中々そうはいきませんなぁ……。
実際、香港編って失敗イコール世界崩壊レベルの超危ない戦いですよね。
「…………」
「…………」
く、空気が重い。
今俺達は香港に向かう為空港に居る。
シュウは、あれから目つきが怖い。
なんというか、焦ってると言うか凹んでいるというか情緒不安定な感じだなぁ。
もう少し肩の力抜けばいいのに。
そして、シュウの前には……。
「何でお前がいるんだ、タマモ」
「良いじゃない、私一人連れて行くくらい」
タマモ空気読め、シュウの機嫌が滅茶苦茶悪いんだって。
ほらシュウの眉の角度が更に上がったぞ。
「遊びじゃないんだぞ、当然戦いだって」
「……アンタ、石化しかけたんでしょ?」
「……!誰が」
「横島」
げ、アイツすぐにばらすなよ!うわっ!シュウがスゲェ目つきで睨んできてる。
こそこそと美神さんの後ろに隠れる俺を見て、ため息をついてタマモに向き直るシュウ。
「そういう危険もあるから待ってて欲しいんだよ」
「アンタねぇ!勝手に復活させて勝手にいなくなるなんて私が許すとでも思ってんの?!」
「う……」
少しきつめに言ったタマモに対して一歩下がるシュウ。
あれを言われるとシュウもキツイだろうなぁ。
『シュウ、お前の負けだ、連れて行ってやれ』
「心眼?!ただでさえ唐巣神父が外れてるんだぞ?!」
『であれば、なおさらこ奴がいれば十分力になってくれると思うがな』
「本末転倒じゃないか」
『しかしこのままこちらの意見を押し切ったところで、タマモはついてくるぞ。それなら最初から一緒に居た方が護りやすいだろう』
「く…………解った、大人しくしとけよ」
「よっしゃ!でかした心眼!褒めてあげるわ!」
『……やれやれ』
シュウが諦めたように言ってタマモがガッツポーズで心眼にお礼を言う。
何とか丸くおさまったみたいだな。
それにしても、タマモとシュウってパスポートどうするんだ?
「私が何とかしておいたわよ」
「美神さん……何をどうしたらパスポートなんて偽造出来るんですか」
「知りたい?」
あー、いつものやつっすねー、あまり深く聞かない方が良さそうだ。
俺は首を高速で横に動かした。
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まさかタマモまで来ることになるとは思わなかった。
とはいえ、出来れば最初にメドーサのアジトに乗り込んだときに俺も行って針を盗んで終わり、にしたいところだ。
そうすればタマモや美神さんが危険にさらされることは無いはず。
ピートには悪いけど付き合ってもらうか。
既に雪之丞から元始風水盤の話を聞いた俺たちは海底トンネルを歩いていた。
西条さんにも来てほしかったが、タイミングが合わず連絡が取れなかった。待つ暇もないのですぐに出発したわけだが。
「なるほど、この亀裂からピートが霧になって侵入できるってわけか」
「あぁ、香港島の地下に奴らのアジトがあるらしいんだが、ここからなら侵入可能ってわけだ」
横島の疑問に雪之丞が答える。
「ピート一人で行かせるのか?そりゃだめだろ」
「いえ、あと一人なら僕の能力で連れていけますが」
俺の言葉にピートが答える。
でもなぁ、正直ここから侵入しても向こうにはバレてるだろうしな。
『……ここから侵入した先に結界が張られているぞ』
「あちゃー、向こうも馬鹿じゃないってわけね。だとすると危険ね」
「オイオイ、つっても他にルートは知らんぞ」
心眼が霊視して結界があることを伝えると、美神さんは天を仰ぎ、雪之丞がマジかよ、と頭に手をやる。
出来ればここでピートと一緒に俺が行って、俺がゾンビや勘九郎と戦っている間にピートが針を奪うってのが良いと思うんだけど。
【お主が行くのか?ただ何も考えずに行けば美神の代わりにシュウが捕まるだろうな】
心眼の正論が頭の中で響く。
だよなぁ。
本当ならこのタイミングで美神さん捕まるはずだ。
