やってみるさ。この素晴らしい世界で、俺に何ができるかわからないけど。   作:みっはー

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まさかもうUAが500を超えるとは・・・
お気に入りに登録してくださってる方もいらっしゃるし・・・
これは投稿せざるを得ない。
今回時間がかなり飛びます。
飛ばさないと仮面ライダー出るのすんごい後になっちゃうから・・・許して、許して・・・。


第2話:目を覚ませ The time to go

「ルナ、配達終わったよ。」

 

「お疲れ様、シュージ。次に行く前に裏でお茶でも飲んでいって。」

 

三原が異世界に来てから、もう半年が過ぎていた。

その間三原が受けた討伐依頼は、なんと0件。

当然デルタにも一度も変身していない。

三原はもっぱら、ギルドの雑用やアクセルの街近郊での配達依頼で収入を得ていた。

・・・人類のために戦いたいとはなんだったのか。

しかし、これにはちゃんとした理由があった。

別に三原がヘタレたとか、突如足が動かなくなったとかそういうわけでは無い。

“受ける討伐依頼が無い”

これに限る。

というのも、三原は現代での戦いでレベルが上がっており、登録時で既に30レベルを超えている。

これはもう王都で活躍するようなレベルの冒険者であり、アクセル近郊の初心者向けの依頼は受けられないのだ。

なら王都に行けばいいという話になるのだが、王都で受けられる依頼というのは大前提でパーティで挑む依頼になる。

このパーティというのが問題だった。

三原が戦っていたのは現代での話だ。

異世界では一切の実績が存在しないのである。

結果どうなるかというと、レベルが高いけど冒険者カードを見ると殺害数0の謎の新人となってしまう。

冒険者は得てして、実績というものを重んじる。

実績もなく、しかも見た目丸腰の三原と好き好んでパーティを組む者がいるだろうか?

もちろんいない。

デルタの力を使えばソロでクエストの達成は恐らくできる。

できるが、ギルドからすると全く実績がない人間にいきなり王都で扱われるような危険の大きいクエストは振れない。

デルタの力を一度ギルド職員の前で見せることで力を証明すればいいのだが、あまり大っぴらにデルタの力を振るいたくないこともあり、三原はにっちもさっちもいかなくなっていた。

それでも生活費は稼がなくてはいけないわけで。

そうなると、やはり初日にやった配達依頼が三原にとっては効率が良かった。

なのでこの半年、もっぱら配達員として働いているのだった。

今ではすっかりアクセルの住民に受け入れられ、街中でバイクを走らせても住民には驚かれなくなっていた。

普通この世界で手紙や荷物の配達というのは、行商人に依頼するか、テレポートサービスを使うかのどちらかとなる。

前者は目当ての場所に行商人が行く時についでに頼むことになるので、かなり時間がかかるうえに、都合よく行商人が見つかるとは限らない。

後者は自分でテレポートが使える上級冒険者でもないかぎりは、かなり割高の金額が必要になる。

個人で使うのは厳しい額になるので、国や商家が火急の要件で利用したりするのが主だ。

三原の宅急便は、その隙間にすっぽりとはまり込み、そこそこの距離をなかなかの速さで安めの値段で届けてくれるとあり、需要があった。

そんなわけで、今日も今日とて配達に勤しむ三原。

朝の分の荷物を届け終え、一旦報告しにギルドに戻ってきたところだった。

休憩を挟んで昼過ぎから夕方の間に朝から今までの間にギルドに届けられた荷物を配り、翌朝に前日の昼過ぎから夕方の間にギルドに届けられた荷物を配る。

三原はそれを繰り返していたのだ。

 

休憩を終え、バックヤードからギルドのフロントに戻ってきた三原。

午後の配達に行こうと思っていたが、なにやら受付が騒がしいことに気付いて目線を送る。

たまに酔っ払った冒険者にルナが絡まれたりするので、もしそうなら助け舟を出そうかと思ったのだ。

だが、今日はどうやら違うらしかった。

この世界に来てから初めてみる上下ジャージ姿の少年と、どこか見覚えのある青い長髪の女性が受付で騒いでいるようだ。

漏れ聞こえる会話をよくよく聞いてみると、どうやら二人は冒険者登録に来たらしいが、登録料がないらしい。

三原も通った道なので、なんだか懐かしい気持ちになる。

 

(あれからもう半年か。早いな。・・・というか男の子のほうは上下ジャージだし、俺と同じで異世界転移してきたのかな?)

