女体化上杉君が天涯孤独になって中野家に預けられる話   作:悠魔

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五話

「こっちおいで、カゼハちゃん」

「…………ん」

 

不思議な感覚だった。

一花にはーー私に対して憐れみだとか、同情だとかの感情が一切ないように思えた。

いや、あるのかもしれない。

だがそれを悟らせないーー笑顔という名の無表情。怒っているのか、憐れんでいるのかさえも分からない、ただただ笑顔の仮面がそこにはあった。長女として、女優としてなせる技だろうか。

だからか、私は今までの人達のように心を閉ざす事はなかった。

 

「三玖と五月ちゃんから聞いたよ。すっごく落ち込んでるんだってー?」

「……………、まぁ、うん」

「ごめんね。あの子達も悪気があったわけじゃないんだ。家族がいなくなる辛さを、私達はよく知ってるからさ」

「………え?」

「私達、お母さんいないんだ。五年前に病気で死んじゃって。それで今のお父さんに引き取られてきてね……。五月ちゃんなんか特にお母さんの事大好きだったからさ、気持ちは分かる……とまではいかないけれど、放って置けなかったんだと思う。三玖は別の事情があるみたいだけどね」

 

ひたすらに驚いていた。

この子達は自分と同じだ。五年前、同じく苦しんで……そして、今がある。

強い子達だと思う。

できないのはただただ勉強と経験だけ。一花の横顔が、酷く大人びていて…それでいて、悲しみ疲れた顔に見えた。それを見てーー「どうやって乗り越えたの」という言葉を口の中で転がした。

 

(一花は……乗り越えたんじゃない。乗り越えざるを得なかったんだ。大切な姉妹のために……)

自分には、ない。

大切なものなどもう残っていない。

私には何がーー

 

「私達ーーーー『私』が、君の大切な存在になりたいんだ」

「ぇ?」

言っている事に理解が追いつかなかった。

「辛さを、悲しみを、苦しさを、いつか皆んなで六等分できるようにーーまず、私と君とで共有したい。だって、ほら、辛い時は泣くものでしょう。なのに君は泣くのを我慢してるように見えるから」

「ーー悲しみを共有?無理だよ………しょせん、貴方は私ではないもの」

「できるよ。私達ができたんだもの」

 

それは他人同士ではなく、五つ子だからできた事だ、と反論しようとした。

その前に顔を引っ張られた。痛い。

「嘘でしょ、その表情」

「ーーーー」

「君、人に作り笑いをやめろって言う割には自分もする人だったんだね?ずるいよ。辛いならもっと辛い顔しなよ。ーー私達は今日からーー家族も同然、なんだよ?」

「ーーーー」

「自分の大切な人が、我慢してるのを見るのは、辛いよ」

 

頰に流れた熱い雫。

それを見て、ああ、泣いているのだとなんとなく思った。早く止めないと、とも。

だけど一花の顔を見ると、涙の勢いは増すばかり。自分が建てた防壁が崩れていくのを感じていた。

そして、目を背け続けてきた痛みが、今になって放出される。強がりは壊れて弱味が見えてしまう。彼女はそれでいい、と言ってくれた。

悲しい。辛い。

苦しい。

ーー寂しい。

この世界に置いていかれたような疎外感を思い出していた。

一人は辛い。

今まで自分が抱えてきたもの、負ってきたものを、全て出した。

一花の前でみっともなく泣きながらーー

 

「一花、私、どうしたらいいの……?」

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

生きてきた中で初めての感覚だった。特定の誰かに向けるこの想いもーーそして、この子のこんな姿を見て、言いようもない情慾が湧いた。

一度会ったきりだが、らいはちゃんが死んだと聞いた時は信じられなかったし、とても悲しかった。同時に、カゼハちゃんのお父さんも死んだと聞いて、彼女は大丈夫だろうか……と、心配に思った。

案の定、彼女は側から見ても分かる程に弱り切っていた。捻くれていたけれど、とても優しかったあの頃の彼女はいなかった。

そこにいたのは、家族を失い、家を失い、ーーまるで泣きそうな子供のようなーー少女がいた。彼女が、こんな心細い顔をするなんて、と。

彼女を心配すると同時、翳りを帯びつつも、とても幼い顔に心が揺れ動いた。

 

ぞくり、と。

 

顔に出すまいと……抑えようと思っていたのに、顔に三日月が浮かんでしまう。

胸の内に広がる高揚感。

溢れ出る独占欲。

今、自分の腕の中で泣いているこの少女を見てーーああ、どうしようもなく好きなのだと自覚する。

自分だけのものにしたい。

カゼハちゃんの家族が死んだことに悲しんだのは事実だ。カゼハちゃん本人を心配したのも事実。

しかし、カゼハちゃんを自分のものにできると思わなかったわけでもなかった。

欲しい。

この子が欲しい。

 

「一花、私、どうすればいいの……?」

鼓動が早くなった。

 

「何もしなくていい。辛いことがあったら全部話してくれれば、それでいい。

ーーーお姉ちゃんが守ってあげる」

 




というわけでカゼハは一花に依存したのではなく、依存させられたという話でした。弱り切ったカゼハちゃんを見て一花お姉ちゃんは手を打ったというわけです。

◯勇也・らいはを二人とも死なせた理由
勇也が死亡→妹は私が守る!
らいはが死亡→お父さんを支えなきゃ!
二人とも死亡→どうしたらいいのぉ……
ってなると思ったからです。
一人だけだと生きる理由みたいなのが残ってるからメチャクチャ悲しいってなりますけど、二人死亡だと生きる理由すらないので心が空っぽになって鬱になるんじゃないかなあと。
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