今年もよろしくお願いいたします。
なんと二年近くあいてしまって申し訳ないです。
一応続いております。
色々忘れてる可能性が高いので話がおかしくなってたらごめんなさいです。。。
「こうなったら、俺が相手っす!」
横目でそれを見て俺も覚悟を決めて構える。
「当然俺も相手になります!」
「ゲ、ちょ、ちょっと卑怯よ横島君!男なら正々堂々と一対一でやりなさいよ!」
美神さん涙目。まぁ流石に俺も対人だと負ける気はないし、逆の立場だったら絶望的だよなぁ。
……どうしてこうなった。
時は遡り。
「迷ったな」
「そうだな」
「なんで今日に限って心眼連れてきてないんだよ」
「横島もその場にいただろ。霊視に使うからよこせって我らが所長が持って行ったろうが」
「せやな」
俺は横島と森の中を歩いていた。
今日はゴルフ場を開発するために工事の邪魔をする妖怪を退治してほしい、という依頼を達成するために事務所のメンバー全員で森の中を歩いていたのだが、何故か俺と横島だけ纏めて遭難してしまったのだ。
更に最悪なことに雨まで降ってきた。体力の消耗が激しい。
くそう、こいつが文殊使えたらすぐにでも帰れるんだけどな。と無い物ねだりしたところで無いものは無い。
というか薄々気づいてたけど、この流れって横島が猫又の親子と仲良くなって美神さんと対峙するやつだよな。
ということは俺も一緒に美神さんと敵対することになるのか?
うわー、マジかよ。戦力的には問題なくてもその後が怖いやつじゃないか。
「おい」
「なに?」
一人で頭を抱えていたら横島から声をかけられた。
「実はな」
「なんだよ」
横島は後ろを歩いているが、かなり森を彷徨ったせいで俺もそこまで余裕が無いので振り返らずに答える。
「俺」
「おう」
何でいちいち途切れ途切れで喋ってんだこいつは。
こっちは未来の心配しながらも結構体力的に疲れてきたっつうのに。
そんなことを考えながら面倒に思いながらも振り返る。
「なんだよよこし……」
「限界だったりする」
「え」
そこには、顔を真っ青にして今にも倒れようとしている横島の姿があった。
「よ、よこしまー!!」
何でもっと早く言わないんだと思いながらも俺は気絶した横島を抱きとめた。
そういえば全く弱音吐かないから気付かなかったけど、こいつ俺のペースに合わせてついてきてたのか。
いくら不死身な横島でも気付いてやるべきだった。やべぇな、こんな山奥、冗談抜きで何とかしないと。
……おい今「どうせなら美人なねーちゃんが良かった」って言っただろ。
「すみません、うちの同僚が……」
「いえ、こちらこそケイが失礼を……」
あれから俺たちは目の前にいる綺麗な未亡人、美衣さんに保護されていた。
まぁお察しの通りお母さん猫又なんだけど。どっちかというとミイさんかな?
横島は布団で夢の中だ。心なしか顔色も戻ってきた気がする。
これ、目が覚めた後絶対ミイさんに飛び掛かるよなぁ。
最近横島、俺の攻撃を勘で避けるから止めるの面倒なんだけど……。
「なぁ、ほんとにこの兄ちゃんと同い年なのか?」
「こらっ、失礼だからやめなさいって!」
この通り、ケイ君には完全に年が近い友達感覚で見られている。
まぁ、別に子供の言うことだから気にしては無いし、構わないんだけども……。
「そうだぞ、だから俺のことはシュウ兄ちゃんと呼ぶように」
「わかった、シュウ。遊ぼうぜ」
……もぅわんぱくさんだなぁ。
結局、ミイさんに横島の面倒を任せて隣の部屋でケイと遊ぶことになった。
ミイさんとしてもケイの面倒を見てもらえて助かると言われたが、
予想通り復活した横島がミイさんに飛び掛かろうとしたので即部屋のふすまを開け放ってやった。
うーん、ケイを見て即離れる辺りは多少の常識は持ってるとは思うんだが、そもそも飛び掛かるなという話なんだよなぁ。
「横島、お前って本当に器用だよなぁ」
「シュウだってこれくらい出来るだろ」
「出来ないとは言わないけど手際が良すぎるんだよお前は」
現在、横島と俺はケイ君と遊んでいた。
俺の記憶通り横島はすさまじいスピードで竹とんぼを作り、ケイを夢中にさせている。
「横島兄ちゃん、シュウ、こっちこっち」
「はいはい」
「シュウ兄ちゃんな……」
……あれ?こんなにのほほんとしてて良いんだっけ?
