ありふれオルガ   作:谷L

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 全く関係ないけどマブラヴオルタ続編決定&アニメ化おめでとうございます。
 マブラヴをすこれ。






3話 「罠」

__オルクス大迷宮一階層

 

 

「はっ!」

 

 横薙ぎに振るわれた剣は、きれいな一閃を虚空に描き獣の胴体を捉えた。刹那それは見事に両断され、金色の炎に包まれて消えていく。

 

 続いて第二、第三のモンスターが“彼”の前に立ち塞がるものの、足を止めることなく再び剣を構える。相手の飛びかかる瞬間を見計らって左足の踵で思い切り地面を切り一気に距離を詰める。

 黄金の剣が喉元を穿つ。その勢いで上体を回転させさらに剣を振りかぶる。寸分の猶予も与えることなく三体目のモンスターは頭から二分された。

 

 勇者の称号を与えられし“天之河光輝”の実力はここオルクス大迷宮内でも遺憾なく発揮される。その姿は誰から見ても他の追随を許さないほど暴力的で美しかった。

 

 さらに魔法組が詠唱を始める。

 

__暗き炎渦巻いて 敵の悉くを焼き払わん

 

__灰となりて大地へ還れ

 

__“螺炎”

 

 洪水が溢れる如く炎がどっと広がり、螺旋状に弧を描く。螺炎は敵を容易く飲み込み、一切の残骸を焦土へと燃やし尽くした。

 

「あー、やはり勇者組には一階層の雑魚は弱すぎるな」

 

 目の前で行われる一方的な蹂躙劇。

 その光景に苦笑を浮かべるしかないメルド団長と他のクラスメイトたち。

 

「これが勇者組の力…」

 

 周りのクラスメイトたちの歓声に掻き消されて、ぽつりと口から漏れたハジメの声は誰にも聞こえることなく霧散した。

 

___________________________________________________

 

 

 

「とまぁ、こんな感じで交代で戦ってもらう。お前たちの戦いを一通り見て、行けそうなら今度は20階層を目指すぞ」

 

 メルドの誘導の下、遠征組はさらに迷宮の奥へ進んでいく。初の実戦経験に興奮で身を震わす者も少なくない。

 一方で見るからに足取りの重い者が一人。ハジメである。

 

「僕来るとこ間違えたかな…」

 

「お、早速弱音吐いてんのかよ。まだ始まったばかりだぜ」

 

「痛い痛いよ」

 

 勢いよくハジメの背を叩くオルガ。彼なりの励ましだが力が入りすぎていたようでハジメの方も顔を顰めている。

 

「ていうかオルガ、なんで死んでないの?」

 

「死んでる前提で話すんじゃねぇぞ」

 

 端から見ればなんとも酷い会話であるがハジメがそう言ったのには理由がある。実はオルクス迷宮に挑んでから今までの様子を見る限り、何故死んでないのか疑問に思っても仕方ないぐらいオルガは散々な目に遭っているのだ。

 

 

『待ってくれ、待てって言ってるだろ!』

 

 矢受けの加護の作用であろうか、どうやらオルガにはモンスターを引きつける何らかの力があるらしく、何度も魔獣を引きつけては食い殺されそうになっている。否、食い殺されている。

 

『止まるんじゃねぇぞ…』

 

 モンスターに屠られる度、そう詠唱を繰り返しては騎士団や勇者組の応援が駆けつけるまで何とか命を繋ぎ止めていた。メルド団長ですらその回復力に引いていたほどである。

 

「ほんと、オルガは昔から謎が多すぎるよね」

 

「あ、あはは…」

 

 勿論ハジメはオルガが転生者であることも知らないので、これまで彼の異常性に振り回されることも少なくなかった。

 

「次、南雲ハジメ!」

 

 メルドの声が聞こえる。どうやら次はハジメが戦う番のようだ。

 

「頑張れよ」

 

「うん、行ってきます」

 

 親友からの励ましを受けメルドの元に向かう。

 

「昨晩、あんなにカッコ付けて白崎さんの前で約束したのにいざ本番になると腰が引けるなぁ…」

 

