実はざっくり書きたい大筋のシーン(GS試験とかメドーサ編とか)を優先して書いてるせいで、前回とか今回のような細かい話の方を埋めてる状況だったりします……。
気持ちが急いて飛び飛びで投稿しそうになる今日この頃。
ただでさえ通常依頼系を飛ばしたりしているのに……。
追記:シュウ目線じゃなくなるタイミングとか、目線が切り替わるタイミングでその旨記載するように変更してみました。
今日は冥子さんが事務所に来ており、現在美神さんと応接室で雑談している。
と他人事に言っているが、何故か冥子さんの横に俺も座っている。
正直この距離で暴走されると死ぬんだが……。
まぁ横島はちょうど居ないのでそう簡単に暴走する原因は転がってないだろう。
ちなみに、美神さんも含めて三人の前にはケーキと紅茶が置いてあるんだけど、これがまた美味しい。
「あんた、相変わらず甘いもの食べてる時は幸せそうな顔するわね」
「かわいー」
自覚はないんだが、どうやら俺はケーキを食いながら笑顔でいたらしい。
それを見てか、冥子さんが俺の頭を撫でる。
完全に子供扱いである。やめて。
「あの、俺17歳なんですけど」
「えー、令子ちゃん、この子持って帰っちゃだめー?」
「いくらで?」
「聞いてくれませんかね。つうか美神さんもしれっと売ろうとしないで下さい」
全くもう、と文句を言うも二人共全然聞いてくれやしない。
まぁ折角美味いケーキ食わしてくれてるんだから我慢するか、と黙々とケーキを食べていたところ、二人の会話から無視できない単語が飛び出してきた。
「ドクター・カオス!?ってあの錬金術師の!?」
「ドクター・カオス?」
知ってますとは言えるわけもなく、美神さんから出てきたその名前を繰り返して問う。
そんな俺に冥子さんが説明をしてくれる。
「シュウくんは知らないかもしれないけど、古代の秘術を使って不死になった有名な錬金術師なのよー。ここ百年ほどは姿をくらましてたんだけどねー、今日本に来てるのよー」
「へぇ、凄い人なんですね」
「日本に来てることなんてどうして知ってるのよ冥子?」
冥子さんの話を纏めると、偶然空港で出会いサインを貰い、何故日本に来たかを聞いたところ、強力な霊能力を持つ人間と自分の魂を交換して身体を乗っ取ろうとしているとのこと。
そこで強力な霊能力を持つ人間に心当たりが無いか聞かれたため、洗い浚い美神さんのことを話してしまったらしい。
「だからここは危険よ~、早く逃げて~!!」
「「こらっ!!」」
いやはや悪気がないのがタチ悪いなこの人。
折角教えてあげたのに令子ちゃん怒ってばっかり~、と言いながら美神さんに追い出されるように帰っていった冥子さんを窓から見ながら思う。
カオスが来たってことは、横島が捕まってカオスと入れ替わり、横島の姿をしたカオスが美神さんを襲いに来るはず。
正直放っておいても美神さんのことだから後れを取るってことは無いだろうし、そもそも俺が知ってるとおりにコトが運ぶのであれば、美神さんは横島と入れ替わったカオス相手にボコボコにしてた気がする。
だとすれば、接触するべきは……。
〈三人称目線〉
「とは言っても何処行けば横島を見つけられるんだ?」
呟きながらシュウは街を歩いていた。
「くそぉ、とりあえずドクター・カオスとマリアをひと目見てみたかったんだけど、横島はアパートに居ないし、そもそもカオスのアジトって詳細な場所とか横島と接触した細かいタイミングって、漫画で描いてあった覚えがないんだよなぁ」
ブツブツ言いながらも足を進めるシュウ。
「これは大人しく美神さんのところで、横島と入れ替わったカオスが来るのを張ってたほうが良かったかもなぁ」
ふと目線を上げ、一部の集団が騒がしく何かを見ているのに気付くシュウ。
すぐにその一団に駆け寄り近付く。
「何かあったんですか?」
「ん?なんだか知らんが女の子が素手で公衆電話をぶっ壊して爺さん襲ってるとかなんとか」
「ビンゴ」