 

もしそうなら、登録料どころか無一文だろう。

自分は運よく稼ぐことができたが、彼がそうとは限らない。

幸い、今の自分は経済的にだいぶ余裕がある。

三原はルナに声をかけてみることにした。

 

「ルナ。どうかしたのかい?」

 

「それが、この二人が冒険者登録したいみたいなんだけど・・・持ち合わせがないみたいでね?」

 

そういわれて初めて二人を正面から見た三原は、驚きで目を見開いた。

上下ジャージの少年は特に特徴はなく、日本人的な顔立ちだ。

若干色白で不健康そうな印象は受ける。

問題はもう一人。

青い長髪の女性は、どうみても三原をこの世界に送り込んだ女神アクアだった。

 

「アクアさん!?なんでここに?」

 

「えっと・・・ごめん、あなた誰だっけ?」

 

 

★★★★★

 

 

半年の間に見事に忘れ去られていた三原は、とりあえずアクアと少年の二人を食事のできるテーブルに案内した。

奢るから気にしないで、と断りを入れてから3人分の飲み物を注文して、話し始めた。

 

「えっと、まず自己紹介しようか。俺は三原修二。半年ほど前にアクアさんにこっちの世界に送ってもらったんだ。・・・アクアさんは覚えていないみたいだけどね。」

 

「なんかスイマセン・・・。俺は佐藤和真です。今日、こっちに来ました。で、知ってると思うけどコイツが自称女神のチャランポランです。」

 

「誰がチャンポランよ!正真正銘の女神!女神アクアなんですけど!・・・まあ、ミ、ミハルさん?のことは覚えてなかったけど、仕方ないと思うの!私、半年の間にかなりの人数の案内してるし、私は悪くないと思うのよ!」

 

「三原さんだボケ。はぁ、俺はなんだってこんなのを連れてきてしまったんだ。」

 

意気消沈している和真の話をよくよく聞いてみると、

なんと彼は異世界にいく時の特典として女神アクアを所望。

そのせいでアクアも一緒にこの世界に来てしまい、おまけにアクアは天界に帰ることもできないのだとか。

とりあえずお互い無一文なので、アクアの助言で冒険者登録をしに来たが登録料がなく・・・と。

 

「なるほどね。話はわかったよ。じゃあ、同郷の好ってことで、お金を貸そうかな。利子も特にないし、返済は余裕が出来たらでいいからさ。とりあえず1万エリスくらいでいいかな?」

 

「えっそんなに?とても有難いんですけど、登録料だけでも・・・」

 

「ちょっとカズマ!くれるっていうんだからありがたく頂きましょうよ!登録する以外にもお金はあって困らないわ!」

 

「ははは・・・貸すだけだけどね?で、代わりと言っては何だけど、ひとつお願いがあるんだ。」

 

先ほどまでの優しいお兄さんといった雰囲気から一変、どこか鋭さを感じさせる目つきになった三原。

何をさせられるのかと、ゴクリと唾をのむ和真。

 

「俺が居なくなってから半年、現代はどうなっているのかなって。ずっと気になっていてね。」

 

「え・・・?現代ですか?」

 

どこか拍子抜けした和真。

半年とはいっても、たかが半年で世の中など早々変わるものではない。

なにか大きなニュースはあっただろうか。

うーん、と頭をひねる。

 

「そうですね・・・俺もそんなに世の中に詳しかったわけじゃないんであれですけど。大きなニュースだと煽り運転が社会問題になってたくらいですかね・・・?」

 