 ただその後ろ姿はいつも以上に頼りなさそうに見えた。

 

~~~~~~

 

 

「ひぃっ!」

 

 目の前には自分と同じぐらいの体躯のモンスター。4つ足で鋭い牙を持っている動物型だ。

 

「だいぶ弱らせておいたがこれなら倒せるだろう?非戦闘員とはいえ身を守れる位にはなってもらうからな」

 

 予め嬲られ弱っているとはいえ、ハジメにとって気を抜く相手ではない。強い装甲も人並みの反射神経もないから一度噛みつかれるだけでも致命傷になり得る。

 

「南雲くん頑張れ」

 

 遠くからハジメの様子を見守っている姿もある、香織だ。

 

「集中だ」

 

 これまで学習したことをもう一度頭の中で繰り返す。咄嗟の攻撃を防ぐためある程度の距離を取りながら円を描くように敵の周りを動く。片手を手のひらを下にして地面の上に、もう片方の手でナイフを握り敵の喉元へ向けている。

 

「あいつ、何をする気だ」

 

 あまり見慣れない戦法を目にし、物音一つ立てずその様子を凝視するメルド一向。

 

__イメージしろ

 

 イメージするのは回路だ。魔力を電流にして回路に流す、その感覚を意識する。慣れない感覚に若干の嫌悪感が襲うが集中のため考えないようにする。

 慣れてくるや覚悟を決めて行動に映る。

目を瞑った。少しでも時間がかかれば相手の攻撃を受けて即死だ。

 

 暗闇の中でぼんやり視えてきたのは絡み合うように伸びる複数の線。回路の一部であろうか、徐々に明瞭になっていき、

刹那、途端に蒼白い電流が線の上を走る。魔力が溢れ出したのを理解するのにそう時間はかからなかった。

 

__錬成、開始

 

 手のひらから地面へ向けてどっと魔力の電流が放出される。回路の一部が可視化されたのだ。それは地面を伝って敵の足下へ向かう。直後形成された錬成陣の下に吸い込まれるようにモンスターは崩れ落ちた。

 いや正確に言えば崩れ落ちるのではない、敵の足そのものが地面に埋まったのだ。敵も抵抗するが足を固定されてるため動くことが出来ないでいる。

 

「ほう、なかなか面白い戦い方をする、かつての“鋼の錬金術士”を彷彿とさせるな」

 

 関心したように話すメルド。錬成術を使って確実に動きを封じてからとどめをさす。一般的に実戦向けの能力ではないと思っていた錬成への評価を変える必要があるように感じた。

 

「終わりだ」

 

 恐る恐る奴の元へ近づき短剣で首元を抉る。血が周りに飛び散り服や皮膚にも付着した。甚だしい嫌悪感に襲われるが耐える。敵の息の根が止まったことを確認するやハジメは地面に座り込んだ。

 他のクラスメイトが数秒で倒せそうな雑魚を倒すのですらこの有様であるのだ。

 

「やったね、南雲くん」

 

 笑顔を浮かべ香織が手を振っていた。その奥でオルガとメルド団長もグッドサインを送っている。

 

「…実際に見守ってもらうのはやっぱり少し恥ずかしいな」

 

 照れくさくなって視線を横にずらしてしまったが、どうやら香織の方は無視されたのかと勘違いして落ち込んでいる様子だ。

 

「ふーん、いいんじゃねぇの」

 

 二人の姿に半ば察することのあったオルガは気付かない素振りを見せているが、

 

__なんだよ、俺がいなくても大丈夫じゃねぇか

 

 密かに胸を撫で下ろした。

 

 

~~~~~~

 

 

__オルクス大迷宮二十階層

 

 

___天翔羽ばたき 天へと至れ

 

___天翔門!!

 

 

 眩しいぐらいに名いっぱい輝く聖剣から撃ち出された黄金の斬撃。敵は為す術無く一身に攻撃を受け跡形もなく姿を失った。その衝撃は敵だけでなく壁すらも消し飛ばしてしまうほどである。

 

「すごーい、20階層の敵も楽勝だね」

 

「流石、天之河くん!」

 

 毎度の事ながら周りの者たちからどっと歓声が上がった。剣を鞘に収め鎧に付着した砂埃をさっと手で落とし終わった光輝は周りの歓声に気付くや満面の笑みで手を振っている。

 

「メルドさん!この前教わった技うまく使えまし…」

 

「この馬鹿者!」

 

 光輝が喋り終わらない内にメルドの拳骨が彼の頭に叩き落とされた。

 

「まったく、あんな大技を使って洞窟が崩壊したらどうするんだ?」

 