確かに俺のほうがゾンビ達相手なら相性はいいだろうけど、それでもピートが先に脱出しちゃったら脱出方法がないから捕まるよな。
そんなことを考えていたら今まで我関せずとぼーっと壁を見ていたタマモが口を開く。
「ねぇ」
「どうしたタマモ」
「あっちにも亀裂あるけど、どこから行っても駄目な感じなの?」
『ん?…………確かに、こちらの先に結界はないな』
心眼の回答を聞いてドヤ顔のタマモ。
「却下」
「えー!どうしてよ美神」
美神さんが呆れ顔で両手をあげるが、それに対して不満の声を上げるタマモ。
「なんでこっちの先には結界が張ってあって、そっちの先には結界がないの?私ならそこに罠張るわよ」
「流石美神さん卑怯」
横島は懲りないなぁ。
美神さんの肘が顔面に刺さっている横島を見ながら考える。
確かにそこは怪しい。
ただ、他に抜け道がないのであれば行かなきゃいけないのは、結界がある方か、罠があるであろう結界がない方のどちらかだ。
【ちなみに、横島達が美神を取り返しに行った時のルートがどうやって判明したかは……やはり覚えていないのだな】
【残念ながら】
心眼の言う通り、そのあたりの記憶があればなんとかそっちへの誘導も考えたんだけどな。
正直詳細までは覚えていない。
「どちらの道を選ぶにしても、元始風水盤がある以上行かないわけにはいかないぞ」
「わかってるわよ。まぁ行くのはピートと私かしらね」
「あ、ちょっとまってください」
美神さんが神通棍を取り出して言うが、そこに待ったをかける。
このままいかせたら美神さんが十中八九捕まる。
「なによシュウ」
「あのゾンビ軍団と相性を考えたら俺のほうがいい気がするんですけど、ピートの霧化とあわせたら最悪逃げてこれるすばしっこさはあると思いますし」
「あー……そうねぇ、一応一理あるかしら」
俺の言葉に少し考えて頷きかける美神さんだったが、更にそこに待ったがかかる。
「待ちなさいよ、シュウが行くんなら私も行くわよ」
「いやタマモ、話聞いてたか?ピートと一緒に行けるのはあと一人だって」
「でも危険なんでしょ?」
「まぁ、それ以前に世界が危険なんだけどな」
仕方ない、最初から彼女を頼ろう。
俺の言葉を聞いても全然納得してくれないタマモに対して一つため息を付いて雪之丞に向き直る。
「なぁ、依頼者って小竜姫様なんだろ?」
「なっ、どうしてお前がそれを」
「今確信したんだけどな。まぁメドーサ絡みだし、雪之丞に依頼しそうなの小竜姫様か六道家くらいしか思いつかないし」
「……正解だよ」
俺の言葉を聞いてバツが悪そうにそっぽを向いて頬を掻く雪之丞。
つかそういえばなんで内緒にしてたんだろうな。
「マジ?!薄々そうじゃないかとは思ってたけど、じゃあ報酬って結構貰えそうじゃない?!」
目をドルにしてはしゃぎ始める美神さんはおいておくとして、言葉を続ける。
「で、小竜姫様のことだし、何か秘策を渡してくれてるんじゃないのか?例えば、押したら小竜姫様が駆けつけるボタン、みたいなのとか」
「本当に鋭いな」
言いながらポケットからツノを出す雪之丞。
これが小竜姫様の省エネモードの姿だ。
そこから、何かあったときのために俺が小竜姫様のツノを持つということで話が決まり、俺とピートで結界がない方の亀裂に入ることになった。
「そろそろかな」
「ですね、戦闘準備はしておいたほうが良いかと」
ピートと共に亀裂を抜けた先には、予想と違い、罠などはなく道が続いていた。
しばらく二人で歩いたが、だんだん気配が多くなっていることは感じていた。
罠、というよりは単純に物量をこっちにあてた、という感じだろうか。
「意外ね、てっきり結界に気付かずに向こうに突っ込んでくるか、気付いても結界破りを持って結局向こうに行くと思って張ってたのに」
「やっぱりお前がいるよな、勘九郎」
「あら、予想通りかしら?ならこれも予想通り?」
勘九郎が指を鳴らすと、壁が崩れて石像の巨大な犬が現れた。
「ケ、ケルベロス?!」
