あ、香港編最後です。
またちょっと時間あいてしまうかと……。
「なるほど、貴女が今回のクライアントってわけね」
美神の言葉に対して小竜姫が首を縦に振りながらピートに手をかざす。
するとピートの怪我が治って飛び起きた。
色々まくしたてようとしているピートを抑えて小竜姫が振り返りながら話す。
「はい、もう少しやりようもあったかと思いますが、こうなってしまった以上正面から奴らと戦うしかありません」
この状況になってからでも他にやりようもあるでしょうに。時間はかかるだろうけど。
でも私にとってはそれどころじゃない。
シュウが戻ってないのだ。時間はかけられない。
「シュウクンが帰ってきてない、ってことはそういうことよね?」
「うっ……」
「……」
美神の言葉にピートが言葉を詰まらせる。
小竜姫も眉を歪める。
「無事なんでしょうね?」
「えぇ、メドーサは針と交換と言っていたので、危害は加えないでしょう」
私の質問に対して淡々と話す小竜姫の言葉に一瞬怒りが湧く。
神様だか何だか知らないが、他人事のようなもの言いは無いだろうと文句を言おうとして……やめた。
小竜姫の手が震えていた。
そういえば以前妙神山でシュウの修行を見てたときにも思ったが、この神様はシュウに対して特別な想いがあるようね。
「で、どうすんの?アンタ達が動かなくても私は一人ででもシュウを助けに行くわよ」
「馬鹿言うな、そもそも俺が巻き込んだんだ、助けに行くに決まってるだろ」
「ウチの事務所から欠員出したら評判がた落ちじゃない、それに横島クンよりよっぽど役に立つシュウクンをみすみすメドーサの好きにさせてたまるかっての」
「彼が捕まったのは僕のせいです。必ず助けますよ」
「……しゃあねぇな、男の同僚が減っても別に良いけど割と良い奴だからな、アイツ。……俺は影から応援するけど……」
『わ、私もシュウさんを助けたいです!……何も出来ないかもしれませんけど』
ここにいる誰もシュウが生きている事を信じているみたいだ。
なんだ、あいつちゃんと仲間いるじゃないの。
いつも一人で何かしようとしてたから心配してたけど、杞憂だったようだ。
……あくまで保護してくれてる奴がいなくなると困るから心配してるんだけどね。
しょうがない、タマモお姉ちゃんがすぐに助け出してあげるわ!
「フン、行くならさっさと行くわよ!」
「何でタマモが仕切ってんだよ」
横島のツッコミはスルーして、私達はシュウを助けに向かうことになった。
「……あぁいう手合の蛇女は割とショタコンのイメージ強いからさっさと助けなきゃね」
美神が急に深刻そうに呟いた言葉を聞いて、全員が固まり、即出発になったのは言うまでもない。
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「目が覚めたかい?」
「あぁ、最高の目覚めだよ」
目を覚ましたら目の前にメドーサの顔がありましたとさ、マジビビるわ。
自分の体を見る。原作の美神さんと同じ状態だ。
顔と手だけ出された状態で土角結界による拘束を受けている。
「そいつは良かった。さて、アンタは何者だい?」
「どう答えれば良いか解らないね。一応美神さんの事務所のアルバイト。名前はシュウ。小竜姫様とは美神さんが修行に行った時の付添からの付き合い。とかで良いか?」
「へぇ、やけにペラペラと。命が惜しいのかい?」
「隠したって無駄だろうし、そりゃ命は惜しいさ」
聖天大斉老師や別世界の話をするつもりはない。
当然こっちが不利になる情報も与えるつもりはない。
心眼は気配を消しているのか、ただのバンダナの様になっている。
「アンタは妙神山で修行したわけじゃないのか?」
やけにフレンドリーに接してくるなメドーサ。
どこから取りだしたのか元々運び込んでいたのか、洞窟に不釣り合いなソファに腰掛けて尋ねてくる。
「余裕だな、美神さん達が来るかもしれないってのに」
「奴等が来たことがこっちに伝わってからでも結構かかる程度にはここは深いんだよ」
「やけに親切に教えてくれるじゃないか」
「お前が奴等に会う時にはもうここに到着しているだろう?」
「それもそうだ」
「で、質問にはもう答えてくれないのかい?」
こいつ、マジでメドーサか?ずいぶんと大人しいイメージがあるけど。
いや、調子に乗って説得!とかやってたら今度こそ心眼にしばかれる。いや、物理的にしばかれることはありえないか。
「いや、俺はあそこでちゃんと修行する程霊力が使える訳じゃないからな。少し霊力の使い方を教わっただけだ」
「なるほど、じゃあ天龍の時のアレはそれの暴走ってことかい」
流石に頭は回るな。
下手に情報を与え過ぎるのも危ない、考えて会話しなきゃな。
「だとしたらあの体術は自己流か」
「まぁ、そうなるかな」
「その歳で大したもんだね、というか本当に人間かい?人間にしておくのがもったいないよ。飴でも食うか?」
メドーサが懐から飴玉を取りだして見せる。
え、いつも持ち歩いてるの?そんなキャラなの?
