やってみるさ。この素晴らしい世界で、俺に何ができるかわからないけど。 作:みっはー
いつもだいたい1万文字くらいを目安にしてるんですが、長すぎますかね?
それと今回、デルタムーバーの使い方とこのすばのウィズに関してオリジナル要素があります。
苦手な方はご注意ください。
三原はその朝もいつも通りに朝焼けの頃に冒険者ギルドに配達物の受取に来ていた。
キャベツ襲来があった日、第二のオルフェノクが現れ、魔王軍との繋がりがあることが明らかになったが、それ以降オルフェノクが現れることもなく、平和な日常が続いていた。
アクアからも、新たなオルフェノク発見の報は入っていない。
行方不明者の情報にも気を付けているが、特に目新しい情報はなかった。
オルフェノク探しも重要だが、日々の糧も得なければならないのでそればかりに集中もしていられない。
今日も今日とて荷物を配り、日銭を得なくてはならないのだ。
まだ早朝といえる時間帯、王都のギルドならいざ知らず、アクセルの冒険者ギルドはこの時間帯は冒険者がまだ少なく、目につくのはほぼギルド職員なのだが、今朝は少し職員の様子が違った。
三原がギルドの入り口をくぐると、なにやらギルド職員がギルドの片隅で人だかりを作っている。
ルナも人だかりの中にいるようなので、三原はその人だかりに近づいて声をかけた。
「おはようルナ。どうしたんだい?こんなところに集まって。」
「ああ、シュージ。おはよう。」
振り返ったルナが、人だかりの中心にある木箱を指さす。
宛先の張り付けられたその木箱は、三原が今日配達する荷物だった。
よっぽど珍しい荷物でも来たのかと、近寄って持ち上げようとした三原を、数人の職員が大慌てで止める。
「駄目よシュージ!危ないから触らないで!」
「危ないって・・・。これ、何が入ってるんだい?」
触るなと言われても、これから自分がこれを宛先に届けるのでは?と首を傾げる三原。
三原が一旦木箱から離れたのを見て、ルナが木箱を睨みつけながら口を開く。
「中身は・・・爆発ポーションよ。」
「爆発ポーション・・・?」
ポーション類の配達も何度かこなしている三原だが、寡聞にして爆発ポーションというのは聞いたことがなかった。
いまいちピンと来ていない三原の様子に、ルナが続けて口を開く。
曰く、空気と触れることで爆発する。
曰く、一本でも冒険者ギルドの壁に大穴が空けられる。
曰く、それがこの木箱には24本入っている。
曰く、誘爆したらギルドは吹き飛ぶ。
ルナの説明が進むほど、顔色が青くなっていく三原。
「な、なんだってそんな危険な物が・・・。テロかなにか!?」
「いえ、これは商人がさっき置いていったのよ。アクセルのお店で入荷依頼があったらしいんだけど、一秒でも早く手放したいから運んでくれって。」
ルナの説明を聞いた後だと途端にこの木箱が超危険物に見えるから不思議だ。
恐る恐る木箱に近寄った三原が宛先を確認すると、ウィズ魔道具店となっていた。
このアクセルで暮らし始めてすでに半年以上になる三原だが、はて、アクセルにそんな店あっただろうかと首を傾げた。
★★★★★
「ウィズ魔道具店・・・。ここか。」
アクセルの人通りの少ない裏路地に、ぽつんとその店はあった。
店構え自体は綺麗なものだが、本当に商売する気があるのか疑問が湧いてしまうくらいには立地が悪い。
危険物濃縮木箱を長々ギルドにおいておくわけにもいかないため、三原はすぐに配達に来ていた。
無論、こんなものをバイクに積んで運ぶわけにもいかない為、右手で小脇に抱えるように運んでいる。
左手には、万が一のために常に持ち歩いているデルタギア入りのアタッシュケースを持っていた。
両手が塞がってしまっているので、一度デルタギアを地面に置き、店内への扉を開こうとしたが、扉にはまだCLOSEDの看板が下がっていた。
流石に早く来すぎたらしい。
さて、どうするかと悩む三原だが、店の外観を見るに、店の裏はそのまま家になっているように見受けられる。
恐らく店主はここに住んでいるのだろう。
であれば、店は閉じていても店主に荷物を渡せるのではなかろうか。