「あ、煽り運転?」

 

「ええ。確か煽り運転で全国指名手配されていた犯人が捕まったとか。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。オルフェノクは?人類解放軍はどうなってるんだ?」

 

「おるふぇのく・・・?ええっと、何の話で「ああああーーー!!」

 

困惑した和真が思わずオウム返しした時にアクアが大声をあげて立ち上がり、三原を指さす。

 

「思い出した!あなた、彗星でポリフェノールと戦ってるレジスタンスだった人ね!?」

 

「ポリフェノール!?ポリフェノールと戦うレジスタンスってなに!?」

 

 

★★★★★

 

 

「つまり整理すると、この駄女神がよくよく経歴も見ずにこの異世界に送り込んだのが三原さんで、実際のところ、三原さんは俺とは別の地球からやってきた、と。それでその世界はオルフェノクっていう化け物に支配された世界で、そこで人類を守るために戦っていたと。」

 

ガシガシと頭をかきながら纏めた和真は、虚ろな瞳を横に座っているアクアに向けた。

 

「おい、駄女神。弁明はあるか?」

 

「駄女神って言った!また駄女神って言った!私のせいじゃないもん!大体私のところにシュージがくるのがおかしいのよ!カズマと同じ世界の人しか来ないはずなのに!紛れ込んでくるのが変なのよ!」

 

「なんかすいません三原さん。駄女神が駄女神でほんとすいません・・・。」

 

「いや、まあ、ははは。間違いで送られたっていうのは割と衝撃だったけど。」

 

苦笑を浮かべた三原は、首を横に振ると優し気な顔でつづけた。

 

「でも、俺はそれでも構わないよ。一度終わった命を拾い上げて貰ったんだ。経緯はどうあれ、アクアさんには感謝してる。」

 

「ほら!シュージもこう言ってるじゃない!なら問題ないわね!」

 

「お前なぁ・・・」

 

はあああっと深いため息をつく和真と、それを苦笑いで見守る三原。

 

「まあ、別の世界から来たっていうならオルフェノクと人類解放軍がどうなったか知らないもの仕方ないよね。良かったら、今度は和真君の世界の話を聞かせてよ。生憎今日はこの後仕事があるからそろそろ行かなきゃいけないけど、オルフェノクの居ない地球の話を聞いてみたいんだ。」

 

「はい、それくらいでよかったら喜んで。」

 

和真のその言葉に、本当に嬉しそうに三原は微笑んだ。

 

 

★★★★★

 

 

和真達との思わぬ出会いがあった日の夜。

三原は午後の分の配達を終え、冒険者ギルドに戻ってきていた。

ルナに午後分の依頼完了証明を出してもらい、報酬を受け取る。

 

「なあ、ルナ。今日、酒場にダストは来てる?」

 

「ダストさん?来てたと思うけど。珍しいわね、ダストさんに用事?」

 

「ああ、ちょっとね。ありがとう。」

 

三原はルナに礼を述べると、ギルドに併設された酒場に向かう。

探し人はすぐに見つかった。

アクセルでチンピラといえばこの人、チンピラオブチンピラ、小物界の大物。

冒険者ダストだ。

酒場にくると酒を飲みながら大声で騒ぐため、探すまでもなくすぐに見つけることが出来た。

 

「ダスト。」

 

「あん?おー!シュージじゃねえか!仕事終わりかよ?こっちきて飲もうぜ!」

 

招かれるままダストと同じテーブルに着くと、クリムゾンビアをひとつ注文する三原。

ダストは上機嫌に三原の肩に腕を回す。

 

「はっはっは!今日は依頼が大成功でな!奢ってやるよ!」

 

その発言にジトッとした目で三原がダストを睨みつける。

 

「前に同じこと言って酔い潰した俺に支払い全部押し付けて帰ったの、忘れてないからね。」

 

「うっ・・・。なんだよ女々しい野郎だな!今日こそ奢ってやるって!な!」

 