というかひょっとしてこれはバカにされてる?
いや、まさか勧誘されてると取って良いのか?
「俺は17歳でガキじゃないんだが」
「は?!……合法ショタ?!」
俺のいつもの言葉に立ち上がって驚くメドーサ。
こいつも酷過ぎる認識だな。
いい加減しつこいわ、つってもこっちと違って向こうからしたら初めての反応だから今後も続くだろうなぁ。
というか、なにやら小声でヤバメな言葉が聞こえた気がするんだが、気のせいだろう。
気のせいだと思いたい。
「……コホン、なるほど、それにしたって異常すぎるそのポテンシャルは勿体ないね。どうだい、私の下で修行してみないか?」
咳払い一つで改めて会話を続けるメドーサ。
いや、ごまかせてないからな?
とはいえ、こっちも情報が欲しいから会話は続ける。
「そんな選択をすると思ってるのか?」
「だろうね、残念だ。とりあえずは奴等をおびき出す餌にでもなって貰うよ……ウンザンネンダ」
何か本当に残念がってる気がするけど、こんなキャラだったか?こいつ。
危険だけど、もう少し踏み込んで探りを入れてみるか。
「それより、なんでお前はこんなことをしてるんだ?誰かに命令でもされてるのか?いち魔族が一人で計画するにはことが大きすぎると思うんだが」
「おや、私の事が気になるのかい?残念だけどそんな簡単に情報を漏らすわけにはいかないね」
「元始風水盤で出来ることで魔族が考えそうなこと、この世界の魔界化、世界の終焉。魔神レベルが関わってくる話?それとも超凶悪犯のアンタ独断の動き?かなり気になるんだけど」
「…………頭も馬鹿ではなさそうだね。GS試験には出てなかったようだが」
俺の言葉を聞いて眉をピクリとさせ、俺の顔を覗き見るメドーサ。
流石に俺がGS試験に出てたのは知らないか。
「残念ながら出てたんだよね。予想通り俺じゃ無理だった。横島はGSになったけど、俺は見事予選1発目で不合格」
「霊力使えないのがネックか。それにしてもGS協会の目は節穴だね、霊力が使えなくとも十分にGSの素質はあるだろうに。魔力とか妖力の方が向いてるんじゃないか?」
「美神さんとか横島の方が魔族には向いてそうな気がする」
「ハッ、違いないね。アンタはどちらかと言うと神族の方が向いてそうだ。ただ、だからこそ魔族にも向いてそうだがね」
どういうことだ?
