それと、後半は原作キャラがちょろっと登場します。
あと、今更ながら気付いたんですが、
これGS美神知らない人は読んでて難しいのでは?と思い始めました。
なるべく気をつけようとは思いますが、中々文章でそれを伝えるのは難しいですね。
GS美神知ってる人推奨ですな……。
美神さんに雇われてそこそこ時間が経った。
どういう手続きをしたのか、そもそもどうやったのか判らないが、俺は横島と同じ高校に通っている。
ちなみに美神さんに確認しようとしたところ、「知りたい?」と仄暗い微笑みを見せられたので俺は考えないことにした。
学校での扱いはこの見た目もあって、不本意ながら同い年だという扱いを受けていない。
男子も女子も俺のことを子供だと思って接してくる。これは何度17歳だと説明したところで無駄だった。どういうことだ。
そのかいあって男として驚異に思われていないからなのか、元々やはりと言ってはなんだが根が良いやつなのか、はたまた子供に甘いだけなのか、理由は解らないものの、意外と横島とは良い友人関係を維持できている。
オカルトやGS関連のこと以外はこの世界と元いた世界にそれほどの差を感じなかったので、今のところ特に生活で困るようなことはない。
この見た目のせいで、何処行くにも学生証は手放せないけど。
改めて、ここ何日かの生活で解ったことがいくつか。
どうやら俺は人より霊力がかなり低い、ということ。
それこそ一般人より低いレベルでだ。
それとは逆に、予想はついていたが身体能力については尋常じゃなく高い、ということ。
この世界で、という意味だとは思うが、どこの宇宙開拓史だ。
ついでに何で見た目若返ってるのか、意味がわからない。
自分で言うのもなんだが、元の世界でもそれなりに強かった自負くらいはある。
ただ、それにしてもこの世界で身体を動かすと、それだけでは説明がつかないくらい力が溢れる感覚を感じる。
相当手を抜いても学校の体育とか目立って仕方がない。目立ちすぎて学生花山薫コースは避けたいので、なるべく目立たないよう努力はしている。
まぁ霊力が低いという、この世界で致命的な欠点を持っていることを考えると、それくらいのアドバンテージはあってくれて良かったと感謝するべきかな。
正直どこまで生き残れるか、が暫くの課題になりそうだ。
体力や力がどれだけあったとしてもそれが通用するのはあくまで対人、今の俺は雑霊だとしても油断したら即死だろう。その代わり対人戦の心得があることには、過去の自分に感謝、かな?
とはいえ霊力が使えないのはこれから長くなるであろうこの生活で致命的すぎる。早めになにか手を打たなければ。
さて、今後についてだが、色々と問題が山積みだ。
まず原作知識を持っている、というのは大きいメリットにはなるだろうけど、大きいデメリットが複数隠れている。
すぐに思いつくのはヒャクメ。考えを読まれるとこの知識は相当にまずい。もうヒャクメには正直に話してしまって協力してもらうのが良いのかもしれない。
いやでもそれだとどうやって接触すれば良いんだ?
出会い方がみんなと同じ場所で、となるとどう考えてもうまくいくイメージがつかない。
ナイトメアとか面倒なのも居た気がするし、力の大きい神魔とかも考えを読むくらい出来るんじゃないか?
あー、そもそもアシュタロスとの対面があった時点で詰むんじゃないか?今のうちに色々整理して考えておかないとな。
読心に関わらず、何らかの形で原作知識が誰かに漏れた場合に考えられる影響は計り知れない。
それ以外にも、そもそもその原作知識を何処まで信用していいか、という問題もある。信用しすぎると何処かで足元をすくわれる気がする。
あとはやっぱり霊力無し問題だよな。どうすれば良いんだこれは。
妙神山か?それとも神父とか探して頼るか。エミさんは……、美神さんが怖いから無理だな。そもそもどうやって知り合うんだ。
一番の問題はルシオラだよな。
俺が一番変えたい内容。これは相当作戦を練らないと。歴史の修正力がどうこう、とか言い出したらどうあがいても無理だし、何も考えずにいきあたりばったりだと何も変わらないとかあり得る。
いや、そもそも俺がいることによって、悪化が考えられるんじゃないか?
