色々な作品パクってますが気にしてはいけません(3度目)
「イツカ!?」
絶体絶命のピンチに陥っていたクラスの元へ駆けつけたのはオルガ・イツカだった。
“モビルワーカー”
戦車にしては構造が近未来的であるような軍事車両。三本足のローラーが機体を支え、両脇には大型のマシンガンが搭載されている。このファンタジー世界とは明らかに異質な物であった。
「“こいつ”については後でいくらでも説明してやる。今はそれよりも戦況を立て直すのが先だ」
尚も不信がるクラスメイトへ向けオルガは声を張り上げる。
「八重樫、俺がこいつに乗って敵を引きつけるからお前はその間にクラスの陣形を立て直してくれ!その後の前衛組の指揮はお前に任せる」
「わ、わかったわ」
「アランさんたち騎士団は前衛組と協力して出口奪還の経路を作ってくれ。戦闘経験者のあんたらが一番信頼出来る!」
「任された!」
その場にいた一人一人に指示を出す。騎士団はその指揮力を見るやただ者でないと感じ取り即座に行動に移る。対してクラス一同には動揺が走るものの、構わずオルガは続ける。
「坂上、お前は八重樫のサポートだ。白崎は怪我人の治療を優先しろ。谷口は骸骨が回り込みやすい右側面に結界を貼れ!中村はそのサポートだ」
「「り、了解」」
「檜山組、お前等は立ち回りだけは早いから捌き損ねた右側面の敵をやれ」
「おい、なんでお前が指揮してんだよ!」
「うるせぇぞ、クソが!今そんなこと言ってる暇ねぇだろが!!」
「わ、分かった分かったって」
「長山組は生き残ってる左側面の敵の殲滅だ。数は多いがお前らならやれる!」
「うむ」
こんな感じで的確にかつ迅速に指示を行う。暫くすればクラスのメンバーもそれを理解して指示通り動いてくれるようになった。
「すごい、学校で見てきたイツカ君とは全然違う」
雫が小声で漏らす。おそらくこの場の全ての人間が彼の勇姿に同じ意見を持っているだろう。
「お前ら、後は頼んだぜ」
そう言って数十、数百の骸骨目がけてオルガはモビルワーカーに乗って加速する。待ち構える敵の軍勢を機銃で掃討し、うまく隙間を作っては縦横無尽に駆け回る。狙い通りトラウム・ソルジャーたちもうまく食いついてきたようだ。
巧みにモビルワーカーを操りながら、クラスの方へと目を向ける。どうやら陣形を作り直したらしい。骸骨どもも中々攻め込みにくくなってきている。
これにて戦況は一変した。
これは一人一人がそれぞれの天職、能力にちょうど適した立ち回りが出来ていることが最も大きな要因だ。だが、そのきっかけは作ったのは紛れもないオルガである。
それも彼にとっては大した仕事ではないようだったが。
「ここにいるのは元々チート級の集まりなんだ。指揮さえ機能してれば雑魚相手なんて簡単に押し返せる!」
“鉄華団団長”
それがオルガの生前の役職である。団員たちを指揮し、任務を成功へと導く。クラスで唯一の戦争経験がある者として、その力はここで遺憾なく発揮された。
ただこれには当然、今のような窮地に陥った場合を想定してクラスメイト一人一人のステータスプレートを確認していたのが大きかったに違いない。
__今度こそ、大切な仲間を守ろう
そう決意したからにはありとあらゆる準備をしなくてはならない。別にクラスメイト全員と仲がいい訳でないがそれでも同じ授業を受けて同じ時間を共有した奴らだ。見殺しには出来ない。
「後はあれだ……決定打となる火力が足りねぇ」
見るに戦況は変化したもののまだ脱出口を確保できるところまでは行っていない様子だ。