「すみません…」

 

 カリスマ溢れるように見える光輝だがやはり彼にもどこか抜けているところがある。実は今のようにメルドの怒りを買うこともこれが初めてではない。

 といってもそれにはメルドにとって光輝は弟子と言うべきか、一番期待している勇者であることも一因ではあるのだが。

 

 

「あれ…何だろう、宝石?」

 

 先ほどの光輝の攻撃によって露出した壁の中に光るものがある。香織が最初にそれに気付くと、クラスメイトが一斉にその方向へ振り向いた。メルドが説明を加える。

 

「あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だし珍しい。あの涼やかな輝きで貴族に大人気の鉱石だ」

 

「きれい…」

 

 宝石の美しさに思わずそう口から漏れる香織。しかしその言葉を聞き逃さなかった者がここにいた。

 

 

「じゃあ、オレが取ってきてやるよ」

 

「え!?」

 

 檜山大介。天職は軽戦士。転生前からも何かとハジメに絡む集団の一人である。所謂いじめっ子体質であり、学校でもハジメを酷く馬鹿にしてはよくオルガと喧嘩していた。

 

「こら大介、勝手な行動をするな!」

 

 メルドの指示に聞こえないふりをして、一目散に壁をよじ登っていく。

 

 

「よせ!それはトラップだ!」

 

 先ほどよりはるかに覇気のこもった怒号に流石の檜山も動きを止めるが時既に遅し。宝石に手が触れた瞬間、全員を取り囲むように巨大な魔方陣が広がった。

 

「転移魔法だ。衝撃に備えろ!」

 

 その場にいた全員が突然の浮遊感を感じた。直後地面にたたきつけられたように衝撃が襲う。

 誰もがその危機的状況を悟るのに時間はかからなかった。この感覚といい魔方陣といい、今の状況は異世界に召喚されたあの日のものと明らかに酷似している。

 

 足下は大きな石橋であった。

 

「ここは何処なんだよ!」

 

 悲鳴があちこちで聞こえるが悪夢はまだ始まったばかり。

 

「みんな、前を見て!」

 

 勇者組の一人“八重樫雫”が指さす先には、転移の魔方陣とは別の魔方陣が展開していた。

 

「来るぞ」

 

 メルドの言葉通り、稲妻であろうか、おおよそこの世のものとはおもえないドス黒い“闇”が魔方陣から溢れ出す。

 

グゥァァァ!!

 

 闇を纏い降臨したのは黒に染まった巨大魔獣。大きさは先ほどまで戦っていたモンスターとは比べものにならないほどでかい。やつから溢れ出す闇の稲妻は周りの地面を削り取り灰に変えていく。

 

「ベヒモスだ….」

 

 メルドまでもがその姿、威圧感に驚愕としていた。

 

 

___________________________________________________

 

 

 

 ベヒモス。オルクス大迷宮65階層の魔物であり、当時“最強”と謳われた冒険者ですら歯が立たずどうにか逃げ延びたという化け物らしい。その力は騎士団最優のメルドですら凌いでいる。

 

「ヤツは俺たちで引き受ける!お前たちは引け!!」

 

 メルドの覇気迫る声を皮切りに、我先にと一斉にクラスのメンバーが背後の扉めがけて駆け出す。騎士団の一人“アラン・ソミス”が先頭に立ち先導する。

 

「待って、向こうにも黒い魔方陣が!」

 

 再び雫が叫ぶ。視線の先には出口を塞ぐように禍々しい泥の闇が魔方陣から溢れかえった。そして何百もの骸骨が姿を現す。

 

「あれは38階層の魔物、“トラウム・ソルジャー”!」

 

 止まることなく依然と増え続ける骸骨の戦士たち。扉はすでに固まった泥によって封じられてしまった。

 

「落ち着け、皆で力を合わせれば突破できる相手だ!団長が後ろを守っている内に早く!!」

 

 アランの指示に真っ先に従ったのは雫そして同じく勇者組“坂上龍太郎”だ。それに続いてクラスの者たちも次々と武器を構え一目散に敵との距離を詰める。

 

「行くぞテメェら!」

 

「みんな慌てず陣形を立て直して!騎士団の人を援護しつつここを突破するわよ!」

 

 今、開戦の火蓋が切られた。

 