いや良いワケないな、そうだよ、これから美神さんたち来るじゃん。
そういえば、と思い出したところでミイさんがこちらに近付いてきた。
「すみません、ウチの子の遊び相手になっていただいて」
「あ、いえいえ、主に横島に懐いてるみたいなので、俺はおまけですよ」
「そんなことはないかと」
くすくすと笑いながら言うミイさん。
この人とも会話しておかないとなぁ。
「ミイさん、結構ここ危ないんですよ」
「?といいますと」
「今、ウチの上司、まぁ所謂退魔師がはぐれた横島と俺を探してると思うんですよ」
「?!」
俺の言葉を聞いて目を見開くミイさん。
ミイさんが何か行動する前に手で制して続ける。
「いえ、まだここを突き止めたとかそういうことは無いと思うんですが、このままだと時間の問題かと」
「……あなたたちが手引きしている、いえ、そもそもあなた達が私たちに害する……というわけではないんでしょうね……」
言葉の途中でケイと遊ぶ横島を横目で見て、警戒を解いてため息をつくミイさん。
「はい、なんなら横島の方はあなたたちが猫又だということすら気付いてないんじゃないですかね」
「シュウさんはいつから」
「最初からです」
「最初から?では最初から私たちが目的で近付いたということですか?」
「いえ、あいつがぶっ倒れてたのも、遭難してたのも、助けてもらったのも、偶然ですよ。
まぁ、自分も知り合いに猫又が居ますし、助けてくれるなら人外だとかその辺りはわりとどうでも良いので。
どうせ横島ももしあなた達が妖怪だと知っていたとしても別に態度は変わらないと思いますよ」
俺の言葉を聞いて目を大きく開くミイさん。そしてすぐあきれたように笑顔になった。
「変わった退魔師さんなんですね」
「まぁ、確かに……。で、まぁこれだけ仲良くなってしまったらもう退治だとか上司へ連絡なんて無理ですよ。
横島にも後で正体を見せても大丈夫だと思いますよ。あいつの方がよっぽど妖怪とかに対して偏見とかないやつもいませんし。
……あぁ、最初は滅茶苦茶ビビるかもしれませんけどね、ビビリなので」
「それは、また……」
苦笑しながらも言われた言葉をかみ砕いているのか考える様子のミイさん。
そんなミイさんを横目に続ける。
「ただ、上司は別です。
しっかり工事の邪魔をしている妖怪の退治を依頼で受けちゃってますからね。
日本一のゴーストスイーパーと言われている上司なので、絶対に戦わない方が良いかと。
期限が過ぎるまでもっと奥に隠れて上司への依頼期限が過ぎるのを待つのが一番いいかと」
「な、それほどにお強いんですかあなたたちは」
「上司は、ですけどね」
「……何とかなりますでしょうか」
「まぁ、近くまで来ていないか確認して、ヤバそうなら退散ですね。期限さえ超えれば勝ちですし。
俺と横島で手分けして上司を探して、見つけたら適当な方向に向かって猫又を見たーなんて言って時間稼ぎですよ」
「……お世話になります」
「いえ、先に助けてもらったのはこちらですし」
ミイさんに頭を下げられてしまった。
これでミイさんが先に美神さんと合流してけがを負うこともないだろう。
あとで横島にも説明しないとな。
「そういえば、猫又にお知り合いがいらっしゃるとか」
「え?あぁ、といってもそんなに仲良しこよしってわけじゃないですけどね。敵じゃない程度ですよ。気に入ったとか言ってもらえましたしね」
「気に入った……?…………それって、もしかして、ミケって名前だったりしますか?」
「あ、そうですそうです。美毛さんって言ってましたね。お知合いですか?猫又同士だしもしかしたらーなんて思ってたんですよね」
「あー、、、ちょっと遠い親戚、ですね」
「おぉ、世間は狭いですね。ビックリしました」
「気に入った、と言われたんですね?」
俺に問いかけながら片手を額に当てて頭を抱えるミイさん。
「え、えぇ、、、それが何か……?」
「ミケはですね、ちょっと、いえかなり歪んだ愛情を持ってる猫又でして……」
げ、ひょっとしてヤンデレとかいうやつか?