必要なのはあの骸骨と泥を一掃できる破壊力を持ち、なおかつ皆を惹き付けることのできるリーダーである。
該当する人間の名前は一人しか見つからなかった。
「あいつしかいねぇ、」
「「天之河光輝」」
声が重なる。場所は違えど同時に同じ結論へと辿りついた者がいるのだ。
彼は魔物の元へ一目散に走る。状況を変えるため、彼なりに出来ることを考える。
__僕だけにしか出来ないこと
彼もまた彼で戦っていた。
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「何をやってる光輝!早く戻れ!」
場面は変わりベヒモスとメルドの元へ。
満身創痍のメルドの前に現れたのは光輝だった。
「もう一度、駆け上がれ..天翔門!」
光輝による幾度の攻撃がベヒモスに向かうが傷一つすらつかない。
「よせ!今のお前のレベルでは無理だ…団長命令だ」
「…それでも、俺は残ります!戦わせてください!!」
メルドの命令を片意地に拒む光輝。良くも悪くも単純で真っ直ぐな光輝にとってメルドを置き去りにすることは許されなかった。
(全く…お前って言うヤツは)
昔の自分の姿と重なってしまい一瞬歯痒い気持ちに浸ってしまうメルド。
「光輝」
「はい?」
バチコォォン
拳が振るわれた。光輝の頬にのめり込み吹き飛ばされる。
「団長命令だ、引け」
厳しい口調で突き放す。
「私はお前らを死なせる訳にはいかない。お前は『死んじゃいけない優秀な奴』なんだ」
「…はい」
振り向くことはなかったがそれでもメルドが自分たち本気で守ろうしているのは光輝にも伝わっている。
自分の未熟さを呪う他なかった。
「それと、お前もだ坊主」
背後の気配を察知した光輝。振り向けば、そこにいたのは
「天之河くん!ここは退こう」
「…南雲」
ハジメだった。
~~~~~~
光輝の元へ現れたのはハジメだった。光輝には未だハジメがここにいる理由が分かりきらずにいる。
「なんでお前が」
「後ろが酷く混乱していた。オルガが指揮をとったおかげで体勢は立て直ったけど、それでもまだ決定打が足りてないんだ」
「みんなが天之河くんのように強いわけじゃない。今この状況を切り抜けるには高い火力、そしてみんなを支えられるリーダーが必要なんだ!」
「!」
ハジメの言葉にやっと光輝は理由を理解した。自分を呼びに来たのだ。
「前ばかりじゃなくて後ろもちゃんと見て!!」
強い衝撃を受ける。ずっと前だけを見て冷静さを欠いていた光輝にとって今の言葉は自分の不甲斐なさをひどく痛感させた。
頬を一度強く叩き、ハジメに向き直る。
「分かった。後ろに向かう」
「ありがとう」
後方へ足を向ける光輝だが、まだ一つ心配事がある。
「…あいつはどうするつもりだ?メルドさんは既に負傷している」
視線の先には荒れ狂うように前進するベヒモス。メルドにはまだ強い戦意がある様子だが、このままでは時間の問題であった。
ハジメは一瞬怪訝な様子で俯くが、すぐに前を見据えた。強く右拳を握り胸元に当てる。
「僕に考えがある」
その目に宿るのは強い覚悟、そしてその裏には抑えきれないほどの悲壮が隠れていた。
~~~~~~~
「はぁッ!」
迫り来る無数の骸骨を前に、必死の攻防が続いていた。
あらゆる方向から無造作に振るわれる剣を捌き、返し、懐へ、首元へと刀を振りかざす。数の差、身体差をもろともせずただひたすら切りつけ両断していく。その姿はさながら戦国の武士に並ぶといっても遜色ない。
「雫!?後ろだ!」
寸分の間に生じる隙。疲労の中戦い続ける彼女にはそれが命取りとなった。
「しまっ」
バキッ!!
