ハーピー襲来。
西条の登場もあり、一先ず退けたものの互いに被害なしで振り出しへ。
またちょっと短くなってしまいました。
次回は多分早めに……多分。
「さて、どうするんだい令子ちゃん」
「そうね、あいつが言ってた通り、いつまでも事務所の結界の中に居ても仕方ないわ」
『この中の誰が外に出てもヤツは狙うだろう、こちらから出るしかあるまい』
現在、事務所のリビングで作戦会議中である。
西条さんと美神さん、心眼の意見としては攻める方針みたいだ。
と言ってもそれしかないだろうけど。
「それに、俺達の関係者が狙われる可能性とか、最悪一般人を攻撃するって可能性も高いですよね」
「そうだね、ハーピーはGメンとしても退治対象になっているから装備はいくつか持ってきているよ」
俺の言葉を聞いて机の上に霊体ボウガンや破魔札を並べる西条さん。
あ、今美神さんが精霊石一個ガメた!ガメたよあの人!!
「外はまた雨が降ってきたみたいだね、早めに出たほうが良さそうだ。日も落ちて暗くなれば向こうも都合が悪いかもしれないがこっちも戦い辛くなる」
「そうね、心眼、人工幽霊壱号、ハーピーの気配はある?」
『はい、どうやらこちらの様子を伺っているようです、距離はありますが、ギリギリ視認出来る距離かと』
霊体ボウガンじゃ無理そうだな。まぁ向こうも場所がバレている以上狙撃するには難しい距離だろう。
出ていったらまず直接叩きに降りてくるはず。
「あいつの狙いは私とこの子なんだから、私がまず出るわ」
「危険……、なのは承知のようだし他に手もない、か。シュウくん、君の反応速度なら万が一も無いだろう。狙撃に備えて一緒に行ってもらえるかい?」
最初からそのつもりだったので特に驚きもなく西条さんの言葉に頷く。
西条さんからの勧めでボウガンを借りる。
「おキヌちゃんはこの子と一緒にここから動かないで頂戴」
「わかりました。気をつけてくださいね」
おキヌちゃんがしっかり子供美神さんを抱っこして答える。
西条さんは剣を装備して精霊石などの装備を確認している。
「奴との直接戦闘が始まったら我々もすぐに参戦するからね」
「我々……?」
俺も?と自分を指差す横島。いや、お前めちゃくちゃ戦力だから。
なんで残る気満々なんだよ!
「当たり前だろう、それとも君は傍観するつもりかい?」
「い、いやぁ俺が参加しても邪魔にならないかなぁって」
「……はぁ、勝手にしたまえ」
「…………」
西条さんの言葉を聞いてそっぽを向く横島。
なんでコイツこんなに自信ないんだ?
【横島もお前にだけは言われたくないだろうな】
【いや、俺は流石に身体能力は異常だって自覚はあるぞ】
【それにしては出来ることが少ないと思いすぎな気もするがな】
心眼からのお言葉は置いておくとして、横島には言っておかなければならないな。
「横島、なんでそこまで自信がないのかわからないけど、少なくとも俺はお前の力は頼りにしてるんだ、もう少し自分を信じて、認めても良いんじゃないか?」
「シュウ…………自分以上に信じられんものがあるかぁ!!」
一瞬、真面目な表情をとったと思ったら、鼻水を撒き散らしながらいつもの調子で喚く横島。
全員が呆れ顔になる。西条さんも真面目に考えるのがバカバカしくなったのか、厳しい表情を崩して装備の確認に戻る。
……そうだった、こいつそういうやつだった……。
まぁ、どうせそう言いながらも美神さんがピンチになったら助けに来るんだから、まぁ大丈夫か。
「ようやく出てきたじゃん。このまま出てこなければそこらの無関係な人間を狙撃してやっても良かったんだけどね」
「はっ、奇襲に失敗してコソコソ隠れてるだけの奴になんで私がビビらなきゃなんないのよ」
「言うじゃないか!」
美神さんの挑発に乗って放たれたフェザーブレッドを美神さんが神通棍で弾く。
距離があるためか、全く問題なく反応できている。
そのタイミングに合わせて俺も霊体ボウガンでハーピーを撃つが、警戒していたのか身体を捻って避けられてしまう。
「あたいを奇襲だけの女だと思うなよ!これならどうだ!」
先程とは違い一発ではなく大量に羽を放つハーピー、これは神通棍じゃ間に合わないと判断して美神さんを抱えて横に跳ぶ。
そのまま地面を蹴って、雨で滑らないように気をつけながら塀の上に着地してハーピーに向かって再度跳ぶ。
かなりの高さだが、ここからなら霊体ボウガンでも……!