そういう意味で気に入ってたのか。好かれるほど関わったとは思えないんだけどなぁ。
「えっと、うーん、あのぉ」
頭を抱えながら言い辛そうに言い辛そうにするミイさん。
すごく気になる……。
意を決したのか、続きを口にした。
「ミケは、気に入った相手をですね、死体にして可愛がりたいという癖を持ってまして……」
「はい?…………は?」
ちょっとまって?
……は?
「あ、いえ、あの、最近は結構マシにはなってきてるんですよ?!ただ、元々そういう癖があったので、ちょっと心配で」
俺の様子を見て慌てて手を目の前で振りながら続けるミイさんだが、全くフォローになっていない。
え?ヤンデレとかそういうレベルのもんじゃなくない?
「具体的に言うと「言わんで良いです!」そ、そうですか?すみません……ウチの親戚が……」
「い、いえ……」
なんだか頭を抱える問題が更に増えてしまった気がする、いや違うか、増えてたのか……。気付いてなかっただけね。
好意というか、もはやそれは敵と考えて良いレベルじゃないか?
大の字になって原っぱに倒れ込んで仰向けになる。俺も頭を抱えて叫びたくなったが一応ミイさんの手前、我慢できた。
「な、なるほど、理解した」
ミイさんとの会話を横島に共有すると、最初はミイさんの正体にビビってはいたものの、流石の横島、すぐに別の心配(美神さんの相手)に考えをシフトしていた。
ちなみに、ケイは隣の部屋で昼寝している。
「さて、放っておいてもここが見つかるだけだよな」
「まぁ間違いなく見つかるだろうな」
「やはりそうですか」
俺と横島の会話を聞いて肩を落とすミイさん。
まぁ美神さんが見つけられないわけないのでそれは仕方ない。
まぁこっちに荷物がほとんどあるのが助かったというところか。見鬼くんもこっちにあるし。
「別々に探すのも良いけどよー、最悪美神さんと戦闘になった時のことを考えると出来れば一緒に遭遇したいよなぁ」
「そううまくいくかな、最悪ここで待ち構えて、来たら二人には裏から逃げてもらって戦闘の方が良くないか?お前のサイキック猫だましとか」
「まぁ確かに会えずに美神さんがここを見付けるリスクを考えるとその方が良いけどよー、その場合戦闘は避けられないし、戻ってからのお仕置きも確定するぞ?」
「まぁそれはそうだな」
うーん、と二人で頭を抱える。
どうにか先に美神さんと合流して会話で上手くそらせられれば良いんだけど、問題は美神さんの位置がこちらからも分からないことだ。
ただでさえ心眼は美神さんが持ってい……まて、そうだよ、心眼は美神さんが持ってるんだった!