普段の荷物であれば一度引き返すところだが、三原としてもこの危険物詰め合わせボックスをさっさと手放してしまいたかった。
ダメ元で扉を引くと、鍵がかかっていなかったようで、あっさりと扉は開いた。
その不用心さに眉を顰めるが、まあ開いているなら怒られはしないだろうと店内に踏み込む三原。
店内から声を張れば、後ろの家の中に居ても気づいて貰えるだろうと思っていた。
が、一歩店に踏み込んだ瞬間、三原の全身が総毛立つような悪寒に包まれた。
それは、現代で嫌というほど味わった死の気配。
思わずその場から飛びのくように後退する三原。
手に持っているのが爆弾だということを一瞬忘れて振動を加えてしまった事に気付いた三原が青ざめるが、どうやら爆発する気配はない。
ほっと息をつくと木箱を地面に置き、先ほどから置きっぱなしにしていたデルタギア入りのアタッシュケースを開く。
なるべく店の入り口から目を離さないようにデルタギアを装着すると、デルタムーバーごとデルタフォンを引き抜いた。
「Fire」
『Burst Mode』
変身しないままデルタムーバーのブラスターモードを起動させると、ゆっくりと扉を開き再び店内に入る。
明かりのついていない店内は薄暗いが、三原の入ってきた入り口と窓から漏れる朝日で見えないというほどではない。
小奇麗に整頓された店内の様子を慎重に伺う三原は、カウンターの前に椅子を置いて突っ伏すように眠っている女性に銃口を向けた。
女性は紫色のローブのような服を着ており、こちらからでは後ろ姿しかわからないが、腰まである長い茶髪と柔らかいボディラインが女性であるということを雄弁に語っていた。
女性は深く眠っているのか、三原に気付く様子はない。
・・・いや、あれは本当に眠っているのだろうか。
肩が呼吸で上下していない。
どころか、身動ぎひとつしない。
しかも濃厚な死の気配は彼女から漂っている。
身長に足音を立てないように近寄った三原は、ゆっくりと女性の横に立つ。
カウンターに突っ伏して顔を横に向けるようにして目を閉じている女性の顔立ちは整っており、とても安らかな表情をしていた。
これだけ見ると本当にただ眠っているようだ。
ゆっくりと顔の前に手をもっていく三原。
・・・呼吸がない。
顔の下敷きにするように組まれていた腕から右腕を解いて、右手首を緩くつかむ。
・・・脈もない。
死んでいる。
店内はやはり整っており、争った形跡はなし。
安らかな死に顔を見ると、苦しむような死に方ではなかったと思われる。
・・・となると、薬物による自殺とかの線が濃厚だろうか。
それか、そのような死に方をする魔法があるのだろうか。
右手首を掴んだまま、ふむ、と考える三原。
死体を前に冷静に考えることができるのは、悲しいかな、現代で嫌というほど見たからであった。
オルフェノクに殺された人間は灰になってしまうが、それ以外の要因で死んだ人間というのもかなりの数いたのだ。
と、ふと視線を感じた三原が目を下にやると、
「ッ!?」
先ほどまで目を閉じて死んでいたはずの彼女と、しっかり目を開いた状態で目が合った三原は驚愕し、床を強く蹴って後退。
銃口を女性にピタリと合わせる。
女性はゆっくり立ち上がると、気まずそうな表情で振り返った。
「えっと、開店はまだなんですけど・・・。」
そんなとぼけた事を言う女性に目つきを鋭くした三原が口を開く。
「ふざけないでくれ。君は・・・君はなんだ?」
「えっ・・・?」
三原の言葉に驚いたような反応をする女性。
ふと、先ほどまで三原に掴まれていた右手首に視線をやると、三原が右手首を掴んでいた理由に思い至ったのか、女性の表情にどんどん焦りが浮かんでいく。
バッと三原のほうに素早く向き直った女性が三原のほうに一歩踏み出す。
神経を張り詰めていた三原から即座に警告が飛ぶ。
女性は一歩踏み出した勢いをそのままにその場に膝をつくと額を床にこすりつけた。
「うごく・・・な・・・?」
「見逃してください!!」
「えぇ・・・?」
それはそれは見事な土下座を前に、困惑した三原の声が漏れた。
★★★★★
すっかり日が昇り明るくなった店内で女性・・・ウィズ魔導具店の店主、ウィズからの説明を聞いた三原は頭痛を抑えるように眉間に手をやった。
