やってみるさ。この素晴らしい世界で、俺に何ができるかわからないけど。   作:みっはー

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こんなにも時間がかかってしまった・・・
引っ越したり転職したりと色々してたらあっという間に時間が過ぎてしまいました。
投稿遅くなり申し訳ありません。
今後もしばらくは不定期更新が続くかと思いますが、投稿自体は続ける気満々なのでお付き合い頂けると幸いです。

アンケートの結果から、5話からはデルタのベルトはデルタギアと呼称していますのでよろしくお願いします。


第5話:Dilemmaは終わらない・・・

「なんじゃこりゃああああ!」

 

バイクで先行した三原に後から追いついたカズマ、アクア、めぐみん、ダクネス。

遠くの空から飛来する緑の球体を見て、カズマが叫び声をあげた。

 

「この世界のキャベツはね・・・飛ぶのよ!」

 

「もうやだこの異世界・・・。」

 

緊急クエストというから何かと思えば、蓋を開けてるみると空飛ぶキャベツの襲来でした。

カズマが脱力するのもさもありなんといったところか。

そしてこの異世界の洗礼とでもいうべき光景に脱力していたのはカズマだけではなく、三原も同様だった。

カズマの叫び声で彼らが追いついたことに気付き、三原も合流する。

 

「や、和真君。・・・これって参加しないとダメかい?」

 

「三原さん・・・。気持ちはわかりますけど、一応緊急クエストなんでダメなんじゃないっすかね・・・。」

 

はあ、と二人のため息がかぶる。

三原はやおらキャベツの群れに向き直ると、ゆっくりと歩きだした。

 

「適当に捕まえてくるよ。そっちも頑張ってね。」

 

そうこぼすと、既にキャベツに襲い掛かっている冒険者の群れに向かっていく三原。

それをどこか白けた視線で見送ったカズマも気合を入れ直し、キャベツの群れに向き直る。

確かに拍子抜けはしたが、キャベツは一珠1万エリスで買い取ってくれるらしい。

かなりおいしい臨時収入だ。

 

「やったらああああ!」

 

半ばヤケクソなカズマの叫び声がこだました。

 

 

★★★★★

 

 

潜伏、スティール、バインド。

覚えたばかりの盗賊スキルを駆使して次々とキャベツを捕獲していくカズマ。

かなりの数を既に捕まえているはずだが、反比例するようにその目はどんどん濁っていく。

単純作業を繰り返していると、先ほどまでキャベツと格闘していたアクアがきょろきょろと周囲を伺っている様子が目に入った。

なんとなく気になったカズマは、潜伏を使ったままアクアに接近すると後ろから声をかけた。

 

「お前なにしてんの?」

 

「ひゃわぁ!驚かさないでよ!」

 

普段の意趣返しも込めて、アクアを驚かしたことで満足したカズマはひとつ頷く。

 

「悪い。潜伏スキル切るの忘れてた。で?キャベツはもういいのかよ。」

 

「あ、そう!そうよカズマ!天使の気配がするのよ!」

 

「え?天使って・・・オルフェノクが近くに居るってことか!?」

 

アクア曰く、キャベツ捕獲をしていたら天使の気配を感じたとのこと。

近くに居るのは間違いないが、これだけ冒険者がいると誰なのかがハッキリせず、探していたそうなのだ。

 

「おまっ・・・オルフェノク見つけたところで一人でどうするつもりだったんだよ!」

 

「大丈夫よカズマ。流石に視界に入れば誰がオルフェノクなのか判別できるわ!」

 

「そうじゃねえよ!オルフェノクが暴れだしたらどうするつもりだったのかって言ってんだよ!」

 

カズマに指摘されて初めて気づいたのか、口元に指を持って行ってうーん、と考え始めるアクア。

長考の末、ポン、と手を打ち鳴らし。

 

「ごめーんね?あいたたたたたたいたいいたいあああああ!」

 

そこまで考えていなかったアクアはカズマに両こめかみを拳でゴリゴリされるのであった。

 

「とにかく、先に三原さんも見つけてからじゃないと俺達じゃ対処ができないぞ。」

 

「でもでも、そんなことしてる間に逃げられちゃったらどうしようもないと思うの!」

 

「何を言い争ってるんです?」

 