あ、ちょっとまてよ、確かこいつも元々は。
「魔族と神族は表裏一体なのさ」
「そういえばアンタも神族だったな」
「へぇ、博識なことだ。おっと下手な同情はやめときなよ、今じゃ魔族であることに喜びを感じてるんだからね」
「とはいっても神族にもクズがいるって話は聞いてるから、現実には憤りを感じるけどな」
老師が嘆かわしいとか言いながら色々と教えてくれたからな。
神族も結構色々あるらしい。
「アンタ、見る目があるねぇ。どうだい、やっぱり私の下で修行」
「くどいな。むしろこっちから聞きたいんだけど、俺達の仲間にならないか?」
これくらいならいいよな。
話の流れだし。
いや、今心眼は反応しないのにビクビクする必要は無いか。
よし、今のうちに勧誘勧誘。
「面白い奴だね、この状況でそんな言葉が吐けるなんて、仮に17歳だとしてもその落ち着きは人間離れしていると思うよ」
「褒められてるんだかけなされてるんだか。いや仮にじゃないし」
「褒めてるのさ。でも、言葉には気をつけるんだね、あんまり舐めてかかると、その首落とすよ」
あ、やっべ、やっぱりなしで。
いつの間にかメドーサの手にはいつもの刺又があり、その先は俺の首を向いていた。
死んじゃう!本当にいらんことせんとこ……。
「なめちゃいないさ、とはいえそれはマジで困るな、大人しくしておくよ」
「フン、肝の据わった奴は嫌いじゃないがね」
はぁ、とりあえず命は取られそうにないのは助かったな。
ただ正直こうやって話してみると、メドーサも話せば解るタイプの奴だとは思っちゃうんだよなぁ。
このままだと原作通り横島達との関係は最悪になっていくから、ここらで早めに手を打っておきたいんだけど。
本当に無理かなぁ。実際、俺の中でメドーサの最期とか結構変えたいことではあるんだけど。
そこまで考えたところで大きな音が響き渡った。
「おや、だいぶ予想より早いね。お仲間が助けに来てくれたみたいだよ」
本当に予想よりだいぶ早い、俺の知識だと一晩は置いて襲撃していたと思ったんだけどな。
俺の霊力も既に回復してるし、早いに越したことはないか。
「美神さん達が来たなら今回の計画はおじゃんじゃないか?今の内に逃げておいた方がいいと思うけど」
「馬鹿にするんじゃないよ。アイツらが来たところで元始風水盤起動の前座にしかならないさ。小竜姫の相手を私がすればあとは勘九朗で十分だろうね」
「まぁ、せいぜい人間を侮らない様にするんだな。あの人たちは下手な魔族よりタチが悪いから」
「ハッ、ザコが吹いたところでどうともならないってことをシュウにも見せてやるよ。私の元で修行すればどれだけ強くなれるかも含めてね」
「あ、諦めてないのかよ……」
とはいえこれで挑発は成功してそうだな。
人間を舐めれば舐める程横島達なら何とかしてくれる気がするから、これで更に油断とかしてくれれば良いんだけど。
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【しばらく轟音が響き渡っているが、ケルベロスが居ないぶん多少は楽になってると思いたいのだが。と、噂をすれば来たみたいだな】
【あ、起きたのか心眼】
心眼からの言葉の途中で洞窟から美神さんと横島、それにタマモが姿を現す。
そして、予想通り横島の手には栄光の手が。
よし、心配事が一つ減った。
「無事だったのね、シュウ!」
「みての通りだよ」
「シュウ、これ見ろよ新しい力手に入れちゃった」
「お前は後で絶対しばく」
タマモには苦笑で返し、未だに霊能力が上手く使えない俺にドヤ顔で自慢する様に見せびらかす横島には青筋を立てつつも、無事新しい技を覚えてくれたことに安心する。
「さて、よくぞここまで来た、と言いたいところだけど、残念、アンタ達はここでゲームオーバーだよ」
「ハッ!言ってなさい!こっちにゃ助っ人だっているのよ!」
「貴方のたくらみもここまでです!シュウさんは返して貰いますよ!」
美神さんの啖呵と共に小竜姫様が飛び出してメドーサに斬りかかる。
メドーサもそれを余裕の笑みで受け止める。
「ようやく出てきたね小竜姫、たまには相手してやるよ!」
「あ、小竜姫様、メドーサは多分時間稼ぎに来ると思うんで早めに勝負を仕掛けた方が良いですよ~!」
「はい!」
「チッ、シュウめ、余計な事を……!」
二人が外に飛び立ったのを見送ったタイミングで横島が勘九朗の手で俺を解放してくれた。
あ、そういえば雪之丞とピートは今も勘九郎と戦ってるのか。
「っあー!身体ガッチガッチだーわさー!!1万年間くらいジッとしてた気分!」
「お疲れさん……そして、後は任せた」
「は?」
俺を助けた後そそくさと美神さんと一緒に入ってきた方向へ向かおうとする横島。
ピートと雪之丞を助けに行くのだろう。
ん?何を任せた?と疑問を浮かべていると、後ろから凄まじい威圧感を感じた。
あ、忘れてた……。
「た、タマモさん……?」
「……シュウ」
「は、はい!」
「あんたねぇ……」
振り返った事を後悔する程にタマモから威圧感が溢れだしている。
これ、メドーサより怖いかも。
「助けろ横島!」
「…………忘れないよ」
「思い出に変えんな役立たず!」
少し考えたあと、振り返りながら手を降っていなくなる横島。
俺の叫びは聞こえたかどうか。といったところで、タマモの威圧感が膨れ上がった。
「心配、させんな―!!」
「す、すみませんでしたー!」
『やってる場合か、さっさと動け』
思わず敬語で謝ってしまう程に、この時のタマモは恐ろしかった。
すぐに土下座スタイルをとったが、心眼の正論に立ち上がる。
確かにコントやってる場合でもないので、俺とタマモも勘九郎の相手をするために振り返った瞬間、目の前にゾンビの集団が現れた。
『シュウ!やつら針を』
心眼の言葉を聞いて慌ててゾンビたちの方へ向かおうとした瞬間、視界の端に何かがうつり、反射的に受け止める。
「フォォォ……!」
『が、ガルーダだと?!』
げ、マジかよ、なんでこのタイミングでこいつがいるの?!
