女体化上杉君が天涯孤独になって中野家に預けられる話   作:悠魔

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上杉風太郎が死亡したらどうなるかなーという主人公死亡ルートを考えていたら、上杉勇也・らいは死亡ルートの方が面白くなりそうだなーと思ったのでこっちにしました。


一話

 

 

ーーきっかけは、あの電話からだった。

 

私が中野家の家庭教師になってから二回目の試験勉強に備えていた時。二乃と三玖のチャンネル争いを止めていた時に、不意にその電話がかかってきた。といっても私は携帯を普段見ないから、五月の携帯に着信があったのを渡されただけだけど。

電話先の相手は、この子達の父親だった。

以前電話した時も試験が間近に迫っている時期だった。察するに、今回もまた赤点を取ればクビ、そんな条件をつけられるのだろうと身構えていた。

しかし、電話越しではあったがーーその声に冷徹さはなく、むしろ声が震えるのを必死に抑えたかのようなーー切迫した焦りが否応にも伝わってきた。

 

『ーー上杉君、落ち着いて聞いてほしい。君の父親と妹さんが交通事故に遭って、意識不明の重体になっている。今さっき私の病院に運び込まれてきたところだ。医者として最善は尽くすが、万が一もあり得る。家庭教師の仕事は今日は休んで、今から言う病院に来て欲しいーー住所はーーー』

 

次から次へと流れてくるショッキングな情報に混乱したが、身体の方は反射的に動いていたらしく、ノートに言われた住所を走り書きするとそのページを破いた。

頭の中では「万が一もあり得る」という言葉が何度も復唱されていた。死への実感。母親を喪くした私には、その恐怖がより鮮明なものになってやってくる。

きっと酷い顔をしていたのだろう。ふと顔を上げると、私以外の全員が不安そうな顔を浮かべていた。あの二乃までもが、心配そうに見てくるではないか。

そこで漸く私の頭は冷える。この子達を心配させてどうする?きっと大丈夫だ、まさかウチに限ってそんな事が起こる筈がないーーそう自分に言い聞かせると、余計なことを考えないように大きく息を吐き出した。

 

「ーーちょっとウチの家族が事故ったみたいで、私は様子を見に行かなくちゃいけないからーー悪いけどあとは自習でーー」

「ーー上杉、ーー」

「ーー私、行くから。きっと、絶対、大丈夫だからーーすぐ戻ってくるからーー」

 

我ながら要領を得ない説明だと思う。

しかし同時に、今の私に具体的に話せる余裕はなかった。

命にかかわるかもしれないという事は言わなかった。言ったら、それが現実になってしまうような気がした。

破ったノートの切れ端を片手に部屋を出る。背中に自分を呼ぶ声がしたが、それすらも煩わしいと感じる。エレベーターを待つ時間がやけに長くーー実際三十階建てなのだから長くて当然なのだがーー何時間も待ったような気がした。

病院に行くまでの事は、あまりよく覚えていない。父親やらいはがいなくなってしまうかもしれない。そんな恐怖が浮かんでは消えた。その恐怖から逃れるように、ただひたすら走った。

どれだけ焦っていたのか。

私は病院に入るやいなや、受付の人に噛み付いていた。

 

「こんにちは、本日の御用はーー」

「っ、らいはとお父さんが、家族が交通事故に遭ったって聞いて」

「……!あなたのお名前を伺ってもいいですか?」

「私は上杉風波(かぜは)です!二人は、二人は無事なんですか」

「ええ、きっと大丈夫ですよーー少々お待ちください」

 

受付の人に案内されて、手術室の前まで連れてこられた。ランプが点灯しているのを見るに、まだ手術は終わっていないらしい。それを見てーーまだ予断を許さぬ状況だという事実に苦しんだ自分と、ひとまず安堵した自分がいることに気が付いた。

ーー二人はまだ生きているのだ。

そのランプが早く消えてほしいような、永遠に点いていてほしいような矛盾した感情が混在していた。もしランプが消えた時、二人の命のどちらかでも無くなってしまっていたとしたらーー耐えられる自信は、なかった。

永遠とも思える時間の中、自問自答の海の中で溺れていた。もし死んでしまったらどうしよう。いや、そんなはずは無いーーその繰り返しを、無限に。だからランプが消えた時、私にとってそれは、まるで眠りから覚めたかのような感覚だった。

 

「らいはと、お父さんはーー?」

医者と思しき白衣の男の疲労の影は、恐ろしいまでに濃かった。眼鏡の奥の表情は、年齢以上に弱り切っていてみえた。

 

「ーーーーーー最善は尽くしましたがーー残念です」

 

その言葉が重くのしかかった。

 

 




風太郎を女にした理由

風太郎だったら一週間くらい塞ぎ込んだ後に自分なりにケジメつけそう

女体化したら実質オリキャラなので好きなように性格いじれる

という理由です。
風波ちゃんには色々と絶望を味わってもらって勉強すらできないほど病んでもらいます。マルオとのコミュニケーションも男性の時以上に取れなくなります。
いくつか作品を書いてきて思いましたが、どうやら私はこういう病んでるメンヘラ系女子を書くのが好きなようです。
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