言い合いしている二人に気付いたのか、いつのまにかめぐみんが近くに寄ってきていた。

めぐみんは先ほどまで爆裂魔法を撃つタイミングを計っていたのだが、冒険者とキャベツの入り混じる乱戦っぷりに一度諦めて戻ってきていたようだ。

 

「それが、アクアの奴がオルフェノクの気配がするっていうんだよ。」

 

「・・・おるふぇのく?ってなんですか?」

 

コテン、と首を傾げるめぐみんに、和真は頭を掻きむしった。

 

「ああああ!そうだコイツ知らないんだった!」

 

「あ!こっちからオルフェノクの気配がしたわ!あの辺に居るわね!」

 

そんなやり取りをしていると、オルフェノクの気配を再び感じ取ったアクアが冒険者の集団に走っていく。

 

「ああ!おいアクア待てって!ああああもう!めぐみん!三原さん呼んで来い!オルフェノクが居るっていえば伝わるから!任せたぞ!」

 

「えっちょっカズマ!?」

 

めぐみんに叫ぶように三原を呼ぶように伝えると、和真もアクアを追いかけて駆け出す。

おいてけぼりにされためぐみんは一人首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「見つけたわよオルフェノク!このアクア様の前にノコノコ現れたのが運の尽きね!今すぐ成敗してあげるわ!」

 

「なんだこのネーチャン・・・?」

 

「・・・!?」

 

アクアが駆けた先に居たのは、剣を持っている戦士の男、盗賊の男、アーチャーの女一人、プリーストの女一人のパーティだ。

そのうちの一人、戦士の男に人差し指を突きつけるように高らかに宣言するアクア。

普段アクセルでは見かけない顔の上、装備も整っているので、恐らく王都を中心に活動しているパーティだろう。

パーティのうち3人はアクアが何を言っているのか理解できず戸惑っているようだが、指で刺された男は大きく動揺した。

その様子を見たパーティメンバーは、戦士の男に怪訝そうな目線を向ける。

盗賊の男が、戦士の男に問いかける。

 

「なんだ、知り合いか?」

 

「クソッ!」

 

「あ、おい!どこいくんだよ!」

 

「あ!逃がさないわよ!待ちなさーい!」

 

戦士の男は踵を返してアクセルに向かって走っていき、それを追いかけてアクアもアクセルに戻るのだった。

 

「アクア!?おい、待てコラ!どこいくんだよ!」

 

・・・追いかける和真に気付かずに。

それから走ることしばし。

普段は冒険者で賑わうアクセルの町だが、今はみんなキャベツの捕獲に行っているため人通りの無くなった路地裏。

袋小路になっているところで、アクアが追いかけていた男がやっと足を止めた。

後ろから和真もアクアに追いついてくる。

 

「ハァハァ、おま、アクア、どうしたっていうんだいったい・・・」

 

「あ、カズマやっと追いついたの?見てみなさいよ!アイツよアイツ!アイツがオルフェノク!」

 

冒険者の和真はここまでの全力疾走で息も絶え絶えだが、アクアはステータスが高いだけあってケロッとしていた。

戦士の男は振り返るでもなく、壁のほうを向いたままだ。

ようやく息の整ってきた和真が、ごくりと喉を鳴らす。

袋小路の壁に向いたまま背を見せていた男が、ゆっくりと振り返る。

そして、底冷えするような視線を二人に向けた。

その瞳は、あの夜のオルフェノクを思わせ、和真の背を震わせる。

男は無言のまま腰に差していた剣を引き抜いた。

それを見て、和真も慌てて剣を構えた。

アクアは杖を抜かず、なぜかファイティングポーズをとっている。

 

「な、なによ。やろうっての?この私を誰だと思っているのかしら?」

 

男はシュッシュッとシャドーボクシングするアクアを見やると、はぁ、とひとつため息をついた。

 

「なあお前、なんで俺がオルフェノクだってわかったんだ?」

 

その言葉に、アクアはふふん、と鼻を鳴らすと胸を張った。

 

「なぜかって?それは私こそがアクシズ教のご神体!女神アクアその人だからよ!女神様の目を誤魔化せると思わないことね!」

 

その言葉に、さらに男はげんなりしたようで肩を落とす。

 

「んだよアクシズ教徒かよ・・・。無視しときゃよかったぜ・・・。」

 