受け止めたものは、目の前で闘気にあふれている怪鳥、ガルーダの拳だった。
続けてとんできたガルーダの蹴りを右足を立てることで受け止める。
「シュウ!」
「こっちは良いから針を!」
意外にもガルーダの攻撃に霊力が乗っていなかったので霊力を使うことなく戦うことが出来ている。
ガルーダはカンフーのような動きで次々攻撃を繰り出してくるが、それに合わせてカウンターをいれていく。
が、向こうも中々動きがはやく、一瞬で衝撃を殺すために後ろに跳ぶことでダメージを減らしている。
「ガルーダを念の為用意しておいて正解だったわね」
勘九郎の声に、ガルーダへの警戒を残したまま振り返ると、タマモが吹き飛んできたのでキャッチしてガルーダから離れる。
既に勘九郎の手には針が。
タマモも大きなダメージは無いようだ。
「勘九郎!!」
ちょうどそのタイミングで雪之丞達も駆け込んでくる。
が、時既に遅し。
針が、勘九郎の手によって、元始風水盤にセットされた。
香港が、魔界に、沈む……!
「ふふふ、最高の気分よ……!ちょっと予定より数が多いけど、全員生きて帰れると思わないことね」
勘九朗が元始風水盤の前でテンション高く笑い始める。
未だ勘九郎が人類を滅ぼしかねないことを実行したことが受け入れられないのか、雪之丞が一歩前に出るが冷静な状態ではなさそうだ。
「勘九郎!てめぇ今何をしたぁ!!」
「お、おおおおお落ち着け!雪之丞!6×7は何だ?!」
「42じゃねぇかぁ!!」
「やべぇぞ、当ってる!!」
「どういう意味だ横島ぁ!」
「遊んでんじゃないのよ!」
横島と雪之丞の漫才に美神さんがツッコミを入れたと同時に、俺と雪之丞が勘九朗めがけて飛びかかる。
霊力が使えるタネはわれているが、今全力を出し切るとあとが続かないので、全開にはしない。
「良い動きね、あの時メドーサ様がいらっしゃらなかったら不意を突かれてやられていたレベルだわ。雪之丞も多少はやるようになったようね」
「てめぇは俺が……!」
「あの時もう少し強引にでもアンタを倒しておくべきだったと後悔してるよ。人間の内にな」
「あら、気付いてるのね、私が既に魔族になっていることに」
ガードを固めた体制で俺と雪之丞の拳を受け止めた勘九朗。
ガードを解いて見せた顔はまさに魔族そのものだった。
「シュウクン、雪之丞、あまり前に出過ぎないで!今の私達は陸に上がった魚同然よ!霊力を使い切ったら最後、回復できずに死ぬわ!」
っと、そうだった!あぶねぇ、ただでさえ少ない霊力を……!
夜のうちに戦いが始まったせいで既に月が昇っているためか、元始風水盤の起動が予想より早い。
メドーサは小竜姫様に任せるとして、勘九朗は俺達で抑えるしかない。
しかし、カオスがいないとあれを制御することが……。
「フム、マリア、テレサ、あれを制御するのには少し時間がかかりそうじゃ、全員で奴の気を引いてくれればワシが制御できるかもしれん」
「イエス。ドクターカオス」
「しょうがないわね」
…………ってなんでいるの?