刹那、振り下ろされるはずだった敵の剣は腕ごと砕かれ弾け飛ぶ。一切の暇を与えることなく金色の剣は敵を切り裂いた。
「!!」
金の炎に焼かれ敵は灰一つ残さず消える。その先には黄金の鎧を纏った青年の姿があった。
「「光輝!」」
傍にいた全員が同じ言葉を口にした。紛う事なきリーダーの帰還である。
「雫、大丈夫か?」
「うん」
小さい頃からずっと横で見てきたガキが今は誰よりも頼もしく輝いて見える。雫は気付かれないよう頬を赤らめた。
「みんな遅れて済まない。ここを切り抜ける!!俺の話を聞いてくれ!」
全員の視線が光輝に集まった。作戦の詳細が彼の口から明らかにされる。
「出口を確保するまで後方のベヒモスを足止めする。魔法組はすぐにメルド団長の元へ行き彼の指示に従え!イツカ、お前が誘導してくれないか」
「分かった」
光輝の目線は一度オルガの方へ捉えた。仲は最悪なはずの二人だが、今は互いに互いを信頼している。
「後ろは南雲が食い止めてる、みんなで援護するんだ!」
ハジメの名が出たところで香織含め一部がどよめく声が聞こえたがすぐに光輝の言葉に遮られる。
「前衛組は俺は続け!正面の敵を倒し出口を確保するぞ!」
マントを靡かせ光輝が正面へと駆け出す。同時に逆方向へオルガもモビルワーカーを駆る。続くように前衛組と魔法組がその背中を追った。
ついに戦いは佳境に入る。
~~~~~~
___神の慈悲よ
___この一撃を以て全ての罪科を許したまえ
「道は__俺が切り開く!」
一面の闇を切り裂き光が灯る。それはさらに輝きを増し、空間を悉く金色に塗り替えた。ありったけの力を込め光輝は叫ぶ。
___神威!!!
全力を以てなぎ払われたその剣は地面ごと金の炎で焼き尽くす。骸骨はおろか壁に張り付いた泥ですら一瞬で浄化され光の粒子となって天に昇っていく。
扉ごと破壊することに成功し壁には大きな穴が開いていた。
「今だ!突撃ッ!!!」
残る敵の元へ一斉に駆け出す前衛組、加えて騎士団の者たち。
いまだに相当数の敵を残していたものの、光輝たちの姿からは敗北という字を一片たりとも感じさせないほどの迫力があった。
「…後は頼むぞ、南雲」
光輝の声は誰にも聞こえることはない。
~~~~~~~
「坊主、やれるんだな」
「はいっ!」
ゆっくりと咆哮を上げながら接近してくるベヒモスに対し、待ち受けるのはメルド、そしてハジメ。
__一度だけでいいです、敵の攻撃を誘ってください
「後で絶対に助けてやる」
ハジメが準備を始めたのを確認すると同時にメルドは地を蹴り、駆け上がった。
先ほどまでの負傷をもろともせず、ベヒモスが発する稲妻を身を翻して躱していく。風の加護を存分に使い死角まで移動するや、ありったけの技を発動しベヒモスの体を少しずつ抉っていく。
「まだまだ、若い奴には負けられんよ」
さっきまで劣勢であったはずのベヒモスを翻弄していく。人間、追い込まれた時ほど強くなるというが今のメルドを見ればあながち間違いとは言えないだろう。
対してハジメの方も準備に取りかかっていた。
__イメージしろ
今回の敵は前のモンスターとは比べほどにならないほど大きい。生半可な錬成では動きを押さえつけることなど不可能に近い。
両手、いや全身の魔力を一気に回路に注ぎ込む。当然回路から氾濫した魔力は体を崩壊させる。一瞬でも気を抜けば即死だ。
目の前で繰り広げられる死闘を視界に収める。
__今、メルドさんも、天之河くんも、他のクラスメイトや団員の人たち、それにオルガだって頑張ってるんだ
絶対に失敗することはできない。プレッシャーという名の鉛の塊が今ハジメの肩に乗り掛かっている。
__逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。
呼吸を落ち着けて、瞑想に入る。できるだけ体に流れる電流と回路をイメージしろ。頭の中で実体化出来ていれば出来ているほど錬成の成功率は上がる。
覚悟を決める。
「いくぞ、坊主!」
「お願いします!」
準備が完了したのを見て取って、メルドも畳みかけるよう大技を発動する。
____吹き散らせ、風壁!
敵をうまく誘導し、ちょうど突進するタイミングに合わせて風の壁を展開する。ベヒモスとの力比べなら当然負けてしまうが時間稼ぎには申し分ない技であった。
「今だ!!!」
絶好のタイミングであった。全身の意識を全て手の平に向ける。
「行くぞ」
___錬成、開始
体中の魔力を回路に注ぎ込む。焼け付くような痛みを必死に我慢し、ただひたすら集中する。回路線は一直線に伸び、そして腕から手のひら、手のひらから地面へと伝う。
溢れ出さんばかりの魔力を帯びた回路が地面にはびこるように広がりベヒモスの足下で錬成陣を形成する。
ズゥゥン!!!