ピートが驚きながらも霊力を放出して攻撃するが、ケルベロスは霊的攻撃を無効化する。
「む、無効化?!」
「そうよ、ケルベロスに霊的ダメージを与えるのは諦めなさい。ただ……」
勘九郎がこっちを見ながら目を細める。
それを無視してケルベロスの3つの頭の打ち中央の頭に向かって飛び上がり、拳を突き出す。
確かに硬さは感じたが、俺の拳はあっけなくその顔面を貫いた。
「来るのは雪之丞とバンパイヤハーフのボーヤかと思ってたから、この子が来るのはこっちも想定外なのよねぇ。せっかくこっちにはケルベロスまで配置してたってのに」
はぁ、とため息を付いてこっちを見る勘九郎。
子供じゃねぇっつうの。
ピートに近づいて小声で話す。
「ピート、先に針を奪いに行ってくれ」
「ですがシュウさんは」
「ゾンビ軍団は俺のほうが相性いいからな、ちゃんと逃げる時は拾ってくれれば良いよ」
俺の言葉に少し考える仕草をしたピートが頷いて俺の目を見る。
「……わかりました、すぐに戻ります」
「どうせ結界とか罠とか張ってあると思うから、すぐに彼女を頼ったほうが良いぞ」
「えぇ、シュウさんもお気をつけて!」
言いながら霧になって消えるピート。
意外だったのは邪魔をしなかった勘九郎だな。
「さて、とりあえず捕まって人質でもやっておく?」
言いながら魔装術に身を包む勘九朗。
「おいおい、霊力使えない相手に行きなり魔装術かよ。鬼だな」
「貴方相手だと人間の身体で戦ったら万が一があるからよ。いえ、万が一というか普通に負けそうね。霊力が使えないと言っても体術はそれこそ人外じゃない貴方」
酷い言われ様だ。
「……なぁ、なんでメドーサにつくんだ?アイツの元に居なくても強くなる方法はあると思うんだけど」
「説得、のつもりかしら?残念だけど、私はメドーサ様を師と仰いでるの。雪之丞みたいな恩知らずじゃないのよ」
「そっか、でもそのままだと心も身体も魔族になっちゃうんじゃないか?」
「そんなことは解ってるわよ。私だって素人じゃないわ」
そうだよなぁ。
どう考えてもメドーサに対する忠誠が雪之丞とは違いすぎる。
【お主の気持ちはわかるが、流石に無理だと思うぞ】
【あ、やっぱバレてた?】
【……最近諦めてきたがな】
心眼に呆れられてる感じがする。
といっても流石に確かに心眼の言う通りだな。
「……なるほど、説得は難しそうだ」
「頭の良い子は好きよ。悪いけど、捕まって貰うわ。心配しなくても大人しくしてればメドーサ様も子供を殺したりはしないわ…………たぶん」
「俺は17なんだがな」
「?!」
「いやそこでそんなに驚かれると毎回ながら傷つくんだが」
マジで凹みたくなる。
そろそろ初見で年齢見破ってくれる人いないかな。
「……ま、まぁ良いわ。じゃあ行くわよ」
「そう簡単に捕まるわけにはいかないんだわ」
勘九朗が地面を蹴って飛びかかってくる。それをギリギリまで引きつけてかわし、渾身の力で拳をわき腹に当てる。
入った、完全な手ごたえを感じた。
そう思った俺の頬を勘九朗の拳がかする。
吹き飛びながらも体制を立て直して反撃してきたのか。
少し掠った程度なのに、俺の頬が鋭く切られ、血が軽く噴き出す。
「チッ!」
すぐに手で傷をおさえて勘九朗の方を見ると、ちょうど壁にぶつかるところだった。
「ぐぅっ、……とんでもない子ね貴方。魔装術を纏った私にダメージを与えるのは霊力が無い貴方じゃほとんど無理とはいえ、それでもここまで簡単に吹っ飛ばされるとは思わなかったわ」
やはり、無傷。試しに霊力が全くない状態のままだとどうなるか確認してみたが、殆どダメージは入ってない様だ。
逆に向こうの攻撃は掠っただけでこのざま。
多少とは言え霊力を使える様になってて本当に良かったと思う。
とはいえ、まだ霊力を使う時じゃない。
向こうが油断しきった瞬間、一番良いタイミングで霊力を込めた攻撃を叩きこむ。
今の所こっちが霊力を使えることは気付いていないはずだ。
そこで勝負をつけないと、俺は勝てないだろう。
