やってみるさ。この素晴らしい世界で、俺に何ができるかわからないけど。 作:みっはー
2話は来週投稿予定です。
「ここは・・・」
アクアによって異世界に送られた三原が目を覚ますと、
広大な草原に何かに寄り掛かるようにして立っていた。
すぐ近くを未舗装の馬車道が通っており、かなり距離があるがその道の先におぼろげに街のようなものが見える。
機械的に整理されていたオルフェノクたちの街とも、スラムのように荒れていた人類の隠れ家とも違う、
自然そのものの空気を大きく吸い込んで、深呼吸をする三原。
ふと、自分が寄り掛かっているものに視線を移すと、それは三原が愛用していたバイクだった。
FORZAというバイクで、これに乗って戦い続けてきたのだ。
傷の位置も完全に一致しているので、三原の乗っていたバイクがそのままこっちに持ってこられているのだろう。
これがアクアの言っていた特典だろうか?
いくつか適当に増やす、と言っていたが。
ハンドルにひっかけてあるフルフェイスヘルメットと、シートの上に置かれたライディンググローブ、この辺りが増えたものだろう。
そして、荷台に固定されている銀色のアタッシュケース。
見慣れたそれを、三原はゆっくりと開いた。
中身は予想通り、デルタのベルト。
ベルト型トランスジェネレーター、デルタドライバー。
テンキーなどは存在せずトリガーを引きながらの音声入力によりデルタギアの機能を発動させる、デルタフォン。
デジタルカメラ型マルチウエポン、デルタムーバー。
これらを組み合わせることで、デルタのベルトとなる。
「やっぱり一番馴染み深い物って、これだったんだな。」
三原が思い浮かべた通り、本来であればデルタのベルトだけを持ち込めたのだろう。
アクアが適当に何個か増やした結果、愛車やヘルメット、ライディンググローブが一緒についてきたと思われる。
感慨深くデルタのベルトを見つめていた三原だが、そっとアタッシュケースを閉じるとヘルメットとグローブをつけ、愛車に跨った。
とりあえずは遠くに見える街を目指してバイクを嘶かせた。
★★★★★
「と、止まれ!お前それはなん・・・いやほんとになんだ!?」
アクセル。
始まりの街、冒険者の街、などの呼び名のあるこの街で門番を務めて長い彼は、凄まじく動揺していた。
奇怪な兜を被った、変わった格好の男が、唸り声をあげる謎の物体に跨ってまっすぐアクセルに向かってきたのだ。
幸い制止の声にすぐに止まってくれた男は、兜を脱ぐと笑みを浮かべていた。
黒髪黒目はたまに見るニホンジンと呼ばれる人たちの特徴である。
彼らは変わったものを持っていることが多いため、これもその類だろうと当たりを付けた。
「それは・・・ゴーレムか何かかい?」
「あぁ、まぁそんな物かな?」
三原も一応、こういう中世ファンタジーの知識はあった。
オルフェノクが爆発的に増えてしまって以降は、そういうものに触れることは無かったが、学生の頃は剣と魔法のRPGやアニメなどは普通に存在していた。
バイクの事をゴーレムと言われた事と、鎧姿に槍を持った兵士を見て、本当にファンタジーの世界なんだなとようやく実感のわいてきた三原。
久し振りに少しウキウキとしてきた。
「とりあえず、名前と顔を記録するから、名前を教えてくれないか?」
「三原。三原修二です。」
「ミハラ・シュージ、と・・・。」
手元の紙に何やら書き込んだ門番の男性は顔をあげると、三原に笑みを向けた。
「ようこそ、アクセルの街へ。冒険者ギルドは大通りをまっすぐいった突き当りだ。良い冒険を、ミハラ・シュージさん。」
「ああ、ありがとう。ところで、冒険者ギルドって?」
「冒険者ギルドってのは、冒険者にいろんな仕事を斡旋してくれるところだよ。お前さん、冒険者になりに来たんじゃないのかい?アクセルに来るニホンジンは大抵冒険者ギルドにまっすぐむかうから、お前さんもそうなのかと思ったんだが。」
「ああ、いや、そう!そうなんだ。いやあ、楽しみだなぁ!」
いぶかしがられると、悲しいかな、日本人のサガか話を合わせてしまう三原。
流石に町中でバイクを走らせるのはマズいかと、バイクから降りて押していくことにした三原は、とりあえず言われた通りに冒険者ギルドなる建物を目指してみることにした。
★★★★★
アクセルの街並みを眺めながら、バイクをおして三原が歩く。
ヘルメットは外してハンドルにひっかけてあるとはいえ、現代の私服姿でバイクを押している三原の姿はかなり浮いている。
そのせいか、通行人からの視線が結構集まっているが、三原は街並みを眺めることに集中していたため気づいていないようだった。