 

~~~~~~

 

 

___全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを

 

___ここは聖域なりて、神敵を通さず

 

___〝聖絶〟

 

 騎士団長メルド、加えて騎士団員三名によって発動された多重障壁がベヒモスを待ち構える。

 王国最強の“盾”と最凶の怪物の“矛”がついに交わった。瞬間、周辺の空間を巻き込んで衝撃波が轟く。頑丈であるはずの石橋も大きく損壊し揺れを引き起こす。離れた場所にいる生徒たちからも悲鳴が上がった。

 

「くっ、何という威力!」

 

 徐々に押されているのはメルドたちの方である。障壁が一つ一つ形を保てず割れ、彼らの方もじわじわと後退していく。

 

グゥォォォッッ!

 

 尚も唸りを上げ前進を続けるベヒモス。休む間もなく漆黒の稲妻が障壁を抜けメルドたちに襲いかかる。

 ついに壁は崩壊した。

 

「ぐわぁっ!」

 

 後方へ吹き飛ばされる団員たち。メルドですらも耐えきれず姿勢を崩す。

 

「ははっ、これは参ったな」

 

 圧倒的力量差に思わず苦笑が漏れてしまう。

 だが、こんなところでは終われない。

 

「ここで屈していてはお前等に見せる顔がないからな」

 

 脳裏に浮かび上がるのはかつてのパーティーの仲間たち。最前線で魔族と死闘を繰り広げどうにか勝利を収め続けた人間界最強の精鋭。人間界の“悪魔”と呼ばれた若き少年を始めとして皆屈強で仲間思いの奴らばかりだった。今では様々な要因があって解散してしまったがその栄光は今尚有名だ。

 その要因の一つに自分が関係していることも思い出し唇を噛みしめる。

 

 あいつらのためにも負けられない。

 

「来いよ、バケモン!」

 

 立ち上がり再び剣を構えた。

 

 

「…天翔門!」

 

「!?」

 

 予想外にも後方から光の斬撃が敵に降り注いだ。大した威力ではないが相手の気を逸らせていることは確かだ。急いで振り返った。

 

「お前、何故ここにいる!?」

 

「メルド団長、俺も戦います!」

 

 光輝だった。

 

~~~~~~

 

 

 

「まずい!」

 

 場面は変わり出口付近。トラウム・ソルジャーとの戦いは激化していた。

 戦況は芳しくない。連携がとれていないのだ。

 

「みんな、慌てないで。無闇矢鱈に動かないで!」

 

 雫の指示に耳を貸す者は少なかった。だがそれも仕方のないことだ。騎士団を除いてここにいるのは今日実戦経験が初めての者ばかり。しかも予想外の状況に皆パニックに陥っている。

 たとえチート級の才能が集まったとしても戦場での経験がない素人の集まりでは並の敵ですら苦戦してしまうのだ。

 

「横から来るよ、油断しないで!」

 

 陣形も既に乱れ、容易に敵の襲撃に翻弄されている。

 

「嫌ぁ!」

 

 クラスメイトの一人が逃げ遅れ体勢を崩した。すぐそばには骸骨の刃が迫っている。

 

「逃げて!」

 

 雫が全力で向かうが時既に遅し。

 ちょうど敵の剣が少女を、

 

 

パ、パァァーン!

 

 その剣が振り下ろされることはなかった。

 少女の視界の先には原型を保てないほどの衝撃を受け吹き飛ばされる骸骨の姿。

 

「!?」

 

「…足を止めるなぁ!」

 

 その場にいた全員の意識が声の先に集まる。そこには轟音を立て凄まじい速度で急接近してくる物体、いや乗り物なのだろうか。

 どうやらあそこから弾丸らしきものを撃ったようである。

 

「嘘…なんであいつが」

 

 誰もがその光景を信じられずにいた。

 何故なら、あそこにいるのは、

 

「このままじゃあ…、こんなところじゃ……!終われねぇ!!!」

 

 オルガだった。

 クラスの中で唯一戦場を歩いたことのある男だ。

 

 

 たった一人で戦況を覆せるのだろうか

 

「楽勝だ」

 

 そうつぶやきながらオルガは砂埃を舞い散らせて戦地へ赴く。彼の表情からはそう期待させるだけの自信が見て取れた。

 

 今、反撃の狼煙が上がる。

 

 

 




 動画化したいです(叶わぬ夢)


 
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