「横島!美神さんは心眼を持ってるんだ、俺達の場所はすぐにばれるぞ!」
「げ!そうか、忘れてた、俺達の霊力にミイさん達の妖力、心眼がちょっと本気出したらすぐ見つかるじゃねーか」
「「っ!!」」
その事実に気付いた瞬間、横島と同時にこの敷地の入り口側にばっと目をやる。
「え?どうされました?」
ミイさんが不思議そうにしているが、俺達にはわかる。
「「来た」」
「え?あの、、、私の感覚でも特にそのような反応は。化猫族の感覚は人間の数千倍も優れてますし気のせいでは」
「「良いから隠れて」」
「は、はい」
二人同時に真剣な顔で言われたからか、おとなしくケイが寝ている部屋にうつるミイさん。
そのままケイを連れて裏口から出てくれれば良い。
「横島ー、シュウー、いるんでしょー?」
ミイさんが気配を消して下がった瞬間、庭から美神さんの声がした。
横島と目線を合わせて頷きあう。
「あ、美神さん!おい、助かったぞシュウ」
「マジか!」
言いながら家を飛び出す。
「流石心眼ね、やっと見つけたわ」
『だから言ったろう、二人ともこっちにいると』
「その割に時間がかかったじゃない」
『なにやら気配が曖昧だったのでな、察するに二人とも一度瀕死まで追い込まれてたのではないか?』
二人の会話からすると、心眼が時間稼ぎしてくれていた様だ。
「そうなんすよ、この家見つけるまで、二人で森を彷徨いに彷徨いまくって」
「横島が倒れたところを俺が担いでウロウロしてたら家を見付けてさっきようやく横島の体力が回復してきたところなんですよね」
「食うものが何故かあったから助かったんですよ」
流石の横島、何も言わなくても口裏を合わせてくれる。
そんな俺達を薄目で見て「ふーん」と呟く美神さん。
おキヌちゃんは「無事でよかったですー」とひんひん泣いている。
嫌な汗が背中を伝う。
恐らく横島も同じ感情だろう。
……バレてね?これ。
「まぁ良いわ。妖気の残り方からして、ここは妖怪が暮らしてた場所でしょうね」
「そ、そうなんですか?」
「えぇ、さて、隠し立てしても良いことないわよ?ここにいた妖怪は何処?」
何だったんだ俺達の息ピッタリだと思い込んでた言い訳。
一応続けるか。
「え?だから空き家だったんで休ませてもらってただけで、妖怪が居るのかは知らなくて」
「へぇ、そう、じゃあ横島君の服についてる獣の毛は何なのかしら?妖怪の子供かしら?子供に好かれそうだもんねぇ横島君は」
「え?!」
「おいバカ!」
美神さんの言葉に慌てて服を見る横島。
「マヌケは見つかったみたいね。これだけハッキリ会話してる様子を見ると、操られている様子でも無さそうだけど、どういうつもりかしら?」
言いながら神通根をキンッと伸ばす美神さん。
笑顔だが、よく見ると目元がヒクヒクと動いており、血管が浮いてるようだ。
「あ」
「やっぱり美神さん騙そうってのはウチラにはまだまだ未熟だったな……」
「いやじゃー!戦闘は絶対避けたかったのにー!」
「諦めろって」
「さて、どうせ横島くんが妖怪に同情してってところでしょうけど、私とやるつもりかしら?」
ニヤリと笑う美神さん。
それを見て覚悟を決めたのかハンズオブグローリーを展開する横島。
「こうなったら、俺が相手っす!」
横目でそれを見て俺も覚悟を決めて構える。
「当然俺も相手になります!」
「ゲ、ちょ、ちょっと卑怯よ横島君!男なら正々堂々と一対一でやりなさいよ!」
美神さん涙目。まぁ流石に俺も対人だと負ける気はないし、逆の立場だったら絶望的だよなぁ。
……どうしてこうなった。
というか、なんで美神さんは横島一人で戦うと思ったんだ、当然俺も一緒に決まってるだろ。
さて、どうやってケガさせずに美神さんを無力化させるか。
「シュウもやるなんて聞いてないわよー!」
涙声で喚きながらブンブンと神通棍を振り回す美神さん。
卑怯だーだの一人ずつだーだのギャーギャー色々言っている。まるで駄々っ子だ。
苦笑して構えを解いた瞬間、本当に一瞬の間、目の前に神通棍の切っ先が迫ってきていた。
「っく?!」
それをギリギリで顔を捻ることで避ける。
「チッ、これくらいの不意打ちじゃ避けるか」
ニヤリと不敵に笑ってこちらを見る美神さん。