通行人から貰った情報を聞いてすぐにその現場に近付くシュウ。
そこには通行人に聞いた通りの光景が広がっていた。
「ギャー!」
「ドクター・カオスの命令により・捕まえます」
カオスの姿をした横島がマリアの攻撃を避け続けている。
どうしたものかと困り、様子を少し見ていたシュウだったが、流石に何もしないのも気が引ける、とマリアの目の前に割り込む。
「あんまり街で暴れないほうが良いんじゃないか?」
「おぉ!シュウ!助けてくれ!俺だ、横島だ!こんな身体になっとるが、色々あってなんと説明していいか」
「なんとなく知ってる」
説明が面倒になったシュウが答えた言葉に、よくわからんがラッキーと言って考えもせずに喜ぶ横島。
もう少し疑問を持てよと苦笑するシュウ。
「障害と判断・排除します」
「そう簡単にいくかよ」
マリアがくり出した拳を素手で受け止めるシュウ。
公衆電話を砕く威力の拳を平然と受け止めたことに驚くマリアとシュウ。
横島も改めてシュウのバカ力を見て顎が落ちている。
「ありえません・人間がこの攻撃を・受け止めることは・不可能」
「普通ならな。俺も驚いてるよ」
「ええぞシュウ!」
マリアの言葉に苦笑しながらも、ギリギリと凄まじい力で押し込んでくる拳を押し返すシュウ。
その後ろで、ヤンヤヤンヤと何処から取り出したのか紙吹雪を飛ばして喜ぶ横島。
「普段活躍できない分、こういう分野でくらい頑張らなきゃな」
「障害の排除難度高と判断・目標の確保を・優先します」
「あ、しまった」
「アホー!!」
言ったそばからマリアのフェイントに引っかかるシュウ。
マリアはそのままシュウの横をすり抜けて横島に向かう。
誰もがあわやと思ったその瞬間、横島の様子が変わる。
「お?戻ったか。おぉマリアどうし、たわばっ!」
「あ、ひょっとしてカオスが戻ってきたのか?」
シュウの言葉の通り、少し前にはなるが、美神の事務所では、横島の身体を持ったカオスが美神を襲うも、返り討ちにあっていた。
身の危険を感じたカオスは、捨て台詞と共に身体の交換を解除、元の体に戻ってきたところをちょうどマリアに殴られた、ということだった。
カオスにとっては災難である。
ちなみに、余談ではあるが今頃横島も美神にカオスのままだと思われてボコボコにされていたりする。
「マ、マリア、私がわからんのか、やめ」
殴られたカオスに引き続き攻撃をしかけるマリアだったが、その腕を再度シュウが止める。
目線だけをシュウに移したマリアは、片手間に相手する相手ではないと判断し、身体ごとシュウに向き直る。
その際、既に腕は振りほどいている。
「目標捕獲の障害・再度攻撃開始します」
「落ち着け、って言っても知り合いでも無いのに通じないわな」
「なんと、マリアのパンチを子供が止めたじゃと?!」
「しっけいな。子供じゃないっつぅの」
言いながらマリアから高速で繰り出されるパンチをすべて避け、捌き、受け止めるシュウ。
ならばとシュウの手を握り、手四つの状態から握力で押しつぶそうとするマリア、だが、それを正面で受け止めて逆に押し返すシュウ。
流石に異常すぎるシュウの筋力に、マリアも無表情ではあるが、キュインキュインと内部の回路を忙しく総動員し、シュウの観察を続ける。
「理解不能・人間の力を超えています」
「マリアの馬力を押し返すとは……!!」
「カオスだっけ?マリア説得しないと死ぬんじゃないか?」
押し合いながらもカオスに話しかけるシュウ、その言葉を聞いてハッと我に帰るカオス。
「マリア!既に横島の小僧に身体は返した。今は本物の私だ!」
「ドクター・カオス……、イエス・攻撃を中止します」
カオスの言葉を聞き、シュウの手を離してカオスの横に並ぶマリア。
やれやれ、と呟きながら肩を回すシュウ。
その様子を見てカオスが目を細める。
「お主、何者じゃ、マリアはわしの最高傑作のアンドロイドじゃ。人間の力でどうにかなるものではないぞ」
「あー、何者って言ってもなぁ、上坂秀、GS事務所で働いているバイトだよ」
