑え切れなかった肺への衝撃によって呼吸が制限され、思考に微かなノイズがかかるのが分かる。
「ちっ……!」
巧は文の身体を心配するが、それも一瞬のこと。駆け寄りたい気持ちを抑え、巧は文の身から外れたばかりのファイズドライバーを見た。
装填されていたファイズフォンもドライバーから外れている。地面に落下してから外れたためか、幸いそれら同士は離れていない。それでも巧から見れば手の届く距離にはなく、むしろ文と共にエレファントオルフェノクの方が近い位置に存在してしまっている。
再び
─―耐えろ。守り抜け。灰色の旅路ではなく、紅く切り拓く光の道を夢と目指せ。
ただ時間にすれば、巧の思考は刹那のことだった。エレファントオルフェノクがファイズドライバーに近づこうとする瞬間を見て、巧は思わず駆け出していた。忌み嫌った己の姿、灰色の狼としてではなく。白き未来を歩む、『乾巧』として。
しかし──人間の速度では間に合わない。距離も力も足りていない。エレファントオルフェノクが当たり前に伸ばした右腕の隙間に――人間の意地を滑り込ませる余地すらない。
そんなとき、巧の視界にもう一つの
「ぐぉ……おお……!?」
黄色い光弾は数発に渡ってエレファントオルフェノクの装甲を撃ち抜き、その体躯を怯ませる。突如として起きた変化に巧は一瞬驚くが、すぐに反応してオルフェノクが手に取り損ねたファイズドライバーをその手に掴み取った。
左手でベルトを巻きつつ、右手で拾い上げたファイズフォンにコードを入力する。
『Standing by』
「変身っ!」
『Complete』
ファイズドライバーのコネクターにファイズフォンを装填。そのまま水平に傾け倒し、巧は全身に広がる赤い光のラインを感じながら電子音声を聞く。
構築されたフォトンフレームを軸に、空を隔てた世界にあるはずの人工衛星から電送された漆黒の強化スーツを身に纏い、巧はこの地において再び『ファイズ』となった。全身に満ちる真紅のエネルギーの熱と灰を苛む不快感を振り払うように、いつもの癖で右手を軽くスナップする。
「はぁっ!!」
ファイズの脚力をもって巧は山の大地を蹴り上げる。風を裂くは地上の鮫が如き威圧、そのスピードは右の拳をエレファントオルフェノクの腹へ的確に打ちつける。
さらに振り上げた右脚でエレファントオルフェノクを真正面へと蹴り飛ばす。純粋な威力こそ心許ないが、ファイズの全身に絶えず流動するフォトンブラッドの衝撃がその破壊力を何倍にも強く高めてくれているのだ。
蹴り飛ばされ、断崖の壁を打ち砕いて舞った土煙に包まれるエレファントオルフェノク。あれだけの重量を持つにも関わらず、ファイズはその体躯を蹴りの一撃で吹き飛ばし、あまつさえ背後の断崖を打ち砕くほどの衝撃を見舞ってみせた。
ぱらぱらと落ちる石と砂、その中に先ほどの体躯は姿を見せない。ファイズの力を悟ってこの場を去ったのか、あるいは予期せぬ一撃を受けたことで力尽きてしまったのか――
「痛ったた……何が起きたの……?」
文は呼吸を整え、翼を消失させながら己に問う。妖怪の身ゆえに身体的なダメージはさほどないが、思考を根こそぎ焼き払うような衝撃は不可解なものだった。
「それに……さっきの光は……」
未だ秋めく陽光の照らす山の空を見上げて、文は先ほど空から撃ち放たれた光弾を想う。それはファイズの赤いフォトンブラッドと似たエネルギーの輝きをしていたが、ファイズの赤色とは違ってそちらは『黄色』の輝きだった。
似ている――が、それが同一のものだという確証はない。文はそれ以上の思考に深く切り込もうとしたが、不意に響いた地鳴りと振動によって再び思考がそちらに向けられてしまう。
「あやややや……今度はいったいなんですか?」
山の唸りに過去を思い出し、文は鳥肌を抑えながら
巧にとっては本能で感じるオルフェノクの気配。文にとっては肌に伝わる戦意と敵意。空気を裂いて届くかのようなその威圧感に、二人は無意識に身構えていた。
瞬間──瓦礫の山が怒号を上げて炸裂する。そう見えたのは、瓦礫の山の中にいたエレファントオルフェノクが自らのパワーをもってそれらすべてを吹き飛ばしたからだ。
現れたのは先ほどと同じエレファントオルフェノクに相違ないだろう。以前において元の世界、自分の世界で戦った際にも一度その姿を見ている巧は、それが
その姿は、元の数倍とも言える圧倒的な巨躯へと変化を遂げていた。さながら森羅万象を踏み鳴らす巨大なゾウが如き『突進態』へと変化したエレファントオルフェノクは、巧と文をまとめて押し潰そうとゾウの身体から生えた自らの上半身を鼻のように振り回して突っ込んできた。
文字数が多くなりすぎないように調整してたら変なところで終わってしまった……
第26話『オルフェノクの記号』