冷や汗をかきながらバンバン背中を叩いてくるダストの様子を見るに、同じ手を使おうとしていたようだ。

そのタイミングで三原の頼んだクリムゾンビアが運ばれてきたので、一口だけ飲むと、三原は本題を切り出した。

 

「実はダストにお願いがあってさ。」

 

「お願いぃ?お前が俺様に?珍しいなオイ。」

 

怪訝そうな顔のダストに、三原は顔を向け直す。

 

「実は、今日アクセルに同郷の男の子が来てね。和真っていうんだけど。冒険者をやるみたいだから、目をかけてやってほしいんだ。」

 

「ほおー?」

 

三原の話を聞いて、面白そうに口角を釣り上げたダスト。

この男、見ての通りのチンピラで、その実内側を見るとやっぱりどうしようもなくチンピラなのだが、意外と後輩の面倒見は良いのだ。

言い方がキツかったり手段がアホだったりして周りから見ると新人がチンピラに絡まれているようにしか見えなかったりするが、よくよく聞いてみると言ってることは正しかったり、新人がやりがちなミスをしないように釘を刺していたりしている。

 

「ま、やってもいいが・・・コレ次第だな。」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべて親指と人差し指で輪っかを作るダスト。

 

「・・・俺に押し付けた飲み代、チャラにしてあげるよ。」

 

「乗った。このダスト様に任せとけ!」

 

ガハハと笑いながらエールを飲み干すダストを見て、人選を間違えたかと首を傾げる三原だった。

と、ちょうどそこに疲れた様子の和真と、女神アクアが酒場に入ってきたのが見えた。

 

「あ、ほら、彼だよ。さっき言った和真って。」

 

「ほー?どれどれ?あぁん!?新人の癖に女連れたぁ良いご身分じゃねえか!」

 

「・・・君のパーティーにもリーンがいるじゃないか。」

 

「いいんだよあんなペチャパイはァ!おーい!そこのお前!カズマとか言うやつ!」

 

早速絡みに行ったダストの様子を見て、これ俺が何もしなくてもダストは絡みに行ったし、その流れで多少は世話を焼いてくれたかもな、と思う三原であった。

 

 

★★★★★

 

 

和真が異世界に来てから1月ほどが経過した。

未だに簡単な討伐依頼すらこなせず、ひたすら土木工事をする毎日。

異世界生活とはなんだったのか・・・と消沈する和真。

ここのところ、毎日の流れが

起床⇒朝飯⇒土木工事⇒風呂⇒酒⇒就寝

のルーチンワークとなっていた。

これでは冒険者ではなく土方だ。

しかも毎日馬鹿みたいに酒を飲んで酔いつぶれるアクアの世話をしないといけないオマケつき。

段々嫌気が刺してきたそんな日。

なんと冒険者仲間のリーンが今日だけ酔いつぶれたアクアの面倒を買って出てくれた。

なんでも、ダストが和真と遅くまで飲みたいから今日はリーンにアクアの面倒を見てほしいと頼まれたとか。

リーンも、ここのところ和真が疲れているのには気づいていたので引き受けたのだ。

その話を聞いて、不意に熱いものがこみ上げてくる和真。

 

「ダスト!リーン!ありがとう!!」

 

「ま、たまにはね。ほら行くわよアクア。そろそろ帰りましょ?」

 

「うぇ~まだ飲むのよぅあらひは~!」

 

「はいはい、いくわよー。」

 

「っし、俺達は飲み直すぞカズマ!」

 

「おう!」

 

 

★★★★★

 

 

しこたま飲んだ帰り道。

すっかり暗くなり、明かりもまばらなアクセルの街を和真とダストは肩を組みながら歩いていた。

 

「いやぁ~こんなに飲んだの初めてだわ。」

 

「の割には結構足取りしっかりしてるよなぁカズマ。結構酒強いんじゃねえか?」

 

楽しく飲めたのか、上機嫌に歩く二人。

 

「ところでさ、ダスト。今日はありがたかったけど、どうして急に?」

 