た、タイミングの間が完璧だった。速さもそうだが、気付いたら目の前にいた。
なんて戦闘センスだ……。
「何驚いてるのよ、あんたもそっち側だってことなんて当然最初から解ってるわよ」
「……」
いつもと違う<凄み>を美神さんから感じる。
「あんた、私相手なら余裕だとなめてたでしょ?いくらアンタの体術が人外じみてるからって、私が今まで相手にしてきたのは本物の人外よ?天下の美神令子をなめんじゃないわよ。
しかも、私相手に怪我させずにとか考えてんじゃないでしょうね?なめられたもんね私も!」
言い終わった瞬間、美神さんの威圧感が跳ね上がる。
「……わかってたつもりでしたが、確かにいつの間にか思いあがってたみたいっすね……」
「あわわ、美神さんの本気がこれほどなんて……」
冷汗が頬を伝う。
横島も今の動きを見て戦慄してる。
「……本気?あんた達、本格的に私をなめてんの?」
更に威圧感が上がったと思った瞬間、横島の真横を美神さんの蹴りが通る。
今の一瞬で何回フェイントを入れたんだ?と思うほどに避けにくいその蹴りが横島に当たらなかった理由は、
ギリギリのタイミングで気付いた俺が、横島に当たる寸前に横島の手を引いたからだ。
「へぇ、今の見えてるのね。相変わらず目も良いわね。でも、シュウ、あんたこの状況ならどうするつもり?」
感心する様に言い終わった瞬間、美神さんの身体の周りを濃い霊力が包み込む。
あ、ダメだこれ。
「わりぃ、横島、多分横島の攻撃しか美神さんに通じないわ」
「は?なんでだよ、お前の攻撃ならいくら美神さん相手だろうが人間相手なら……」
「いや、確かに俺の攻撃なら当たると思うけどな、あれに触れたら一発で瀕死になるわ俺。
一応全力でやれば美神さんも行動不能に出来るとは思うけど、相打ちでこっちは死にかける上に、美神さんも瀕死にするレベルの攻撃しないとあれ突き破る前に気絶すると思う」
「マジかよ……」
マジで頭の中ではあの人は天才だと、強いと、絶対敵わないと、解ってたつもりだったんだけどな。
いつの間にか思いあがっていた、人相手ならどうにでもなると。
まぁ大抵の人相手ならどうにでもなるというのは嘘じゃないだろう、
ただよく考えなくても同然だ、世界でもトップレベルのGSなんだよなこの人。
霊力の使い方次第で俺では無力化されるじゃないか。
そうなのだ、この人は<あの>美神令子なんだ。
「事情を話す気になったかしら?」
ニコッと笑って言う美神さん。尋常じゃない濃度の霊力は纏ったままだ。
「話したら依頼を諦めてくれたりします?」
「ありえないわね」
「なら」
それを聞いて顔を見合わせる俺と横島。
そして同時に美神さんの方を見て言い放った。
「「いやっす」」
「いい度胸ね、そこは褒めてあげるわ。私相手だからって遠慮しないことね、覚悟したうえで本気を出しなさい?」
言いながら霊波砲を手から放出する美神さん。
二人同時に左右に避けながら考える。アンタそんな攻撃出来たっけ?
「あんたらが裏でこそこそ修業してるの見て何もしない私だと思ってるの?」
横島の後ろからの声、横島が振り向きかけるがその前に美神さんの蹴りが横島の脇腹に突き刺さる。
横島に出来たのは脇腹にめり込んだ足に片手を当てて威力を弱めつつ吹き飛ぶことだけだった。
「ぐえっ」
潰れたカエルの様な声を上げながらこちらに吹き飛んでくる横島を受け止めつつ美神さんの追撃に備えて美神さんを見る。
そこには足を抑えてこちらを睨みつけている美神さんがいた。
「よーこーしーまー……!やってくれるじゃないの……!」
良く見ると横島が美神さんに蹴られた時に手を当てた個所に霊波の跡が残っている。
「ごほっ、さ、流石にサイキックソーサーだと危険すぎますが、それくらいの嫌がらせなら俺にも出来るんっすよ……」
マジかこいつ、あの一瞬で美神さんの足に霊波流したのか。しかもあの濃さの霊力纏ってる美神さんの身体に。
『器用なものだな、破壊する目的ではなく痺れさせるイメージでの霊波をしっかり流しておる……』
「心眼、あんたどっちの味方よ」
おでこに巻いた心眼に文句を言いつつ足に手を当て続けている美神さん。
「シュウ、今のうちに俺を担いで逃げ」
「横島ぁ!!」
「ひぃ!」
自身の霊力の巡りで強制的に足を直したのか、やせ我慢かわからないが怒りを顔に張り付けて迫ってくる美神さん。