「んな!?どういう意味よ!」

 

一方和真は、剣こそ抜いているものの、割と理性的な男の態度に驚いていた。

イカのオルフェノクが問答無用で襲い掛かってきたことを考えると、このオルフェノクとの戦闘を今なら回避できるのではないか、と思い始めていたのだ。

和真は、よし、とひとつ心の中で頷くと

 

「いやー!すいませんねウチのアホがね!よくわかんない言いがかりつけたみたいでね!さ、アクア戻るぞー!キャベツが俺達を待ってるんだからー!」

 

そういうと、アクアの襟首を掴んで踵を返す。

 

「ちょちょちょ、ちょっと!放しなさいよカズマ!せっかくここまで追い込んだのに!」

 

叫ぶアクアに顔を寄せると、小声で叫ぶという器用な真似をしながら和真が一息に吐き捨てる。

 

「バカいうな駄女神!今ならまだなんとかなりそうだろうが!俺達二人でオルフェノク相手にどうするっていうんだよ!」

 

「まあまあ、お二人さん。喧嘩すんなって。」

 

そこに声をかけてきたのはオルフェノクの男だ。

笑顔を浮かべており、和真は本当に戦闘を回避できそうな予感を覚える。

 

「正直さ、俺もできれば穏便に済ませたいわけよ。上にも魔王にもオルフェノクの存在をまだあんまり大っぴらにするなって釘刺されててよ。」

 

「・・・魔王?なんで魔王の話が出てくるんだ?」

 

和真の疑問に、男の笑みが深くなる。

 

「へぇ・・・。魔王とオルフェノクが関わってる事は知らないのか。じゃあオルフェノク単体で知ってるってことかよ?ますますお前らが何者なのか興味が沸いてきたぜ。」

 

笑顔のまま、一歩、また一歩とゆっくり男が距離を詰めてきた。

 

「あ、ま、待ってくれ!俺達は今日何も見なかったし何も知らなかった!そういうことにしないか!?」

 

和真の提案に、男は一度歩みを止める。

が、笑顔はそのままだ。

 

「そっちもオルフェノクの存在をまだ隠しておきたいんだろ!?ここで戦ったら騒ぎになるぜ!」

 

ここしかないと思った和真が畳みかけると、今度は男が口を開いた。

 

「こっちとしてはよ。その姉ちゃんがどうやって俺がオルフェノクだってわかったのか、とか。そもそもなんでお前らがオルフェノクを知ってんのかとか、色々聞きたいところなんだけどよ。ま、色々考えるのも面倒くせえし・・・」

 

男の体が一瞬で灰色の鎧に包まれる。

抜いた剣は右手に持ったまま、それ以外の全身が灰色に変わった。

その姿は、依然見たオルフェノクと違う姿で、どこかクワガタを思わせる姿だ。

男・・・スタッグビートルオルフェノクの影に、先ほどまで話していた男の姿が裸で浮かび上がった。

 

『とりあえず死んでくれや。』

 

「バインド!」

 

瞬間、和真は隠し持っていたロープを投てき。

教わった盗賊スキルのひとつ、投げたロープを使って相手を拘束するスキル「バインド」を発動させる。

スキルの力で、ロープが不自然な動きを見せ、オルフェノクに絡みつかんとする。

 

『乱れ切り』

 

が、男が放ったのは戦士のスキル。

初期に覚えられる高速の連続攻撃を繰り出すスキルだ。

オルフェノクの膂力で振るわれた剣が迸ると、ロープは細切れになって地面に落ちた。

なお、早すぎて和真の目には光が何度も走ったようにしか見えていない。

 

「う、嘘だろ・・・オルフェノクになってもスキルはそのまんまかよ・・・!?」

 

「カ、カズマ今の見えた・・・?なんかカカカッてなってたんですけど・・・。ああいうのは某七つの龍玉を集める漫画とかでやってほしいんですけど・・・!」

 

「言ってる場合かよ!」

 

『普段は冒険者として生活してたんだ。そりゃスキルだって使えるに決まってんだろ?じゃ、さようならだ。』

 

ぐっと足に力を込めるスタッグビートルオルフェノク。

まさに飛びかからんとしたところで、ハッと何かに気付き大きく後ろに飛んだ。

直後、先ほどまでスタッグビートルオルフェノクが居たところに矢が突き刺さる。

乱入者は屋根の上。

そこには弓を構えたキースの姿があった。

 