「あ?俺がおめーと飲みたかったから。ってのもあるが、一応シュージのやろーにも言われてっからなぁ。」

 

「三原さん?」

 

予想外な名前に首を傾げる和真に、ダストは続ける。

 

「お前がアクセルに来た日によ。シュージの野郎から、同郷の奴が来たから多少目をかけてくれって言われてよ。まあ、俺様としても?後輩冒険者にいきなりくたばられるのも微妙だからこうして気を遣ってやってるわけよ。」

 

「三原さんが・・・。そっか。なんか嬉しいよなぁ、こういうのって!ダストもな、ほんと、サンキューな!」

 

「よせやい、俺とお前の仲じゃねえか!なぁ!」

 

なお、三原からツケのリセットという報酬も受け取っているが、その事は和真には内緒になった。

二人が話ながら、馬小屋方面の狭い路地に入った時だ。

二人の前からフラフラと覚束ない足取りの男が一人歩いてきた。

装備からすると多分冒険者。

それも盗賊職だろう。

軽装の皮鎧にフードを深く被っていて顔はよく見えないが、この辺りでは見かけない背格好だった。

多分、アクセルの冒険者ではなく、遠征か、新人かといったところだ。

まっすぐ歩くことが出来ておらず、かといって酔っている風でもない。

顔は赤いどころかほぼ真っ白で青白さがある。

先に様子がおかしいことに気付いたのは和真だった。

 

「おい、ダスト。あれ変じゃないか?なんか体調悪そうだぞ。」

 

「あ?酔っ払い・・・じゃなさそうだな。」

 

フードの男にダストが近寄っていく。

 

「おい、アンタ。大丈夫か?」

 

「・・・チッ」

 

だが、フードの男は舌打ちをひとつ零すと、ダストを腕で払いのけた。

むろん、見た目はチンピラ根っこもチンピラのダストが大人しく引き下がる訳がない。

せっかく上機嫌だったのが一気に機嫌が急降下する。

男の肩を掴むと無理やり振り向かせた。

 

「オイコラ。人が親切に声かけてやってんのになんだその態度はテメェ。」

 

「お、おい。ダスト。やめとけって。」

 

和真はそれよりも男の様子が気になっていた。

ダストに振り向かされた男は目は虚ろで、目の下に濃い隈ができている。

男は、ダストに掴まれた肩に目をやると、徐々に目つきが鋭くなっていった。

それを見て、ダストも好戦的な笑みを浮かべる。

 

「なんだ?やろうってかぁ?喧嘩なら買うぜオイ。」

 

「ダスト!なんかヤバイ!もう行こうぜ!」

 

「おいおい、ビビるなよカズマ。こんなガリガリの盗賊、俺様にかかればワンパンだぜ。今すぐごめんなさいするなら許してやってもいいんだぜ?」

 

ダストの挑発を受けて、男が鋭い眼光でダストを睨みつける。

それは思わずダストがひるんでしまうほどの迫力だった。

次の瞬間、男は肩を掴んでいたダストの腕を払うと、

一瞬だけ男の姿に灰色の化け物のような影(・・・・・・・・・・・)がダブって見えた。

 

「っ!」

 

驚いたダストと和真が後ろに一歩下がる。

男の姿が変貌していく。

細身だった体は強靭な灰色の鎧に覆われ。

身長も明らかに伸びる。

なにより、その相貌。

イカのような特徴を持った灰色の怪人の姿に変わったのだ。

 

「な、なん・・・だ、コイツ!?」

 

ダストは和真を連れて大きく距離を離してから抜剣、丸腰の和真を庇う様に構えた。

 

「おい、ダスト、やばい!逃げよう!」

 

「バカ言うな!一人で逃げろ!背を向けるほうが危ねぇ!お前は逃げて、冒険者ギルドに「ダスト!」っ!?」

 

後ろにいる和真に指示を出すために一瞬乱れた集中。

その間に凄まじい速度で駆け寄ってきた怪人。

引き絞られた拳がボディーブローのようにダストに迫る。

ダストは咄嗟に剣を横向きにすることで剣で受けることに成功したが、ガードした剣もろとも和真の頭上を飛び越え、後方に数mも吹っ飛ばされる。

 

「ぐっは・・・」

 

打ち所が悪かったのか、地面に叩きつけられたダストは動かなくなってしまった。

怪人・・・スクィッドオルフェノクは残った和真に目を向ける。

 

(ヤバイヤバイヤバイ!なんだこいつ!ダストはどうなった!?生きてるのか!?)