このままだと横島に当たるため霊力を込めた左腕で美神さんの拳を受け止める。
当然完全に真正面から受け止めるとアカンのでここしかないというタイミングで受け流す。
が、それでも俺の微力な霊力の壁は豆腐の様に削られて俺の腕を美神さんの霊力が焼く。
「ぐっ」
「馬鹿ね、あんたの霊力量で私の攻撃を受け止めたら火傷じゃすまないわよ?」
フン、と苦笑しながら下がる美神さん。
予想通り、危険な賭けではあったけど途中で霊力の濃度を下げてくれたみたいだ。じゃないと受け流したとはいっても霊力ズタズタにされて動けなくなってるはずだ。
……まぁ左腕はちょっと今は使い物にならなそうだけど。
流石にこちらに大怪我をさせる気もないのか、纏っている霊力も少し抑えたように見える。
今しかない。
「撤退に賛成だ横島。ここからは逃げ回るぞ」
「おい俺はうごけんzぐぇぇ」
「わかってる」
途中まで話していた横島を肩に俵担ぎして走り出す。
走りながらちらりと顔だけ向けると、美神さんはすぐに追おうとはせずに手を顔の横に拡声器の様にあてて声を上げた。
「あんた達、わかってるでしょうね、私に楯突いたんだから、後が怖いわよ?!」
「すんません、後で必ず説明は……」
「ちっ」
こちらの声が聞こえたかはわからないが、大きな舌打ちだけは後ろから聞こえた。
『何か事情があるようだが?』
「あ?んなこた解ってるわよ」
私の問いに表面上は不機嫌そうに答える美神。
纏っていた霊力を通常のものに戻して自身の足と拳を交互に見て少し嬉しそうにも見える。
『まぁ、あの二人のことだ、事情がある妖怪と和解して、と言ったところではないか?』
「あー、うっさいわね、わかってるってばそんなこと」
『美神さんは優しいですからねー』
「おキヌちゃんまで……、そんなんじゃないわよ」
おキヌ殿の言葉に毒気を抜かれた様に苦笑する美神。
その後頭をガリガリと掻いてため息をつきながら話す美神。
「はぁ、まぁ確かにね、横島くんだけならともかく、シュウくんも一緒でかつあの覚悟の決め方からしてよっぽど事情があるんでしょうよ。それくらいは解ってるわよ」
『なら素直に話を聞いてあげればいいのに』
「あのねおキヌちゃん、私は美神令子よ?それはありえないわ。それに仮にもGSが妖怪逃がすところまでやって良いわけないでしょ」
『ひねくれ者め』
つい苦笑しながらつぶやいた声は聞こえていた様だ。
「うっさいわね、それより心眼、あんた最初から分かってたわね?道理で道中の案内が曖昧だと思ったわよ。
どうせあの二人の霊力と妖怪の妖力が一緒に居て穏やかだった、とかそんなところかしら?」
『ほう、気付いていたか』
「どいつもこいつも、なめんじゃないわよ」
ケッと悪態をついて私を額から外してポイとおキヌ殿に放る。
おキヌ殿が慌ててわたわたと私をキャッチしてくれる。
『これで依頼が間違いなく達成不可になる割には随分機嫌が良いようだな』
「フン、勘違いよ。煮えくり返り過ぎてハラワタで目玉焼きが作れそうよ」
表面だけ機嫌悪そうに言い捨てる美神だったが、確実に上機嫌だ。
こやつが機嫌悪かったら今頃私は地べたに叩きつけられておるだろう。
「ま、この機会にあの二人に私に逆らうとどうなるか、実力差を見せてやろうと思ったのは否定しないわよ」
『それだけではないだろうに』
「どういう意味よ」
『いや、何でもない』
全く、自覚してるのかどうかはわからんが、
横島に対しては自分の攻撃に反応したことや霊力のコントロールの向上、
シュウに関しても、反応出来るのは当然としても、手加減したとはいえ霊力を纏った自身の攻撃を、シュウ自身の霊力を使って受け流したこと、
どちらにしても心の底では上司として、部下の成長に喜びを感じているのだろうな。
何ともひねくれた確認の仕方だが。
結果、シュウの記憶通りこの依頼はキャンセルされ、猫又親子は無事となった。
その後、シュウと横島の二人はしっかりお仕置きされたのは言うまでもないが。
待たせすぎてるのに小分けで出すのも……と思ったのでまとめた結果1万文字くらいになってしまってました。。
読み辛かったらごめんなさい。
今後も細々と続けさせていただければと思います。