「キース様華麗に参上ってな。」

 

「キース!来てくれたのか!」

 

救援に来てくれたのは、ダストのパーティメンバーの一人、アーチャーのキースだった。

 

「カズマが血相変えて走ってるのが見えたから何かあったかと思ってよ。俺だけじゃないぜ?」

 

路地に駆け込んだ来たのは、ダストとリーン、そして最後のパーティメンバーのテイラーだ。

クルセイダーのテイラーが盾と剣を構えてカズマ達の前へ、並ぶようにダストも剣を構え、その後ろにウィザードのリーンが杖を構える。

 

「お前ら!」

 

喜びの声をあげる和真に、ダストは振り返らずに応えた。

 

「ここは任せな、カズマ。」

 

ダストは眉間に皺を寄せるとスタッグビートルオルフェノクを睨み付ける。

 

『おいおい、アクセルの駆け出し冒険者が何人集まってこようが意味ねえぜ?』

 

「ケッ、言ってろよクワガタ野郎。標本にしたら高く売れそうだぜ。行くぞお前等!」

 

叫び、駆け出すテイラーとダスト。

テイラーが盾を構えながら突進、その少し後ろをダストが追従する形だ。

迎え撃つスタッグビートルオルフェノクは、諸共に剣で横なぎにするべく振りかぶる。

間合いに入る直前、テイラーとダストが横っ飛びに跳ねた。

 

「ファイヤーボール!」

 

『チッ!ちょこざいな!』

 

テイラーとダストが横に避けたことで開いた射線に既に詠唱を終えていたリーンのファイヤーボールが飛ぶ。

スタッグビートルオルフェノクはダスト達に振るうつもりだった剣でファイヤーボールを迎撃するが、ファイヤーボールは強い衝撃で爆発する。

無論、その程度ではなんのダメージにもなっていない。

が、その直後爆炎を割くようにテイラーの構える盾がスタッグビートルオルフェノクを殴りつけた。

 

「バッシュ!」

 

クルセイダーのスキルのひとつバッシュ。

ダメージはあまりないが、相手をのけ反らせることができるスキルだ。

圧倒的なステータス差ゆえにのけ反らせることはできなかったが、一瞬スタッグビートルオルフェノクが硬直する。

そこを爆炎に紛れて後ろに回り込んでいたダストの斬撃が背中を切り付けた。

しかし、ダストの剣ではダメージを負わせることはできず、背中がわずかに火花を散らしただけだ。

 

 

『チッ!効かねえんだよ!』

 

スタッグビートルオルフェノクが振り向きながら裏拳のように剣を振るうが、切り付けた勢いそのままに屈んでいたダストの頭上を通り過ぎる。

と、今度はダストに向き直ったため背を向けることになりフリーになったテイラーの蹴りがスタッグビートルオルフェノクの膝裏を捉えた。

如何に頑丈とはいえ、曲がるように作られている関節に正しい向きに力が加われば膝は曲がる。

ガクリとバランスを崩しかけたスタッグビートルオルフェノクに、剣で切っても効果が薄いと割り切ったダストが顎を剣の柄で殴りつける。

これもダメージにはならないが、顔の辺りを殴られるとひるんでしまうのは人間だった名残か。

スタッグビートルオルフェノクが嫌がるように少し後退する。

再びテイラーが膝を狙うが、今度はスタッグビートルオルフェノクの後ろ蹴りがテイラーを襲う。

咄嗟に盾で受けることに成功したテイラーだが、大きくたたらを踏んでしまう。

フォローのためダストが後ろから再び剣で殴りつけてくるのを一切無視し、テイラーの追撃を行おうとするスタッグビートルオルフェノク。

すると今度は屋根の上のキースが放った矢が目のあたりに飛来する。

咄嗟に目を庇ったことで足を止めている隙に、テイラーは体制を整えていた。

構わず追撃に出ようとしたスタッグビートルオルフェノクの出足を挫くように再びリーンの魔法が飛び、テイラーとダストがスタッグビートルオルフェノクを挟むように近距離で立ち回る。

 

「オラァ!」

 

「そら!」

 

『くそがあああああ!ザコどもがああああ!』

 