「なぬ、お主がシュウか。確か美神令子の元で働いているバイトで霊能力がほとんどない、とか。霊力が無いのは聞いておったが、まさか力をこれほど持っておるとは」
「え、なんで俺のこと知って、あぁ、冥子さんが全部喋ったんだっけ?」
カオスの言葉に一瞬目を見開くが、納得してため息をつくシュウ。
シュウは冥子に自分の運動神経が高いところを今まで見せたことは無いため、カオスもそのことは知らなかったのだ。
「まぁ良いわい、何にせよ助かった、礼を言うぞ小僧」
「あんた、美神さん狙ってるんじゃないのか?そこの従業員なんだけど、俺」
「がっはっは、それはそれ、これはこれ、じゃ!助けてもらったことに変わりは無いわい」
細かいことは気にするな、と大きく笑ってシュウの背中を叩くカオス。
対するシュウは呆れ顔だ。
「はぁ、アンタは間違いなく大物だよ」
「そう褒めるな。さて、礼をしたいところじゃが、私も日本に来たばかりでな、いつか困ったことがあれば言うが良い、この天才錬金術師ドクター・カオスが力になってやっても良いぞ!わっはっは!」
「元気な爺さんだなぁ。じゃあそうさせてもらうよ。あ、じゃあ早速だけど美神さん狙うのやめて貰っていいかな」
「ぬ?うーむ、そうじゃなぁ。確かにあやつは中々手強そうじゃったし、別の手段を考えたほうが良さそうじゃのぉ。
ま、よかろう!お主には借りがあるしな!
もしあのままマリアを止められなければ大変なことになって、それこそ復讐せねば腹の虫がおさまらんかったかもしれんがの!わっはっは」
その言葉を聞いて冷や汗をかくシュウ。
本来の流れでは、あのままマリアにボコボコにされるカオスは美神に復讐しようと、存在そのものを消去してしまう薬を盛って、それを横島が誤飲、危うく横島の存在が消える危機に陥るところだったのである。
まさにカオスが言っていた通りの展開になるのである。
(正直横島にとって危険すぎるからなんとかしなきゃと思ってたけど、思わぬところで解決したな)
やれやれ、と大きく溜息をつくシュウ。
気を取り直してカオスに向き直る。
「それじゃあ、また何かあったら宜しく」
「おぉ、そうじゃの、次はお主を研究してみたいところじゃな小僧」
「勘弁してくれ。マリアも、またな」
「イエス・シュウ君」
「……二人共、ちゃんと誤解無いように一応、言っておくな。俺の年齢17歳だから」
改めて年齢を話したシュウの言葉に本日一番の動揺を見せる二人。
マリアに至っては狼狽えてオロオロと右往左往している。
「あー、どっちにしてもわしからしたら小僧じゃからセーフ!」
「シュウさん・また会いましょう」
「開き直るな爺さん!マリアもなかったことにするんじゃねぇ!」
全く、と呟きながら、帰路につくシュウ。
想定外の収穫があったが、最近色んな人に年齢についての訂正をして回っていることに気付いて肩を落とすのだった。
ちなみに。
「おーシュウ、さっきは助かったぜ。無事で何よりだ」
「横島くんから聞いたわよ、カオスのところに居たみたいだけど、大丈夫だったの?とんでもないアンドロイドとかも一緒に居たんでしょ?」
「あー、何とか。そのアンドロイドが、横島だと思ってカオスを襲ってたんで、カオスを助けたんですけど、その流れで美神さん狙うのやめるように言ったら承知してくれましたよ」
「でかした!そうか、シュウくんは霊力皆無だけど体力は異常だったわね。とは言っても、そんな相手になんとかなるってアンタも人間やめてるわねぇ」
「え、美神さんに言われたくないんですけど」
「え?減給してほしいって?仕方ないわね、叶えてあげるわよ?」
「えっと、正直すみませんでした。ただ、美神さんの命狙ってる人説得してきたんですけど俺」
「それはそれ、これはこれ、よ。まぁ今回は許しておいてあげるわ」
シュウが帰った事務所では、そんなやり取りがあったとか。
この人は敵に回さないほうが良い、と再認識するシュウだった。