「おいおい、こっちの方が問題じゃないか」
つい呟いてしまう。
変えたい内容がどう、とか以前に俺がいることで最悪普通の依頼時に誰かが死んでしまう、ということだってありえる。
そう考えた瞬間、自分の背中を冷たいものが通る。
気分としては一瞬で目の前が真っ暗になった気分だ。
とはいえ関わってしまった以上、既にどんなバタフライ効果が現れるかわかったもんじゃない。
ま、まずは自分の記憶の整理や事前に取れる対策検討からだな。
気付いてしまった恐怖から目を反らす様に、別のことを考える。
……と思ってたんだけどなぁ。なぜこんなことに。
目の前にはすっかり考えから抜け落ちていた人物との接触が行われていた。
いやー、実際この生活思ったより余裕が無い気がするので仕方ないとしよう。(現実逃避)
これまでの日々だって、原作で見たこと無い依頼とかも沢山出てくるし、原作で見た気もするなぁって話があっても、そんなにはっきり覚えていない内容なんかは見てるだけしか出来ないし、そもそも知ってる知らないに関わらず毎回生き残るだけで精一杯だ。
こないだのモガちゃん人形とか滅茶苦茶怖かった。動く人形ってそれだけで怖い気がするんだけど……。
いやそもそも俺怖いの基本的に駄目なんだけど。
あの漫画こんなに怖かったっけ?やっぱりリアルだと全然違うってことだろうか。
それと、改めて横島の不死身っぷりが異常だと思う。なんで幽体離脱で宇宙行って生きてるんだ。
銀行強盗は直前に思い出して用事があるって断れて良かった。一応銀行と交渉の上で正規の依頼という形とはいえ、擬似的にも犯罪行為はごめんだしなぁ。後で「お前が一番役に立てるところだろうが!」って滅茶苦茶文句言われたけど、成功したなら良いじゃないか。
そんなこんなで、ゆっくり考えたり悩んだりする時間がなかなか確保できない。
……いや、修行に時間費やしすぎな気もしてきた。
ついでにおキヌちゃんが色々横島の世話ついでにウチの部屋にも世話しに来てくれるおかげで、知識整理とかメモすることも危ない。
下手に誰かに伝わったら大きく流れが変わりすぎて、どんな影響が出るか判らない。
とかやってた結果ではあるものの、目の前の状況に俺はすごく後悔していた。
「共同作戦?!」
美神さんがある人物の前で引きつった顔で驚きの声をあげる。
対してその人物はニコニコ顔だ。
「宜しくね~令子ちゃん~」
そう、俺は霊力が無い状況にも関わらず、ある意味超危険人物の六道冥子さんと、美神さんの共同作戦に参加することになってしまったのだった。
「はじめまして~、六道冥子です~」
「ずっと前から愛してました」
アホですな。
黒髪ボブカットで上品な印象を受ける女性が美神さんとの話の途中で挨拶をしてきたところ、横島のいつもの暴走が始まった。
はじめましてと言う彼女に対して手を握ってそのセリフは如何なものだろうか。
「今会ったばかりだろうが」
「シュウは黙ってろ!愛は時空を超えるんじゃ!」
とりあえずツッコミをしつつも横島と冥子さんから距離を取る。
巻き込まれたら冗談抜きで死んでしまう。
「ぼかー、ぼかーもー!」
ナンパ中にキスを迫るとは、横島、それは普通に変質者そのものだぞ。
まぁ、彼女に対してそんな心配は不要なわけだけども。
「あ~そんなことをなさっては~」
俺の予想通り、冥子さんの言葉と共に彼女の影から大量の鬼が飛び出す。
鬼と言っても普通にイメージする虎柄パンツに棍棒とかの鬼ではなく、所謂式神というやつだ。
彼女は式神使いなのだ。それも超名門のお嬢様で、12匹の強力な式神を操る天才である。
ただそれだけだと彼女に対して俺が何故ここまで警戒するのかの説明になっていないが、六道冥子の精神は正直言って幼い。
ちょっとしたことですぐ泣いたり、感情自体が未成熟、といったほうが当てはまるだろうか。
そして、感情が制御できないという精神を持っているのにも関わらず、彼女は感情が高まる、興奮する、などによって式神の制御が上手くできなくなる。
そう、つまり、暴走、するのだ。
「ひぃぃぃぃ!!」
そんなことを考えていたら横島が早速飛び出してきた式神達に襲われている。