「良いわシュウくん!そのまま投げて!」
「え?!」
投げっ?!
美神さんの言葉に驚きながらもハーピーに向かって美神さんを言葉の通り投げる。
投げる際に美神さんの足の裏に手を添えて投げた。結果彼女自身も自分の足で跳ぶ形になったためかなりの速度でハーピーに迫る。
「なっ?!」
「とりあえず、もう少し低い位置まで、来たらどうかしら!?」
ハーピーの少し上から叩き落とす形で神通棍を振りおろす美神さん。
だがハーピーもすぐに反応して左腕を振り、魔力を込めた左手を神通棍に合わせ打つ。
「ぐぅ……!!」
「くっ!」
美神さんに叩きつけられる形で道路に着地するハーピー。
美神さんも同じく吹き飛ばされるが、先に着地していた俺が美神さんをキャッチする。
「ナイスよシュウくん」
「無茶苦茶焦りました、勘弁してくださいよ!」
美神さんを地面におろしてハーピーに向き直る。
全然ダメージは見えない。
雨はドンドン強くなる。
「忌々しいクソガキめ!先に始末して……!」
「させないよ!」
ハーピーが改めてフェザーブレッドをこちらに向けて構えた瞬間、事務所から西条さんが飛び出して霊剣ジャスティスをハーピーに振り下ろす。
ザシュという音とともにハーピーの羽が舞う。
一瞬の間。
雨の音がやけに響く。
「くそっ!浅いか!」
西条さんが呻く、そう、浅かった。
西条さんに寸前で気付いたハーピーは、攻撃の姿勢を解除して一転、一瞬で後ろに飛び退いたのだ。
その結果、西条さんの剣はハーピーの左翼を少し切り裂いただけに留まる。
「て、てめぇ!私の翼を!よくもやったじゃ……?!」
――ドカン!!――
距離を取ったハーピーが西条さんに向けて殺気を飛ばしながら怒鳴った瞬間、ハーピーを爆発が包む。
「でかした横島くん!!」
「わ、わはは、俺にだってこのくらいの嫌がらせは出来るぞ!!」
いやいや、嫌がらせどころじゃない、十分すぎる戦果だ。
実際、今のは確実に大きなダメージを与えたはずだ。
美神さんも俺も西条さんも、ハーピーの近くに陣取って煙が晴れるのを待つ。
『ヤツの魔力は健在だ、油断はするなよ』
「了解……!」
心眼の言葉に気を引き締めた瞬間、目の前に羽根が飛んでくる。
首を傾けてそれを避ける。
「クソが!今のを無傷で避けるのは人間辞めてるじゃん!!ふざけるんじゃないよ!」
煙の奥からハーピーが姿を表す。
予想よりダメージがあったのか、左の翼がボロボロだ。
あれでは飛ぶことは難しいだろう。
更に一歩前に進む。
「ハーピー、その翼じゃ飛べないはずだ。降参するんだ」
「「シュウくん?!」」
【はぁ……】
俺の言葉を聞いて西条さんと美神さんが驚きの声を上げ、心眼は呆れたようなため息をつく。
横島は驚いているものの「確かに顔は美人で足は綺麗だ、乳もある、うぅむ……」と唸っている。
流石としか言いようがない。
「帰ったら裏切り者扱いを受けて危ないってんならこっちで保護だって考えるし」
「シュウくん、立場上僕が言うのも不味いんだが、君は甘すぎるぞ。奴は魔族だ、それも凶悪で危険な奴だ」
やっぱり不味いか。
【当たり前だ阿呆】
心眼の辛辣な言葉を心に直接受けて凹む。
「あ、あたいを……?保護?」
お!これは効果アリですか?!
もう一歩近付く。
「な、なめてんのかこの野郎!!」
あ、これやば……。
近付きすぎたのと油断で気付いた時には目の前に羽根が迫ってきていた。
「「「シュウ!!」」」
全員の驚いた表情が見えた気がした。
あれ、これスローモーションに見えてる?
これなら避けられるか。
いや、なんだこれ、全然身体動いてないじゃん。
あ、駄目だこれ。
雨と風のせいか、ザァザァという音とゴォという音がやけに耳に響いた気がした。
シュウ
特性:外見小学生、身体能力異常(高)、霊力異常(低)、センス0(プレゼントチョイスとか)、意外と脳筋、自己評価低、悩みがち、素直、事務所メンバー好きすぎ問題、甘ちゃん、意外とムッツリ、油断しがち(new)
多い多い多い……!!
どうしてこうなった!?