僕達は 親というものが解らない
知識はある。簡単に言えば、父親とは 親である男のことを指し、母親とは 父の配偶者で、子を産んだ人のことを指すそうだ。
僕達は自分達の父親を知らない、見たこともない。母親がまだ近くに居た時に聞いてみたことがあったけど、帰ってきたのは耳障りな金切り声と痛みだけだった。
その母親は、僕達が4歳の時から ほとんど家に帰って来なくなって、帰って来たと思ったら、感情を打つけるように、僕達に痛みを与えるだけだった。
あいつが帰って来た時、よく叩かれるのはアディだ。僕達の父親と同じ髪の色をしているからって言ってた。だから僕は、あいつが帰ってくる時に アディの手を引いて 窓から外へ飛び出すんだ。あいつは僕達が居なくても気にしてないみたいだから。
僕の方が アディよりいっぱいのことを考えられるようだから、僕がアディをまもるんだ。
どうしてかはわからないけど、僕とアディは いつかはなればなれになる気がするんだ。だからそれまでは、僕はアディをまもりながら、僕が出来る事や知っている事を アディにいっぱい教えようと思ってる。そうすれば、僕が居なくなくなっても アディが傷つかなくなる筈だから。
僕達のいる家には沢山の本があった。僕達は、親がいないときにその本を読み、多くの知識をつけた。
その時に、僕は、僕が普通じゃないと知った。僕は、教えられた事がない筈なのに文字を読むことも、その意味を理解することもできていた。
僕があいつに叩かれる理由はそれだったな・・・・「教えた事もないのに…気持ち悪い」って、何度も言われた。
アディは僕と違って、初めから読むことも話すこともできなかったし、教えないと意味を理解できなかったけど、一度教えれば すぐに記憶していった。
本を読み始めてしばらく経った後、走っても転ばなくなる頃にはもう 母親は僕達と距離を取り始めていた。
僕はそれを好機と見て、アディを連れて 2人だけで外に出るようにした。その頃は、あいつに見つかるとすぐに家の中に戻されるけど、あいつ1人の目を掻い潜るのは容易だった。あの頃にはあいつ、僕達の食べ物すら用意しなかった。あいつに言われるがまま 家に閉じこもってたら、僕達は餓死してたと思う。
食べ物を得るには お金がいるってのは知ってたから、僕達は家の中を探索して お金やお金に変えられる物を探した。そして見つけたものを持って外に出て、食べ物を買ってお腹を満たしてた。服とかも買ったよ。
はじめのうちは、あるものを選ばずに持ってって、あいつを大激怒させてしまって・・・あの時はまだ体が弱くてさ… 数日ろくに動けなかったな。 ま、骨折にはならなかったし、アディのことはまもりきれたから良かったさ。
だけどあいつ、次見た時に別のを持ってたのにはムカついた。
外に出てからは 街を隅々まで探索した。最初は表通りを そのあとは裏道に足を踏み入れた。
僕達が暮らしている街は、少し裏に入っただけでガラリと雰囲気が変わる。そこでは盗みも殺しも日常茶飯事で、表で暮らしている人間は近寄らず、少しでも裏の人間のテリトリーに入ってしまったらもう人として出てくる事が出来ないような場所になっている。
だけどそれは、僕には、僕達には関係なかった。僕達は頭脳面だけではなく肉体面でも他と違った。
裏道を歩いていた時、僕達は複数人の大人に囲まれた事がある。普通なら、恐怖などの感情が浮かび、そこから逃げたいなどと思うんだろうけど、そこで僕が思ったのは、邪魔だとか、自分達の力量もわからないのか等ばかりで、僕が負けるなんて考えもしなかった。
アディもそんな感じで、その目に恐怖とかは一切なかった。あれは 邪魔だなって思ってるような目だったな。
それでその後すぐに大人達を咬み倒して、身ぐるみ剥がしておいた。裏では布切れすら金になるからさ。僕達に絡んだのが運の尽きってね。
そして僕達は、家では本を読み、裏では絡まれたら咬み倒し 身ぐるみを剥がし金に変え、表ではその金で食べ物なんかの必要なものを買い、余ったら裏に撒くというような生活を続けた。
僕達が裏に入るようになり、住処を追われるようにそこから表に出て、表の人間を傷つけようとしたものが 一時期多くなったけど、なんとなく向かった先で犯行現場に遭遇して咬み倒す事がほとんどで、今のところ表の人間が傷つけられた等の話は聞いてない。
数年もすれば、その街の人間は 表のやつも裏のやつも、僕達に歯向かってくる事はなくなった。
ただ、他から流れて来た者達がこの街の人間に危害を加えるなどということが目立つようになった。
僕達は2人しか居なく、街も広いので全てを把握する事はできてない。だけど、僕達の目の届かない場所で好きっ勝手させるつもりもない。
そこで僕は、この街に居るストリートチルドレンに見廻りを任せ、異状事態や流れ者の発見に応じて対価の支払うという口約束を結んだ。
( 彼らは かのイレギュラーズのようだったと、未来を知った後の僕は語るだろう )
そして、8歳を迎えた年、僕達は引き裂かれる事となった。