離れていて正解だった。正直本人の自業自得ではあるし、今回のは暴走というよりはこれからの依頼に対して式神達の気が立っているだけとのことなので、放置。
「すみません同僚が。俺はシュウです。宜しくおねがいします」
「あ、おキヌと言います。宜しくおねがいします」
「あら~、宜しくね~。私の式神を見ても私を避けないのね~。令子ちゃん良いな~、私も助手欲しい~」
「あんたに助手はいらないでしょうに」
横島に比べて比較的平和な自己紹介をしている冥子さんに美神さんが苦笑しながら言う。
そして改めて美神さんから冥子さんの紹介を受けて、二人は目の前のマンションに入っていった。
今回はこのマンションの除霊依頼である。
新築マンションの形が霊を集める形になっていたらしく、大量の除霊が必要とのこと。
更に、祓っても祓っても集まってくるということもあり、まぁ暴走という欠点がなければこの二人に依頼を出すのは間違っていないんだろうけど。
流石に素人同然の俺達を連れて行くつもりはなかったのか、お留守番をお願いされた時は、正直助かったと思ってしまった。
確か、ここ、冥子さんの暴走で崩壊するんだよな。
「おキヌちゃん、依頼人さん、もう少し離れて待ちましょう。大量の霊がいるという話だったので、何が起こるか判らないですよ」
「そ、そうですね」
まぁ、美神さんと冥子さんと依頼人さんには申し訳ないけど、俺がここに入ったところで何も変えることは出来ない、ここは顔見せが出来たってことで納得しよう。
「誰か~、たっけて~」
あ、横島忘れてた。
冥子さんが出した式神の一体に頭を咥えられたままの状態だ。
「あー、どうすっかなぁ。確か、ビカラ、だっけ?悪いんだけどソイツ、離してあげて貰っていいかな。話が通じれば、だけど」
ダメ元で話したところ、ビカラはすぐに横島を離してくれた。
ちなみに、名前はさっき冥子さんが一通り呼んでいたのを聞いていた。流石に12匹全部とか記憶していなかったからちょうど良かった。
怪我をしていないところをみると、別に攻撃を受けていたわけではないんだよな。
確か横島は人外に好まれる感じだったし、こういうところにも表れてたのかな。
「あー死ぬかと思った」
「今のはお前が悪いだろ」
「うるさいエエかっこしい」
「俺がいつ良い格好をしたよ。助けてやったのにご挨拶だな」
「……なんとなく俺ばっかり貧乏くじを引くところとかに理不尽を感じる」
「お前、自分で言っててそれこそ理不尽でおかしいこと言ってると思わないか?」
「やかましいわい」
「自覚はあるのかよ」
はぁ、根は相当にいいヤツのハズなんだが、この頃は特に煩悩に振り回されているイメージが強いな。
ため息をついていたらビカラが近付いてきた。
「そういえばお前、ビカラで良いんだよな?」
俺の言葉に反応するように巨体を揺らす。
意外にも横島がそのままビカラに近付いて身体を撫でる。
嫌がる素振りもないビカラ、やっぱり人外に自然と好かれるんだなぁ。
「すげぇな、言葉通じてるっぽいぞ。よしよし、こうみると動物みたいだな」
「多分動物がモデルなんだろうな。さっきズラッと並んだときに見た感じ、トラとか馬とか犬とかいたし、数も考えたら十二支とかじゃないか?」
「へぇ、よく見てますねぇ」
俺の言葉におキヌちゃんが感心したように呟く。知ってただけなのでちょっと気まずい。
それより、真後ろだったこともあるけど……。ごめん、おキヌちゃん、正直いるの忘れててビックリした。
そんな感じで雑談などで時間を潰した結果、俺の記憶通りに冥子さんは暴走したらしく、目の前でビルが崩壊していくというレアな風景を見る羽目になったのだった。
改めて考えてみると、この時期は確か一気に色々な人と知り合う時期のはずだ。
確かカオスとかエミさんとか、主要なキャラが一気に増えた記憶がある。
記憶をどこまで信用していいかは微妙だけど、人脈は大事だし、仲良く出来ると良いな、と思っている。
ちょっと悲観的に考えている主人公ですが、この物語は別に悪い方向へ悪い方向へ、という流れで物凄く暗い話になる、ということではないです。