 

ゆっくりと距離を詰めてくるスクィッドオルフェノクと、ジリジリと後ずさる和真。

その時、和真のかかとに何かが当たる。

ふと、視線を落とすと、それはダストがさっきまで持っていた剣だった。

吹き飛ばされた時に落としていたのだ。

意識が剣に行った一瞬、一気にスクィッドオルフェノクが距離を詰める。

ハッとした和真が顔を上げた時にはもう目の前で拳を振りかぶっているスクィッドオルフェノクの姿があった。

 

「っ!!」

 

和真は頭から飛び込むように斜め前に前転、スクィッドオルフェノクの拳の下を潜り抜けるようにしてすれ違う。

すぐさま起き上がり、振り向いたスクィッドオルフェノクの顔面に向けて転がる時に掴んでいた砂を叩きつけた。

 

「ぐぅ!?」

 

目に砂が入ったようで、抑えて苦しむスクィッドオルフェノクの横を再び通り抜け、ダストの元へ。

 

「ダスト、おい!ダスト、しっかりしろ、おい!」

 

「う、ぐ・・・」

 

呻いているので、死んではいないようで、そこは一安心した和真。

だが、意識を取り戻す気配はない。

つまり、和真に残された道は、ダストを置いて逃げるか、ここであの化け物と戦うかの2択。

そろそろ砂も取れるだろう。

すぐに襲われる。

 

「・・・ダスト、悪い。」

 

和真はさっきまでダストの使っていた剣を拾い上げると、見様見真似で正眼に構えた。

 

「もしかしたら、お前の剣、ダメにしちまうかも。」

 

ようやく砂が振り払えたのか、憤怒の目で見てくるスクィッドオルフェノクに対して、和真は大声で叫んだ。

 

「かかってこいやぁ!このイカ野郎!」

 

 

★★★★★

 

 

「ふう、だいぶ遅くなっちゃったな。」

 

その日、三原はアクセル近郊のダンジョン入り口にある休憩所までの荷物を運ぶ依頼を受けていた。

森を迂回する必要があったため、予定よりだいぶ遅い時間にアクセルに帰ってきたところだった。

すっかり人が少なくなった冒険者ギルドの中を覗くと、見知った顔は受付に居るルナと、そのルナとなにやら話しているリーンの二人だけだった。

入ってきた三原に気付いたルナが三原に声をかける。

 

「お帰りなさいシュージ。今日は遅かったのね。」

 

「ああ、地図しか見てなかったからわからなかったんだけど、森が思ったより広くてさ。バイクじゃ森の中を走れないから、迂回していたらこんな時間になってたんだ。」

 

「お疲れ様ねーシュージ。あ、途中でダスト見なかった?」

 

「ダスト?見てないけど・・・。何かあったの?」

 

困り顔のリーンにダストについて聞かれるが、アクセルの大通りを真っ直ぐに走ってきた三原はダストを見かけてはいなかった。

 

「それがさぁ、今日はカズマと飲んで行くって言うんで先に宿に行ってたんだけど、ダストの奴まだ帰ってないみたいなのよ。それで酔いつぶれててもあれだから様子を見にきたんだけど。」

 

「だいぶ前に佐藤さんと一緒に出ていったんですよ。とっくに宿までついてる頃だと思ったんですけどね。」

 

2人の話を聞いて、少し考える三原。

 

「心配だな。ちょっと探してこようか。」

 