地面をける、休む暇は与えない。
顔面へのニーキック。
勘九朗の頭が壁にめり込むが、当然ダメージは余り期待できていないのですぐに距離を取ると、目の前を勘九朗の爪が通る。
「あぶねぇ、一発でも食らったら死ぬなコレ」
「ギリギリ殺さない程度には手加減してあげてるつもりよ」
「そりゃお優しいことで」
「まだ一応人間の心も残ってるもの、子供を殺すのは気持ちいいものじゃないわ」
「ガキじゃねぇって!」
今度は助走をつけて勘九朗へ向けて走り出す。
カウンター気味に繰り出してきた勘九朗の拳を避け、後ろに回り込んで背中にラッシュを叩きつける。
駄目だ、油断しているとはいえ、やはり防御に力を注いでいる為か手ごたえがさっきより少ない。
何発も顔面や背中、腹部に攻撃を加え、一発でも食らったら終わりの攻撃を辛うじて避け続ける。
隠し持っていた神通混で試しに斬りつけてみたが、霊力が足りず予想通り素通り。
それでも勘九朗に若干の疲れが見え始める。
「貴方、本当に凄いわね。私だってそこそこに当てる気で打ってるのに、当たる気がしないわ」
「あまり長い間魔装術を使い続けたらヤバいんじゃないか?」
「ご心配ありがとうね。悪いけどそろそろ遊んでる場合じゃないのよ。タイマンでやってみたかったけど、手加減なしで行かせて貰うわ」
勘九郎の合図にゾンビ軍団が動き始める。
出来れば攻撃に霊力を使ってくれれば、今まで攻撃を受けてもダメージが無い事を良い事に殆どの霊力を防御に費やしてたハズの勘九郎にダメージを与えられると思っていたが、ゾンビ軍団が一緒となると難易度が跳ね上がる。
【油断するなよ】
【わかってるよ】
後ろから迫ってきていたゾンビのつま先に踵を落としてダメージを与えつつもつんのめさせる。
そして下がってきた頭に肘を落として倒し、横にいたゾンビに本気で蹴りを放つ。
ゾンビの胴がありえない角度で曲がって吹き飛ぶ。周りにいたゾンビも巻き添えに。
それでも大量に現れるゾンビ。
きりが無いな。
「お待たせしました!」
どうするか考えていたところにピートが突然現れる。
針を抱えているところを見るとうまくいったようだ。ただ、ちょっと焦げてるところを見ると結局罠にはかかったみたいだが。
ピートの位置は、俺と向き合っている勘九郎の後ろだ、2対1ならスキを突いて逃げることもできそうだ。
「ナイスタイミング!それじゃにげ……!」
急に後ろから引っ張られて宙に浮かされる、誰かに後ろから襟を掴まれた事をすぐに理解した俺は身体を反転させて第三者の首元を刈る様に蹴りを入れた、つもりだった。
俺は目の前に現れた顔を見て固まってしまった。
「な……ぁ……!」
【し、しまった……!】
「メ、メドーサ!」
頭の中で心眼が叫び、ピートがこちらをみて叫ぶ。
俺の蹴りはメドーサに片手で受け止められていた。
「吸血鬼のボウヤには針を取られるし、あまりに遅いから見に来たら、アンタかい。確か、GS試験の時に小竜姫と一緒に居たね」
「っく!」
「甘いね」
受け止められた足を軸に回転しながら逆足で顔面を蹴りに行くが、簡単にもう片方の手で受け止められる。
「メドーサ様、その子は霊力を使えませんので、人質に使うのであれば霊力や魔力を乗せた攻撃をしてしまうと簡単に死にますのでご注意を」
「ふぅん、体術は人間とは思えない程に良い動きするのにねぇ。……お前、本当は霊力を使えるだろ」
気付かれている。
当たり前だ、ただでさえ素人レベルで霊力が使える様になっただけなのに、メドーサレベルを誤魔化すほどのコントロールなんて出来る訳が無い。
【シュウ!】
【解ってる、気付かれてるなら最初から全開だ!】
霊力をめぐらせて身体能力を強化し、身体を捻ってメドーサの拘束から逃れる。
油断していたのか簡単に外れた為、すぐに着地して地面をける。
地面と壁を蹴ってメドーサの背後にまわると、全力で霊力を乗せた拳を突き出した。
ここでダメージを与えてピートのところへいければ……!