あ、よく見たらエミさんも冥子さんもいる。
「何呆けてるのよ、私がどうせ助けに行くなら助っ人頼めば良いじゃないって言ったら二匹の鬼が連れてきたのよ。さっき雪之丞達と入ってきたじゃない」
「あー……、なるほど。そういうことか」
タマモがいた事で助っ人が最初からいたってことね。
ならばと、時間稼ぎするために、と躍り出る。
「フフ、まずはあなたね」
「ちぃ!スピードまで上がってるのか!」
「それでもあなたの方が早いってのは少しショックでもあるけどね」
フフフと笑いながら言う勘九朗の攻撃をかわしながらカオスに目配せする。
すぐに意図を理解してくれたのか、カオスが作業に入る。
霊力は使わない。スピードだけで翻弄してやる。
「は、はやすぎる……!」
「勘九朗の動きは見えるが、シュウが見えない!これじゃ援護しようとしても邪魔になる可能性があるぞ!」
「各自援護用の準備だけして無駄に霊力は使っちゃだめよ!」
ピートと雪之条が驚いているが、流石美神さん、すぐに指示を出す。
冥子さんとエミさんも流石はプロ、冷静に状況を確認しているようだ。
タマモはガルーダに向けて狐火を連発して牽制している。そういえばあいつの妖力って影響出てるんだろうか。
とかそんな事を考える暇を勘九郎はくれないみたいだ。
「なんて早さなのよあなた。それで霊力が備わったら最強じゃない」
「あいにく霊力使いこなせてないからな。詳しくは秘密だけど、ほとんど身体能力頼りなんだ、よ!」
「それはまた残念ねぇ」
何度か蹴りが入っているが、決定打が出せない。
やはり動きを止めてみんなにやってもらうのが正解なんだけど。
「出来たぞ小僧!」
「はやっ?!ナイス!!」
考えながら戦っていたところでドクターカオスから声が上がる。
どうやら逆算が完了したようだ。
そうじゃないかとは思ってたけど、多分あれは脳みそ若返らせてから来てるな。
「何を?!」
勘九朗が気付くがもう遅い。ドクターカオスが手を元始風水盤に当てた瞬間、辺りが澄んだ空気になる気配が解る。
これならこのままいけるかもしれない。ひょっとしたら俺も霊力全開で4秒くらいは……考えてて虚しくなったからやめよう。
ただ、もしかしたらメドーサも抑えられるか。
そこまで考えたところで、空から勘九朗の横にメドーサが現れた。
「ちぃ、小竜姫を帰すのにあんなに苦労するとは思わなかったよ。さて、状況は最悪みたいね。……勘九朗、撤退するわよ」
「……仰せのままに」
まぁそうくるよなぁ。
位置的にもメドーサは絶対に止めることは出来なさそうだ。
このままだと無駄に勘九朗が死ぬことになる。
「メドーサ」
「何だい?」
俺の言葉にメドーサが止まる。
話を聞いてくれるのは意外だ。
「ここは大人しく話し合いで何とかならないか」
「はっ、阿呆かいお前は。そんなことが通るわけないだろう」
「いや、だってお前ら逃げるなら多分勘九朗が死ぬつもりでこっちの足どめするんだろ?勘九朗殺したくないし」
「……お人よしだねぇ。でもそんなことは関係ないんだよ。私はプロだ。生き残る義務があるのさ。流石にこの空間で戦うほど馬鹿じゃないんだよ」
「んー、じゃあさ、どうせ勘九朗捨てて逃げるつもりなら、勘九朗が大人しく捕まってくれたらメドーサを逃がす、ってのはどうだ?そっちとしては生きてればまたいつか合流出来たときにコマとして使えるんじゃない?」
事務所メンバーはいつものか、と言わんばかりに呆れ顔だが、雪之丞はどことなく俺の意見を聞いて思うところがあるのか黙ってみている。
少し考えるようにしてメドーサが口を開く。
「……あんたがそうするメリットはなんだ?」
「勘九朗を出来たら説得して仲間にして、出来たらメドーサも仲間にする」
「「「「はぁ?!」」」」
あ、ひでぇ、満場一致で「何いってんだお前」って顔してる。
まぁでもそうなるよなぁ。流石に理想論だし。
メドーサも唖然とした表情で固まっている。と思ったら急に笑い出した。
「……フフフ、正直なやつだねぇ。馬鹿が、それこそありえないことだよ。……だが、面白いね。良いわ、あんたの言うとおりにしてあげる。勘九朗」