あまりにも敵意がなく、半泣きで見逃してほしいと言い続けるウィズの様子にすっかり毒気を抜かれた三原は、もうデルタギアもつけておらず、ウィズとカウンター越しに椅子に座りあって会話していた。
「つまり、君は元々人間だったけど、禁呪でリッチー・・・アンデットになった。ただ、人間と争うつもりもなく、ここで魔導具店を経営しているだけだと?」
「はい・・・。ほ、ほんとに一度も人を襲ったことはないんです!誰にも迷惑をかけないように暮らしますから!見逃してください!」
うーん、と考え込む三原。
「そういわれても俺の故郷にはアンデットなんて居なかったし、どうしたものか判断ができないんだ。一度冒険者ギルドにこの話を持ち帰って相談してみるよ。」
そういって立ち上がりかけた三原の腕を、ウィズが大慌てで掴む。
「や、やめてください!そんなことされたら、アクセルに居られなくなっちゃいます!!」
確かに目の前の女性はかなり無害そうに見える。
今も困ったような、縋るような眼でこちらを見てくる女性が豹変して人間に襲い掛かったり、夜な夜な怪しい儀式をしているような想像もできない。
今までの話にウソも無いように感じた。
三原はひとつ頷くと、ウィズに質問を投げかけた。
「ひとつだけ聞かせてほしい。君がわざわざこのアクセルで店を開いているのはなんでだい?なにか理由があるんだろう?」
そう聞かれたウィズは何度か躊躇った後に、口を開いた。
「人を、待っているんです。みんなが帰ってきた時に、おかえりなさいって言えるように。」
消え入るようにそういったウィズの表情を見て、三原はこの店に入ってから、初めて表情を和らげた。
「わかった。このことは誰にも言わない。約束する。」
「ほ、ほんとですか!」
パァっと花が咲いたような笑顔を浮かべるウィズをみて、アンデットとは思えないな、と苦笑を浮かべる三原。
その脳裏に過ったのは、現代で人類解放軍の仲間として戦ってくれた3人のオルフェノクの姿だった。
ある意味人間より人間らしかった彼らのように、このリッチーもきっと、自分から誰かを傷つけるような存在ではないと、信じてみることにしたのだ。
「俺の故郷にも、人間じゃないのに人間のために戦おうとしてくれる人たちが居た。だから、俺はウィズさんも信じたい。いや・・・信じてみようと思う。」
「ありがとうございます!えっと・・・」
なにやら言い淀むウィズの様子に三原は首を傾げてから、ああ、と納得したように頷くと、握手のために右手を差し出した。
「俺は三原。三原修二。よろしく、ウィズさん。」
その言葉に、ウィズも冷たい手で握り返した。
★★★★★
すっかり弛緩した空気の流れる店内で、三原が思い出したように手を鳴らした。
「そうだ。すっかり忘れてた。荷物の配達で来たんだった。」
「配達ですか?」
首を傾げるウィズを店内に待たせ、表に置きっぱなしにしていた木箱を店内に運び込む。
「はい、これ。爆発ポーションだってさ。」
「ああ!ミハラさんが持ってきてくれたんですね!ありがとうございます。」
爆発ポーション入りの木箱を三原から手渡されたウィズは笑顔で蓋を開くと、さっそく棚にポーションの陳列を始めた。
・・・一番上の段に置くのはどうなのだろう。
何かの拍子で落下した爆発ポーションが大爆発を起こすのではないかと、三原は一歩下がる。
楽しそうに陳列するウィズを見て、そんなに良い物なのだろうかと三原は用途を聞いてみることにした。
「それ、何に使うものなんだい?」
「これですか?これは、戦士などの前衛職の人にオススメの商品です!」
右手に爆発ポーションを持ったまま勢いよく振り返ったウィズに、ぎょっとした三原はさらに一歩下がるが、ウィズは満面の笑みで一歩踏み込んできた。
「ベルトや懐にこのポーションを入れておけば、いざという時の奥の手としてとても有用です!ちょっとした炸裂魔法くらいの威力はあるので、冒険者の方なら一本は持っておきたいオススメ商品ですよ!」
そんなニトロの瓶詰みたいなものをベルトや懐に入れて戦うなど冗談ではない。
この世界の冒険者とは、下手に転ぶと爆発四散してしまうような状態で戦うのだろうか?