流石に、現代の大都市と比べると人は少ないが、今目に映っている人間は全員ただの人。
オルフェノクのいない世界。
子供たちが道の端のほうを無邪気にかけぬけ、あちらこちらでは露店の店員が威勢のいい声をあげている。
とても平和な光景に、知らず三原の頬は緩んだ。
現代では、繰り返す戦いと、味方だと思っていた人間のオルフェノク化による裏切り、倒れていく仲間。
そして、デルタとして戦うことで傷ついていく体。
こんな風に自然に笑えたのはいつ以来だろうか。
気づかないうちに磨り減っていた心が、癒されていくのを三原は感じていた。
「いいところだな、本当に。」
★★★★★
無事冒険者ギルドまでたどり着いた三原は、バイクを表に置いたままギルドの中に入っていく。
ヘルメットはバイクのハンドルに引っ掛けておいていくが、念のためベルト入りアタッシュケースだけは手に持っていくことにした。
中は右手側が酒場、左手側が役所のような作りになっている。
酒場の方はまだ日が高いのに何人か、鎧や剣で武装した男女が酒を飲み交わしていた。
とりあえずこちらに用はないので、左手側のカウンターに向かう三原。
カウンターにはざっくりと胸元の開いた、少々扇情的な恰好の女性が席に座っていた。
思わず目線が胸元に吸い寄せられそうになるが、鋼の精神で顔を持ち上げた三原は、女性に声をかけた。
「すいません、よろしいですか?」
「はい、いかがなさいました?」
「ここで仕事を斡旋してもらえると聞いてきたんですけど。」
「はい、冒険者カードはお持ちですか?」
と、そこで、三原は自分がいまいち冒険者というのがどういうものなのか把握していないことに気付いた。
少し考え込んでしまい、受付の女性に怪訝そうに聞き返されてしまう。
「あの?どうしました?」
「あ、ああ、すいません。えっと、そもそも冒険者ってどういうことをするんですかね?詳しくは知らなくて。」
「ああ、なるほど。では、その辺から説明いたしましょう。私は、ここ、アクセルのギルドで受付嬢をしております、ルナと申します。」
「どうも、三原修二といいます。」
「はい、ミハラさんですね。よろしくお願いします。では、ご説明いたしますね。」
ルナの話によると、
冒険者の主な仕事はモンスターの盗伐や、ダンジョンの探索など。
基本的には戦闘を前提としたものが多い。
その他、人気はないが、街の中での雑用依頼なども斡旋しているようだ。
工事や、清掃員、配達人など、人数が必要になる仕事を任せられる。
それと、非常事態には緊急クエストが発令されることもある。
緊急クエストは基本的には強制参加であり、これを無視すると冒険者資格の剥奪もあり得るそうだ。
「なるほど。ある程度は戦えないといけないわけか。」
「そうなりますね。まあ、緊急クエストなんて、王都はともかくここアクセルの街では早々起こりませんけどね?」
さもありなん。
ここは初心者冒険者の街らしく、周囲の魔物も弱いものが多いらしい。
緊急クエストなんて早々起こらないだろう。
「概要はわかりました。登録をお願いしていいですか?」
「はい、承りました。では、登録料として1000エリス頂きます。」
「えっ」
「えっ?」
「・・・え?」
★★★★★
三原は一人、草原でバイクを走らせていた。
「お、見えてきたな。」
視線の先には強固な砦の姿。
アクセルから徒歩で2日ほどの距離にあり、魔王軍の前線基地とにらみ合いをしている場所だ。
そのまま速度を落とさず接近していくと、砦から慌てた様子で兵士が飛び出してきた。
「とまれ!お前それはなん・・・いや本当になんだ!?」
「ははは・・・どこかで見た反応だな。」
三原は驚く兵士たちに苦笑いをひとつ零して、バイクから降りる。
ヘルメットも外して敵意がないことをアピールすると、荷台に縛り付けてあった大きい木箱から小包を取り出した。
「アクセルの冒険者ギルドからお届け物でーす。サインお願いしまーす。」
「・・・はい?」
無事サインをもらった三原は、アクセルへの復路をバイクで走っていた。
登録料のなかった三原は、ルナと色々話し合った結果、ギルドの仕事を手伝うことで、若干割安だが報酬を貰えるということになった。
相談の中で、三原がバイクという高速で移動できるゴーレムのようなものを所持していることを知ったルナが、徒歩2日の距離の砦へ冒険者ギルドの荷物を届けてほしいと三原に依頼したのだ。
徒歩で2日の距離とはいっても、
それは野営の装備をした人間が、休憩を挟みながら歩いた場合の話。
まっすぐな道をひたすら走り続けることのできるバイクでなら、さして時間のかかる道のりではなかった。
道中、特にトラブルもなかったので、この分なら日没までにアクセルに帰ることができそうだ。