ベヒモスの足を地面が覆い、そして地面の下へと引きずった。前足から崩れ落ちた勢いで頭部を強く叩き付けられる。隙を与えず顎の部分も錬成で固める。
ガァァッッ!
魔物から甲高い悲鳴めいた唸りが聞こえる。必死に抵抗するが崩れた状態で前足を封じられたせいで中々思い通りに暴れられないようだ。
「魔法組!準備はいいな。坊主が離脱したら奴へ一斉射撃だ!」
メルドの指示で、次々と魔法の発動準備が始まっている。
後はハジメがどれだけ持ち堪えられるかだ。
「もう駄目だ」
すでにハジメの魔力は限界であった。他と比べ才能がないわけだから元々持っている魔力量も少ないし、こんな大規模な魔法行使など非戦闘職のレベルの低い人間なら即座に命に危険が及ぶほど無謀であろう。
徐々に錬成の効果が薄れベヒモスの足下を覆う地面からの圧力がなくなる。
「まずい!」
片足が地面から現れる。もう片足の方も徐々に抑えられなくなってきていた。
ベヒモスの瞳がハジメを捉える。今にも食い殺していまいそうなほど憎悪に満ちていた。
ここで耐えなくては、みんなの頑張りが水の泡になってしまう。
「錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成、錬成ェェ!!!」
何度も叫ぶ。限界など通り越しても尚引けない理由があった。魔力は枯渇しているというのに回路だけは消費しようとしているせいで、回路は次々に意識の中で焼け焦げちぎれていく。体のあちこちに激痛が走るがとうに感覚器官が麻痺しきっている。
徐々に全身の力が抜け落ちる。意志よりも先に身体が耐えられなかったようだ。
___ここまで、なのか!
「準備が出来たぞ!」
メルドが叫ぶ。あと1秒でも遅ければその場で意識を失っていたであろう。
「走れ坊主!!奴が動き出すぞ!!」
ハジメはフラつく足を何とか引きずってその場を去ろうとするがすでに満身創痍だった。視界もぼやけ何度も転びそうになる。
「今だ!魔法詠唱!!」
これ以上待つと危険と判断したのかメルドが叫び、続いて魔法組が一斉に詠唱を開始する。色鮮やかな魔法の球が間髪入れずに次々と発射された。
発射された無数の球は四方八方から覆うようにして怪物に着弾した。爆発による衝撃で土煙がどっと舞い、周辺を飲み込むように広がる。
「ぐうぁっ!」
限界だった。崩れ落ちたハジメに立ち上がる気力も体力もない。
「…少し、休もう」
頑張った方ではないでしょうか。この感じならばみんな助かると、思う。
「……メ、聞こえるか!」
走馬灯を見ているのか、それとも天国からの遣いが来たのだろうか。近づいてくる音がする。
もうどうだっていいや。
「…ハジメッ!!」
「オ…ルガ?」
驚きで意識が戻る。
眼を開けば、そこにいたのは…
「よぉ、待たせたな」
相棒だった。友人であり、兄とも呼べる男の姿だった。
伸ばした手が繋がる。ぐいっと引っ張られてどうやら乗り物の中に乗せられた。
「よくやった。後は俺たちに任せろ」
~~~~~~~
「南雲くん戻ってきて」
内心ハジメの心配をしながら香織は詠唱を繰り返しベヒモスへ向けて魔法を放ち続ける。この様子ならあの魔物を倒すところまで行かなくてもハジメを回収して避難できる。すでにトラウム・ソルジャーを掃討し出口を確保した状態であるから、クラスのほぼ全員がそう確信出来ていた。
「もうちょっとだ!」
モビルワーカーを全力で走らせクラスの元へと向かうオルガ。ハジメの方は意識も途切れ途切れであり治療が最優先である状態だから、一刻でも早くここから脱出しなくてはならない。
「今日のMVPはお前だ。帰ったらみんなが見る目変えてお前のこと褒めてくれるぜ」
すでに息耐えそうなハジメに向け必死に会話を飛ばす。ちょっとでも意識を向けてもらわねば危ない状態まできているのだ。
「そうだ、今日の晩ご飯はお前の好きなハンバーグをいっぱい作ってやるよ!」