「はっ」
「今話した通りよ、とりあえず生きてなさいな。またあったときに使えそうなら使ってやるわ」
「……はっ」
おぉマジか。
言ってみるもんだな。
【大きく流れが変わることになるな。とはいえ、小竜姫様の方で預かってもらえばそれほど影響も大きくあるまい】
【やっぱり余計なことだったか?】
【いや、仲間に、ということはないだろうが、命を無駄に奪う必要もなかろう。どうせあのまま戦ってもメドーサには逃げられる】
「シュウ、1つ貸しだよ」
心の中で心眼と話していると、メドーサがこっちを見てニヤリと笑った。
「え、嫌ですけど」
あ、やべぇ、素で返しちゃった。
メドーサがすげぇ嫌そうな顔してる。
「…………そこは嫌でもわかったと言うところだよ」
やれやれ、と首を振りながら浮かんでいくメドーサ。しれっとガルーダも一緒だ。
それを見ながら呆れた様子で近づいてくるタマモ。
「あんたのせいで凶悪な魔族1人逃がすことになるんだけど、わかってる?」
「つってもあの状況で勘九郎の相手しながら逃げるメドーサを捕まえる方法ってあるか?勘九郎の邪魔なしでも多分無理だぞあの位置だと」
「……まぁ、ないわね」
誰か超加速でも使えればいけるだろうけど。
タマモがしぶしぶ納得したところで、改めて全員生き残ったことを改めて噛み締めた。
ちなみに、神父をもとに戻すための勘九郎の手は横島が持っているから大丈夫だ。
そんなことを考えていたところで、新しい声が響く。
「チッ、間に合わなかったか。とはいえ、危機は乗り越えたようだな」
「エルエル様?」
振り返るとそこには韋駄天の時に出会った天使、エルエル様が飛んでいた。
「……貴様はシュウか、メドーサには逃げられたようだな」
「え、あー、そ、そうですね、あはは」
や、やべぇ、会話聞かれてたらこれ怒られるんじゃ……。
誰お前って顔してる連中には後ろで横島が説明してくれている。
っと近付いてきた。
「ただ、元始風水盤の最悪の利用方法は防ぐことが出来たようだな。まさか人間に止められるとはメドーサも屈辱だろう。私も予想外だがな」
いつも通り人間に対して辛辣な物言いに雪之丞が動こうとするが横島が抑えている。
「とはいえ、功績は大きい。流石にそこは褒めてやろう」
「はぁ、ありがとうございます」
というかなんでこの方ここにいるんだろう。
出来ることならもう少し早く来て手伝ってほしかったんだけど。
そんなことを考えていたらそれを察したのかエルエル様が口を開いた。
「……なぜ私がここにいるか、だが、上司に言われてな、これの後始末をつけにきた」
そう言いながら元始風水盤に近づくエルエル様。
あ、そうか、確かに元始風水盤と針、どうしたら良いか困るところだった。
まさか美神さんにあげるわけにはいかないし、あ、あの人指くわえて見てる。欲しいんだな。
じゃなくて……、まぁ小竜姫様に相談するつもりだったから、神族側でやってくれるならそのほうが良いか。
「わかりました。すみませんがお願いします」
「仕事だからな、気にするな。私も急に上司に言われてこれの回収に来たからむしろもう少し早く来ていれば人間に礼など言う必要もなかったのだが……。あの方にも困ったものだ」
途中からブツブツと言いながら元始風水盤をいじり始めるエルエル様。
苦労してるんだなぁ、となるべく邪魔しないように俺たちはその場をあとにしたのだった。
…………あらためて。
あー、死ぬかと思った!
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「私達、何しに来たワケ……?」
「まぁまぁエミちゃん、誰も怪我しなくてよかったじゃないの~」
帰り道、視界の端っこで項垂れているエミさんと、ニコニコと気にした様子のない冥子さんには触れないようにした。
ようやく香港編が終わった……。
まだ物語は終わりませんが、ちょっと軽い話が続くかもしれないです。
……いつになるかはわかりませんが、ふと気付いた時にもし更新されてて、気が向いたら続きも読んでやってツカサイ。