「そうえいば、このバイクの燃料ってどうなってるんだろう。」
走りながらふと燃料系に目をやると、満タンのまま微動だにしていなかった。
現代では燃料も貴重になってきていたから、常に満タンにしてやれてはいなかったし、
こっちに来てからもそこそこの距離を走らせている。
そろそろガス欠になってもおかしくなかったのだが。
「一応、神様が送ってくれた乗り物だから、無限に走ってくれるのかな?」
かなり適当というか投げっぱなしな感じで自分を異世界に送り込んだ女神アクアの顔が浮かび、ヘルメットの中で三原は苦笑した。
そのままバイクを走らせること暫く。
途中すれ違った冒険者や、追い抜いた行商人は驚いていたが、それ以外は問題なく、夕暮れ時にはアクセルに帰ってこれた。
門番は流石に3度目(2度目はアクセルを出る時)になるのでバイクに慣れたのか、そんなに驚かずに三原を通してくれた。
バイクを押して冒険者ギルドまで辿り着くと、まっすぐルナの元へ。
「あれ、三原さん?もしかしてまだ出発してなかったんですか?」
「いえ、届けてきましたよ。はいサイン。」
速い乗り物とは聞いていたが、まさかもう往復して帰ってきたとは思っていなかったルナ。
流石に驚いた様子だ。
「はい、確認しました・・・。本当に早いですね!では、登録料を差し引いて、報酬の6000エリスです。このまま登録もされますか?」
「はい、お願いします。」
この世界にとって規格外の速度で移動した三原。
割安な報酬のはずが、時間に対して考えれば多少おいしい依頼となったようだ。
ルナはカウンターの下から、プレートのようなものを取り出した。
「ここに手をのせてください。ミハラさんのステータスを読み取って、冒険者カードを作成します。紛失した場合は再発行にお金が必要になりますから、気を付けてくださいね。」
ルナに言われた通りプレートに手をのせて少しすると、カードが吐き出される。
「はい、できま・・・うぇええええ!?」
三原のカードを確認したルナが、素っ頓狂な声を上げた。
目線はカードと三原の間を行ったり来たりしている。
「あの?なにかありましたか?」
「ああ、ええっと。魔力以外のステータスは全て平均的ですね。魔力はちょっと絶望的なので、魔法を扱う職業にはなれないですが、それ以外の下位職には全てつけます。一番向いてるのはアーチャーですね。でも、問題はそこじゃなくってですね・・・。」
そこまで言って、ルナは冒険者カードを三原に渡す。
「あの、ミハラさんって元々なにされていた方なんですか?レベル31って、もうすぐ上級冒険者並みなんですけど・・・。」
シュージ・ミハラ レベル31
そう書かれた冒険者カード。
三原は元々の世界で、多くのオルフェノクと戦ってきた。
中には、ドラゴンを模したオルフェノクなんかもおり、それらを倒した経験が体に蓄積していたのだ。
「モンスター相手の用心棒、みたいな感じかな。」
「冒険者カードなしってことはスキルも無しですよね?よく務まりましたね・・・。」
「いや、まあ、ね。ははは。」
愛想笑いで誤魔化す三原。
ルナも、そこまで深く追及するつもりはないのか、ふ、と息をひとつ吐くと、三原に笑みを向けた。
「なにはともあれ、これで登録完了です。ミハラ・シュージさん。ようこそ、アクセルの冒険者ギルドへ!」
「ああ、よろしく!」
三原修二の異世界生活は、ここから始まった。
未だに仮面ライダーが出てこねぇ!
変身はもう少し待ってね・・・
ライダーの初変身は劇的であってほしいという作者の拘り故です。
その辺の雑魚モンスター相手に初変身というのも味気ない・・・味気なくない?
でかいカエルや空飛ぶキャベツにルシファーズハンマーぶち込むのもシュールだし・・・
というかカエルの物理耐性ってどれくらいなんですかね?
デルタの普通のキックって8tあるんですけど、流石に爆散する・・・よね?
デルタギアの作中での呼び方について。テレビ版では巧達は「〇〇ギア」という呼び方をあまりしていなかった記憶があり、拙作でも「〇〇のベルト」という呼び方にしています。しかし、読んでいて「〇〇ギア」のほうがスッと入ってくるのかなと。ご意見お聞かせください。
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デルタのベルト(現状維持)。
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デルタギア
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いいから続き書くんだよ