「えー?いいっていいって。その辺でひっくり返ってるか、入れ違いにでもなったんでしょ。」

 

気楽にそういうリーンだが、三原は深刻そうな顔を崩さない。

 

「ちょっとシュージ?マジに受けなくても・・・」

 

「いや、やっぱり探してくるよ。・・・なんだか、嫌な予感がするんだ。」

 

 

★★★★★

 

 

「くぅ・・・あ・・・」

 

和真は奮闘した。

本当に奮闘したのだ。

剣術スキルもなく、見よう見まねの剣術で、オルフェノクと渡り合ったのだ。

時に目潰しし、時に足払いを仕掛け、剣で斬りつけた。

しかし、オルフェノクと人間では体の作りが違いすぎた。

銃撃すら耐えるオルフェノクに対し、素人剣術じゃダメージにはならなかったのだ。

オルフェノクの猛攻に対して動き続けた和真が稼げた時間は6分と20秒。

それだけの間、奇跡のような時間を稼ぎ、当たり前のように力尽きた。

剣は砕け散り、遂に受けてしまった拳のダメージで壁に寄りかかるように座り込み、動けなくなってしまった。

完全に仕留めたつもりなのか、恐怖を煽るようにゆっくり近づいてくるスクィッドオルフェノク。

万事休すかと、目をぎゅっと閉じて最後の瞬間に備える和真。

その時だ。

異世界の静かな夜を引き裂く鋼の嘶きが響く。

強い光が和真の視界を埋め、その後に鈍い衝突音。

何が起こったのか、恐る恐る目を開いた和真の視界に映ったのは、バイクに跨った三原の姿だった。

三原はヘルメットを外すと、険しい顔で跳ね飛ばしたスクィッドオルフェノクを睨みつけた。

我に返った和真が声を上げる。

 

「三原さん!逃げてくれ!あいつはやばい!俺はいいから!」

 

三原はそこで初めて和真に顔を向けると、ゆっくりと微笑んだ。

 

「大丈夫。任せて、和真君。」

 

バイクから降り、荷台に固定されたアタッシュケースを開く。

その中のデルタのベルトを腰に叩きつけるようにして装着。

デルタムーバーから引き抜いた、デルタフォンを顔の横へ。

 

「なんでお前達がこの世界に居るのかは知らない。でも、お前達がこの平和な世界でも、人間を襲うというのなら、俺は!戦う!」

 

デルタフォンのトリガーが力強く弾かれた。

 

「変身!」

『STANDING BY』

 

デルタフォンを叩きつけるようにデルタムーバーへ。

 

『COMPLETE』

 

三原の全身を白く輝くブライトストリームが包み込む。

 

「三原・・・さん?」

 

驚愕する和真の前に、黒い体のライダーが現れる。

オルフェノクと戦い、人類を守ってきた戦士、仮面ライダーデルタが異世界に顕現した。




戦闘描写めちゃくちゃ難しいですねこれ・・・。
伝わるだろうか。
という事で初変身でした。
ドラマチックにはできたかな?
記念すべき初登場オルフェノクはスクィッドオルフェノク。
テレビ版555では海堂のオルフェノク化のきっかけになったオルフェノクですね。
ちなみに555のオープニングをカラオケで歌うと背景でクリムゾンスマッシュを食らってる映像が流れるせいか、カラオケオルフェノクで検索すると一番上にスクィッドオルフェノクのwikiが出てきます。
次回はライダー戦闘回です。
次回は今度こそ一週間後です。
ホントダヨ。ウソジャナイヨ。

デルタギアの作中での呼び方について。テレビ版では巧達は「〇〇ギア」という呼び方をあまりしていなかった記憶があり、拙作でも「〇〇のベルト」という呼び方にしています。しかし、読んでいて「〇〇ギア」のほうがスッと入ってくるのかなと。ご意見お聞かせください。

  • デルタのベルト(現状維持)。
  • デルタギア
  • いいから続き書くんだよ
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