圧倒的なステータスがありながら思うように動けないスタッグビートルオルフェノクが怒りの咆哮を上げた。

ダストパーティの戦闘を少し離れたところから見ていた和真は圧倒されていた。

 

「すげぇ・・・。あいつらってこんなに強かったのか・・・。」

 

思わずこぼれた和真の呟きに、アクアは真剣な顔で戦闘を見ている。

 

「・・・駄目。このままじゃ・・・。」

 

「・・・アクア?」

 

若干顔を青ざめたアクアの様子に首を傾げる和真。

明らかにダスト達の優勢に見える戦況に、不安がっているのが和真にはなぜかわからなかった。

が。

 

「ぐうっ!?」

 

「テイラー!」

 

「てめえええ!」

 

キースのテイラーを呼ぶ声とダストの怒声に和真が視線をアクアから戦闘に戻すと、ついに受け損なってしまったのか、集中的に狙われていたテイラーの手から盾がこぼれ、壁に叩きつけられているところだった。

ダストが後ろから切りかかるも、無造作に振られた左腕で払われ、大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「がはっ!」

 

「ダスト!」

 

地面を転がったダストは何とか立ち上がろうとしているようだが、体に力が入らないようだ。

スタッグビートルオルフェノクはダストを無視し、テイラーにトドメを刺そうとしていた。

キースが援護の矢を放つも、体に当たっても一切意に介さない。

リーンが魔法を放とうとも、既にテイラーが近すぎて巻き込んでしまう。

さらに、スタッグビートルオルフェノクはいまだに無傷だった。

ダスト達の攻撃では、その体を傷つけることができなかったのだ。

先ほどまでの優勢が転げるようにパーティが崩壊していく。

 

『ザコが手間取らせやがって。まずはテメェだ。』

 

スタッグビートルオルフェノクが剣を大きく振りかぶると、剣先に青白い光がともる。

 

『お仲間に成れるといいな?』

 

そのセリフに、和真の脳裏に三原が言っていたことが蘇った。

 

"オルフェノクは、人間をオルフェノクにすることができるんだ。オルフェノクが人間を襲うのは、ほぼこれが目的といってもいい。"

 

「ま、まさか・・・やめろおおおおお!」

 

和真は叫ぶと同時、剣を振りかぶって駆け出す。

が、どうみても間に合わない。

テイラーに青白く輝く剣が振るわれる。

直前。

和真の横を何者かが高速で追い抜いた。

 

「変身!」

 

『STANDING BY COMPLETE』

 

「ハアッ!」

 

『ぐっ!?』

 

飛び出した三原の全身が眩い光に包まれ、変身が完了した瞬間にはもう拳を放っていた。

大きくスタッグビートルオルフェノクをよろめかせる。

今日初めてスタッグビートルオルフェノクが漏らした苦悶の声。

そのまま流れるように拳を3発叩き込み、膂力で無理やりにテイラーから引きはがす。

 

『ぐっ、まさかテメェが、デルタギアの!』

 

「なに?デルタギアを知っているのか?」

 

スタッグビートルオルフェノクの言葉に怪訝そうな声を返す三原。

しかし、スタッグビートルオルフェノクはそれに答えず剣を振りかぶる。

 

『さて、どうかな!』

 

三原は上段から振られた剣を体を右にそらすようにして交わすと、そのまま懐に飛び込もうとした。

が、明らかに不自然な動きで跳ねあがった剣が一歩踏み込んだ三原を斜め下から切り上げる。

 

「なっ!?」

 

『乱れ切り!』

 

高速で振るわれた剣に反応できず、三原の体は火花を散らしながら数度切り付けられ、大きく飛ばされた。

 

「うわあああ!」

 

「三原さん!」

 

なんとか受け身をとった三原だが、起き上がった頃には再びスタッグビートルオルフェノクが距離を詰めていた。

そこは既に剣の間合いだ。

なんとか懐に飛び込もうとする三原と、させまいとするスタッグビートルオルフェノクの攻防。

一旦仕切りなおそうと後ろに跳躍する三原だが、その着地を狙うように遠目からスタッグビートルオルフェノクが剣を横に振った。

 

『飛刃!』

 

剣先から放たれた空飛ぶ斬撃に回避が間に合わないとみた三原は、腕でガードするように受けた。

 