そんなバカな。
普段よく話す冒険者達の装備を思い浮かべて、無言で首を横に振る三原。
三原は察した。
ああ、この人、商才がからっきしなんだろうな・・・、と。
なおも嬉しそうにポーションの陳列を続けるウィズの背中に、軽い調子で三原が声をかける。
「でも良かったよ。アクセルの中でアンデットと出くわすとは思ってなかったから。最初はアクセルに潜みつつ、夜な夜な墓地で儀式したりする魔王軍の一員かと思ったから。」
「え゛っ・・・」
「ん?」
陳列していた動きのまま固まったウィズを見て、三原が首を傾げる。
「・・・もしかして、魔王軍の一員なの?」
「えっと・・・はい、その・・・。一応、幹部です・・・。」
「・・・夜な夜な墓地に出入りしている?」
「・・・してますね。べ、別に誰かに迷惑をかけるようなことはしていないんですよ!?」
「その話、詳しく。」
和やかな空気とはなんだったのか。
恐る恐る振り返ったウィズが見たのは、完全に目が据わっている三原だった。
その後、ウィズから詳しく話を聞いてみると、幹部とは言っても結界を維持するだけのなんちゃって幹部だし、夜な夜な墓地に行っているのも、拝金主義のプリーストが仕事をしてくれないので代わりに迷える魂たちを成仏させているとか。
どっちが聖職者なのかわかったものではないな、と三原は思わずため息をこぼした。
「事情はわかったよ。ウィズさん。最近魔王軍に新たな勢力が加わったりしていないかい?」
「新たな勢力ですか・・・?私は基本的に魔王軍とは相互不干渉の約束をしていますから、最近の情勢はちょっとわからないですね。」
口元に指を持っていってうーん、と悩むウィズには心当たりはなさそうだ。
そのことに僅かに落胆した三原だが、気を取り直してウィズにオルフェノクの事を伝えることにした。
「実は、最近このアクセルでオルフェノクと呼ばれる・・・種族、でいいのかな。者たちがいるんだ。彼らは人間を襲い、ただの人間を同族にしてしまう。俺は今、そのオルフェノクと戦ってるんだ。どんなことでもいいから、何か知っていることがあれば教えてほしい。」
その話を聞いたウィズは、さっきまでのどこか抜けたような雰囲気が霧散し、すっと目を細めた。
「つまり、魔王軍にそのオルフェノクという者たちが加担して、人を襲っていると?」
「ああ。今のところは幸いにして、死者は確認できていないけど。既に二人のオルフェノクをこのアクセルで倒している。」
「・・・私が魔王軍と交わした契約は、魔王城の結界の維持を担当する代わりに、冒険者以外に危害を加えないことです。冒険者の皆さんは魔物を狩り生計を立てるのですから、場合によっては返り討ちにあってしまうこともあるでしょう。しかし、それ以外の一般の方々には魔王軍も冒険者も関係ありません。もし彼らに危害を加えた場合、私は魔王軍と敵対するという契約です。これからは私も気を付けて生活してみます。なにか、オルフェノクの特徴のようなものはありませんか?」
「奴らはみんな、人間としての姿と、オルフェノクとしての姿の両方を持ってる。オルフェノクの姿は全身が灰色の鎧のような姿をしている。この時はすぐにわかると思う。人間の時の姿は、人と見分けがつかない。見た目は普通の人間だ。・・・ただ、どうやら天使の気配がするらしいけど。」
「天使の気配、ですか?」
三原はひとつ頷き、言葉を続ける。
「俺の知り合いのアークプリーストが言ってたんだ。天使の気配がするから、オルフェノクが近くに居ればわかるって。実際、彼女は人間体のオルフェノクを感じ取ったようだし。」
「・・・なるほど。上位のアークプリースト独特の感覚かもしれませんが、ようするに神聖な力を感じるということですよね。なら、アンデットの私にも感じ取れるかもしれませんね。」
アンデットと天使。
確かに相反する存在のように思える。
「もし、オルフェノクを見つけても手出しをせずに、俺を呼んでほしいんだ。俺は奴らと戦うための術を多く知っているから。」
その言葉に、ウィズも頷いて答える。
「わかりました。天使の力ということは、私とは相性が悪いかもしれませんし。その時は、ミハラさんを呼ぶことにします。」
「よろしく頼むよ。」
こうして三原はこの世界での新たな協力者、魔王軍幹部にして、リッチーのウィズとの友好を得た。
この出会いが大きな波乱を巻き起こすことになるのだが、そのことはまだ誰も知らない。
お読みいただきありがとうございます。
未変身でデルタムーバーのブラスターモード使用がオリジナル要素です。
それとウィズが呼吸してなかったり脈がなかったりがオリジナル要素ですね。
一応呼吸してる描写が原作に無かったので問題ない、かなと思ってます。
見落としがあったらすいません。