「……なるほど、あの時のイカれた白いヤツもお前だったのか」
静かに話すメドーサの声が響く。
俺は、メドーサが背中にまわした刺又に受け止められた拳を突き出したまま、改めてメドーサの強さを思い知らされていた。
「アンタ霊力使えたの?!」
「とはいっても最近覚えたばっかの付け焼刃みたいだねぇ」
勘九朗の声が響くが何の解決にもならない。メドーサの言う通り所詮付け焼刃なのだ。
「えーと……じゃあ俺はこの辺で」
「あぁ、気をつけて帰んなよ……ってなるわけないだろう。というか地面に横たわった状態でどうやって帰る気だい?」
手を上げて振り返って立ち去ろうとする俺だったが身体が前に進まない。
当たり前だ。時間切れで霊力枯渇して倒れてるんだから。
まぁ普通に歩けたとしても後ろ襟をメドーサに掴まれて前に進まなかっただろうけど。
「霊力はあれですぐ枯渇するのかい。それも面白いが、お前、人間の癖にそこまでの体術が使えるなんて本当に面白いねぇ。さっきの一撃だって私が警戒してなければ確実に入ってたレベルだったし、下手したら打ちあいのみなら魔族や神族とやりあえるレベルだよ」
この状況を見る限り何の解決にもなってない情報だ。
「おっと、吸血鬼のボウヤ、動くんじゃないよ?」
ジリ、と様子をうかがっていたピートに向かって顔を向けつつ俺の首に刺又を向けるメドーサ。
このまま針を持ち出せないとか最悪の最悪だ。流石にそれは駄目だ。
「ピート!逃げろ!」
「しかし!」
「針を取られたら終わりだぞ!小竜姫様!ピートを!」
『っ!ピートさん!逃げるのよ!!』
「っく!」
小竜姫様の声がして霧に変わるピート。
これでなんとか最悪の事態は避けられ……。
「小竜姫!!この子の命が惜しくば針を持ってくるんだね!!この子は針と交換だよ!!」
避けられたと思ったところでメドーサが叫ぶ。
その声とともに霧は壁の隙間に消えていった。
「さて、どうする?坊や」
「……」
「だんまりかい?……勘九朗、私はコイツに興味が出た。土角結界で動けない様にだけして奥に連れてきな。顔は出しときなよ、色々聞きたいことがある」
「はっ」
【首の皮一枚ってところだな。流石に本当に今回はまずい綱渡りだったな】
【結局、美神さんと立ち位置が入れ替わっただけ、だな。まぁ俺なんかより美神さんが無事なら何とかなると思うけど】
【確かにな。恐らく横島も今回で栄光の手は使える様になるだろう。いくら美神がいるとはいえ、アイツを護りながら進む程の余裕は生まれないハズだからな】
【……ほんとうに首の皮一枚だな。悪い】
【私に謝ってもしょうがないだろう。それに今回は別にシュウだけが悪いわけではあるまい。私も間違った選択をしたのは間違いない】
勘九郎に運ばれながら霊力が少し回復してきたところで、ふいうちに賭けようと思った瞬間、首筋に一撃貰う。
少し遠くにいたはずのメドーサの顔が見える。超加速かよ……容赦のないことで……。
遠くなる意識の中、横島達が上手く行くことを願うしか俺には出来ることが無かった。
香港編が終わったらまた止まるかもしれないですが、完結向けてボチボチ勧めていきます。