「くっ・・・戦士のスキルか。オルフェノクが使うと厄介だね!」

 

『そら!まだ行くぜ!縮地!』

 

移動スキルで一気に距離を詰めてくるスタッグビートルオルフェノク。

オルフェノクになっても、もとは王都で活動していた冒険者。

剣の腕も良い。

三原は、今まで戦ったことのない戦い方をする相手に対して攻めあぐねていた。

あわや劣勢かと思われた三原だが、戦いは思わぬ決着を見せた。

 

『!?』

 

剣を振るっていたスタッグビートルオルフェノクだが、突如手から剣の感触が無くなったのだ。

まさかすっぽ抜けたのかと見やると、三原の後ろで剣を二本持っている和真の姿があった。

 

「スティール・・・ってな!」

 

『てめっ・・・!』

 

「ナイスだ和真君!」

 

防戦から一転、一気に攻勢に出る三原。

左右のラッシュから回し蹴りで大きくスタッグビートルオルフェノクを吹き飛ばし、距離が離れたのを見て即座にデルタムーバーごとデルタフォンを抜き、腰のデルタドライバーのバックルからミッションメモリーをデルタムーバーへ。

 

『READY』

 

「チェック!」

 

『EXCEED CHARGE』

 

銃身の伸びたデルタムーバーから発射された弾丸がスタッグビートルオルフェノクの胸の中心に突き立つ。

 

「DIVE!!」

 

『くそがああああ!』

 

スタッグビートルオルフェノクの怒声は、赤い炎と共に灰になって消えた。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

「こんの駄女神が!みんなが来てくれなかったらどうなってたと思ってんだよ!!」

 

「だってだって!オルフェノクを逃がすほうが大変なことになると思ったんだもん!」

 

めちゃくちゃにキレる和真と、半泣きでわめくアクア。

すっかり板についた苦笑いで眺める三原と、アクアに回復してもらってケガを癒したダストのパーティ。

既に赤い炎は消えて、灰の山となったスタッグビートルオルフェノクをダストは睨み付けていた。

 

「おい、シュージ。こいつはどっちだ?オリジナルか?」

 

「・・・いや、多分違う、と思う。オリジナルのオルフェノクはもっと特殊な戦い方や攻撃をすることが多いんだ。ヤツが使っていた攻撃は全部スキルによるものだろう?上位冒険者がオルフェノク化した姿、だと思う。」

 

「チッ」

 

三原の言葉に、眉間にシワを寄せて舌を打つダスト。

実際、今回倒したスタッグビートルオルフェノクはかなり強かった。

人間の頃に高めたステータスや習得したスキルがオルフェノクになっても反映されているようだった。

これからも、こういったオルフェノクが出てくるだろう。

さらには、和真達が聞いたらしい、スタッグビートルオルフェノクの言葉。

 

"上にも魔王にもオルフェノクの存在をまだあんまり大っぴらにするなって釘刺されててよ"

 

上、ということは。

この世界のオルフェノクを取りまとめる何者かが存在しているということ。

さらに、魔王軍まで関わっている可能性が出てきていた。

更なる激戦の予感に、拳を握りしめる三原。

暗雲立ち込める三原の胸中とは裏腹に、その日の空は嫌になるくらいに青かった。

 

 

 

 

 

ちなみに。

三原を呼びに行ったものの速力の差で見事に置いて行かれためぐみんは、キャベツの集団に爆裂魔法をぶち込み、守ってくれたダクネスとすっかり意気投合し。

反対1その他賛成で和真のパーティにはしっかりとダクネスが参加することになった。




お読みいただきありがとうございます。
今回登場したのはスタッグビートルオルフェノク。
555本編でもデルタと戦ったオルフェノクですね。
三原デルタだけでなく、草加デルタとも戦ったオルフェノクになります。
次回以降も細々書いているので、よろしくお願いいたします。

ちなみにですが、今後も今回の話のように、オルフェノクvs現地人のシーンは挟んでいく予定です。
主人公はデルタの力で戦う三原、第二の主人公がカズマさんで、第3の主人公が特に主人公補正や特殊能力を持っていない純粋な現地人のダストという構成でお送りできればなと思っていたり。
プロットはそれで組んであるんですが、筆が乗るとどうなるかわからないので予定は未定です。(作者のクズ)
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