返ってくる言葉はなかったがそれでも続ける。
「…だからよ、お願いだ。こんなところでくたばらないでくれ」
オルガの悲痛な言葉も今のハジメに聞こえているかどうか分からない。
「…オ、ル」
意識は途切れ途切れだったがそれでもオルガの声はハジメの耳に聞こえていた。何とかして言葉を紡ごうとしたが声すら出ない。
「無理すんな、もうすぐだ。一緒に帰ろうぜ」
もう少しで到着する。ハジメはそれが何よりも嬉しかった。
__帰ったらそうだな、やっぱり本を読もうか
__いや、その前に思いっきり寝よう
そう心の中で思った刹那、
「え?」
空を飛んでいた。
__いや違う、たぶん誰かに外へ投げ飛ばされたんだ
__一体なんでそんなことに…
朦朧とする頭の中で色々な考えが交錯したが、地面に落ちる衝撃でハジメの意識は完全に途切れてしまった。
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__あと少しの距離だったんだ。誰もが二人の帰還を確信し、望んでいたはずなんだ
__いや、今考えれば望んでいない者もいたのかもしれないな
暗闇の中、急速に小さくなっていく光。無意識に手を伸ばすも掴めるはずもなく、途轍もない落下に身を任せながら、オルガ・イツカは恐怖に歪んだ表情で消えゆく光を凝視した。
__何が起こったんだろうか
考えてみれば分かる。あの時何かがモビルワーカーに直撃した。おそらく魔法組が放っていた魔法の一つが逸れたのだとしか考えられない。
咄嗟にハジメを遠くに投げることには成功したが、俺の乗っていたモビルワーカーはもろに被害を被って、それから…
オルガは現在、奈落を思わせる深い崖を絶賛落下中なのである。目に見える光は地上の明かりだ。
これに関してはあの石橋が崩落したと考えるのが一番だろう。あんな数の魔法が一方向に集中したんだかがどこかの場所で亀裂が入ってもおかしくない。ただタイミングが悪すぎた。
このような状況でも無駄に冷静な自身の洞察力に冷笑する。再び目を見開くと、そこに映っていたのは数々の走馬灯だった。
___すまねぇな、ハジメ。一緒に帰ろうって言ったのに、守れなかった
まず思い浮かんだのは弟との思い出。一緒に帰れないのは悲しいが、あのとき救えたならそれ以上の喜びはない。
___チッ、一回ぐらいは天之河に勝ちたかったな
クラスでの思い出が蘇る。天之河とはしょうも無いことでしょっちゅう競争してたが大体は俺の負けだったな。
___あぁ、今頃あいつら元気にしてるかな
次に思い浮かんだのは、鉄華団での思い出。俺がこうやって転生してるわけだから団員たちもどっかで転生してるかもしれない。もしかしたら同じ世界にいたのかもな。
___ビスケットに会ったらちゃんと謝らねぇとな
共に鉄華団を導いてきた男“ビスケット・グリフォン”。今思えばあいつが一番の俺の理解者だったかもしれねぇ。あいつが死んだ後から俺は間違い続けてきたんだから、一回死ぬほど謝んねぇと気が済まねぇ。
目を瞑る。暗闇だったはずの視界がパッと明るくなって、
最期に俺の前に現れたのはやっぱりあいつだった。
___よぉ、ミカ
俺の相棒。戦友でもあり、一番近くにいた家族でもある。
手を伸ばす。けれどその手はあいつには届かない。
涙が止まらなかった。ためていたもの全部吐き出すみたいに俺はあいつの名を叫んだ。
返事は返ってこない。ただ微笑み返して、俺の前から去って行った。
膝から崩れ落ちる。地面には彼岸花がいつしか咲いていて、視界を赤く染め上げていた。視線を落とす。気付けば俺の体は花びらとなって風に運ばれている。
潮時だろう。別に死ぬことは怖くなかった。
ただ、
___なぁ教えてくれ、ミカ。俺たちは一体、どこに辿りつけばいいんだ…
消えていく最中、その疑問だけが心に残っていた。
ここで終わりではないです。
episode2もあと300年後くらいに更新するつもりです。