「 君はいつまでそうしているつもりだい? 」
「うぇ!?」
ブラッコを見送った後、まだ座り込んでいる金髪君に声をかけると、彼は驚き声をあげた。
「え、え、えと…」
「 …ふん 」
どうやら彼は混乱中で話が通じないようだ。
僕の都合で彼を助ける形になったけど、僕は彼を助けるつもりはなかった。
ただ、彼のその姿が気にくわなかった。
彼の姿は跳ね馬にそっくりだ。生まれたのはこの彼の方が先だけど、僕が知ったのは前の彼の方が先だ。
その彼と似ている顔で、彼とは違い、恐怖を宿していたその目に、僕は苛立った。
わかっている、これはただの押しつけだと。
それでも、彼は、ディーノは、僕を
「あの! えっと…」
そこから去ろうと彼に背を向けた時、彼から声をかけられ、僕はそれに顔だけ振り向き応えた。
「 …助けたつもりはないよ。機嫌も良くならなかった……君を咬み倒せるばなおるかな? 」
「!ヒッ」
少ないながらも殺気を当てらてた彼は顔を青ざめさせる。
それを尻目に僕はその場から離れた。
( …少し苛つき過ぎたな )
*
次の日
午前中にブラッコ会って話をし、とりあえず4000ユーロ(約50万円)[現代換算]ほど渡しておいた。紙幣や硬貨だけではなく、貴金属や宝石を含めた金額だ。
最初は9000ユーロ(100万円)ほど渡そうかと思ったが、多すぎだと言われた、この街を出たら日本に行くため、
彼にだいぶ減らされてしまって、とても渡し足りない。
お金はいくらあっても足りないんだけどな……。この考え方は幼少期の生活のせいかな?
まあ、足りなくなったら、換金できる物を鳥(ファートという名前にしたそうだ)に運んでもらえばいいよね。
「2倍以上歳の離れた子に大金を渡されるおじさんの立場……」
「 僕の部下 」
「うん、、そだね……」
彼にはその金額に見合う事をやってもらうから、危険手当は大事だよね。
もちろん、4000ユーロが全額ということはない。
彼も渡り人だから、多いお金や貴金属は重い荷物として邪魔になる。これは心配してないが盗まれるということもある。
だから彼には、僕が様々な場所に隠した貴金属等の在り処を示す地図を書いて渡した。
僕の場合在り処は全て記憶しているから地図なんていらないんどけどね。彼にその場所を口頭で説明したらムリだと言われて仕方なく書いてあげた。無くさないといいけど……フラグかな?
*
午後、特に目的もなくブラブラと街を歩いていたソルドーネは、目の前で、どこからか走ってきた、昨日出逢った金髪君が顔面から勢いよく転ぶ瞬間を目の当たりにした。
「イテテテ」と顔を上げた金髪君とバッチリ目が合った。
「昨日の!」彼はそう言うとソルドーネのそばに寄ってきた。
「昨日はありがとうな、おかげで助かった!」
「 助けたつもりはないと言ったはずだけど 」
「それでもだ! オレがお礼を言いたかったからな」
ニカッと歯を見せながら笑う彼、改めて見た左腕には跳ね馬のような特徴的な刺青はなく、擦りむいたような傷はあるものの綺麗な肌だった。
「あ、そうだ! あんた、こんぐらいの女の子見なかったか!?」
彼は何か焦りながら、自分のお腹の高さで手を水平にした。
「いつの間にか居なくなってて、いつもなら絶対昼までに院に帰ってくるのに、朝出たっきり帰ってこないんだ!」
焦って泣きそうになっている彼を、ソルドーネは冷静に見ながら、自分の後ろを指差した。
「 それってあの子のことかい? 」
「え?」
バッ!と、ソルドーネが指差した場所を見た金髪君は、これでもかというほど目を見開いた。
彼の目線の先には、建物に体を半分隠している、先程彼が示した大きさの女の子がこちらを見ていた。
その女の子は気づかれるとは思っていなかったのか、驚いたように体を大きく震わせた。そして観念したかのように、トボトボとこちらへ歩いてきた。
彼女はこれから怒られるのがわかっているようで、顔は下を向きながら、チラチラと視線を彷徨わせている。
「無事でよかった!」
金髪君は女の子の前まで行くと彼女を抱きしめそう言った。
その行動に驚いた女の子だったが、すぐにその目からは、ボトボトと大粒の涙が溢れ出てきた。
「ふぇぇ、ごめんなさいぃぃ」
そんな二人をなんの感情もなく見ていたソルドーネは、彼らの奥からこちらへ走り寄ってくる影に気づいた。
「リーノ!」
「あ、ロア!」
近づいてきたのは、金髪君と同じ年頃の黒目黒髪セミロングの眼鏡をかけた女で、どうやら金髪君と知り合いみたいだ。
「見つかったのか」
「ああ。
どうしてこんなことしたんだ? お昼には帰ってくるって約束だったろ?」
金髪君が優しく聞くとら女の子は「ごめんなさい」と、しょんぼりしながら、「あのお兄ちゃんが助けてくれて……だからお礼言いたくて」と言いがソルドーネを見る。
それにつられるように、あとの二人もソルドーネの方を向いた。
「助けてくれてた?」
「うん! 転びそうになったときに倒れないようにしてくれたの!」
そこからは、お礼だお礼だと、なぜか彼らの住む孤児院に行くことになった。
「 何を勘違いしているのかは知らないけど、僕にぶつかりそうだったから手を出しただけだよ 」と言っても彼ら、主に金髪君と女の子は聞く耳を持たない。
結局は、黒髪の子に諦めてくれと言われ、孤児院についていくことになった。
今世は他人に何処かに連れて行かれるということが多い気がする。
孤児院には十数人の子供達と数人の大人達が暮らしていた。
求められた旅の話をしながら、ソルドーネは夕方までそこにいると、いつものように、夜の街へと歩を進めた。
名前…fato(ファート) 意味…運命
ソルドーネがブラッコに渡した薄灰色の鳥
場所ではなく人に向かって飛ぶことができる。
キャバッローネ初代
名前…リーノ(カヴァッリーノ・ランパンテから)
姿…焦げ茶色の目、金髪
性別…男
リーノの家族兼親友 リーノと同い年
名前…ロミローア 愛称…ロア
(ロマーリオのローマ字のアナグラム)
姿…黒目、黒髪セミロング。眼鏡をかけている
性別…女
孤児院の名前は「カヴァッロ・アラート」
日本語では 天馬(てんま)
不当な取り立てに苦しんでいたが、ある日突然、その取り立て屋が居なくなった。
そして同じ日に、たくさんのお金が孤児院に寄付された。